『小さな命』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
メダカを解剖したのは、確か小学校の理科の授業でのことだっただろうか。
生き物が、どのような仕組みでどのように生きているか、大きく括ればそんなようなことを知るためのものである。無論、たかだか一度こんなに小さいメダカの体を解体したくらいでは、命の一端を理解することも出来ず、ただただ教科書に載っている事項を確認するだけの時間であったと、その時の僕も今の僕も、そう感じている。
焼き魚がよく食卓にあがる家庭であったからだろうか、魚の身がほぐされていくのは見慣れたもので、焼いてあるか生であるかという違いはあるが、概ねそれは想定の範囲内の光景であった。中には、泣き出してしまう子や、そもそも解剖に参加しない子もおり、もしかしたら彼らは、最中に食事風景を思い浮かべてしまう蒙昧な僕とは違い、この小さな命が喪われていく光景が、はっきりと見えていたのかもしれない。
なんて、そんな10年以上前のことを思い出しながら、正確にはその頃の詳細な事なんて憶えてはいないので、現在から勝手に解釈した架空かもしれない思い出を振り返る僕の目の前には、大きなイカがいる。
最初にツアーの内容を見たときは、怪しい話だなと感じた。しかし、その直感はいつの間にか薄れ、右往左往した挙げ句、何故か僕はこの深海探索ツアーに参加している。
随分、昔のことだったと思うが、深海に沈没船を観に行くツアーなんてものが行われたことがあり、しかしその旅は道すがらにミイラ取りがミイラになったことで大問題になった。
その結果、それ以後の深海に関わる様々な事業は、民間企業が行うには許可が厳重になり、気軽に手頃に宇宙に出られる時代となった昨今ですら、肝心の足下のことは未知に包まれたままであるのが、この現代である。
そんな中、何故、僕が今、深海にいるのか。円グラフにするならば、騙されたという理由が40%、泳いでいる大王イカが見たかったという理由が40%、こんな堂々と詐欺が横行するはずがないという未だに何かを信用する気持ちが10%。
そして、最後の10%は、「小さな命」になりたかった、である。
「政府公認!絶対後悔させない天上の旅(深海だけど)を貴方に!」という怪しさ以外のものが見つからない広告を見て応募した過去の自分の気持ちは、一ミリも理解できない。けれど、応募してしまったものは仕方ないので、気持ちを切り替えて、未知への旅を楽しもうと集合場所へ向かった。
そこで目にしたのは、バック・トゥ・ザ・フューチャーよろしく、まるで未来にでも行きたいのかという様相の潜水艦だった。現実時間では一瞬でも、脳内では久遠の逡巡が繰り広げられた後、意を決して船の下へ足を進めた。
船に乗り込む直前、今回の同乗者たちは、ツアー責任者という肩書の男から旅の詳細を聞かされ、互いに挨拶をし合う一幕があった。
船長と呼ばれたその男は、終始「コンニチハ」「大丈夫、マカセテ」「ソノ気持チ分カリマス」「大船ニ乗ッタ気デイテクダサイ!小サイ船ダケドネ!ハッハッハッ」の四つの言葉しか話していなかったことを、今更ながらに思い出す。
他には三人、僕と同じ立場のはずの人間がいるが、あまり僕とは同じ立場とは思いたくない風貌であった。
一人目は、自称海洋研究家の男である。自称というのは、どう考えてもその出で立ちが、昔テレビでよく姿を見た、魚の帽子を頭に被り、特徴的な語尾で話す人間そっくりであったから、僕の脳内がこの自称という文字を無意識に取り付けたのである。彼は今も目の前の光景に「うお〜!!!」と叫んでいる。
二人目は、袈裟のような服装に、目元以外は見えない被り物、数珠のようにクロスが連なった首飾りを首に着けた、何もかもが不詳の人間である。挨拶の際には、非常に流暢な関西弁を話していたから、つい今の今まで気安い友人のように錯覚していたが、大王イカが現れてからというもの、生まれてこの方、聞いたことのない、どう考えても地球在来ではない外来の神に向け一心不乱に祈りを唱えている。
