『喪失感』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
書庫の奥。今までなかったはずの戸を見つけ、男は怪訝に顔を顰めた。
戸に鍵などはなく。開けて中を確認すべきか否かを思案する。
ここの書庫に収まる本は、男が前の世で犯した罪のすべてだ。
様々な呪法が記された本。前の世の男が行ってきた呪の経過の記述。
目を背けたくなるほどの数々に、けれど男はその罪の償い方を、断ち切る術を探して足繁く通い書物を読み込んでいた。ただ一人の少女のために。
前の世の記憶は酷く曖昧だ。書庫さえ見つけなければ、書物を手に取らなければ、男は忘れたままでいられたのだろう。あるいは書庫を閉じ無かった事にしてしまえば、過去は過去として男を苛む事はなかったはずだ。
しかし男は過去を辿る道を選択した。それは偏に男の旧知の友が男に信を置き、縋るように彼の一人娘を託されたからだった。
初めて出会う、だが同時に懐かしさを感じる娘。原因の分からぬ病を抱え、常に死に引かれ続けていた彼女を最初は友の信に報いるためだけに手を尽くし。その過程で書庫に辿り着き、そこで得たのが前の世の記憶の断片であった。
思い出してしまった己に、声が聞こえた。娘の影から聞こえる複数の声に耳を傾ければ、それはかつての呪いを歌う少女達のものである事に気がつく。娘を現世に留め続けている少女達は変わらず己を慕い、娘についてすべてを教えてくれた。
かつて為し得なかったはずの外法。作られた狂骨。
すべてが前の世の己が犯した罪の結果だった。
戸に触れる。確かに存在している戸は、昨日まではなかったものだ。暫し迷う手は、それでも最後に戸を開ける選択をし、手をかける。
戸が現れた理由も、その先に何があるのかさえ男には分からない。だがこの書庫の奥にある部屋だ。娘を助けるための何かを求め、静かに戸を引いた。
そこは窓のない、薄暗い小さな部屋だった。
寝台と、文机と、書架。
寝台の側に置かれた灯り一つで、辺りが認識出来るほど狭い寝室。
違和感に男の表情が険しくなる。
灯りが、ついていた。
己以外が訪れる事のない、況してや男自身も今初めて入る部屋に、仄かな灯りが点っていた。
足を踏み入れる。
舞い上がる埃が、長い間誰の訪れもなかった事を示し、さらに男を警戒させた。
寝台。文机。書架。
視線を巡らせる。やはり何も、誰もいない。
当たり前だ。あの子はまだ帰ってきてはいないのだから。
不意に過る思いに、男の動きが止まる。
誰の事を言っているのか。思い出せない空白に、手がかりを求めて書架に収まる書物に手を伸ばし。
「開いてしまったのか。あの子の身が損なわれたか。否、見立てが崩れたか…どちらにしても、あの子の終わりは近いのだな」
呟く言葉に、そこで初めて文机に向かい座る誰かがいる事に気づく。
「誰だ?」
男の問いに答える事はなく。
おもむろに立ち上がり振り返る誰かの姿を認め、男は息を呑んだ。
凪いだ表情で男を見る誰かは、前の世の若かりし頃の男そのものだった。
「お前は、儂か…?」
「お前が言うのであれば、そうなのだろう。確かにお前は私に近い」
男の言葉を否定せず、しかしはっきりと肯定もしない誰かはだが、と言葉を続け目を伏せる。
「私はもう死んだのだな。ならばあの子はもう、ここを離れてしまったか」
「お前は、誰だ」
「記憶だよ」
再度の問いに、抑揚の薄い声音が答える。
記憶と名乗る誰かは視線を上げ凪いだ表情に薄い笑みを浮かべ、書架から一冊の書物を取り出した。
「この部屋で眠っていたあの子の経過を記した本を記憶に見立て、作られたものだ。最後の呪で私があの子を認識出来なくなった時のための保険だったが、部屋自体を閉じられてしまったから意味はなくなってしまったな」
表紙を撫でながら自嘲する記憶に、一切を思い出す事の出来ぬ事に胸が痛みを覚えた。
欠落し空いた穴を、無理矢理塞いで見えないようにするような、そんな錯覚を覚え吐き気がする。
「あの子、とは」
「忘れているのであれば、そのままでいる事がお前にとっては幸せだろう」
吐き気を堪え問う男の言葉に、けれど記録は答える事を否定する。
「何故?」
「知った所で、あの子は帰らぬからだ」
「そんなはずはない」
淡々と告げられた言葉に、男は反射的に否定する。
胸の痛みが段々に強くなり、眩む視界に膝をつきながらも思い出せない欠落を、その隙間に僅かに残る断片を必死にたぐり寄せた。
「違う。あの子は帰ってくるはずだ。あの子が最後に口にしたのは別れの言葉ではなかったのだから。だから帰ってこなければいけないのだ」
行ってきます。そうあの子は言ったのだから。
あの子が誰かも思い出せず、それでも否定する男を記憶はただ凪いだ瞳で見つめ。
暫くして、手にしていた書物を男へと差し出した。
