『君の奏でる音楽』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
君の奏でる音楽
こじんまりとした発表会で聴いていたピアノの音
丁寧で、柔らかい。
ひと聴き惚れ、とでも言うのだろうか
どうにも、楽器の魅力に取り憑かれてしまったのだ。
憧れて通った音楽室、うまく動かない指も
それなりに操れるようになって
君の音に近づけるのが嬉しかった
「すごい、上手になったね」
何よりも嬉しい褒め言葉が沁みた
「今度、連弾、したい」
緊張で声が震えてしまう
「うん。次の発表会は連弾ね」
白黒の楽譜が、なんだか色付いて見えた。
※グロ
【不協和音】
がたがたがしゃがしゃがたがたがた
憎悪と虚勢と恐怖を打ち消す為の雑音。
かたん、きぃん。【音】ひゅっどすんっ
弾けるファンファーレ。
ぎちぎちぎゅりっ、【音】ごり、【音】ごつんっ
聞くに絶えない罵詈雑言。
ガタンッ!【つんざく音】ぶちっびちゃびちゃ
ガタガタ【音】ガタ【音】ガタガシャガ【音】シャガシャガシャ【音】
ごつんっ
意味なさぬただの大音量。
かたん、しゅぼっ、【甲高い音】ガタガタガタ【音】ガじゅ【音】うっガタン!ガシャ【音】ガシャガシャガシャ【音】じゅう【音】しゅうう【音】うガタガタ【音】ガタ【音】ガ【音】タじゅう【かすれた音】うううガタガタ【音】ガタガタじゅっ!【音?】ガタンッ
ぴちゃん、ぴちゃん
蚊の鳴くような音。
ぶつぶつぶつお経?ぶつぶつぶつぶつぶつばちんっ、ガシャッ
静寂。
こつ、ガタッ、とすん
どくっどくっどくどっどっどっどっどっどっどっ
かしゃかしゃかしゃかしゃかしゃかしゃかしゃ
どっどっどっどっどっどっどっどっどっどっ
かしゃかしゃかしゃかしゃかしゃかしゃかしゃ
もっと、もっと君の奏でるこの音楽を聞かせて。
『君の奏でる音楽』
「お疲れ〜!はいっ、乾杯、かんぱーい!」
ガチャン、とグラスが雑に触れた。グラス同士の衝撃が指から伝って、脳みそを襲ったみたいに少し惚けてしまう。その衝撃は私だけじゃなく、グラスの中の氷もカラコロと揺らした。グラスの汗が私の指先に小さな水たまりを作ったが、すぐに決壊してまた滑り落ちる。
「いやぁっ、俺ね、ずっと見てたんだけど、マジファンになっちゃった!」
突如グラスを掲げ近付いてきた男が酒を煽って、一息つくように放たれた二言目は、想定外の褒め言葉で面食らう。見てくれの軽薄さ通りの言葉選びとも思った。感嘆詞の力強さにビクついた私を、遠くから気遣うように見るメンバーに、気にしないでとアイコンタクトを取った。
何度か同じ企画に参加していたバンドから、社会人バンドを集めて内々に好きな曲をやろうと誘いがあり、二つ返事で参加した。案の定見知った面子ばかりだったが、この男のバンドとは初めてだった。メンバーが心配したのは、それが理由だろう。
二枚目を揃えたような、吹けば飛ぶような輩の集まりにも見えた。だから、どんなものかと穿っていたのに、聞いていくうちに嫌な色眼鏡も色覚を失っていった。
演奏が終わり明るくなったライブハウスの客席で、グラスやジョッキを持った男女が、和やかに閑談している。壁にもたれ掛かる人、小さな丸テーブルに集まる人、床に座り込む人。秩序や統一性はない。
それなのに、顔見知りのバンドマン達や馴染みのファンはみんな、さっきまでの情熱を手放して、社会に疲れた大人の顔に戻っていた。
「ありがとう。2曲目、好きだった。」
言葉少なく、感想を伝える。それしか言えない自分を恥じる気持ちはない。ただ、この男が作ったらしい曲への感情は、恐らく二十分の一だって届いていないだろう。それは、勿体ないことかもしれないとは思った。
「イントロのギターリフ。」
