お題【小さな命】
今日は歳の離れたお姉ちゃんの出産日だ。
私はずーっと、先週からドキドキしている。
お母さんもかなり心配らしく、さっきから電話の前を行ったり来たりしている。
prrrrrr......
お母さんは急いで電話に飛びついた。
「香奈、お姉ちゃん、無事出産できましたって。」
嬉しそうに、お母さんが電話をしながら教えてくれる。
「ねえねえ、男の子? 女の子?」
私はお母さんの周りをうろちょろしながら聞いた。
「咲、香奈が男の子? 女の子? だって」
私はわくわくして返事を待った。
お母さんは、待ちきれない私を見てクスクス笑いながら私を見て聞いた。
「どっちだと思う?」
「じゃあ、男の子?」
「本当に?」
「え、女の子?」
「それでいいの?」
「もう、焦らさないで!」
お母さんはまだクスクス笑っている。
「もう! 受話器かして!」
私はお母さんから受話器をとって、お姉ちゃんに直接聞くことにした。
「お姉ちゃん! どっち!!」
「男の子」
笑いを堪えるような声でお姉ちゃんは答えた。
「えーっとねぇ、じゃあ、名前は?」
私は気になってたくさん質問した。
「優しいに真って書いて、優真」
「優真くんか......」
可愛いんだろうなぁ、そんなこと話考えていると、
「じゃあ、今日から香奈は優真の“おばさん“だね」
と言われた。
ニッシッシ......と意地悪く笑うお姉ちゃんの顔がありありと想像できた。
「な、酷い! 私、お姉ちゃんより8歳も若いのにー!!」
「優真〜、香奈おばさん怒ってて怖いね〜」
「ちょっと、お姉ちゃん!?」
「「っ、あははは......」」
耐えきれず二人で大笑いする。お腹を抱えて笑う娘を見て、お母さんも微笑む。
「香奈、そろそろ、電話終了ね。咲に悪いから。来週、会いに行く時に続き話したらいいでしょ」
なかなか終わらない二人を見かねて、お母さんが声をかけてくれる。
「だね。お姉ちゃん、また来週行くから! 優真くんも、来週、”香奈お姉ちゃん“会いに行くからね〜」
また明るい笑い声がした。
じゃあね、と私は電話をきった。
ああ、はやく会いたいなぁ。
2/25/2023, 6:57:14 AM