「あの子を思い出したとて、何も変わらない。この記録がすべて読めるのならばあの子はすでに亡く、読めぬともここを離れたあの子をこれ以上留める術はない。それでもよいのか?」
「構わない。知らなければならないものだ」
「そうか」
手渡された書物を開き無心で読み始める男を見、記憶は静かに立ち上がる。
男とあの子の間に何があったのか。呪を施したあの子はどうしたのか。
この部屋以外の記録を、記憶は有していなかった。
戸の外へと視線を向ける。書架とそこに収まる書物を認め、部屋を出た。
この部屋を閉じた後の記録があるはずだと、書物を探す。
すぐに見つかった書物を手に取り、表紙をめくる。
その記録の先に男の罪がある事を、記憶は知らない。
同じように男の読み耽るその記録が、すべての始まりだと男はまだ気づけない。
そうして記録を読み終えた二人が得たものは、望んでいたものではなく。
愛しい娘をなくした喪失感だった。
20240911 『喪失感』
別れに喪失を感じると安心する。喪失を感じれるほどの関係であったのだと答え合わせをした気になれるから。
「喪失感」
「前回までのあらすじ」────────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!!!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!!!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!!!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!!!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!!!悪気の有無はともかく、これ以上の被害を出さないためにもそうせざるを得なかったワケだ!!!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにしたら、驚くべきことに!!!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚!!!さらに!!!アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかったのだ!!!
そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!!!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!!!
……とりあえずなんとかなったが!!!ちょっと色々と大ダメージを喰らったよ!!!まず!!!ボクの右腕が吹き飛んだ!!!それはいいんだが!!!ニンゲンくんに怪我を負わせてしまったうえ!!!きょうだいは「倫理」を忘れてしまっていることからかなりのデータが削除されていることもわかった!!!
それから……ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。いつかこの日が来るとわかっていたし、その覚悟もできたつもりでいたよ。でも、その時にようやく分かった。キミにボクを気味悪がるような、拒絶するような、そんな目で見られたら、覚悟なんて全然できていなかったんだ、ってね。
もうキミに会えるのは、きょうだいが犯した罪の裁判の時が最後かもしれないね。この機械の体じゃ、機械の心じゃ、キミはもうボクを信じてくれないような気がして。
どれだけキミを、キミの星を、キミの宇宙を大切に思ったところで、もうこの思いは届かない。でも、いいんだ。ボクは誰にどう思われようと、すべきこととしたいことをするだけ。ただそれだけさ。
……ついに裁判の時を迎え、ボク達はなんとか勝利を収めたよ!本部への挨拶回りも済んで、次はニンゲンくんに謝罪をするつもりなのだが……。
────────────────────────────────
「⬛︎⬛︎ちゃん!みんなにごめんなさい!できた!えらいでちょ?」「うんうん、えらいえらい!」「やたー!おかしちょーだい!」
「とその前に、ニンゲンくんのところにも行くんだよ?」「やー!」「ええ?!!キミが行くって言い出したんだろう?!」
「んーんー!およーふくおきがえー!」「あぁ、なるほど?」
そうだった。兄がずっと着ていたのは入院着だった。
これから元気に過ごすには似合わないね。
「それじゃあ、お父さんのお部屋にまた戻ろうか!」
「おうちだー!」
無邪気な笑顔を見て、ボクはなんだか懐かしくなった。
「おとーしゃんただいまー!いいこにちてたー?」
いい子にしてた?か。お父さんがよく言っていた言葉だ。
……。
早速タンスを漁る兄。あーそんなに中身をポイポイしないの!
