『同情』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
私の傷を見て「可哀想」という人。
私の気持ちを知って「大丈夫?」という人。
私の悩みを知って「相談乗るよ」という人。
同情してんじゃねーよ。
そういう絡みが一番だるい。普通のお話しよーよ。
同情なんて、クソ喰らえ
「同情なぞ要らぬッ!」
道経はそう怒鳴り散らして稽古場から飛び出した。
地団駄を踏みながら渡り廊下を去ってゆく。
「道経さまに何を申されたのですか。」
木刀の手入れをしながら幸仁が問いかけた。
「べつに何も…。親父が死んでたいへんだろうから私の屋敷に来れば良いと申しただけだ」
不思議そうな顔をしてそう答えるのは直秀。幸仁の主人であり道経の稽古仲間である。
「何がそんなに気に食わんのか…。」
「直秀さまとは対等なご関係でいらっしゃりたいのでしょう。そのお気持ちは分かります」
幸仁はそう言って微笑んだが、直秀にはその気持ちがさっぱり分からぬ。
時に助け、時に助けられるのが人間というものであろうに…。
* * * * * * * * * * * *
「おい。これで機嫌を直せ。」
縁側で一人黄昏ていた道経に直秀が菓子を投げ渡す。
「それともこれも同情と云って受け取らぬか。」
「ふん。」
道経は菓子を受け取ると大口を開けて放り込んだ。
「不味い菓子だ。」
「助け合うのが人間の関係と云うものだ。」
直秀は道経の横に腰掛け、従者が蝋に火を灯すのを「すぐ帰るゆえ」と止めさせて云った。
「私の屋敷に来るのが良かろう。」
「同情は要らぬ。」
「同情が悪いか。」
「悪い。お前とおれは対等ゆえに、同情は要らぬ。」
幸仁とおなじことを云う… と直秀は思った。
「おれはお前の助けになってやりたいのだ。」
道経はゆっくりと直秀を見た。
そして直秀の真っ直ぐな眼差しをとらえ、諦めたようにふっと笑った。
「ならば、まいにち稽古終わりに先の菓子をくれ。それで十分だ。」
「不味い菓子で良いのか。」
「良い。」
「わかった。」
直秀は力強く頷いてその場を後にした。
「あやつの生真面目さには敵わんな…。」
そう云って道経はまた少し笑った。
【同情】
私が
行った場所
見た景色
聞いた音楽
すべて知っているのは私だけで、
そこから生まれた私の気持ちを
理解できるのも私だけでしょう。
だから
誰かの同情なんかいらない。
誰にも同情はできない。
ただ
君の紡ぐ話に、耳を傾けるだけ。
「同情」
炬燵に潜り込むと、先客のきなこが面倒くさそうに一声鳴いた。
「あら。ごめんなさいね」
布団をあげて中を覗くと、きなこは丸い目でこちらを見たあと、これまた面倒くさそうに起き上がると、私の真横を通り過ぎて炬燵から出ていった。
きなこ色をしているからという安直な理由で名付けられたことを恨むように、この猫はちっとも私に懐かない。
気まぐれに猫じゃらしに面倒くさそうに反応する程度で、おそらく私の方が遊んでもらっている。
寝転がってスマートフォンをタップする。
SNSを開くと、華やかな写真の洪水に窒息しかけて、すぐさま閉じた。
惰性で、インストールしているソーシャルメディアを順番に開く。が、自己嫌悪と劣等感を育てただけだった。
視線を感じて顔を上げる。
きなこがこちらを見ていた。
猫の世界はどんなだろう。
昼寝と、ごはんと、ちゅーると、毛づくろいと、時々人間の相手と。
「君になりたいよ」
呟きを拾ったわけではないだろうが、きなこが面倒くさそうにこちらへやってくる。
炬燵に潜り込むと、中で方向転換をして、布団から顔だけを覗かせる。
気まぐれに身体を寄せてくる愛猫は、きっと明日はまたつれなくそっぽを向くのだろう。
