『小さな命』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
やりたいこともなく、ただ淡々と過ごす日々を気に入りながらも、言いようのない虚脱感がある。
仕事の帰り道、立ち寄ったホームセンター。土も水もなく、ただそこに植物だけがあった。
エアプランツというらしい。根も張らず、水もほんの少しだけでいいそうだ。
「なんか、オレみたい。」
自分でもよくわからず、そう声に出していた。でもこれも小さな命、なんだ。
近くにあった透明な容器と、目についたエアプランツを手に取って、レジに並ぶ。
なんだか少し、明日が楽しみになった。
【小さな命】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】
2/24 PM 5:30
「え、部活でその話をしたの?」
「うん。だって過去一サプライズだった
プレゼントはやっぱりそれかな~って
思ったから。合唱部のみんなのことも
驚かせちゃったみたいだったけど」
「当たり前でしょ……」
「確かに、婚姻届はすごいな」
暁の誕生日の話から、
オレに婚姻届を貰ったことがある
という話になったと、暁が帰り道に
宵と天明(てんめい)に語っている。
宵は完全に呆れモードだが、
天明はすごいなと言いつつ
笑っているあたり、
さほど驚いていないのかもしれない。
「もしかして、宵も貰ったのか?」
「おおお~、天明くん、ビンゴ!
真夜(よる)くんのこと、
分かってきてるね~」
――天明の予想通り、
暁に婚姻届をプレゼントした時、
オレは宵にも婚姻届を渡した。
その時も、宵は『将来結婚するか
どうかなんて分からないじゃない』と
呆れていたけれど。
きっと結婚だけが幸せの条件じゃない。
でも、愛せる人と出会って、結婚して。
時を経て新しい小さな命とも出会う。
それだって、間違いなく
定番の幸せの形ではあるだろう。
オレは、どうしたって宵と暁の幸せを
祈らずにはいられないから。
婚姻届は、いつか2人が結婚したいと
思える相手に出会えますようにという
願いの象徴。
ただそれだけのことだ。
自分のじいちゃん
ばあちゃんに
直接お金を渡そう
年金制度はなくなればいんじゃない?
シンプルに小さな命守れます。
『小さな命』
私の命には生まれた時から寄生虫がついている。
ソイツの名前は人生というらしく、生きている人間の命には必ず寄生しているんだそうな。
私の命を勝手に食べては成長していくソイツ……当たり前だが憎らしい。
けれど退治する方法が無いというのだから仕方がない。
周りの人間は既に割り切っているのか、逆にソイツの大きさで競い合って楽しんでいる節もある。
……まぁ、それが正解なのかもしれない。
どうせ考えるだけ無駄なのだし、私も何だかんだでソイツに愛着が湧いてきた気がしなくもない。
自分の命が小さくなっていくのは腹立たしいが、代わりに人生が大きくなると考えれば……それもまた喜ばしい事なのだろう。
命が小さくなればなるほど、人生は大きく成長していく。
急がず焦らずで育ててみようか。
「ワンワン!」
「ん?もうご飯の時間か。ちょっと待ってろ」
そう言って亜琴のご飯を取りに行った。
台所についた瞬間、地面が揺れた。
かなり大きかった。
ガシャーン!と、大きな音が聞こえた。
「亜琴!」
亜琴は赤く染まっていた。
ピクリとも動かなかった。
僕は亜琴を連れて外に出た。
動物病院に走った。
獣医が見たときには遅かった。
こんな小さな命すら守れなかった僕は……
僕は………
あれから今日で1ヶ月。
あっちでも元気に遊んでいるのかな。
お腹すいたな。
コンビニに行くか。
コンビニから帰る途中
「ニャーオ…ニャーオ…」
という声が聞こえた。
そいつはすごく痩せていた。
仕方ない。
連れて帰ろう。
