Frieden

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「小さな命」

宇宙の危機から何十年、ボクらはキミの故郷の星で暮らしていた。面倒くさそうにしながらもキミはボクに色んなことを教えてくれたね。あそこのおにぎりがおいしいとか、そこの店にはスゴいものが売ってるとか。

ボクは正直、結構楽しかったよ。キミたちとの暮らし。
ニホンでは「木を見て森を見ず」という諺があるそうだが、ボクは「森を見て木を見ず」つまりこんな小さな規模での生活をしたことがなかったから、とても新鮮だった。

アレからキミにたくさんのことを教わって、ボクの記憶容量がちょ〜〜っとだけ圧迫されたけど、楽しかったよ。

しかし、分かっていたことだが、キミにも「終わり」が来た。
どうやらニンゲンは長くても100年程度しか生きられないんだね。

キミが人生を終える間際、宇宙管理法第6489条に触れない程度に寿命をこっそり延ばしたり、話ができるように少々体を元気にしたりとボクも悪あがきをした。

でもやっぱりその時は来た。すごくあっけなかった。
分かってた。分かっていたはずなのに、ね。

……。だから特定の宇宙や星に肩入れするな、と言われたわけだ。キミを失ってから、初めて気づいたよ。

ねぇ。また旅行に行こうって言ったよね。
今度一緒に定食屋でカツカレーを食べる約束は?
キミ、ボクに一回もゲームで勝ててないだろ。

分かっていたことなんだからボクも受け入れて、諦めないと。

そうだ。キミはその小さな命で、最後までボクを受け入れてくれていたんだ。だからボクも、最後まで、受け、止めない、と……。

ごちーん!!!!

「痛った!!!!はぁ?!?!!!」

「痛って、でも触れた。……おーおー、マッドサイエンティストの端くれのクセして辛気臭い顔してんな〜」

そこには、出会ったばかりの、若い頃のキミがいた。

「『チョーカガクテキソンザイ』なんだったら、冥界のことも知ってるはずだよな〜?」
「まぁもちろんだとも!!!だがキミはそういうの興味なさそうだったから、少々驚いたのさ!!!」
「もしかして、また会えたらなぁ〜とか思ってた?www」
「まさか!!!ボクが!!!キミに?!!」

「まぁ元気そうで何よりです。それよりも、前言ってた『青方偏移がどうのこうの〜』はどうなったんだ?」
「?」
「え〜……まぁ、アレだ。暇だから手伝おうと思って」
「!!!……我が忠実なる僕(しもべ)よ……再び契約を結ばん……!!!」
「ま〜た拇印かよ……」

小さな命の終わりは、次の歴史の始まりだったみたいだ。
さてと、また研究に取り掛ろうか。

2/25/2024, 10:26:43 AM