お椀型にした手のひらで小刻みに震える塊は、数日前に卵から孵った鳥の雛。卵の殻をつついて生まれる瞬間は作り物みたいで、生き物が生まれた実感が湧かなかったことを覚えてる。
彼から受け取ったその子はピィと鳴いた。
「信じられない…」
ほわほわした毛が手のひらを擦りくすぐったい。生きてるとわかった途端『小さな命』が手に乗っていることが不思議と恐ろしくなる。もし、手の熱で火傷をしてしまったら…、落としてしまったら。この子の命を潰やしてしまう可能性を持ってるのは、私で。
「君が震えてどうするのさ」
私が震えているのかこの子が震えているのか境が曖昧になってしまった。
「だって…ちゃんと生きてる、から」
「うん、生きてるよ。怖がらないで」
彼の手がつつむ様に二重のお椀が作られた。私を支えてくれて震えを止めてくれる。元気よくピィピィと鳴いていた雛が半目になって、丸くなる。何度が手のひらでもぞもぞ動いて1つの塊になって膨らんだりしぼんだりして、眠ってしまった。
「寝たの…?」
「君の手に安心しちゃったんだね」
「わかるなぁ」なんて彼は言う。初めて会う私に気を許しすぎでしょうに。けど、懐かれて身を委ねられて何となく親鳥の気分。
「大きく健やかに育ちますように。羽ばたく時は教えてね」
柔らかな羽毛にそっと頬擦りをした。
2/25/2023, 5:00:35 AM