「これ!これきるー!」
取り出したのはよく着ていた子供服。やっぱり懐かしい。
「はいはい。着せてあげるからこっちにおいで。」「ん!」
「よーし!これで完成!」「わー!かわいい?」「可愛いよ〜!」「⬛︎⬛︎ちゃんもかわいいー!」「へへ、そうかな〜?」
「おきがえできたー!いってきますするー!」
「さっきしたところだけど、お父さんにもう一回挨拶しようか!」「んー!」
「おとーしゃーん!おきがえちた!かわいい?」
「あのねー!ごめんなしゃいするからいってきますなのー!」
「おとーしゃんもおきがえちてねー!ばばーい!」
小さい子はボクの頭脳を持ってしてもよく分からないなぁ……。
それじゃあ、ボクも行ってくるよ。
……謝罪を受け入れてもらえたらいいんだけど。
◆*:.'.:*◆*:.゚.:*◆*:.'.:*◆*:.゚.:*◆*:.'.:*◆
--某ニンゲン宅付近にて--
「実はニンゲンくんの家に本部から直接アクセスできるようにポータルを作っておいたのさ!」「あのドアの向こうにニンゲンくんがいるんだよ!」「んー……。」
「⬜︎⬜︎、どうかしたの?」「ニンゲンしゃん、ごめんなしゃいのおみゃーげないのー。」「まぁまた今度でいいんじゃない?」
「だめー!おみゃーげあげるー!」「うーん……。」
「あ!こうするのはどうだい?……。」「ん!」
「もう呼び鈴を押すね?」「やー!ボクがおしゅー!」
「キミじゃ届かないだろう?……やれやれ。」
兄の小さな体を持ち上げて呼び鈴を押させる。
「ぴんぽーんていった!」「ちゃんと押せたねー!」
◆*:.'.:*◆*:.゚.:*◆*:.'.:*◆*:.゚.:*◆*:.'.:*◆
……誰だ?うちに用事のあるひとなんていないはずだ。
ゴミの捨て方を間違えたんだろうか。
最近、色んなことを間違えてばっかりだ。
自分があいつに酷いことを言ったのにまともに謝れもせず、結局残ったのは……乱れた生活といやに静かな部屋、それから喪失感だけだった。
宇宙を管理するやつからしたら自分なんかいようがいまいが変わらないのに、ずっと一緒にいてくれた。守ってくれた。
そんなあいつを、自分は拒絶したんだ。
たとえ機械であろうが、作り物であろうが、あいつの優しさは、暖かさはきっと本物だった。いや、偽物でもよかった。
あいつは自分を───。
呼び鈴が再度鳴る。
……流石に出ないとまずいな。
「……はい。」
「やあニンゲンくん、久しぶりだね?」
「ニンゲンしゃん!こんにちはです!」
え?いや、なんであんた達が?