三人目は、白銀の鱗のように艶のあるブラウスと、生気のない目玉のような黒く艶のないロングスカートをまとった女である。この女は、挨拶の際にも一言も喋らず、誰もそのことに口を出さないようだったのでスタッフの一員かと思っていたが、さも当然のことのように船に搭乗し、僕の隣に座った。そのことに、誰も何も疑問を感じていないようだったので、宗教家との会話に忙しかった僕は、特に言及することもなくここまできてしまった。
深海に向け下降するにしたがって、まるでポルターガイストのようにミシミシという音は大きくなり、救急車と消防車と緊急地震速報を混ぜこぜにしたかのような、どう考えても非常事態を知らせるベルが何度も鳴った。その度に船長は「大丈夫、マカセテ」「ソノ気持チ分カリマス」「大船ニ乗ッタ気デイテクダサイ!小サイ船ダケドネ!ハッハッハッ」という三語をローテーションしてベルを止め、ニッコリ僕らに笑いかけてくるが、喉には「泥舟の間違いだろ」という言葉が常駐待機しており、そろそろ我慢も限界かと思ったその時、前触れもなく突然それは現れた。
最初は、それが何なのか分からなかった。小さな丸い窓の全面を占める黒いもの。何故なのか、不意に脳裏に浮かんだのは、その昔解剖する僕のことをジッと見つめてきた、メダカのあの目だった。
そこからというもの、あまりの騒々しさとあまりの動揺に、細かい記憶は残っていないのだが、それでも一つだけ印象に残っていることがある。
事態に呆然とする僕の顔を見つめていたかと思うと、すぐに窓に振り返り、深海を幽雅に泳ぐ大王イカを見つめ、静かに、それでいて尊い何かを慈しむように微笑む、女の横顔であった。
深海の旅は、急な機体不良ということで大王イカと出会ってすぐに引き返すことになった。すぐといっても、人間を水圧0の世界に戻すためにはそれなりの時間をかける必要があり、それなりの期間を経て、僕らは太陽の日を浴びることになった。
水中での待ち時間、すっかり仲良くなった我々四人は、旅を終えた今でも定期的に会い、理由の分からない会話で盛り上がる友人となった。
そして、この四人に含まれないあの女は、大王イカから逃げ去る道中の中、いつの間にか姿が消えていた。
他の三人に聞いても、一体何を言っているんだ、と言わんばかりの顔をされるが、確かにあの時この目に写した微笑む女の姿は、記憶の中に鮮明に残っている。
僕たちは、何を持って命の大きさを測るのだろうか。小さい体に宿るそれは、果たして小さい命なのだろうか。
今でもふとした時に、あの大きな黒い目玉が、僕を見つめている気がしてならない。
我が家には神様がかわいいものを全て詰め込んだのかという位愛くるしい猫がいる。
オス猫でイケメンな顔をしていながら声が高くてかわいい。
普段は一緒に寝ている祖父にしか寄って行かないくせに都合のいい時だけ私の足元をウロウロしてキラキラした瞳を向けにゃーと鳴く。
自分がかわいいことを理解し、有効活用しているに違いないのだが、そんなところも含めてかわいい。
少しあざとい我が家のアイドルだ。
そのアイドル様はあざとくて自由で優しい。
学校で上手くいかなくて誰にもバレないように泣いていると1番に気がついてすり寄ってくる。
そして泣き止むまで何も言わずそばにいてくれるのだ。
普段は呼んでも来ないくせに。
小さな命は私にとって大きな存在。
小さな命
「すみません、その心臓見せてくれませんか?」
「ダメだダメだ、その心臓は5,000ドルするんだぞ。ガキに買えるようなもんじゃない。」
「もっと安い心臓はありませんか?」
「ん?まぁ、この辺の心臓なら頑張ればお前にも買えるかも知れないけど。」
クローン技術の発達によりクローン臓器は取り立てて珍しいものではなくなった。しかし政府はクローン臓器によってもたらされる超長寿社会に危機感を持ち、高い税金をかけた。
金持ちだけが生きながらえる世界?さもありなん。臓器を交換する度に税率は上昇していき10回を超えると天文学的な数字に達する。臓器交換を繰り返し、破産した資産家は後をたたないのだ。
死なない体になった人類は数を増やし続けた。結果生じる貧富の差の拡大。どこの街にも自然とスラムが出来上がった。
ここはスラムの住人を相手にした場末の臓器ショップ。
店主と少年の会話に割って入る髭もじゃの男がいた。
