月風穂

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【待ってて】

私は待っている者を助けることができなかった。
私が小学生の頃の話である。

私はその頃ゲームが好きであった。
友だちもみんなやっており、任天堂歴でいうとDSが出るくらいの時分であった。
私がはまっていたのは『ポケモン不思議のダンジョン』とかいうゲームだ。

自分がポケモンとなって、他のポケモンたちと戦いながら救助を求めるポケモンを助けたりするゲームである。
あるポケモンが、
「棟から出られなくなったから助けにきてほしい。お礼は弾む。」
という内容で救出を求めていた。
お礼に目が眩んだ私は、仲間たちと助けに行くこととにした。
「待ってて!」と意気揚々と向かう。
だが思ったよりもステージが難しく、なかなか助けることができない。
私のプライベートも忙しくなり、ゲームをする時間がなくなっていった。
中学になりゲームはほぼしなくなっていた。

あの頃私に助けを求めていたポケモンは、今でもあの棟で助けを待っているのだ。
私は無情にも助ける力を持ち得ていなかったのである。
15年ほどの時を経て、ゲーム機も壊れてしまっていた。
つまり私が救出に向かう術は断たれたのである。
彼らの人生が続いているのならば、同様に15年の月日が流れているのだ。
あのポケモンはまだあの棟にいるのだろうか?
15年も経てば自力で棟から出られたのではないだろうか?
他の捜査員が助けに行ったのではないか?
待て、私でも手こずったあの棟だぞ?行けるのか?
いや、それとももうすでに…。


私は助けを求めている者を助けることができなかったのだ。
できないことはできないと言うことが大切であることを学んだのである。
欲に目が眩んでも、私ができることに集中すべきなのだ。
さすがは天下のポケモンである。
ゲームができなくなっても深い示唆を与えてくれるのだ。

もしもあのポケモンがまだ助けを求めているのならば、それは大バカである。
私にもできないことがあるのだ。勝手に期待されても困る。
貴様も助けを待つのではなく頑張って降りるべきである。
敵のポケモンとは戦うのではなく、話し合いで解決するべきなのだ。
そのままだと社会に出て苦労するぞ。

2/13/2024, 12:23:32 PM