幸せと、不幸せと、向い合せ。
あなたが楽をする時、私はため息をつく。
あなたが泣いている時、私は晴れやかな気になる。
あなたが怒つているとき、私は思わずふふふとわらう。
あなたが喜んでいる時には、私は呆れて首をふつている。
ため息をつきながらも、愛おしいとあなたに尽くす。
涙からあなたの優しさを知り、晴れやかな気になれる。
普段怒らないあなたの、怒りなれない姿に笑ってしまう。
呆れながらも、あなたの無邪気な笑みに私の頬も上がる。
向い合せの言葉は、いつも喧嘩し合つている。
でも、時には惹かれ合い、人の繊細な愛を心を表してくれる。
幸せと、不幸せと、向い合せ。
私達も、きっと向い合せ。
ああ、あの鳥のように。そんな言葉が口癖だったあなたは、今鳥よりも高い場所にいる。
私はずっと嫌いだった。いろんなものに惹かれ、いろんなものになりたがるあなたが。あなたには、あなたでいて欲しかったから。
でも、今ならわかる。しっかりと、苦しいほどに。
ああ、あの鳥のように。空を飛んで、雲を突き抜けて、日の容赦ない業火を肌の隅まで浴びながら、あなたの側まで行けたなら。
捨てられない、先の丸い鉛筆。湿気てしまって、色褪せていて、もう使い物になりそうにない。角張った身体には、掠れた必勝の文字が彫られている。
ありがとう、そう言いたい。あの時の、僕を支えてくれたもう一人の僕。それを思い出す度、捨てようと取った彼をまた押入れの奥へ戻す。
僕のお父さんは給料が少ない、お母さんはすぐ怒る、お兄ちゃんは弱虫。時々、他の人の家族が羨ましくなって「他の家の子がよかった。」なんて言っちゃう。
でも、でもね。やっぱり家族は今の僕の家族が一番なんだ。お父さんは僕たちのために頑張ってて、お母さんは僕のことをいっぱい思ってくれて、お兄ちゃんは怖いときでもずっと側にいてくれる。頼りなくて、喧嘩もしてそれでも、こんな僕とでも一緒にいてくれる家族が大好きで、誇らしい。
夜の海。浮かぶクラゲの髭は、微かに光を放ち夜空の星の様だ。月は今日も尚、恥ずかしそうに雲に隠れたり顔を出したりする。
いつか貴方と見た星を思い出す。満月の夜にあなたは隣でお酒を呑み、私はその横顔を眺めて惚けている。恥ずかしがりな貴方でしたから、普段はなかなか顔も見せてくれない。でも、綺麗な星の夜だけは、お酒とともに貴方の奥底も見れた気がした。だから、私は星の夜が好き。そして、それを思い出す夜の海もまた愛おしい。