「坊主やめときな、そんな心臓、人間の物かどうかも怪しいぞ。」
「なんだぁ、テメェは?うちの商品にケチをつける気か?」
「俺の名はストレッジ、この街で外科医をやらせて貰っている。なんだったら店の商品の目利きをさせて貰ってもいいんだが?」
「ストレッジ先生でしたか。いやぁ、先生のお手を煩わせる必要はございません。これは元々商売用の物ではありませんで、鼻から売るつもりは無かったんですよ。」
「坊主、心臓を手に入れても、今度は手術代がかかる。坊主にその金は出せるのかい?」
「おいら、よく分からなくて。妹の心臓が悪くて助けたいだけなんだ。」
「よし、坊主、俺が診てやろう。妹の所に案内しな。」
「ありがとう、おじちゃん。」
案内された孤児院はスラム街の端にひっそりと佇んでいた。
あたりには排泄物の臭いが立ち込め、建物も雨風をやっと凌げるとだけと言った粗末なものだった。
「ただいまぁ、ヒトミ、ヒトミはいるかい?」
「お帰り、お兄ちゃん。」
ヒトミと呼ばれた少女見た途端、ストレッジの顔色が変わった。
「東洋人じゃないか?何故ここに東洋人が?」
滅びし種族東洋人。東洋では西洋に先駆けクローン臓器の技術が確立していたが、税金をかける事はなかったため国民全てが安く臓器を手に入れることができた。平均寿命は200歳を超え、人口は膨れ上がり、東洋人の胸中から繁殖意識は失われていった。そして臓器交換による延命の限界を迎えた時、忽然と世界から消えてしまった。噂では若返りの技術に成功したと言う話だったが、その技術が力を発揮する事はなかったようだ。この出来事を踏まえ、世界各国はクローン臓器には高い税金を掛けるようになったのだ。
「腹が減ってゴミ山を漁ってたんだ、そしたらヒトミが倒れていて、それで妹して育てることにしたんだ。」
「確かにこの辺りは東洋人の暮らす街があったらしいが、それは20年前の話だぞ。」
「ねぇ、先生、ヒトミは心臓が動いてないの、治せる?」
「動いていない?」
ストレッジが脈を測ろうとしたが確かに脈動がない。大急ぎで病院に運び込まれると手術が行われることになった。
「なんだこれは?心臓がない。」
本来心臓があるべき部分にはぽっかりと空間が空いていた。
これでは鼓動の打ちようがない。しかしだ。血液は淀みなく流れているようだった。
「こんな馬鹿な、何故これで血液が流れているんだ?」
ストレッジは戸惑いながらも取り敢えず心臓の移植手術を行った。その後、色々検査したが何故ヒトミが生きて行けたかは分からなかった。
ヒトミの術後は順調で程なく退院していった。
「ストレッジさん、ヒトミはもう大丈夫?」
「ああ、手術は成功したよ。」
成功なのか?心臓がなくても血流のある者に必要な手術だったんだろうか?余計な事をしたんじゃないか?
不思議な事が起こった。身長100cm程だったヒトミの身長が3日で120cmになった。そして6日で140cm。10日で160cmに到達した。ヒトミはその間ほとんどを食事を摂っていない。120cmに到達した時ストレッジは質問した。
「いくら何でも成長が早すぎる。東洋人が特殊なのか?」
「私にもよく分からないの。」
更に奇妙な事に孤児院の子供達が減っていくのだ。
3日で5人、6日で10人、10日で15人。
「ヒトミ、お前何か知っているか?」
ヒトミ、お前が食べたのか?と言う疑念を隠して聞いた。
「皆んなは私の中の1部になったの。小さな命の集合体。それが私。」
「食ったんだな?」
「全然違うわ。私はヒトミであって、ジョンでもあるの、ミハエルでも、ケニーでも、スペンサーでも、キャサリンでもあるの、そして健太でも太郎でも恵子でも幸恵でもあるの。」
「まさか東洋人が居なくなったのは君が原因か?」
「私、大人になって色々思い出したから教えてあげるね、私の名前は数多一身、日本人よ。30年前、天才科学者、加賀匠によって脳のクローン臓器が作られた。そして多くの日本人が加賀のクローン脳を移植したわ。するとね、皆んなの意識が共有されたの、一種のテレパシーね。そして皆んな考えたの超長寿生命体となった日本人が生き残る方法を。それは、皆んなが集合して一つの大きな生命体を形成する事。
