君の奏でる音楽が私は一等好きなのです。
君の奏でる音楽は、軽やかに舞う花弁のようで楽しいの。
君の奏でる音楽は、陽の光を反射する海のようでワクワクするの。
君の奏でる音楽は、椛や銀杏に彩られた山のように鮮やかで。
君の奏でる音楽は、雪降る朝の空気のように澄んでるの。
───いつからだろう
君の奏でる音楽が、蜂蜜みたいにとろりと甘く胸の内に広がるの。
君の奏でる音楽に、甘く甘く絡め取られて沈んでしまう。
君の奏でる音楽が、私を真っ赤に染め上げる。
いつものようにドア越しに聴く音楽がまるで私を好きだと言ってるようで。聴いていられなくなった私は耳を塞いで蹲る。
言の葉を交わすどころか、顔を合わせたことすら無いというのに。
君の奏でる音楽が好きな私は、いつしか音楽を奏でる君が好きになってしまったらしい。あぁどうしよう。どうも出来ない。
耳を塞いでいる私は音楽が鳴り止んだ事に気付かない。
─────背中を預けるドアが開くまであと数秒
2023.8.12 深夜「君の奏でる音楽」#10
8/12/2023, 3:30:44 PM