ガチャ
「ただいま」
とりあえず母さんに電話するか
プルルルル
プルルルル
プルル
ピッ
「もしもし」
「もしもし。母さん、ねこ拾った。飼いたい」
「…わかった。飼い主は?」
「誰か飼ってあげてくださいって書いてあったからいいだろ」
「わかった。じゃ、切るね」
「うん」
プープープープー
「ニャーオ…」
「とりあえずご飯食べような」
ねこはすごい勢いで食べた。
食べている姿は亜琴に似ていた。
名前は莉琴にした。
見てるだけで癒やされるが莉で亜琴を忘れないように琴をいれた。
莉琴は守る。
亜琴にしてやれなかった分幸せにする。
亜琴もきっと許してくれるはず
小さな命
産まれてきてくれて
ありがとう。
この命を無駄になんかさせないよ。
一緒に生きようね。
ずっと隣にいてくれて
ありがとう。
小さな命
私は、残された時間しか、生きられない。
今、見てる、感情、風景、思っていること、その全てか、変わってしまう。好きな人、恋人、あなたとの、最後。そんな私の、小さな命の話
ある日、いつもの様に仕事を終え帰路についていると、道端に何か生き物の様なものが落ちていた。
其れは掌ぐらいの大きさで人の形をしていた。
しかも背中には少し傷があるがキラキラと輝く羽がついていた。
「まるで妖精みたい…」
思わず口にからこぼれた言葉に反応する様に
むくりとその小さな生き物は起き上がりこちらを見つめた。
_おなか、すいた。
口は開いていないのに頭に声がに響く。
明らかにおかしいと分かっていても私は好奇心を抑えることが出来なかった。
「えーっと私の家、来る?」
その子を家に連れ帰り、ご飯を作って食べさせた。
食べた後にその子の話を聞いた。
名前はソラということ、妖精だということ、
本来は人間界に来ることは無いが迷い込んでしまったということ、帰るには少しの間かかるということ
昔から空想上の生物が大好きだった私はソラが元の世界に帰れるまで、家におくことにした。
ソラがいる生活はとても楽しかった。仕事で疲れて家に帰っても優しい声で癒してくれた。
けれど、ソラが来てから不思議なことが増えた。
家に帰る道で黒いモヤのようなものが見えたり、
悪夢をよく見るようになった。
悪夢は同じ黒いモヤと手のようなものがこちらに伸び、「おいでェ」「おいでェ」と言ってくるのだ。
そんなものに悩まされながらソラと暮らしているある日。
別れは突然にやってきた。
家に帰ってきた瞬間に扉から黒いモヤと手が伸びて部屋を飲み込んだ。私の体はそのモヤに飲み込まれそうになり必死にもがきソラの名を呼んだ。
「にげて、ソラ」
私の意識が暗転する瞬間、
ソラの体が光りモヤを消し去っていくのが見えた。
……何か音がする、
_おねーさん、ごめんね。こわいめあわせて
ソラの声が頭に響く
額に小さな小さな熱が灯った。
_ぼく、もうかえるよ。おうち
ソラを拾ってから約3週間ほどたっていた。
帰れるようになったのだろう。
ソラとはもう、きっと会えない。
_ありがとう、おねーさん。…またいつか
けれど記憶が薄れないように、覚えていられるように。
「またね、ソラ」
私はあの小さな命を忘れない。
ありがとう、ソラ。
_全ての空想に、現実に、命に最上級の感謝を
日曜日の午後、公園
うだるような夏の日
歩き疲れてベンチに座り込む私
目の前の広場で戯れる子どもたち
私はこの小さな命達に
どんな未来を遺せるだろう
「−小さな命−」
学校の窓から見える、紫陽花らしき花のつぼみが膨らんでいる。数日前より、少し大きくなったようだ。
小さな命。
道路の脇の、少し隙間の空いた溝に溜まっている土から、植物が生えていることがある。
それを見て、人は、
すごい、こんな所から生えているなんて。
こんな狭い場所で、可哀想だ。
どうにか降り立った場所に根を生やせる場所が
あって、運が良かったんだなぁ!