「同情してくれるの?やさしいね、君は」
きなこはひとつ伸びをすると静かに目を閉じた。
その日の朝。友達の父親の顔がテレビに流れていた。娘に性的虐待をしたという疑いで逮捕されたとのことだった。
学校に行くと、案の定その事件について学校中がもちきりになっていた。
私は泣きたい気持ちを必死に堪えながら、教室で友達が登校してくるのをじっと待った。一体どんな思いで毎日あんな被害に耐えていたのだろうか。毎日どんな思いで笑顔で学校生活を過ごしていたのだろうか。考えれば考えるほど、友達としてなにもできなかった自分を恥じた。何度だって助けてのサインはあった。でも、私はそれに気が付かなかった。どんな言葉が最適なのだろうかと悩んでいると、突然教室の音が無くなった。パッと顔を上げると、友達が教室のドアをあけて立っていた。その表情にいつものような笑顔はなく、すべての光を閉ざすように髪が下ろされている。いつもの揺れるポニーテールが幻だったのかと思うほど、面影がなく疲れ切った顔をしている。でも、これが本心だったのだ。今まで必死に偽って隠して生きていたのだろう。だから、事件が大っぴらになって、隠す必要がなくなって、今、素の自分でいるのかもしれない。立ち上がって駆けつけようとする頃には、教室に音が戻っていた。
「ねぇ、大丈夫……?」
声をかけたが、無視された。私の横を通り過ぎて自分の席に座る。
「よく学校来れるよね」
「あれってどこまでヤったんだろうな」
「父親に犯されるとかエグすぎ」
みんなが面白おかしく、本人に聞こえる声で話す。近づいて、今度は正面に向かい合った。
「つらかったよね。何にもできなくてごめん」
「なんで謝るの? 私助けてなんて言ってないでしょ」
それでも、と言葉を続けようとしたところで彼女は爆発した。
「テメェら全員面白がってんじゃねぇよ! いいよなぁ。まともな親のもとで生まれて、ちゃんと愛されて育った奴らは。全員、死んでこいよ」
以前の彼女からの口からは出てこなかったであろう鋭い刃のような言葉に手を差し伸べた。落ち着いてほしいと、その一心で。だが、すぐに払い除けられる。
「お前も、同情してんじゃねぇよ」
荷物を席に置いたままにして、教室を飛び出した彼女を追うことはできなかった。再び、教室から音が消える。
それから、彼女は一度も学校に来なくなった。いつの間にか行方不明との噂が広がった。彼女が生きているかどうかを知る者は誰一人としていなかった。
同情なんてするな
余計に僕が惨めになる
同情なんてする前に
君は前を進んで行け
僕なんかに構う前に
君は光を見ていて欲しいんだ
お題『同情』
好きな子の目の前で、おならをしてしまった僕に
親友はこう言った。
「あなたの悲しみはわかりませんが、僕はいつでもあなたの味方です。」
「どうかこの試練を乗り越えてください。僕はあなたを応援しています。」
「あなたの痛みを分かち合いたいと思います。僕はあなたのそばにいます。」
「あなたは一人ではありません。僕も同じように苦しんでいます。」
「あなたのために祈ります。あなたに平安と希望がありますように。」
同情の形は、人間の美しさや尊さの証です。
『同情』
トタトタトタと階段を上がる愛猫。
途中、踏み外したのに、澄まし顔です。
「ちゃんと、見てましたよ。」と、声を掛けても澄まし顔のままです。
同情の余地なしなので、ワシワシ撫でちゃいます。
同情
そんなものはいらない
ただ可哀想だと思われ生きていく
それがひどく苦しく
そして空い。
道場は自分にとっていいことだろう
ただその相手の立場に立って考えると
ただただ、迷惑なだけではないのか?
