『大空』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
#86 大空
掴もうよ、
飛び立とうよ、
恐怖心をも
感じさせない、この翼で
大空
(お題更新のため本稿を下書きとして保管)
2023.12.22 藍
元気になりたい時
落ち込んだ時
悲しい時
泣きたい時
見ると癒される
色々なお顔があって
色々な表情があって
様々な色のバリエーションがあって
私をいつも楽しませてくれる
ワクワクさせてくれる
感動させてくれる
いつも下から眺めてるけど
色々な角度から
眺めてみたい
これからでも遅くない
私の愛するあなたたちと
一緒にこれからたくさん
経験しに行こう
[ #52. 大空 ]
大空に向かって両手を大きく広げる。
空を抱きしめるように。
あるいは、そうして空と同化するように。
……多分、同じ年代の時に同じことをやったと思うのだけれど。
両手を広げて空を仰いでいた『彼』は唐突に、
「グルグル〜〜!」
と叫んでその場でタケ○プターよろしくグルグル回り始めて、私は額を抑えた。
その歌を初めて聴いたのはやっぱり小学生の頃、音楽の授業でだ。
歌詞に感動したのも、多分その歌が最初だったと思う。
——あの頃、うちの両親はしょっちゅう喧嘩をしていた。
私は真夜中、自分の部屋でこっそり泣いていた。
一度、喧嘩を止めようと口出ししたら、ひどく怒られた上、とばっちりで成績だの習い事の進み度合いの遅さなどを責められた。
だから、その歌にとても心打たれたのだと思う。
公園前の車止めに軽く腰かけ、待つこと数分。
パンツスーツを格好良く着こなした上背のある女性がヒールを鳴らしながら小走りにやってくる。
女性は私を見て、さっと顔色を変えた。
機微を悟るとはこんな感じかな、などと思いながら。
私は公園小路でグルグル回る『彼』こと我が愚息を呼びつけた。
身長も体重も標準枠な私より、小学四年生にして縦横サイズを上回る息子を見て、パンツスーツの女性はどこかホッとしたような表情に戻った。
私も立ち上がり、会釈した。
互いに名乗り、『この度は申し訳ありませんでした』と、どちらともなく頭を下げる。
子供同士の喧嘩——というかくだらない言い合いというか。
小突きあって、運悪く二人して縁石に足を取られて転んで、脛やら腕やら軽く擦りむいた、というのが事の次第。
「○○先生から連絡が来て、本当にどうしようかと」
パンツスーツの女性がハンカチで目元を抑えて言う。
……お気持ち凄くわかります、と私も何度も頷く。
子供同士のちょっとした喧嘩やら遊びやらでも、体格差があると大事になってしまうこともある。
どれだけ口厳しく指導しようとも子供なのだ、完全な制御は難しい。
「うちの子は、ご覧の通りご心配いりません。○○くんこそ大丈夫ですか?」
「はい、電話で確認しただけですけれど——保健医から聞きましたので問題ないようです」
「良かったですね。こういっては何ですけれど、お互い……」
同体格同士の子で、と暗に含めるとパンツスーツの女性も本当に、と苦笑を見せた。
「いつも、絶対に手を出してはいけないと言っているのですけれど……」
「うちもですよ。でも同じくらいの体格ですし——それに、原因はうちの子の発言みたいですし」
「原因は、何だったのでしょう?」
「歌、だそうです」
ご存知でしょう、と一節を読む。
「空に悲しみはあるかないか、で言い合いになったようです」
「え……」
「うちでは最近、あの子の曾祖母が亡くなりまして。
本人の言い分を綺麗に解釈すれば——煙とともに天に昇り、煙は消えたのだから悲しみはないと。
葬儀の際、祖父にあんまり泣き続けていると曾祖母が悲しむ、と言われたせいかもしれませんが」
「そうでしたか……。うちは」
パンツスーツの女性宅では、直近で飼い犬を亡くされていた。
彼女の息子○○くんの中では、まだ悲しみが渦巻いているのだろう。
