熾花

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 ぼくには、忘れられないものがある。所々ポロポロという音をたてながら弾き語る、君の姿。歌声は好きだが、ギターの音はまるでダメ。おもちゃのギターでも、まだましな音を奏でるだろう。
 でも、ぼくは君の弾き語りが好きだった。苦しい夜に、側でただ歌ってくれる君が好きだった。

 耳障りなはずなのに、どうでもいいはずなのに、君の奏でる音が未だに忘れられない。

8/12/2023, 3:31:07 PM