そんな場面がいくつもある。
その人の立場になってようやく気づく
自分がどれだけその人を傷つけていたのかを…
【207,お題:同情】
「同情」の類語は「思い遣り」だそうだ
類語とは同じような語を指す言葉だが、
何故だろう「同情」と「思い遣り」が同じような意味とは思えない
「同情」のほうが、なんとなく悪い意味に聞こえるのは何故だろう
日本語は、実際に使っている我々からしても
とても興味深く難しいものだ。
哀れみの目なんて欲しくない。
でも、ひとりにしないでほしい。
その人の気持ちをわかったつもりになって同情するするべきなのか私にはわからない。人が何を考え、どう感じるかはその人にしかわからない。実際に自分が体験したわけでもないのに慈しみの言葉をかけるのはどうなのだろうか?自分の立場やその人の感じ方次第では嫌味に聞こえるかもしれない。だけれどなんの言葉もかけないのは非情に思い罪悪感を感じてしまう。一方で同情の言葉をかけられたことで救われたみたいな話も聞く。マジでわからない。そもそも、同情事態が良くないのかもしれない。いろいろ書いたけれど、少なくとも私は同情されるような立場であったら、慈しみの言葉をかけられるのは嬉しいと思う。これも実際にそのような立場にならなければわからないことだけれども。
※物語です。グロ(?)注意
「ねえ見て、あの子の足」
「うわっ傷だらけじゃん、可哀想…」
廊下ですれ違う他クラスの子たちがコソコソと呟く。もう慣れたものだ。あたしを同情する話し声。
傷だらけの足に袖から覗く血の滲んだ包帯。
_あたしのことなんて何もわからないんだろうなぁ
同情するからあたしは可哀想になるの。
家庭環境もあたしの気持ちも何も分からないのに、どんな気持ちで発言しているんだろう。
_無知って幸せだなぁ
そんなことを考えて何も聞こえなかったのかのように立ち去る。
誰もいない空き教室。あたしのお気に入りの場所。
あたしはいつものように錆びたカッターナイフを取り出す。
自分のことながらおかしなくらい痩せた足に傷をたしていく。痛みは感じない。流れる鮮やかな血液に興奮を感じる。
「ぜーんぶあたしがやったのに気づけないなんて可哀想」
自分でつけた傷を見て勘違いしたあの子達を憐れむ。
そして自分以外につけられた痣を覗き込む。
「見えないとこばっか殴るからなぁ」
内出血を起こした骨の浮き出たお腹を見てため息をつく。
視線を足へと戻しさっきのあの子達の表情を思い出す。
途端に頬が緩み出す。
_あーあ!
同情されるあたしだーいすき♡
同情、というものはしばしば、本来意味する「思いやりをもって寄り添う」のとは全く別物の動機のために「仮面」のように利用される「ふるまい」として現れる。
心が温まり、純然と励ましを受け取れる「同情」は、言葉通りのまっすぐな、優しさの表れたものだと思う。
反対に、侮辱を感じる「同情」もある。
違いはどこで感じるのか、考えたことがある。随分昔のことだ。自分の経験を振り返ると、当時の私の、怒りの反応ときたらまるで瞬間湯沸器のようだった。私はいったい、その「同情」に何を感じたのか。ちょっと言葉回しが古いが、「汝、弱き者よ。憐れみを垂れてやろう」という、「相手の心理的な態度と、相手が自分に対してとろうとしている立ち位置の観」とでも言おうか。
居なくなれ、私を貶める行為に依存しようとする者よ。私は汝の自己価値感の不足を補う部品などではない。絶対に。私の誇りを踏みつけるな。…という怒りだった。
こういう状況のたちの悪いところは、正直言って「しんどい苦境にある」ときに出くわすことだろう。もっとアレな場合、相手の考えのかたちの中に「かわいそうな人は憐れんであげるのが、善い行い」という、「悪意なきテンプレートと思考停止」が鎮座ましましていたりする。まったく悪意が無いから、スルーするしかない。
もしかしたら、こだわり無くそういった「人間関係の偏り」を自分の良いように転じる「達人」も居るのかもしれない。それはそれで才能だ。
でも、私は粗忽者なので「きーっ」となるのだ…
同情
偽善じみた言葉にも見えるけど
私はそこまで悪い印象じゃない
同情は相手がどう感じているかを想像して
心の中で寄り添うことだと捉えているから