こんな所で芽吹いて、
ちゃんと生きられるんだろうか。
こんな場所でも生きることを諦めないなんて、
たくましくて、力強いなぁ…。
そんな風に、各々の考えで感想をもつ。
そもそも気付かない人も、
見たとしても何も感じない人もいる。
私は、降り立った場所がたまたまそこだったから、
どうにかそこで命を繋ぐことができたんだなぁ、
良かったなぁと思っていたのだが。
その種はきっと、風に乗って空を駆けて来た訳で、
降り立った場所が気に入らなければ、
また風に乗って空を飛べば、別の場所を選ぶことができたかも知れない訳で。
そうなると、種自身が、自分の意思でそこに生えたいと望んで根を下ろしたのかも知れなくて。
(…もちろん、次に降り立つ場所が今より良い場所とは限らないというリスクを考えてどうにか生きられそうなそこを選んだという可能性もあるし、
もしくはそんなことは一切考えていなくて、ただそこに根を下ろせそうな土があったから根を下ろした、というだけかもしれないが…。)
そう考えると、素晴らしいことだなと思う。
それぞれが、それぞれの場所に魅力を感じ、
可能性を感じ、生き場所を選ぶ。
私たち自身も、一人ひとり、小さな命に他ならない。
最初に降り立つ場所は選べないかもしれないが、
今いる場所に満足できないなら、時間がかかっても、
その後いつか飛び立つことはきっと出来るはず。
自分に相応しいと思える居場所を見つけ、
ここが自分の生きる場所だと、
すべての人が誇りをもって日々を過ごしていければ。
そんな世界になれば良いと、願っている。
瓦礫の下を覗くと、そこに白い一本の花が咲いていた。
私は戦火から逃れて健気に咲くその小さな命を、体を伸ばして毟り取った。
花がきちんと咲いている物を見つけるのは中々手間だ。
私は終戦以降あちこち探して花を集めている。
それは儀式を行う為だ。まぁ、相棒の見様見真似だがな。
昔は理解できなかったが、今ならこの儀式を行う理由が分かる。
私は最後の花を相棒の胸にそなえる。
そしてやり切れないこの気持ちを吐き出す為に、私は天高く吠えた。
「アオーン。」
お題【小さな命】
今日は歳の離れたお姉ちゃんの出産日だ。
私はずーっと、先週からドキドキしている。
お母さんもかなり心配らしく、さっきから電話の前を行ったり来たりしている。
prrrrrr......
お母さんは急いで電話に飛びついた。
「香奈、お姉ちゃん、無事出産できましたって。」
嬉しそうに、お母さんが電話をしながら教えてくれる。
「ねえねえ、男の子? 女の子?」
私はお母さんの周りをうろちょろしながら聞いた。
「咲、香奈が男の子? 女の子? だって」
私はわくわくして返事を待った。
お母さんは、待ちきれない私を見てクスクス笑いながら私を見て聞いた。
「どっちだと思う?」
「じゃあ、男の子?」
「本当に?」
「え、女の子?」
「それでいいの?」
「もう、焦らさないで!」
お母さんはまだクスクス笑っている。
「もう! 受話器かして!」
私はお母さんから受話器をとって、お姉ちゃんに直接聞くことにした。
「お姉ちゃん! どっち!!」
「男の子」
笑いを堪えるような声でお姉ちゃんは答えた。
「えーっとねぇ、じゃあ、名前は?」
私は気になってたくさん質問した。
「優しいに真って書いて、優真」
「優真くんか......」
可愛いんだろうなぁ、そんなこと話考えていると、
「じゃあ、今日から香奈は優真の“おばさん“だね」
と言われた。
ニッシッシ......と意地悪く笑うお姉ちゃんの顔がありありと想像できた。
「な、酷い! 私、お姉ちゃんより8歳も若いのにー!!」
「優真〜、香奈おばさん怒ってて怖いね〜」
「ちょっと、お姉ちゃん!?」
「「っ、あははは......」」
耐えきれず二人で大笑いする。お腹を抱えて笑う娘を見て、お母さんも微笑む。
「香奈、そろそろ、電話終了ね。咲に悪いから。来週、会いに行く時に続き話したらいいでしょ」