それだけ言って目を見た。話すのは得意ではない。伝える言葉を考えるのが面倒だからだ。それに、言葉で補わなくても、平気なこともある。
思えば、話すことを面倒くさがるのは、随分と前からだった。
11歳の夏、同じクラスの同級生たちがウサギ小屋に座り込んで、亡骸を代わる代わる抱いたり、漏れそうな嗚咽を唇を噛んで抑えたり、温もりも冷めた寝床を見つめたりしながら、色んな顔で泣いていた。私は、強烈に刺すような目をしている小動物を、一度も名前で呼ばなかった。情が湧いたら嫌だった。だからずっと避けていた。案の定、私一人だけはどんなに時間が経っても泣けなかった。
みんな泣いてじっとしていたが、とうとう観念したように、埋葬してあげようと声が上がった。私が、焼いてあげないとダメだと言うと、みんな信じられないものを見るような目で私を見た。たったそれだけで、私のこの後悔も虚しさも、何故焼いてあげないといけないのかも、話しても誰にも伝わらない気がして、もう説明する気にならなかった。
そして、だんまりを決め込んだ。幼かったからだ。
その後の数ヶ月は、みんなの中で私は無情な化け物になったみたいだった。あの小動物を避けた私みたいに、触れなければ大丈夫と繰り返す目に、何故か納得してしまって、教室の隅っこで丸まって、パーカーのフードを被って巣ごもりをした。頭の中で何度も、大きくてギョロッとして、幾度と私を刺したビー玉みたいな黒目が思い浮かんだ。
まぁるいまぁるい、私だけのナイフ。
「うそ、マジで?!えー、マジか。めちゃくちゃ嬉しいわ。」
私の短い褒め言葉にはしゃぐ男の目も、ビー玉みたいに大きい。表情が変わるたび目線はころころと変わるのに、何故かずっと目が合っている気がした。私はまた避けるべきだと思った。私を刺すナイフになるんじゃないか。
「また一緒にやれたらいいな。」
心がびりりと震えた。私は今、この男が小さく呟いた言葉を、とても喜ばしいと思っている。それが分かった途端に、避けるべきだという自分の直感の正しさを感じた。一度懐に入れてしまえば、きっと執着してしまうだろう。それが分かっていながら私は、避けなければいけないという恐怖よりも、顔を突き合わせて話せる時間を失ってしまう方が、言い表せない不快さに襲われる気がした。
小動物にもこの男にも感じていたのは、その目が私を刺した後の自分がどうなってしまうのか分からない恐怖と、近付いてはいけないという自分への戒め。
そして、この男にだけ感じているのは、自我を持つ独占欲だ。有り体に言えば、どう頑張っても私だけのものにはならないと分かっていながら、縛ってしまいたいという欲求の傲慢さを、この男の前では我慢が出来ないということだった。
「やれたら、じゃなくて、やろう。貴方の曲、好きだから。」
当然だと言わんばかりの物言いができただろうか。男は目を見開き、私の顔を少しだけ見つめた。照れているような、困惑のような、それでいて今にも泣きそうな、不思議な顔をしていた。でもその顔は、二秒と経たずにいなくなり、さっきの軽薄そうな笑顔と打って変わった、はにかみ顔になる。
「告白みたいだな。なんか、すげえ照れるね。」
その顔を見ながら、思った。
この男の目が私を刺すなら、いっそそのナイフを持って私が振りかぶってしまおう。はなから口下手だから、喋れなくなってしまってもいい。その目に刺されると喜びで動悸がしてしまうから、見えなくなってしまってもいい。耳さえ残っていれば、私はこの男の作る音楽を聞くことが出来る。
この男の目は、まぁるいまぁるい、私だけのナイフだ。
-まるいナイフ-
周囲の目なんて気にしなくていい。
君がしようとしていることは、誰にも邪魔できない。
誰が何と言おうと、何も心配はいらない。
君は君のやりたいことをなんだってできる。
世界中の誰にだって、
君の奏でる音楽を届けられる。