1つの生命体の中で子供が産まれ老人が死んでいく。これ以上が人が増える事も減る事もない。食料も水も必要ない。必要な物は全て自分の中にある。だけどね、加賀の脳を移植されていない者たちは私の存在を恐れた。それで私の心臓をくり抜いて成長を止めたの。それがなければ私1人で国を覆い尽くしたでしょうね。」
「クローン臓器は私達人類が手を出しては行けない技術だったのか?」
「それは違うわ。命ある物はいつまでも死なない事を望む。そして生き延びる手段があるなら手を出すのが必然、結果種が滅びの道を行くなら、新たな生命体に進化するしかない。だってそうやって地球生物は繁栄してきたんじゃない。」
「ジョンば幸せにやってるかい?」
「ええ、死の恐怖から解放され、飢から救われたから幸せだって。」
「俺はどうしたらいい?」
「何も、来るべき時が来たら私の1部になっているはずだから。」
「小さな命」
宇宙の危機から何十年、ボクらはキミの故郷の星で暮らしていた。面倒くさそうにしながらもキミはボクに色んなことを教えてくれたね。あそこのおにぎりがおいしいとか、そこの店にはスゴいものが売ってるとか。
ボクは正直、結構楽しかったよ。キミたちとの暮らし。
ニホンでは「木を見て森を見ず」という諺があるそうだが、ボクは「森を見て木を見ず」つまりこんな小さな規模での生活をしたことがなかったから、とても新鮮だった。
アレからキミにたくさんのことを教わって、ボクの記憶容量がちょ〜〜っとだけ圧迫されたけど、楽しかったよ。
しかし、分かっていたことだが、キミにも「終わり」が来た。
どうやらニンゲンは長くても100年程度しか生きられないんだね。
キミが人生を終える間際、宇宙管理法第6489条に触れない程度に寿命をこっそり延ばしたり、話ができるように少々体を元気にしたりとボクも悪あがきをした。
でもやっぱりその時は来た。すごくあっけなかった。
分かってた。分かっていたはずなのに、ね。
……。だから特定の宇宙や星に肩入れするな、と言われたわけだ。キミを失ってから、初めて気づいたよ。
ねぇ。また旅行に行こうって言ったよね。
今度一緒に定食屋でカツカレーを食べる約束は?
キミ、ボクに一回もゲームで勝ててないだろ。
分かっていたことなんだからボクも受け入れて、諦めないと。
そうだ。キミはその小さな命で、最後までボクを受け入れてくれていたんだ。だからボクも、最後まで、受け、止めない、と……。
ごちーん!!!!
「痛った!!!!はぁ?!?!!!」
「痛って、でも触れた。……おーおー、マッドサイエンティストの端くれのクセして辛気臭い顔してんな〜」
そこには、出会ったばかりの、若い頃のキミがいた。
「『チョーカガクテキソンザイ』なんだったら、冥界のことも知ってるはずだよな〜?」
「まぁもちろんだとも!!!だがキミはそういうの興味なさそうだったから、少々驚いたのさ!!!」
「もしかして、また会えたらなぁ〜とか思ってた?www」
「まさか!!!ボクが!!!キミに?!!」
「まぁ元気そうで何よりです。それよりも、前言ってた『青方偏移がどうのこうの〜』はどうなったんだ?」
「?」
「え〜……まぁ、アレだ。暇だから手伝おうと思って」
「!!!……我が忠実なる僕(しもべ)よ……再び契約を結ばん……!!!」
「ま〜た拇印かよ……」
小さな命の終わりは、次の歴史の始まりだったみたいだ。
さてと、また研究に取り掛ろうか。
小さな命
M78星雲のウルトラマンさんから見れば
みんな小さな命
みんな地球に住んでいる
あっちに行ったりこっちに行ったり
あるいは、じっとしてる
じっとしているように見えて
ちょっと動いている
どんなに小さな命でも大きな命でも同じ命じゃないの。私の命は捨てられてよかったの。私の母親は、どうして私の命よりも私の父親を優先したの。また踏切の警告音がなる。あの時も。私はコインロッカーに入れられた。最後に見た母の顔は、女の顔だった。
お題『小さな命』
#小さな命
小さな小さな小さな命
真綿にくるんで
大切に大切に大切に
守り育まれたはずだった
そして時はすぎ、物心がわかる頃から
父は叱ることが増え
泣く子を泣き止むまでひっぱたいた
母はそれを見守り手を出さなかった