「キミに用事があるんだって!ぜひ聞きたまえ!」
「ニンゲンしゃん!おはなちー!」
「あ、そうそう。兄には心を読む機能が搭載されていないのと、まだまだ赤ちゃんだからっていうのもあってだね!なるべく簡単な言葉を使って頂きたい!」
あぁ、わかった。
「まぁ、玄関で話をするのもなんだから……上がってよ。」
「はーい!」「あー!!!待って!!!」「んー?」
「靴は脱ごうね?!!」「はーい!」
……すぐに出ないどころか、汚い部屋に上げることになってしまった。自分はつくづく駄目な奴だよな。
「ニンゲンしゃん……。」小さい兄?が悲しそうな顔でこっちを見つめてくる。兄の方も変わった瞳だな。
白っぽかったり黒っぽかったり、見る度に少しずつ色が違う。
「ね、ね。おてて、おけがだいじょぶ?」
「あ、あぁ。すぐに治してもらったからもう平気だよ。」
「んー……。」
「おてて、おけがごめんなしゃい。ニンゲンしゃんのおうち、ないないしちゃうだったの、ごめんなしゃい。」
もう泣きそうになってる。
「ごめんね。ごめんなしゃい。」
そう言いながら抱きついてきた。抱きつかれて改めて思った。
……この子、めちゃくちゃ小さいな。
腰くらいの高さに頭がある。2、3歳くらいか?
そんでもって……相当可愛い。
「そんな気にしなくていいよ。自分だってまだ夢見てるみたいな、変な気持ちだからさ。ほら、泣かないで。」
自分はついこの子の小さな体を抱き上げてしまった。
「ぎゅー!」……重くはない。
けど全然離れてくれない。とれない。
「……ニンゲンくん。そんなこんなで色々悪かったよ。ボクからも何かお詫びをしたいところだが、逆にまた頼み事をしなくてはならなくなってしまった!」
へ?また?
「そう言いつつ嬉しそうじゃないか〜!!」
「ま、とりあえず聞きたまえ!」
「実はだね……宇宙管理機構内に資格を持っていない者は来客を除き長く滞在できない決まりなのだよ。」
「そのうちこの決まりもボクのパワーで破壊するつもりではいるが……言いたいことは分かったね?」
いや、わからん。
「はぁ……全く!!!」
「しばらく……というか今のところ50年くらいの間でいいから、兄の居場所としてキミの家を貸してくれないかい?!!」
「はぁ?!!……まあ断る理由もないか……。分かったよ。」
「さすがニンゲンくん!!!そう言ってくれると思っていたよ!!!本当に助かるよ!!!ありがとう!!!」
「⬜︎⬜︎、今日からキミはここで暮らすんだよ!」
「⬛︎⬛︎ちゃんもいっちょ?」
そういやどうn「当たり前だろう?!!」そうか。
「というわけで、これからもよろしく頼むよ、ニンゲンくん!!!」「よろちくたのむよー!」
「あ、あぁ……?」
一件落着と思いきや、これから小さな居候が一人増える生活が始まるらしい。
……これからもよろしく。
喪失感
欲望というのは誰しもが持っている。
金が欲しい、美味いものをたらふく食べたい、生きていたい。ほかにも人の数だけ欲望はある。
欲望が満たされて充足しているはずなのに、
もっと、もっとと飢えてはまた欲しがる。
満ち足りないからその身体の中を満たそうとする。
失って、飢えるから欲しがる。
無くなってから気づくとはよく言ったものだよな。
「ごめんなさい!」
相手を振る時は時々躊躇する
「そっか、」
そういう君に好きじゃなくなられる
好きな人では無いのに何故か
何かをなくした気がする
あの子の声も、姿形も全部覚えている。
幼いころのたどたどしい歩みに微笑みが隠せなかったこと、若気のいたりで暴れ回る日々に困らされたこと、大人びてすっかり落ち着いた仕草にまた惚れ惚れしたこと、年老いて薄くなった頬を撫で抱きしめた背中に浮いた骨の感触があったこと、全部ぜんぶ何一つ忘れずに覚えている。
思ったより喪失感がないのは、このたくさんの思い出のおかげなのかもしれない。別れの日から一年過ぎた今も、あの子はずっとぼくのそばにいるような気がするくらいだ。
ただ、思い出はもう増えはしない。
ぼくは記憶の中で微笑むあの子を何度も何度も繰り返しまぶたに思い浮かべるだけ。新しい日々を共に重ねて過ごしていけないのがこんなに悔しいなんて想像もつかなかった。存在が失われることは未来が一つ失われることと同じなのだと、一年かけてやっと気付いたんだ。
ぼくは今日も思い出の背中を撫でてあやし、新しい時を刻む世界を愛しいものの幻影で満たしながら生きていく。
************
喪失感
************
所感:
記憶のバックアップはきちんと残しておかねば。
喪失感ってさ
ん?