そういう世界に君はいる。
#君の奏でる音楽
ぜんぶほしい、ぜんぶあげたいって気持ちは、かけがえのないひととのあいだで生まれるものだ。きみがすきだと思うものが、あたりまえのようにわたしのすきになること。抱きしめられたら抱きしめ返したくなること。ひとりきりになったときに、そうやってきみと共有した音、匂い、景色、言葉は永遠にわたしの心に棲みつくだろう。しあわせには崩壊がつきものだって、それを覚悟して、いまわたしはきみのすべてをほしがって、同じようにきみにすべてを奪われたいと思っているの。
君の奏でる音楽___
君の奏でる音が好きだった。
放課後、君が奏でるピアノの音が聴こえてくる。
僕にとっての癒しの音で、君の演奏が終わるまで
僕は教室に残っていたりする事があった。
性格は大人しい子で、おちゃめで
とても可愛い子だった。
そんな君が僕は好きだった。
君の奏でる音楽は全て僕を虜にした
将来君は凄いピアニストになるだろう、
そう確信をしていた。
そんな君は先日学校の屋上を飛び降り自殺をした。
朝、担任の先生にそれを告げられ、
僕は信じられなかった。
だって今も、
僕の頭には君の奏でるピアノの音が流れていたから。
目には見えない音楽が、
目には見えない心に響く。
君の奏でる音楽に
今日もまた私の心は救われてます。
【君の奏でる音楽】#39
『歪なSerenade』
ーーお化けに好かれてしまったみたいだ。あいにく、僕には、そういう趣味はない、悪しからず。
君は、僕の何処を好きになったのだろうか??
僕は、IQぐらいしかいいとこは、ないと自負している。
何時も自分のことで精一杯なのだ。
だから、恋なんて……、時間の無駄だ。
『バカばっかだ』
ーー教室の隣のの机は、桜のかすみ。何時も明るくて友達も多くてふんわりとしたカワイイ女のコだ、それだけ。
でも、その桜かすみの机には、かすみ草の花が置かれていた。
あの日、桜かすみが僕にカードで、『れいん君が好き』と渡したのだ。
『桜さん、いまは、僕は、勉強のことで精一杯なんだ。』と、
当てつけのように彼女のカードをビリビリと破いた。
『れいん君、ひどい……』と、桜かすみは、廊下をカワイイ笑顔が泪ゆがみながら駆けて行った。
今、僕は、桜のかすみのことをカワイイと不覚にも思ってしまった。
桜かすみは、こんな僕の何処がよかったの?何時も余裕がないのに……。
ごめん。
ーー蝉時雨が僕を責めた。
でも、俯いている時間がもったいない。
すると、三階なのに窓から、ノックの音がした。コンコン。
『れいん君、私のことカワイイって一瞬でも、思ってくれてありがとう、ネ♫^_^かすみ、振られたけれども、嬉しかったよ〜。さようなら、れいん君勉強の邪魔してごめんね〜。』
と、桜のかすみは、こっちが話しかけないうちに消えてしまった。『勉強頑張ってね〜、か。』と、僕は呟いた。
教科書を開き、ノートを僕は書いた。『桜かすみさん、こんな僕のことを好きになってくれてありがとう。』
今は、勉強に頑張ります、ごめんね。終わり
【君の奏でる音楽】君の奏でる音楽は、熱くて、魂が
こもっていて、泣けて、やるきをくれて、
すきなメロディで、歌詞も音色も響いていて、わたしの
生きていくうえては欠かせない音楽のひとつと
なっている。それを生で聴けるのは幸せ。
音楽やってくれてありがとう!。ほんとは入るつもり
なかった世界に、足を踏み入れてくれてありがとう。
何でその返しができるのかわからないけれど、
ひたすら追いかけていけたらとおもってる。そして、
ここで叶えたい。だれももが願う、広い会場で、1番前で
みるという夢をー。これからもえー音楽を奏でてね。
この想いよ、とどけ!そして、君の奏でる音楽が
世界へとどけ!。よろしくオナしゃすっ!