この世には相手がどう思うかなんて考えないで
平気で人を傷つける発言や行いをする人間が
たくさんいる
私も興味のない事や自分に関係のないもの
にはほぼ無関心だ
だから一瞬だけでも相手に関心を向けて
寄り添おうとする行為は尊いものだと思う
やめて
私の辛さなんて私だけが知ってるの
貴方達には分からないの
理解出来るはずがない
そんな薄っぺらい気持ちなんかいらない
「分かる」なんて言葉簡単に言わないで
この気持ちが
分かられてたまるもんですか
何度眠れない夜を過ごしたか
何度泣いたか
その辛さを
軽軽しく認めないで
ああ、やめて
優しくしないで
今まで堪えてきたのに
全部崩れちゃうから
「同情」
同情ってなんだろう。
相手に同情する人は、相手のことを下に見ているのだろうか。
同情を辞典で調べてみると
『他人の身の上になって、その感情をともにすること。特に他人の不幸や苦悩を、自分のことのように思いやっていたわること』とあるが、実際使われてる意味は、私が考えた意味の方が大半なのかもしれない。
「同情しないで、ほっといてよ!」
「いや、別に同情してる訳じゃないよ。僕は本気で、君と一緒にいたいんだ」
「……」
彼女は疑い深そうにこちらを見ている。一体いつから、こんなにこじれた性格になってしまったのだろう。僕は仕方なく、彼女に説明した。
「君に出会って、僕は救われたんだ。だから、一緒にいたいって思ってる。ただそれだけだよ」
「……本当に?」
「ああ」
君がこちらを向いて立ち上がり、頬に流れる涙を指で拭った。
綺麗な涙だ。僕は急に、君を抱きしめたくなった。君の魂を癒せたら。一緒に歩いていけたなら。
【同情】
『同情』
同情とは違うかもしれないが、私は人の感情の影響を受けやすい方だと思う。
怒る人、悲しむ人、困っている人を見かけると、自分の無力さを叱責されているように感じて辛くなってしまう。
もちろん、それは私が勝手に感じただけで、その人たちに私を害する意図がないことは分かっている。
それでも反応してしまうのだから、たちが悪い。
小学2、3年頃の夏休みに、近くの公民館でアニメ映画の鑑賞会をするというので、弟と泊まりに来ていた従姉妹たちと出掛けた事があった。
窓という窓を暗幕で覆った薄暗い会場は、興奮した子供たちで一杯で、騒々しいお喋りが飛び交い、息苦しいほど蒸し暑かった。
それでもお祭りの喧騒のようでもあり、それまで映画館に行ったことのない私は、楽しく思っていた。
やがて映画が始まり、ますます期待は高まった。
しかし私は、これが何の映画かを知らずに見に来ていた。
ストーリーが進むに連れ、だんだん不安になり、それは間もなく後悔に変わった。
爆弾が投下されるシーンに差し掛かると、私はすぐに顔を伏せて耳を塞いだ。
しかし、映画の大音量の前では何の意味もなかった。
「なんでーーーーだろうね」という近くの男子の言葉が生々しく耳にこびりつく。
聞きたくなかった。
もちろん、その男子に私を害する意図がないことは分かっているが、どうしようもなく体が反応してしまう。
私は吐き気を覚え、内心半狂乱になりながらも必死に耐えた。
映画が終わって会場を出る時、他の子たちは何事もなかったかのように、いつも通り帰って行った。笑顔の子もいた。
私は普通を装っていたが、誤魔化せてはいなかったと思う。
電気がついた会場は、壁一面に写真が展示されていた。
私は何も見ないように視線を足元に固定して、脇目も振らず会場の外へ出た。
気分は最悪だった。
みんなが普通に耐えられるものを、私は耐えられないのか。
途中で見るのを止めたものの、音声から想像して恐ろしいイメージが完成していた。
それからは、映画のイメージに重なって毎晩自分が死んでいくシーンを追体験した。
恐ろしくて眠れないのに、眠れなければそのシーンから逃れる事ができない。
そんな地獄が大人になるまで続いた。
それは、翳りの一つとなった。
人前での明るい性格と一人の時の暗い性格。
これらは、春の暖気と寒気のように簡単に混ざり合わず、そのギャップに一人疲弊した。
大人になり、死に対する考え方が変わると、だいぶマシになった。
自分と他人の線引ができるようになると、さらに楽になった。