子は唇をかみ泣くことをしなくなった
人に頼ることが出来ない子に育った
屈強に立ち、耐え忍び、泣くことを忘れ
友達がいなくとも何も感じなくなった
それが私……だった
その苦しみから救ってくれたのが
今隣で笑ってくれる大切な人なんです
喧嘩も沢山しますがね……幸せです
小さな命
私が生まれた際の愚痴を実家に帰る度聞かされる。
正直辛い、そんな私も許されない。
自分が居てよかったと思えるようなことないかな。
僕はしゃがんで眺める。
公園でお菓子の欠片を運んでいるありを。
必死に歩いている。
大地を踏んでいる。
小さな命を持って、
明日を生きるために、
自分の糧となるものを運ぶ。
自分の家へと運んでいく。
〜小さな命〜
突然ですが、あなたは自分が「小さな命」だった頃のことを、覚えていますか?そのとき、あなたはとても小さくて、お母さんの胎内、というとても「安全な場所」の中で、お母さんの生命と文字通り一体となって、一人の「人間」として、育まれていき、この世界に「誕生」したのです。その過程は本当に「奇跡」としか言えない仕組みです。
、、、私も、あなたも、時は違えど、こうやって産まれ、そして、今、この文章をあなたが読んで下さっている、、これもまた、一つの奇跡、といえるかもしれませんね。
それでは、今日はこの辺りで、、
読んで下さりありがとう。明日のあなたが幸せであります様に、、、。
「小さな命」
迫水はようやくその猫を見つけた。
増水した河川に巻き込まれ、息も絶え絶えな小さな命は、それでもまだ生きていた。
この子猫を助けて、そう彼女に頼まれたからには全力を尽くすしか無い
しかし、ここまで弱っていたら動物病院に駆け込んでなんとかなるだろうか?
奇跡の力がこの世にはあると最近知ったのに、自分にはどうしようもないことばかりだ。
迫水は唇を噛み締めた。
【小さな命】
雨色の空の下、ベランダで水浴びをしているナメクジくんと睨めっこ。覗き込む私の影に入り触覚を引っ込めるナメクジ、気持ち悪い。
きっとこの姿を気に入る人間なんか殆どいない。ナメクジを映したコンクリートの窪みを見つめると、湿気で髪が酷くうねうねしていた。
命の大きさは同じだ、大きな命も小さな命も存在しない。けれど命には遠近法が適応されるから、近くから見れば大きく見えて、遠くから見れば小さく見える。
インスタントラーメンのカップをひっくり返し、底を指先でトントンと叩く。湿気た塩がぺちゃりとナメクジの上に落ちたのを見届けて、部屋に戻った。
人の目のこんな仕組みのお陰で、我々は不安材料を無事排除し社会を維持する事が出来るのだ。
髪を濡らしヘアアイロンをかけたら、先程は頭から飛び出ていたツノもヤリも引っ込んでいた。きっと気に入ってもらえる、少なくとも殆どの人には気持ち悪がられない姿になれただろうか。
酷く散らかった部屋、排除されてしまわないようしっかり蓋をして、外から施錠する。
空を見上げると鮮やかな水色が見えたが、透明な小雨はまだ足元の水溜まりに波紋を広げていた。
命は大切なものだ。
だから、この小さな虫も大切にしなければならない。
そう自分に言い聞かせるが、その黒光りする姿、長い触覚を見てゾッと背筋に悪寒が走る。
「やっぱり無理!!」
私は名前すら言いたくない害虫に、殺虫剤を剥けた。
うまれた
遠い星に、それはうまれた
浅い夢を錯覚させるような淡い橙色が肉を隔て
夢の際に深い藍色が落ちる
境に満ちた薄明の色は瞼を内側から掻き乱し
夢がうまれた
その夢は貌の無い
混沌と、漠然とした欲の塊
認識の狭間に
生命は満ちた
第二十七話 その妃、抱き締める
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
それから、何度も枯葉色の世界が切り替わる。幾度となく夢を記憶を渡り歩けば、全く知らない国の状況なども帝以上には知ることができた。
(……飽きたわ)
ただここ暫くは、褒め称えられる帝の業績や、礼儀知らずな妃の悪口ばかりで、つまらないと言えばつまらない。
夢は無作為で、時系列に並べるには時間がかかる。此方からの干渉は殆どできないし、起きる時間など指定できない。でもそれだけだ。