なんなんだろうね
どした、急に 笑
いやぁ、本に載ってて気になっただけ 笑
ふーん?あ、「心に穴が空く様」らしいよ
この短時間で調べれるの凄 笑
天才と呼んでも構わない!
誰が呼ぶかよ 笑
まあ俺はあれだな〜
ん?なによ?
「 」
、、、まじか笑
ひっでぇな笑、まるで俺の片思いみたいなんだけど笑
「お前がいないとなるかも」
俺もだ、ばーか
なんで先に逝っちまったんだよ、
喪失感
ただ
そこにあったものが
抜け落ちて
真っ暗闇に
流れていく
私の胸も
抜け落ちて
真っ暗闇
誰かふさいで
「もう何も無くしたくないよ」
ふいに呟いた彼の言葉は、残念ながら雨の音に打ち消されやしなかった
それがどんな意味を表しているのか、僕にはわからなかったけれど、彼にとって何か大きなものを乗り越えようとしているのかもしれない、と独り合点した。
聞こえなかったふりをして、ドール服になる予定の布にちくちくと針を刺す。
真っ白い生地に、たくさんのフリル、綺麗なAライン。
まるでウェディングドレスのようにも見えるそれに見蕩れる。
少し後に、彼が「水を取ってくる」と言って自室に向かった。
「喪失感は、つらいものだよ」
いつかのりこえられたら良いね、と呟いて、真っ白い布にほんの少しの喪失感と藤色の糸を一緒に縫い付けた。
喪失感。
僕はまだ見てないのだが、「有吉の夏休み」という番組にて某芸人の姿を番組スタッフが編集で消したらしい。
それで、SNSでは「◯◯を探せ!」が開催された。
いかにも悪趣味な遊び方をしているが、出演者の一部がいじったことで容認された見方がある。某芸人だから、笑えるならそれでいいと僕は汲み取った。
まるで出演してないような、声の痕跡がどこにもない。
現代の編集技術は進歩したなあ、昔はテロップを重ねて強制的に隠してたのに。
これが「本場の消しゴムマジックで〜」かな。
意外と人ひとりを消すのは容易なことではないのだが、そこはプロ。90%くらいは消えている。
でも、マジックも限度があったようで、店の鏡に写っていたり、腕の一部が消し忘れていたり。
あるいは、妙に画角がおかしい部分があったり、二画面構成で何かを映さない仕組みにしていたり。
番組は旅行記みたいなものだから、ロケ地巡りのそれぞれで出演者たちの集合写真を撮って、それをアルバム風に見せるのだが、どの集合写真も一人分のスペースがある。
みんな笑顔で笑っているのに、そのスペースに対して誰も指差しせずその状況を受け入れている。
誰かが写真を破って背景を付け足した。それで妙なスペースが生まれた。
これを喪失感と呼ぶかは微妙なところだが、何かを失ったのは確かだと思う。
補うのは、今は反省の時間。
視聴者には当然見えない。
だから、あれこれ不備を探したくなるのかな。
テーマ 喪失感
幸せなんて無かった。
僕のようなただ影にいる子供は世間からの光を浴びたことなんて無かった。怒鳴りつけられ、怒られて、ただただ過ぎ去ってほしい日々が続いていた。
「こっちの世界においで?」
一人の子どもが言う。僕にはそっち側へ行く権利などない。
でも、一歩踏み出そうとした。
「「「お前なんか」」」
「「「なんで」」」
「偽善者なのにw」
一人の少女が僕を見て笑っていた。
憎かった。僕の気持ちなんか知らずに、他人の言葉を信用して僕のことを嘲笑っているのが。
羨ましかった。そんな笑い話のように過ぎていく毎日が。
「取り返しが付かないや..w」
真っ赤に染まってる一人の少女。息はもう無い。
決めた道だから戻らない。いや、戻れない。
おわり
大学を卒業して、目指していた職にも付けた。
