月風穂

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【あなたのもとへ】

一度会っただけのあなた。
私の人生で名前と顔しか知らないあなた。
会って少し話をするだけのあなた。
ずっと一緒にいてくれるあなた。

人生ですれ違うたくさんの人。
私と面と向かって交流できたのはどれほどの人たちだったのだろう。
私の存在はいつまでその人の記憶に留まっているのだろう。
大して会うこともなく、大して深い話もしていないあなたは私のことは忘れてしまっているだろう。

私は変な人間で、少ししか話していない人でも覚えていることがある。
なんかあの人の雰囲気が好きとか。
なんか会話の調子が合うとか。
なんかテンションが似ているとか。
なんか自然体でいられるとか。
その時はすごく楽しいし、また会いたいと思う。
どうしてそんな人ともあっという間に他人となってしまうのだろう。
こうして私の存在はその人の記憶から消えていく。
私の記憶には嫌という程残っているのに。
恋をしたとかそういうことじゃなくて、ただ人として好感が持てただけなのだ。
ふと思い返すと、多くの人の顔が浮かぶ。
でもその人たちは私の顔を思い浮かべるのだろうか。

大切にすべき人は限られている。
だから私はあなたのもとへ行くのだ。
私を他人として扱わないから。
私を私として記憶に留めてくれるから。
私もあなたを大切にしたい。

1/15/2025, 1:12:07 PM