だから空には悲しみがある、と。
なんとも言えない表情になったパンツスーツの女性に、私は溜息まじりで言葉を続けた。
「……ですが、小突き合いになった決定打は」
「はい」
「その時、足元に落ちていたアイスの棒が弾みで排水口に落ちてしまったから、だそうです」
「……え」
「当たってたかもしれないのに、と」
「——妙に悔しそうだったのは、それでしたか……」
私より更に盛大な溜息をつき。
互いに顔を見合わせ、やはり合わせたように苦笑いが出る。
「アイス買って、帰ります」
「そうしましょ」
——突拍子のなさに目眩どころか
目が飛んでいく思いは幾重とあったよ。
翼があったら、多分。
私は、何度も逃げ出していただろうなと
思うのです——
「空」と聞くと思い浮かぶ情景があるけど、
「大空」と聞いても何も浮かびません。
どこまでもつながっている、とか
鳥が自由に、とか、
連想することはできますが、
そんなこと思ってもいないし別に言いたくもありません。むしろ、お花畑ですね、鳥も厳しいんですよって思います。
私の中の引き出しに「大空」というものが存在しないのは、私が言葉の定義に厳しい人だからなのか、想像力がないからなのか、引きこもり気味だからなのか、まだ大空に出会ったことがないからなのか…
『飛翔するもの』
宮沢 碧
「あぁ!また下向きだ!」
笑子が悔しそうにカメラの液晶パネルを見るので、怪訝そうに桜もそれを覗き込む。
「何が撮りたかったの?」
紅葉の進む山中の一角である。文化祭の写真展に出すのだと言って、空に向けて笑子は何度もカメラを向けていた。
「鳥がね、上向きに飛ぶのを撮りたいのよ。翼をバッと上に羽ばたかせるところ」
「そっかー、そういうピンポイントが撮りたかったんだね。さっきからずっとやってるもんね」
「そうなのよ。上昇していくってかっこいいじゃない!鳥らしくて、最高の瞬間よ。」
「わかるかも。自分の力で世界を切り開く瞬間みたいな?」
イヤカフをして寒さに頬を染めながら朝から大型の鳥を狙っていたのはそういうことかと、周りの木々の赤に負けないくらいの燃えたぎる熱意を感じてほわっと桜は笑って頷くと、ふと思いついて突然自分のカメラで笑子のことを撮る。
「何よ、いきなり」
「えー?私は今、撮れたよー」
「えっ、今?どれ見せてよ。後ろに今、鳥が飛んでたっていうの??!あー、惜しいことを」
慌てて自分の後ろを振り返ってから笑子は桜が自分に向けてくれた画面に目をうつす。
「ちょっとこれっ…!」
「上向きに世界を切り開く翼」
桜は笑子をちょんちょんちょんと指差して微笑みかける。
「大空を飛び立とうとしてて、自分の世界を創り出そうとしてて、上っていく姿で最高に美しい!」
そこには撮りたい写真を力説する笑子が写っていた。
2023/12/21
お題 大空
一秒で 天動説を 覆す
不動の天は 4MB
さっき撮った綺麗な大空より
このアプリは39倍も大きい
【大空】
プロペラが大きく空を切る音が耳を支配する。
そろっと窓から外を覗くと、遥か遠くにある蟻みたいな住宅街。
落ちるはずなんか無いのに、なんだか怖くなって寄せていた体を元に戻した。
もうそろそろ日の出ですよ!!と恐らく大声でヘリを運転していた彼が言ってくれたが、私の耳に届いたのは塵みたいな声。
所々消えた言葉の切れ端から何とか意味を理解して、返事をする。
普段それほど使っていない私の喉では、多分声は届かなかっただろう。
「じゃあよく見えるようにドア開けますから、気を付けてくださいね!!!」
耳が大きなプロペラの音に慣れてきたのか、私が運転手の彼の声に慣れてきたのか、今度は何を言っているのかよく聞こえた。
私も今度は声が届くように、さっきの倍の声量で「はい!!」と返事をする。
運転手さんが小さく頷いた気がしたので、多分届いたのだろう。