子供の頃からの夢が叶ったんだ。
新生活頑張るぞと張り切る私。
あれから2ヶ月。
起きて 朝ご飯を食べて 会社へ行って
仕事して お弁当を食べて また仕事して
帰って 夕飯を食べて お風呂に入って
やるべき事をやり終えた後、
なんとなくスマホをいじってから眠りにつく。
同じ事を繰り返す日々。
代わり映えのしない毎日。
なんだろう。この【喪失感】。
これは、当研究所の研究員による実験記録である。
■『人間の感情を搭載したロボット実験』
□データ採取について
【対象者】20代〜70代の男女100人
【実験内容】対象者を当研究所の実験施設に収容し、〈喜怒哀楽〉を含む様々な感情データを記録。
□試作ロボットについて
解析・統合した感情データを4体の試作ロボットに搭載する。
なお、故障した場合の代替機として1体の試作ロボットを用意する事とする。
■試作ロボット01号
・人間の感情 ――『喜び』を搭載
■試作ロボット02号
・人間の感情 ――『怒り』を搭載
■試作ロボット03号
・人間の感情 ――『哀しみ』を搭載
■試作ロボット04号
・人間の感情 ――『楽しみ』を搭載
■試作ロボット05号
・代替機
□記録
R6.9.01
4体の試作ロボットを実験場に移す。
試作ロボット01号(以下〈喜び〉とする)と同・04号(以下〈楽しみ〉とする)は意気投合したかのように常に2台で行動している。
試作ロボット02号(以下〈怒り〉とする)は、壁や床などを叩く暴力行動が見受けられた。
試作ロボット03号(以下〈哀しみ〉とする)は部屋の隅で静止している。
R6.9.07
〈怒り〉により、〈喜び〉および〈楽しみ〉が破壊される。
破壊された〈喜び〉および〈楽しみ〉の本体は回収済である。
なお、破壊行動の直前に〈怒り〉のストレス値が最大値を記録していたことが判明した。
〈喜び〉および〈楽しみ〉が破壊されたことを感知した〈悲しみ〉は本体への充電を拒絶した。
R6.9.10
〈哀しみ〉が電池切れにより完全に停止。
R6.09.11
本来運用しないはずの試作ロボット05号が突然動作を始める。
実験場のコンセントに許容電流以上の電気を流し「過電流」を発生させた。
これにより、コンセントが発火し実験場で火災が発生。
この火災において、〈怒り〉および試作ロボット05号、停止していた〈悲しみ〉を含め3体を焼失。
□総括
試作ロボット5体の喪失により、実験は一時的に中止とする。
なお、試作ロボット05号の行動原理は現時点では判明していない。
しかしながら、仲間を失った〈喪失感〉による行動として、試作ロボット05号を〈喪失感〉と名付けることとする。
『喪失感』
自分は恋愛が下手だ。
自分は好きなことに熱中してしまう。だが一度熱中してしまったら、中々手放すこと、いや、覚悟がなくなってしまう。
中学2年生の春、ゴールデンウィーク中に告白してOKをもらった事があった。あの時の自分はなんだか水の上に浮いている様な感覚に覆われた。コポコポと周りから優しい音が聞こえる。でも中身は冷たい。まるで愛を感じなかった。でも自分から手放そうとは思わなかった。同年の秋、何か進展があるというわけでもなく、「優しすぎる」と一言告げられ、別れた。正直今でもあの人のことは気になってしまう。忘れたいのに。そんな頃、自分は初めて喪失感を感じた。いろんなことに気を移した。でも必ず心のどこかで話しかけられる。
今は恋愛をしたいとは思ったり思わなかったりする。実際自分の周りを見てみるとカップルが多い。正直とても羨ましい。ちゃんとした青春をしているのだから。
