私は数年前、大切に思っていた猫を失った。
元々住んでいた、ペットが飼えないアパートから引越し、やっと飼えると思っていた矢先、亡くなったのだ。
…今日は私の、そのときの話を聞いてもらおう。
その猫はメスの野良猫で人懐っこく、いつもアパートのそばで餌やおやつをあげたりして、毎日会えるのを楽しみにしていた。
まあ本当は野良猫に餌付けなんて良くないんだが。
そんな日が続いたある日のことだった。
母がその猫を飼おうと提案したのだ。
あまり覚えていないのだが、父は、母が猫の世話をする、という約束で許諾したらしい。
それから事はトントン拍子で進んだ。
ペットが飼える一軒家を借り、その猫は家で飼え
る様に病院か何かで預かられていた様だ。
…1週間か2週間程待っただろうか。
猫を乗せた車が家にやってきた。
やっと飼えるんだ、とわくわくしながら玄関へ駆けていくと、両親が暗い顔で俯いていた。
……その目線の先にいたのは、動かない猫だった。
その時の絶望といったらそれはもう思い出したくないくらいだ。
母に聞いたところ、その猫は、注射が駄目な猫だったらしい。
まだ小学生だった私は意味が良く分からなかった。
ただ、無情な事実だけが、私を泣かせていた。
…ん?ああ、同情は要らないよ?
ただの作り話だから。
じゃ、またどこかで。
9/11/2024, 9:21:56 AM