3年後pure
音に溢れた日常の中で
君と過ごした日々は全て
音楽になりうるんじゃないかって思う
君の気持ちを知った嬉しみの沈黙や
共に歩いたあの街の騒音
初めて口付けをした鼓動の響きに
愛を重ねた溢れる息遣い
時には痛々しい言葉でぶつかって
行き場のない心を潰し
すれ違いを繰り返す日々
それでも音を立てて崩れることはなくて
何度も紡ぎ直した糸
ここから先は
君と別の色の糸を
また一から紡ぎ直さないといけない
でもそれは君もおんなじね
もう何年も昔の話だけど
君の声と匂いは覚えてるんだ
生きている間に
あと何曲、奏られることか。
_ ₁₀₈
お題 君の奏でる音楽
王者のようなその音に、憧れなかったと言えば嘘になる。
私に比べて君は、音も響きも華やいでいたから。
先輩に代わって1stを吹くことも、ソロに選ばれるのが多いのも理解していた。
でも、もう限界だ。
最後の演奏会が決まって、当たり前のように1stもソロも決まった君が帰り道に放った言葉。
「正直、1stもソロもやりたくないなぁ。」
は?
ふざけんなよ。なにが『やりたくない』だ。
あんたはいっつもそうだ。私たち凡人の事なんか理解しないで、自分に都合のいい世界しか見ないで。
何であんたなんかに、1stを、ソロを。
「嫌なら、言えば良かったじゃん。」
あ、言ってしまった。こんな感情、見せたくなかったのに。
「いっつもそうだよ。君は涼しい顔して全部持ってったかと思えば、その度に釈然としない顔してさ。そんな顔してる暇あるなら、少しは私たちの事も考えてよ。」
本当は、悔しかった。
周りにはしょうがないなんて言ってたけど、本当はずっとずっと悔しくて。
あんなに練習して、技術も音も並ぶくらい高めたのに。
隣にいるのに、どうして、こんなにも遠いのか。
「君と同じ部活なんて、入んなきゃよかっ」
目の前の光景に、息が止まる。
「ごめん。」
泣いていた。いつも自信満々な君が、王様だった君が。
「私は、君の優しい、包み込むようなホルンの音が、大好きだったから。」
1年生の頃から、ずっと。
君の吹く音が、憧れだったんだ。
「先輩に恨まれても、贔屓って言われても、吹部で、君の奏でる音が聞いていたかった。」
でも、それは全部。私の自己満足でしかなかったんだね。
「ごめん。ごめん。ほんとうに、ごめん。」
君はそう言いながら、ゆっくりと、静かに涙を零していた。
私は、何もかも忘れたようにただそこに立っていた。
かける言葉なんて、ある筈もなかった。
一晩経てば、二人とも何も無かったような顔になる。
でも私は知ってしまった。
その胸に宿る本当の思いを、願いと言うにはささやかすぎる願いを。
それでも君はいつものように、真っ直ぐ前を見据えている。
王が民衆を見つめるように、威風堂々と。
ねぇ、今からでも間に合うのかな。
謝ることも、君と話し合うことも。
そんなことを考えながら、私は今日も2ndへ座った。
ぼくには、忘れられないものがある。所々ポロポロという音をたてながら弾き語る、君の姿。歌声は好きだが、ギターの音はまるでダメ。おもちゃのギターでも、まだましな音を奏でるだろう。
でも、ぼくは君の弾き語りが好きだった。苦しい夜に、側でただ歌ってくれる君が好きだった。
耳障りなはずなのに、どうでもいいはずなのに、君の奏でる音が未だに忘れられない。
君の奏でる音楽が私は一等好きなのです。
君の奏でる音楽は、軽やかに舞う花弁のようで楽しいの。
君の奏でる音楽は、陽の光を反射する海のようでワクワクするの。
君の奏でる音楽は、椛や銀杏に彩られた山のように鮮やかで。
