広くて大きな空を見ていると、自分の悩みなんてちっぽけに思えてくる。
こんな台詞、一体誰が言い始めたのだろう。
そんなのはうそだ。少なくとも今の僕には当てはまらない。これっぽっちもね。
見上げた空はどこまでも青い。
それはもう、煩いほどに青い。
太陽はジリジリと照り付けている。
流れる雲を眺めていたって、僕の心を晴らしてくれるわけじゃあない。
空はただそこに在る。
青く、遠く、広がっているだけなんだ。
視界を鳥が横切る。鳩か、烏か。
そんなのはどうでもいいことだ。
「いいなあ…」
いつの間にか口癖になってしまった言葉がぽろりと溢れる。
僕にも、翼があったらな。
この窮屈で閉鎖的で鬱々とした日々から逃げ出せるのに。広い空を自由に飛んで、どこまでも遠くまで行ってしまえるのに。
❄︎
痛いほどの空の青さに目を閉じる。
僕は白昼夢を見る。身体がふわりふわりと、空気中に溶けていく。
この瞬間だけは、僕は僕のものだ。
現実世界に引き戻される、その時まで。
あの人からの呼び出し音が、鳴るまでは。
『大空』
12/22/2024, 10:25:37 AM