なかなか終わらない二人を見かねて、お母さんが声をかけてくれる。
「だね。お姉ちゃん、また来週行くから! 優真くんも、来週、”香奈お姉ちゃん“会いに行くからね〜」
また明るい笑い声がした。
じゃあね、と私は電話をきった。
ああ、はやく会いたいなぁ。
私たちの命ひとつだけ
死んじゃったらおしまい
でも私たちの命は軽くない
ひとつひとつ価値のある命
でもどうしてもだったら自分の命誰かとシェアしていいんだよ
ばいばい
小さな命、よく言われるのはペットや赤ちゃん。小さな命を見捨てるな、など。大人になると小さな命なんて言われない。いつから大きな命になるんだろう。大きな命は要らないのか。
地球上で見ればみんな小さな命。そして太陽系で見ると地球も小さな命。
全部見捨ててはいけない。
小さな命。
「…生まれたよ……」
「うん、俺らの子が……」
お椀型にした手のひらで小刻みに震える塊は、数日前に卵から孵った鳥の雛。卵の殻をつついて生まれる瞬間は作り物みたいで、生き物が生まれた実感が湧かなかったことを覚えてる。
彼から受け取ったその子はピィと鳴いた。
「信じられない…」
ほわほわした毛が手のひらを擦りくすぐったい。生きてるとわかった途端『小さな命』が手に乗っていることが不思議と恐ろしくなる。もし、手の熱で火傷をしてしまったら…、落としてしまったら。この子の命を潰やしてしまう可能性を持ってるのは、私で。
「君が震えてどうするのさ」
私が震えているのかこの子が震えているのか境が曖昧になってしまった。
「だって…ちゃんと生きてる、から」
「うん、生きてるよ。怖がらないで」
彼の手がつつむ様に二重のお椀が作られた。私を支えてくれて震えを止めてくれる。元気よくピィピィと鳴いていた雛が半目になって、丸くなる。何度が手のひらでもぞもぞ動いて1つの塊になって膨らんだりしぼんだりして、眠ってしまった。
「寝たの…?」
「君の手に安心しちゃったんだね」
「わかるなぁ」なんて彼は言う。初めて会う私に気を許しすぎでしょうに。けど、懐かれて身を委ねられて何となく親鳥の気分。
「大きく健やかに育ちますように。羽ばたく時は教えてね」
柔らかな羽毛にそっと頬擦りをした。
美智代は孫娘の陽奈と公園に遊びに来ていた。
(あぁ、いい天気。)
遊びにと言っても、美智代は日向のベンチに腰掛け、陽奈は同い年くらいの子とブランコをこいでいる。たぶん陽奈は母親、つまり美智代の娘に「おばあちゃんとお外に行ってあげて」とでも言われたのだろう。外に出て青空を見上げて初めて、寒くて長らく籠もりきりになっていたことに美智代は気がついた。
見るともなしに景色を見ていると、陽奈がこちらに向かって来ていた。一緒に遊んでいた子はいつの間にかいなくなっていた。
「陽奈ちゃん、何か飲む?」
「ううん、いい。」
それならもう家に帰るつもりだろうと美智代は両足に力を入れようとした。しかし陽奈はそのまま近づいてくると美智代の隣にぺたりと座る。
しばらく足をぶらぶらとさせていた陽奈だったが、美智代の方を見て目が合うと「おばあちゃん、ちいさいいのちってなに?」と少しすねたような顔で言った。
「ちいさいいのち?」
美智代の脳内で「小さい命」と変換される。
「あぁ、そうねぇ…よくお母さんのお腹に赤ちゃんができたときなんかは小さな命が宿った、なんていうけど…小さい命がどうかしたの? 何かあった?」
攻めるような口調にならないように、ゆっくりと優しく美智代はたずね返す。
「むしのいのちはちいさいの?」
そう問い返す陽奈の真っ直ぐな目から、美智代は目を反らしたくなった。小さな子供の質問は、世中に折り合いをつけてきた大人をたびたび答えに詰まらせる。
「虫の命は」
一寸の虫にも五分の魂、なんて言葉があるが、それは命の大きさについて言葉ではない。陽奈は純粋に
人間より虫の命は小さいのかと聞いているのだ。
