月風穂

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【やさしい雨音】

目が覚める。
目覚ましが鳴るよりも早く。
朝の段階で既に疲れきっている身体を持ち上げる。

雨だ。

ベッドから眺め見る景色は、たいして広くもない部屋に比べ雄大だ。
ざーっと降りしきる雨は、私の頭の中みたいにうるさい。
昨日の仕事を思い出し途端に不安になるが今日は休みだ。
いつも起きる時間を知らせてくれる目覚ましを消すのすら忘れていた。

何も予定がない日は怖くなる。
休みの日でも何かしなくてはいけない。
自分がより良い社会人として活躍するために、自分のスキルをもっと磨かなくては。
ずっと怖いのだ。
歳を重ねて何もできなくなって取り残されていく私のことが。
一人前の考え方をしているだけあって、こんな風に疲れている日は本当に憂鬱になる。

「ざーっ」

屋根を伝っていく雨音を聞きながら、私の心は冷たくなる。
私はずっとこんな不安を抱えながら生きていくのだろうか。

「もっとゆっくり生きてみたら?」

そんな声が聞こえた気がする。
じゃあもっと寝るね。
私はもう一度ベットにくるまった。
「そんなあなたでも良いんじゃない。」

今日の雨は味方だ。
やさしい雨音に包まれながら、もう一度眠りに落ちた。

5/25/2025, 1:30:15 PM