大切な人が困った時、自分も同じ精神状態に陥ってしまっては、手を差し伸べることなどできない。
せめて大切な人を守れるくらいには、強くなりたいと思っている。
『同情』
・柚穂(ゆずほ)
・秋人(あきと)
*長めです。僕の書く文はいつも長くなってしまいます。それが最近の悩みです……。
少し長めの物語が読みたい人向け、ということにさせてください。
『可哀想な奴』と、ぼくは若干同情した。
裏表がなくて、周りの奴らに良い顔をして、酷いことをされても自分に非があったんだと思い込んで。そんな『良い奴』過ぎるから、ああやってウザがられてしまうんだ。
ぼくがどれだけ「お前はお人好しすぎる。良い奴はどれだけ良い奴でも、ずる賢い奴には勝てない」と言おうが、柚穂は困ったような顔をするばかりだった。彼は皆の幸せが自分の幸せでもあるような、そんな聖人みたいな性格をしている。だから悪い噂が多くあるぼくにも屈託のない笑みを向けて、仲良くなろうとしてくるのだ。
小学生から高校二年生になった今まで、ぼくには友人らしい友人はいなかった。柚穂以外、ぼくに話しかけてくる人は誰もいない。それなのに他の生徒といえば、こそこそと噂話ばかりするような連中だ。
「親が怖いヤクザらしいぜ。やべ〜」
「えー有名だよねその話。マジなの?」
「マジマジ。本人もあんなんだしさぁ、うわこっち見た」
「厨二病だろあいつ。孤独がカッコイイとか思っちゃってるタイプ」
教室、廊下、どこにいてもくだらない会話が耳に入る。ぼくは居心地が悪くなり、教室の外に出た。
「え、今睨まれたんだけど!」
「やば。今の話聞こえてた説無い?」
中には同情の目を向けてくる者もいた。目を向けてくるだけで、ぼくに話しかけようとはしてこない。同情するだけならば、ああやってわざと大きな声で噂をしていた奴らと大差ない。どちらにしろ、異端者を見る目に変わりはないのだから。
* * *
昼休憩の時間、おれは教室で一人で弁当を食べていた。前はクラスメイトの皆と談笑しながら昼食をとっていたのだが、今は誰もおれと話そうともしなかった。話しかけても、あまり相手にされない。
「良い子過ぎてうざい」と言われた。だからおれが皆を不快にさせてしまったのだと思う。でも、どうしていいか分からなかった。おれにとっては普通に毎日を過ごしていただけで、どう直せば皆がまたおれと笑いあってくれるのか、考えても結論は出なかった。
そういえば、秋人にも似たようなことを言われたことがある。「お前はお人好しすぎる」と。
おれが今の状況になってしまって、クラスメイトの何人かから同情の目を向けられることもあった。でも、おれと一緒に弁当は食べてくれない。完全に、見ているだけだ。
「みんなと一緒に食べてるみたいだから」と最近、母親は弁当のサイズを前のものよりも一回り大きいものにしてくれた。それが余計におれの心を悲しみで蝕んでいった。一人だと食べきれない、しかし残してしまったら心配をかけてしまう。何とか食べ切ろうとはするが、徐々に箸の動きは遅くなっていった。
突如、クラスメイトがざわつきだす。おれは不思議に思って弁当から目を上げると、目の前には秋人がいた。
「うわっびっくりした! 秋人、あの、どうしたんだ? 他のクラス入っちゃだめなんだぞ?」
「同情するだけの奴らと一緒になりたくないだけだ。別に柚穂の為じゃない」
ふん、と秋人は鼻を鳴らし、誰も使っていない椅子を持ってきておれの机のそばに座った。おれの弁当のおかずを手でつまんで食べる秋人を見つめていると、優しい彼は眉を寄せて素っ気なく言った。
「ひとり飯は性にあわないんだろ」
その言葉はおれの心をぽっと温めてくれて、思わず笑いが零れた。
秋人には良くない噂が多くあって、そのせいで人に誤解されることがよくある。でもおれは、ちゃんと知っている。秋人は噂通りの人間ではないことを。
おれが笑うと、秋人は視線を窓の方へとやってしまった。
「ありがとう秋人……えへへ、やっぱ良い奴だな」
「お前の為じゃなくてぼくの為にしてるんだからな」
「そっか……でも、おれ嬉しいよ。秋人は怖くて悪い奴じゃないって、誤解が解けてくれたらいいんだけどなぁ」
「……どうでもいい。お前が誤解してないなら、それでいい」