月風穂

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1/16/2025, 12:06:59 PM

【透明な涙】

すーっとこぼれ落ちる涙。
悲しみにくれる表情には強さと美しさがある。
これだ、これこそが透明な涙だ。
ドラマを見ながら私は確信した。

現実の私はこうも美しい涙を流せない。
悲哀に満ちた表情に強さはなく、泣き腫らした瞼には美しさを微塵も感じさせない。
「えっぐ、えっぐ。泣」と声をつまらせ、EGGと発音しているように聞こえる様は、誰がどう見ても醜悪の権化のようである。
まあ私は人前でほとんど泣かないため、さして問題はない。
この程度のことで落ち込む私ではないのだ。
嫌なことがあるなら泣くよりも私は寝る。

zzz…。
すーっとこぼれ落ちるよだれ。
寝ぼけた表情には間抜けさと緩慢さがある。
液体が流れる部位でこうも印象が違うのか。
とぼけた私にはこれくらいがお似合いである。
鏡を見ながら私は確信した。

1/15/2025, 1:12:07 PM

【あなたのもとへ】

一度会っただけのあなた。
私の人生で名前と顔しか知らないあなた。
会って少し話をするだけのあなた。
ずっと一緒にいてくれるあなた。

人生ですれ違うたくさんの人。
私と面と向かって交流できたのはどれほどの人たちだったのだろう。
私の存在はいつまでその人の記憶に留まっているのだろう。
大して会うこともなく、大して深い話もしていないあなたは私のことは忘れてしまっているだろう。

私は変な人間で、少ししか話していない人でも覚えていることがある。
なんかあの人の雰囲気が好きとか。
なんか会話の調子が合うとか。
なんかテンションが似ているとか。
なんか自然体でいられるとか。
その時はすごく楽しいし、また会いたいと思う。
どうしてそんな人ともあっという間に他人となってしまうのだろう。
こうして私の存在はその人の記憶から消えていく。
私の記憶には嫌という程残っているのに。
恋をしたとかそういうことじゃなくて、ただ人として好感が持てただけなのだ。
ふと思い返すと、多くの人の顔が浮かぶ。
でもその人たちは私の顔を思い浮かべるのだろうか。

大切にすべき人は限られている。
だから私はあなたのもとへ行くのだ。
私を他人として扱わないから。
私を私として記憶に留めてくれるから。
私もあなたを大切にしたい。

1/14/2025, 12:09:53 PM

【そっと】

蘇っと
蘇とはソ連の漢字表記である。
そこで今日は私とソ連について語ろう。

初めての出会いは小学6年生。
歴史の授業で突如現れた存在に私は興味を示さなかった。馴染みのない国に戸惑ったが、ロシアの系列という認識で納得した。
中学、高校でも同じく歴史の授業で出てきた。
スタリーンという名前と世界初の社会主義国家として、少しはまともな情報が入ってきたが、私はまだ心惹かれなかった。
私にとってソ連は当時、そこら辺にいるその他大勢と一緒だったのだ。

大学になると事態は一変する。
私は映画にはまり、ある国の作品群の沼にはまっていく。それがソ連の作品であった。
杜撰な社会主義構造と独裁国家。理想とは裏腹に国民は疲弊していた。
芸術家も同様で、ソ連の映画監督たちは国の検閲により作品の自由を奪われた。
彼らがとった行動は、作品の高度芸術化及び難解構造である。
ソ連当局への怒りは作品に込められ、難解さを伴うことで遠巻きに政府を批判していた。
そして国外へ逃亡し、海外で作品を作り続けた。
そうでないと生きていけなかったからだ。

もっと語りたいことは多いが、近年ウクライナ戦争によって語りすぎると身が危ういように思えてならないのでここらで止めておこう。
別に政治的立場を語りたいめんどくさい人間ではないからである。

ひとつかわいいところだけ。
文字がかわいい。
ё、ε、Ψとかめちゃくちゃかわいいではないか。
そういうとこがツンデレっぽくて好きなのだ。

1/13/2025, 12:17:28 PM

【まだ見ぬ景色】

愚問。
目を覚ました明日は既にまだ見ぬ景色だ。
…などと終わらせるのはつまらないので。

この世にはまだ見ぬ景色は数多い。
私がどう生きるかで見に行ける景色のルートは数多に分岐する。
連休明けの明日の仕事をサボり、電車で知らぬ地に行けば“仕事をサボれた上に”まだ見ぬ景色を見ることができる。一挙両得である。
そうはいかない生真面目な私は、その景色をいつ見ることができるのだろうか。

見に行けないまだ見ぬ景色はもうひとつ。
過去の景色だ。
私の父母が見ていた風景は雨風をうけたように流されてしまい、現在は見る影もない。
私が生きているこの景色も、いつかはきっと死んでしまう。
残しておけない景色を記憶に焼き付けよう。
この景色を語り継ごう。
まだ見ぬ未来へ。
この喜びも苦しみも、全てをありのままに。

一度しか見れない景色は憧れるが寂しい。
私はずっと見られる景色を大切にしたい。

1/12/2025, 2:44:16 PM

【あの夢のつづきを】

私は二度夢を見る。
一度目は子どもの頃。
二度目は夢から覚めた頃。

現実を知るとき、私は夢から覚める。
目を開いた先は暗く誰もいない。
暗闇を照らす灯りは私が握っている。
夢を見失った私には明るすぎる光だ。
だが子どもの頃よりも親しみを感じる輝きだと私の心は強く燃える。
やっと私は正しい夢を見られる。
皆と同じ夢ではなく私だけの夢だ。


私は三度目の夢を見る。
叶わなかった夢の残骸は私の心に積もっていた。
現実を知った先の夢は私の心の灯火となっていた。
すれ違っていく理想の中で、私は私が愛したいものを愛す。
ひとりで叶えるよりも大きな夢だ。
子どもの頃の夢とも大きく違っている。

三度目の夢は死ぬまで叶わない。
あなたが隣にいてくれるまで永遠に続く。
あの夢のつづきを見れるのは、この世ではないのだろう。

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