君の奏でる音楽は、雪降る朝の空気のように澄んでるの。
───いつからだろう
君の奏でる音楽が、蜂蜜みたいにとろりと甘く胸の内に広がるの。
君の奏でる音楽に、甘く甘く絡め取られて沈んでしまう。
君の奏でる音楽が、私を真っ赤に染め上げる。
いつものようにドア越しに聴く音楽がまるで私を好きだと言ってるようで。聴いていられなくなった私は耳を塞いで蹲る。
言の葉を交わすどころか、顔を合わせたことすら無いというのに。
君の奏でる音楽が好きな私は、いつしか音楽を奏でる君が好きになってしまったらしい。あぁどうしよう。どうも出来ない。
耳を塞いでいる私は音楽が鳴り止んだ事に気付かない。
─────背中を預けるドアが開くまであと数秒
2023.8.12 深夜「君の奏でる音楽」#10
「書 け る か!」
日常ネタ風の連載形式で投稿を続けてきた某所在住物書きは、配信された題目に天井を見上げ、絶叫した。
音楽だそうである。誰かが奏でるらしい。そのシチュエーションは明らかに物書きの不得意とする「エモいお題」に違いなかった。
「アレか、このアプリ絶対エモネタ書かせるマンか!いいぜこうなったらエモエモのエモ書いてやる!」
寝て起きてまともに読める内容のノンエモ閃いたら、ソッコーで投稿し直すからな!物書きの顔は羞恥に灼熱し、己の執筆傾向とその不得意を明示していた。
――――――
耳と手と背中を刺す極寒。
視界の奥行きも、幅も制限する風雪。
夕方降り積もったパウダースノーが、北海道に居座る寒気と低気圧に促され、質量ある空気として、
大樹の下で悪天候をしのぐ青年の、制服たる黒スーツと防寒用の白コートを押してくる。
開けた雪原には、古いボロ小屋ひとつと、少し離れた場所に大きなエゾヒノキが1本だけ。
ビュルルルル、ルルル。
小屋に隠れ息を殺す男の釈明を代弁するように、風が冷気が氷の粒が、黒スーツの胸を叩き続ける。
夜の地吹雪である。天上に雪雲は無く、星と満月が、冷えた冬空を飾っている。
ホワイトアウトは空の下の些事。
風の音が騒がしいのも、雪が飛んでせわしないのも、ましてや、これから繰り広げられるであろう人の子同士の喧嘩など。彼等はまるで意に介していない。
それらはただ静かであった。
『兎が「曲」を「奏でる」前に、全部終わらせろ』
雪国の片田舎に逃亡した元同僚の機密窃盗犯「兎」、多田野 藻部太郎を追い、体感零下2桁の真っ只中で張り込みを続けている「ツバメ」、主神 公助。
上司の条志、「ルリビタキ」から、持ち出された機密の回収と、藻部太郎への「懲戒解雇処分」執行を言い渡されている。
『「演奏」が始まったら、アレを止める方法は無い。Wi-Fiオフライン関係無く、可聴範囲すべてのセキュリティを乗っ取り、鍵はことごとく壊される』
公助のスマホに条志から連絡が入ったのは、夜も夜、22時を過ぎた頃のこと。
『お前の失敗は、つまり日本の平和の終わりだ』
スピーカーから聞こえるのは淡々とした上司の声。
『発……可は……。…………も構わん。確実に……』
話の途中で、音声が途切れる。
天候の影響か、田舎ゆえの電波の弱さか。
「申し訳ありません。電話が遠いようです」
聞き取れない。
風に持っていかれた白フードを掴み、被り直して、公助が少し大きな声で要請した。
「もう一度仰って頂けますか、ルリビタキ部長?」
…………………………
「――あっ、なるほど、この先が抜けてるから『落丁本』で無料配布だったワケか」
都内某所、某アパート。
かつての物書き乙女、元夢物語案内人であった社会人が、某同人誌マーケットの戦利品を1冊1冊愛でて昔を懐かしんでいる。