自分はどうだろうか。ただただバスケに熱中しているだけで一歩も踏み出そうとしてない。それなのに周りに嫉妬感を抱くのはちょっと違うよね。
目の前の景色にゼラチンが流し込まれて
まばたきの度にほろほろ崩れた。
空は青いままで、体は動かなかった。
心の中は必死だった。
思い出を裏返し続けた。
楽しさは黒く塗り、
辛さは無理やり飲み込んだ。
あっけにとられて、
どんどん漏れ出すものをみないように
自分の感情をどう表現していいかわからずにいた。
#喪失感
※フィクションです
「これは凄い代物だよ」
言われて買ってしまいました。
物凄い価格で、あれが僕の全財産でした。
雨の音が好きです。
匂いは嫌いです。
だからいつも室内で見ます。
窓に打ち付けられる音を聞くのが楽しみでした。
その音につられて、お父さんが帰ってくるからです。
ポチを連れて。
ポチとは飼っている犬のことです。
きっとポチもこの音が好きなのでしょう。
お母さんはお父さんとにらめっこをします。
それも決まって、ポチが家の中に入ってくる時です。
だけど、その顔があまりにも怖いので二人は一向に笑いません。
僕も笑えません。
そそくさとリビングを去ります。
少しすると僕の部屋にも聞こえるくらいの大きい声が聞こえます。
お母さんの声です。
お母さんの声は高くて、近くで聞いていたら耳がキンキンすると思います。
たまにお父さんの声もするけどその声がいつものお父さんとは違い、あまりにも低いのでなんて言ってるか聞き取れません。
ただ、お母さんの言葉からポチの話をしているのはわかります。
風船が割れる様な音がする事もあるのできっと遊んでいるのでしょう。
ポチの鳴き声も聞こえます。
余程楽しいのかその声は次第に小さくなります。
鳴くことを忘れているのでしょう。
する事が無くて暇な時は僕の全財産で買った“四つ葉のクローバー”というのを見ます。
三つ葉しか見たことが無かったので、見た時は凄い興奮しました。
そんな四葉が、お母さんに見つかった時強引に取り上げられました。
お母さんも見たことが無かったのでしょう。
四葉は返ってきませんでした。
ある日友達と一緒に学校から帰った時買い食いをする事になりました。
会計をする時になって初めてお金が無いことに気が付きました。
友達にあの五百円はどうしたんだと聞かれたので、事情を話すと笑われました。
そんなのどこにでも生えてる、と言われ、そればかりでなく四葉のクローバが出来る仕組みを教えてもらいました。
ショックでしたが同時にお母さんが可哀想になりました。
僕は早い段階で知れて良かったです。
ポチがいなくなりました。
お父さんには“ここよりもっといい場所へ行って幸せに暮らしている”と言われました。
お母さんには“死んだ”と言われました。
どっちを信じればいいでしょうか。
でも、あんなにポチと一緒にいたお父さんが言うなら、きっと幸せに暮らしているんでしょう。
ポチは僕の友達でした。
ポチがいなくなって、お母さん達がにらめっこする事も無くなりました。
同時に会話をしている場面を見るのが少なくなりました。
小学何年生かになった時、お母さんが僕に言いました。
「お母さん、旅行に行ってくる」
お父さんは言いました。
「お母さんは長い間旅行に出るからしばらく会えなくなると思う。それが嫌ならお前もついて行って良い」
別にお母さんが数日帰ってこないなんて日常だったので首を横に振りました。
それに、お母さんはお母さんじゃ無くなることがあるので、それも嫌だったのです。
僕は思っていました。
お父さんといれば安全だと。