「小さい。おばあちゃんにとってはね。」
「じゃあ、ひなはおばあちゃんよりちいさいから、いのちもおばあちゃんよりちいさいの?」
「ううん、大きいよ。」
美智代は陽奈をじっと見みつめながら、自分の中でたくさんの気持ちが集まって形になり、伝えたい言葉に変わっていくのを感じていた。
「おばあちゃんは陽奈ちゃんのこと大好きだから、陽奈ちゃんの命は、体の大きな象さんより、世界で一番偉い人より大きいのよ。」
「じゃあだいすきじゃなくなったちいさくなるってこと?」
しまった、そうなるかと美智代は穏やかな笑顔はそのままに心の中で頭を抱えた。子供との会話はなんて難しいのだろう。
「もし、もしよ、おばあちゃんは陽奈ちゃんのこと大好きだからね、もし大好きじゃなくなったとしてもおばあちゃんにとって陽奈ちゃんの命が大きいってことは変わらないと思う。」
陽奈は美智代を見たまま首を傾げる。
「命の大きさは、人それぞれ…人によって…おばあちゃんや陽奈ちゃんのお母さんや陽奈ちゃんのお友達や…みんながみんな違う命の大きさの価値観を持っていて」
「かちかんってなに?」
「えーっとね」
上手く言葉にできないのがもどかしい。
「例えばね」
自分と娘が崖にぶら下がっている光景が頭に浮かぶが、それを選ばせるのはまだ早い。そしてたぶん落ちるのは自分だ、と美智代は思う。
「陽奈ちゃんは何の動物が好き?」
「うさぎ!」
陽奈の顔がぱっと明るくなる。
「じゃあ、うさぎと…カメレオンが木の上にいるんだけど、落っこちそうなの。陽奈ちゃんが一匹だけ助けられるとしたら、どっちを助ける?」
言いながら、色々突っ込みどころがある質問になってしまったことを美智代は後悔したが、陽奈はそれを気にすることはなく「うさぎかなぁ」と答えた。先程のように断言しないところに、美智代は陽奈の優しさを感じた。
「そうしたら、それは陽奈ちゃんにとってはカメレオンよりもうさぎの命が大きいってことになるんじゃないかしら? でも、カメレオンを大好きな人はきっとカメレオンを助けるでしょうね。そうしたらその人にとってはうさぎよりもカメレオンの命が大きいってことになる。」
陽奈の眉間にしわがより「うーん」と言いながら前を向く。
その様子を見て、美智代はそっと息をついた。命は比べるものではない。でもそれはただの理想だ。
脳みそを働かせ過ぎたのか、久々に外に出たからか、ベンチに座っていただけなのに美智代はずいぶん疲れていた。よいしょ、と立ち上がる。
「でも、これはおばあちゃんがそう思っているだけだから、他にも色んな考え方があると思うよ。さて、そろそろ帰ろうか。お家に帰ったら、お母さんにも聞いてごらん。」
すると陽奈もぴょんとベンチから降り立ち「おかあさんにきいたら、そういうことはおばあちゃんのがじょうずにおしえてくれるよっていったの」とこちらを見て笑う。
美智代は陽奈と手をつなぎ家路を辿る。
難しい話を親に丸投げした、陽奈と同じくらい大きな命を持つ、今は母となった娘をどうやって叱ってやろうかと考えながら。
【小さな命】
どんなに小さな命だって全部尊い命だ。
なのに人は生きていくためにそして研究、娯楽のためにその小さな尊い命を犠牲にしていく・・・
尊い命とはなんだろう?
生みの親のことは覚えていない、
私は物心ついたときには施設に預けられていた。
だから本当の親のことなんてわからないけど、
親のように想っている人はいる。
「お前は小さい頃から誰よりも元気で、誰よりも明るい子供だったよ」
と私のお父さんはいってくれた。
私といえば、小さい頃は身体が弱くて走り回ってはしょっちゅう倒れて心配ばかりかけた記憶しかない。
「心配もしたが、それ以上に小さかったお前たちが元気に走って笑う姿は、私に元気をくれたんだ」
そう言って笑うお父さんを見て、誰かの笑顔で元気になれるって言うのは本当のみたいだと思った。
私は自然と笑みをこぼした。