どうやってドアが開くのだろうと思っていると、ひとりでにドアはスライドし始めた。自動なんだろうか。
びゅおっと冷たい風がいっぱいに入り込んできて、思わず腕で顔を覆った。
大きなプロペラの音に、叫ぶような風切音が混ざる。
普段なら耳を塞いでしまうような爆音も、ずっと聞いていたプロペラの音のせいで耳が麻痺しまっていたのか、今はそれほど大きくは感じなかった。
しきりに吹き込む風が少し弱まった時、私は顔を隠していた腕を取ってみた。
「うわぁ…」
自由になった視界に、赤のゆらゆらとした丸が周りを染めて上に登ってきていたのが見える。
夜が朝に変わる瞬間。
幾度となく繰り返してきたその瞬間をこの目でまじまじと見るのは初めてで、じんとした感動が胸に広がる。
そうしている間にもどんどんと太陽は昇ってきて、夜であった空はあっという間に朝に変わってしまった。
これから、今私の下にある街は動き始めるのだろう。
遥かなる大空から見たこの景色は、一生の思い出となるんだろうなと、殆ど停止した思考で私はぼんやりと思った。
ぼんやりと思った割には的確なことだったと後から考えるのは、また違うお話。
空を見上げると、月が出ていた。
まだ太陽の出ている時間なので、お供の星はいない。
そして太陽は雲に隠れて、お月様は一人ぼっちだ
だが、そんな事を気にしていないかのように、月は明るく輝いている。
寂しくないのだろうか。
俺は寂しい。
仲の良い友人が、海外に引っ越したのだ。
いつも当たり前のように隣りにいたアイツがいないと、どこか物足りない。
親はラインができるでしょと言うけれど、寂しいものは寂しいのだ。
空を眺めていると、スマホが振動した。
見ると、海外に引っ越した友人からのメッセージが写真付きで送られてくる。
『見ろよ。月が綺麗だ』
写真は星と一緒にいる月が写っていた。
思わず笑ってしまう。
こんなに離れているのに、同じ月を見ているとは。
スマホで月を撮って友人に送る。
すぐに返信が返ってきた。
『日本の月はいいなあ』
よく言うよ、違いなんてわからないくせに。
外国に行っても、アイツは変わらないらしい。
気づけばさっきほど寂しくなかった。
多分、場所は違っても、同じものを見ていることが分かって安心したんだ。
俺達は同じ大空の下にいる。
その当たり前の事が、俺は一人ぼっちじゃないという事を教えてくれる。
太陽が雲からひょっこり顔を出して、まるで俺の心の中のように、周囲を明るく照らしていくのだった。
あたし、分かるの。自分の死期が近づいてるってこと。だからこのお家を出て誰も見てない場所で最期を迎えるの。
あの子はまだ幼稚園から帰ってきてない。だからここを出るなら今のうち。いつも帰ってきたらあの子、ママの言いつけをちゃんと守って手洗いうがいして、それからあたしのからだに顔をうずめにくるのよね。いつの間にか日課になってしまってる。それがもう無くなってしまうのはちょっぴり寂しいけど仕方ないわ。誰にも死ぬところを見せたくないから。挨拶も無いけどこのまま姿を消すわね。
散々毛玉吐いたり壁を引っ掻いたりしたけど、叱らないでいてくれてありがとう。生まれ変わったらまた、ここのお家の猫になりたいわ。あ、でも、あの缶詰はそんなに美味しくないのよね。だから次に巡り合うときはカナガンにして頂戴。
あら、幼稚園バスの音がする。それだけでクロミー、って、あの子があたしを呼ぶ声が聞こえてくる気がするわ。あんたは猫の何倍とこれから生きるのよ。立派なレディになりなさいよ。
さて。これからどっちの方向へ行こうかしら。どこへ逃げても隠れても、この空だけはあたしが死ぬところを見てるのね。今日も雲ひとつ無くっていい天気だった。あたしが死んだらこの大空の向こうへ逝くのかしら。そういえば確かあの子、空を飛ぶ猫、なんてタイトルの絵本を持ってたわ。まさしくあたしはそれになるのね。そう思うと、恐れるものなんて何もないかもしれないわね。