お父さんがはお母さんよりも力が強かったからです。
それから、お母さんは僕が中学生になって一度帰ってきました。
その間、お父さんの口数は減っていきました。
お父さんのお腹は膨らみ清潔感が無くなりました。
いつもの優しいお父さんはいなくなりもはやお母さんと同じになっていました。
僕が体につねに痛む青黒い模様を付けて登校すると、友達にはバカにされ先生はよそよそしくなりました。
高学年になるごとに友達が僕に話しかけてくることが減りました。
しかし、友達だけでなく先生も変わりました。
僕に普通に接してくれるようになったのです。
僕の身体の模様に何も言ってくることはなかったし、お父さんになにか言う事もありませんでした。
そんな先生を僕は慕っていました。
ー喪失感ー
こんにちは。唐突ですが続きは皆さんに考えていただきたいです。
これからも書きやすいお題がきたら書こうと思っています。
最後まで見て頂きありがとうございました。
喪失感
私は物心ついた頃からずっと心の何処かが
寂しくて何かを求めていた
家族と遊んだり、友達と遊んだりしても
心の何処かにある寂しさは埋まらなかった
親に連れて行かれた孤児院であの子に会った
私が話が退屈になってお手洗いに行くと言ってひとりで孤児院の裏に行った、
そこにはきれいなアクアブルーの目の色をした男の子がいた、その子と目があった瞬間私が求めていたものは
この子だと気がついた
男の子もわたしと目があった瞬間目を見開いていた
一拍置いたあと私たちは涙を流しながら無意識で抱き合っていた、
それは孤児院の人たちが迎えに来るまで続いた。
私はやっと心の喪失感がなくなった――
私は数年前、大切に思っていた猫を失った。
元々住んでいた、ペットが飼えないアパートから引越し、やっと飼えると思っていた矢先、亡くなったのだ。
…今日は私の、そのときの話を聞いてもらおう。
その猫はメスの野良猫で人懐っこく、いつもアパートのそばで餌やおやつをあげたりして、毎日会えるのを楽しみにしていた。
まあ本当は野良猫に餌付けなんて良くないんだが。
そんな日が続いたある日のことだった。
母がその猫を飼おうと提案したのだ。
あまり覚えていないのだが、父は、母が猫の世話をする、という約束で許諾したらしい。
それから事はトントン拍子で進んだ。
ペットが飼える一軒家を借り、その猫は家で飼え
る様に病院か何かで預かられていた様だ。
…1週間か2週間程待っただろうか。
猫を乗せた車が家にやってきた。
やっと飼えるんだ、とわくわくしながら玄関へ駆けていくと、両親が暗い顔で俯いていた。
……その目線の先にいたのは、動かない猫だった。
その時の絶望といったらそれはもう思い出したくないくらいだ。
母に聞いたところ、その猫は、注射が駄目な猫だったらしい。
まだ小学生だった私は意味が良く分からなかった。
ただ、無情な事実だけが、私を泣かせていた。
…ん?ああ、同情は要らないよ?
ただの作り話だから。
じゃ、またどこかで。
まじで最近文化祭終わってめっちゃ喪失感感じてる
初めてバンド組んで演奏したり部活の公演とかやりきった感あって良かったけどなんか寂しい
どうにもならないと思っていた
ずっと 独りで背負って
どうにかにしなきゃって
でもそれは違ったみたいで…
大きな喪失感の後に知った
もっと大きな事実
一生懸命に走ってきたけど
意味はなかったかもしれないけど
ガラクタでは無かった
人のためにどれだけ頑張れるかを知ったから
まだどんな風に歩けば良いのかはわからないけれど
みんなから借りた力で
また0からやり直してみようとそう思えた