ここまで大量の夢で、ずっと似た話を見たり聞かされてたりしていれば、少し考えただけで順番に並び替えることは容易だった。
『だから、いつまで泣いてるのよ、この泣き虫坊主』
だから、唯一困った事があるとすれば、夢の中で必ず、泣いている子どもに出会う事くらいで。
『……はあ。今度は誰に虐められたのよ』
『……おねえちゃん』
『そう。そのお姉ちゃんに何されたの』
『どうして。……しんじゃったのっ』
小さく蹲って震える少年の幼い体。
不思議なことに、夢の中で唯一、この少年とは話ができた。
ただの夢や記憶ではないのだろう。
黒く暗い世界に、少年はいつも閉じ籠っていたから。
『……小さな命を、守りたかったから』
『……っ。え?』
『あんたが知る必要はないわよ』
そっと、その小さな体を抱き締める。
触れられないから、何となくそうして。
『……だから、もう泣かないでいいのよ』
『……ぼく。わすれてないのに』
『ええ。そうね』
『わすれなかったら。あえるっていってたのに』
『だから、こうして会えたじゃない』
涙をそっと拭ってあげて。
拭えないまま、落ちていく涙に苦笑を浮かべた。
『……おねえちゃんに。あいたいよ……っ』
『……残念だけど、それは一生できないわ』
だってその子は、とうの昔に死んでしまったのだから――。
#小さな命/和風ファンタジー/気まぐれ更新
小さく小さく見積もるくせは
長い時間の孤独から来た
来た道を深く深くたどって
もう一度きみと出会う
ごめんね、ひさしぶり、
忘れた日なんかなかった、
言いたいことはたくさんあるけど
手を伸ばすとこからはじめる
遅くなったけど今だから言える
きみのこと誇らしく思う
わたしね、友だちになりたいんだきみと
小さな小さな子どものわたしと
「小さな命」
い゙い゙い゙い゙い゙い゙ぃ゙ぃ゙ぃ゙
──なんだ、威嚇か?
小さな命
小さな命
私は小さい頃、家でメダカを飼っていた。
普通の水槽とは別の水槽に水草だけを入れていたから、なんだろうと思っていたが、その数ヶ月後に水槽を覗くと、米粒よりもさらに小さいメダカがたくさん産まれていた。自分が産んだわけでもないのに、とても愛おしかった。話したり遊んだりすることは当然できないが、大きく成長していくたびに「大きくなったね、いっぱいエサを食べるんだよ」と話しかけていたのを思い出した。とても可愛くて、愛おしくて小さな命だった。
ある日校長先生が
「庭で、鯉が死んでいました。
鯉には突かれたような痕があったそうです。
たとえどんなに小さくても、同じ地球にある命です
小さくて、大切な命です。
だから、同じ命をこれ以上傷つけないように!」
と、朝会で全校生徒に伝えていました。
その時みんなはまだ、小学生
命の大切さを学んでいる最中の出来事。
みんなは、『犯人は誰だろう』とか『ひど〜い』
などと言い、犯人探しを始めました
その頃からです。
僕が、周りのみんなと違う考え方をしていたことに気づいたのは…
僕がその時思っていたのは、
『地球に何の害も出していない、地球に何の貢献もしていない、そんな鯉が小さな命として、地球を汚し
生き物達から居場所を奪っている人間は、どのくらい小さな命なんだろう…』
ということだけ
だってそうだろう!!
人間は僕らから居場所をとって、僕らよりは体格も
おおきいけど、地球に対してや他の生き物に対してやっていることだったら、僕らの方が害は少ない!!
人間だって僕らの住処に勝手に入ってくるくせに!僕らの住処を勝手に壊すくせに!
僕らがやった時だけは、捕まえたり、撃ったり、最悪殺したりするくせに!ッッッサぁ!!!!
あれ?
何で今…… 僕らって… 言って
意味がわかんない…
おかしい…
なんで…
それから僕は、小中高大の全てをほぼ無心で過ごした
そして今、まだ小学生の時のことは覚えているけど
今は何とも思わない
僕には、大切な奥さんと可愛い娘二人
そして奥さんのお腹の中にいる、小さな命
あの時理解できなかったものが、今になって一瞬で
理解ができた
「ほんと、生まれてきてくれて
ありがとうな」
誰も聞いてないだろうこと声を、寝ている家族達に向けて放った
ひとつだけ揺れるバースデーケーキの火吹き消すばぁばと鼓動はおなじ
題-小さな命