いい猫生だったわ。またどこかで会いましょ。
ほんとうに真上を向いて空を見上げた
青が包んでくれた
青が洗い流してくれた
大空。
いつも違う顔を見せてくれる。
思い通りにならない日もある。
でもいつもそこにある。
ただ果てしなく。
良い時も悪い時もそこで見ててくれる。
ありがとう。ただそれでいい。
#大空
果てしなく広がっている
時の流れによって色を変え
涙を流す
そんな美しい空を私と大切な貴方と見るのが
私の小さな夢だった
「大空」
空を見上げて君を想う。
連絡先ももうわからないけど、
きっとこの空の下のどこかで元気だと信じてる。
それだけで、私も元気でいられる。
仕事の帰り道、ちょっと家賃の高そうなマンションの入り口に、鳥の死体があった。
びっくりして、何度も見た。
胸に穴が空いており血が出ていた。
色や形が見たことなく、写真に撮って、
調べようと思った。
が、携帯のフォルダに入れたくないと思い、
撮らなかった。
次の日、鳥は消えていた。
図書館に行って、鳥の図鑑を見た。
あの鳥のような鳥はいなかった。
少し、ホッとした。
大自然の壮大さに憧れていた。特に、果てなく広がるあの空が、好きで、触れたくて、遠くて。憧れていた。
遍く世界の全てに存在している空は、時や場所に応じて様々な表情を見せてくれる。駆けてゆく星々の光る夜の空、大輪咲く夏の空。或いは、雲と広がり海と連なる晴れた、大きい空。
あの向こうへ飛んで行けたら、どれほど素晴らしいだろう。そう思って、今、私は筆を執る。
文字は、絵は。色は、空を象ることができる。私は今、空に触れている。その遠さに、触れている。だから私は詩を書いて、絵を描いて生きる。遠くまで飛んで、もっと、もっと、遠くまで。
それが果たして前かなど分からない、誰が教えてくれるわけもない。いつか落ちるかもしれない。下を向けば怖いかもしれない。
高いところは、空は時折酸素が薄いから。息をすることも時に苦しい。生きることは、苦しい。この翼は、折れてしまうかもしれない。けれど。
それでも、進む。この世界へ飛び立つ。羽を広げて、遠く広がるあの大空へ。その先に、描いた理想などなくとも。
私は、あの空の向こうを見てみたい。誰が何を言おうと構わない。
だから、君も共に行かないか。あの向こうに広がる世界は、空は、どんな色をして、どんな形をしているのか、知りたくはないか。
1人で飛んで行くのは楽しい。自由な世界は好き。でも、君と共に見る空は、また違った美しさを描いてくれる。
そんな気がする。
そんな気がしたんだ。
「大空」
朝、雲が運んだ水気は、空中にあって落ちず水。
雲に隠れて雪となり、揺らめきながら降りてくる。
空に雲がどこにも無い、昼、突き抜ける日射と座り崩れる雪に。
空気の水気はそのままに、今日も積もらなかったな。
情緒のない、夜。
大空というものを、写真でしか見なくなった。
たまには都会の喧騒を離れて、海にでも行ってみようか。
【大空】
どこまでも遠く広がる大空を眺める。この空はきっと、君の元まで繋がっている。
旅立ちの前日に君から贈られたストールに、口元を埋めた。別に君のことが嫌いだったわけじゃない。それでもあの狭苦しい村では、私は思うように息ができなかった。夫を立てる良き妻となれと強要してくる両親も、閉鎖的で古臭い慣習ばかりに縛られた村の空気も、何もかもに耐えられなくて、真冬の寝台列車に一人で飛び乗った。
君は今でも、雪に覆われたあの村にいるのだろうか。親の決めた許嫁として、私を大切にしてくれていた君は今ごろ、誰か好きな人を見つけて添い遂げているのだろうか。そうであってくれれば良いと願う。こんな跳ねっ返りな娘のことなんて忘れて、幸せになっていてくれれば良いと。
吐き出した真っ白い息が、遥か高い大空へと吸い込まれていった。
貴方のせいで淀んだの。だからおねがい、晴らしてよ。
#大空