炬燵に潜り込むと、先客のきなこが面倒くさそうに一声鳴いた。
「あら。ごめんなさいね」
布団をあげて中を覗くと、きなこは丸い目でこちらを見たあと、これまた面倒くさそうに起き上がると、私の真横を通り過ぎて炬燵から出ていった。
きなこ色をしているからという安直な理由で名付けられたことを恨むように、この猫はちっとも私に懐かない。
気まぐれに猫じゃらしに面倒くさそうに反応する程度で、おそらく私の方が遊んでもらっている。
寝転がってスマートフォンをタップする。
SNSを開くと、華やかな写真の洪水に窒息しかけて、すぐさま閉じた。
惰性で、インストールしているソーシャルメディアを順番に開く。が、自己嫌悪と劣等感を育てただけだった。
視線を感じて顔を上げる。
きなこがこちらを見ていた。
猫の世界はどんなだろう。
昼寝と、ごはんと、ちゅーると、毛づくろいと、時々人間の相手と。
「君になりたいよ」
呟きを拾ったわけではないだろうが、きなこが面倒くさそうにこちらへやってくる。
炬燵に潜り込むと、中で方向転換をして、布団から顔だけを覗かせる。
気まぐれに身体を寄せてくる愛猫は、きっと明日はまたつれなくそっぽを向くのだろう。
「同情してくれるの?やさしいね、君は」
きなこはひとつ伸びをすると静かに目を閉じた。
2/20/2024, 1:45:57 PM