「やっぱお金、ケチるべきじゃないな。有料の完全版貰っとけば良かった……」
乙女が読むのは通称「ツル」または「鶴」。あるゲームにおける、「ツバメ」公助と「ルリビタキ」条志の、黒白ないし黒瑠璃主従。昔も昔、過去作3月28日投稿分や、4月21日投稿分等々に登場していたネタである。
噛ませ犬ならぬ噛ませ「兎」は、まさかの6月27日投稿分の「黒いウサギ」が再登場。鶴も兎も、詳細は割愛する。
要するにこの乙女の心の滋養であり、妙薬である。
「で、コレがその、物語ラストでツー様が奏でる予定の音楽?」
一読通して、再度前書きから読み直し、目に留まったのは、筆者が指定する実在のフリーBGM。
「ツー様、この展開から『曲演奏する』って、裏切るの?それともウー君が弾いた後の解除キーか何か?」
推しの奏でる音楽は、一体どのような結末をもたらす予定であったのか。
乙女は指定のBGMをダウンロードし、早速リピート再生しながら、結末欠ける物語の2周目を味わった。
#君の奏でる音楽
風に乗って、バイオリンの音色が聴こえる。
優しくて暖かい。君の奏でる音色。
こうやってこの音が聴けるのが僕だけだと思うととても心地良い。
これからも僕だけが聴き続けられたら良いのにな。
好きと嫌いになりたいの感情が交互にやってくる。
その都度私はどうしたいのか、わからない。
相手に思いを伝えてる。
伝えられた相手はどんな気持ちだろう
この前は好きとも言わないのに、今日は好きって何やねん。そう思うよね。
この心の動きをやめていきたい。
後悔や期待が入り混じり、心が痛くなるのだから。
わかっているのにしてしまう。学べる生き物なのに、この分野は学べない。
どうして。
どうしたらやめられるのか。
満たされたい。常にそばで。
それを望んでいるんだろうね。
けど、それは叶わないんだよ。
だから苦しいのかもしれない。じゃぁどうするか。
そこばかり見るのではなく、時にはみなければいいんじゃないだろうか。
見ない。それ、いいかも。
#52【君の奏でる音楽】
私しか知らない その音は
とても優しくて
とても愛おしくて
ずっと聴いていたい。
誰にも知られなくないから
もう ずっと
私だけって約束してね。
君の奏でる音楽
それがわたしを生き生きとさせる。
大会優勝という目標を掲げ、切磋琢磨した親友。
最高に気分が高揚する。自然と笑みがこぼれる。
今日までやってきて本当によかった。
それがわたしを殺すんだよ。知らなかったよね。
今日それを教えてあげらあ。わたしの親友。
アンタだけ笑って生きさせはしねえから。
今日を忘れられない日にしてあげる。
目が覚めると君がいた
風を纏わせカーテンがゆらめく
君は起きた僕を見て笑った
風が心地良い
ヴァイオリンの音色とともに
誰もいない教室のなかで
僕は再び微睡んでいく
『君の奏でる音楽』より
中学生の頃は
吹奏楽の強豪校で
クラリネットを吹いていました
それはそれは厳しい部活でしたが
やればやるほど腕も上がり
やり甲斐をかなり感じていました
おかしくなったのは
一年生でもオーディションで合格すると
先輩方と一緒に混ざって
憧れの曲を練習出来
コンクールに出ることができる
この件のオーディションに合格した時からでした
同級生からの妬みや嫉み
精神的に追い詰められ
コンクールには出ましたがその後
吹奏楽からは遠ざかった苦い思い出
今なら言える
あの頃の合奏が大好きだったわたしへ
あなたの奏でる音は
先生の仰るように
心地よい音色でしたよ!