『世界に一つだけ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
『世界に一つだけ』
お題を見た時から SMAPの世界に一つだけの花
が脳内再生されるんだけど私だけじゃないはず 笑
世界に一つだけ
私の孫娘はアクセサリーに興味を持つお年頃。
おばあちゃん、これは何?これは?と、
使い方を教えてもらおうと一つ一つ小さな手に取って聞いてくる無邪気な姿。
それを見ているだけで癒される
「ねぇ、これは?」
持ってきたのは小さな花の入ったイヤリング
中に入っている液体と一緒にゆらゆらと揺れるそれを両手で大切そうに見せてくる
「触っちゃだめよ」
私の娘がその小さな手から小さな物を取り上げる
「いいのよ、」
娘から受け取ったそれを、小さな手に乗せてやると嬉しそうに目を輝かせた
「これはね、あなたのおじいちゃんがプロポーズしてくれたときにくれた花なの。」
「ぷろぽーず?」
「私が一番キレイだったとき。世界は真っ黒で、絶望に溢れていた。
けど、おじいちゃんはそれに負けないくらいキレイな花をくれたの。」
「そのお花がこれ?」
「そう。」
「でも、このお花見たことあるよ?
先生がこれは雑草です、って言ってた!」
「ちょっと!!」
娘は呆れたように怒ってもう一度取り上げた
「それでも、私にとっては大切なお花なの」
_あなたもいつかわかるわよ
あれから10数年が経った。
それでもあの日のことはよく覚えてる
あの後すぐにおばあちゃんが死んじゃって、私があのイヤリングをもらった。
おばあちゃんが生前にそうしたいと言ったそう。
あの時、お母さんは私には触らせてもくれなかったのよ。なんて疲れた顔で笑ってたっけ。
そして今夜。
プロポーズをされた
決して大きくはないけれど、飾らないキレイな花。
私はおばあちゃんに見せてからイヤリングにしてみた
私だけの、
世界に一つだけの「イヤリング」
きっと孫に言ってあげるの。
あなたもいつかわかるわよ
って。
『世界に一つだけ』
世界に一つだけの残酷。
それは、普段ありきたりと思われていて、忘れ去られている。
テレビ番組で取り上げ、「考えさせられる」機会を設けないと、人の残酷な人生の結末なんて考えない。
幸せになるとは、大切な人と時間をともにすると共に、見えない人物を見ないようにすることでもある。
だから、「考えさせられる」だなんていう言葉がでてくるんだ。
そんな単なるモブの、何百何千という残酷な人生の結末をかき集めると「世界に一つだけの残酷」が出来上がり。
僕たちは本当に「世界に一つだけの残酷」のなかで暮らしているのでしょうか。
時々疑問疑答する。
学生であれば、いじめ、不登校、指定難病、小児終末ホスピス。一つの結末として自殺。
大人であれば、多岐に渡る。
金銭的格差、考えの格差。
置かれている境遇、記憶、時間の使い方。
各種格差による、未確定な時間の経緯の結末が今の自分を形作るって、いつ頃気づいた?
こんな残酷、見たくないという人が多ければ、もっと残酷になる。
あるいは「底辺労働者を底辺と呼ぶな」などと、SNSではきれいごとを言っている有名人をフォローして、考えたくないと言えずに耳をふさぐ人もいる。
底辺って、あるに決まってるでしょ。
何言ってるのさ。
僕らがそれを直視しなければ、彼らがテレビの取材に応じた理由が無下にされる。
苦しい。つらい。
でも、やらなければ。
生きていけない。
ドキュメンタリーは、それが事実あるってことなんだよ。カメラに収められてるってことなんだよ。
進行形の病魔は降りかかり、ますます残酷は残酷になり、残酷なオンリーワンになる。
それを特別価格でお送りします。
あなたへそれをCMを見ているように見つめている。
こんな人が今も同じ日を過ごしているなんて、考えさせられるね――って人は、底辺じゃない。
底辺の人は、考える余裕すらない。
コーヒーも飲めない。
椅子に座らない。
テレビはリサイクルショップで買った5000円のごみ。
布団を模した段ボールを掛けて仮眠。
睡眠時間を削って眠眠打破を飲んでいる。
朝は眠らない。夜も眠らない。
僕らだけ寝ている。
贅沢な時間とは言わない。
やっぱり見えない人は見えないままだ。
「嫌だよ〜!こんなの格好悪いよ!
皆が持ってるみたいなアンパンマンとかのがいいよ〜!」
と、息子の智哉は尚美のお手製のトートバッグを払い除けた
手先の器用な尚美は、智哉が誕生した頃から身に付ける物はほとんど手作りをしてきた
材料費や手間を考えたら買った方が断然安上がりだ
それでも尚美は自分の母親がそうしてくれたように、我が子にはなるべく手作りの物を持たせたいと思っていたのだ
智哉もついこの間までは大人しく尚美の作った物を文句も言わずに着たり使ったりしていたのに、ここのところの自我の芽生えで自分の気持を主張するようになってきていた
「ママが作ったのなんて嫌だよ…
お店屋さんで売ってるのがいいの!皆と同じのがいいの!」
と泣きじゃくりながら、尚美の作ったトートバッグを投げたり足で蹴ったりした
そんな智哉をなだめながら尚美はそのトートバッグを拾い上げ、智哉を膝の上に座らせた
「そうね智ちゃん、お店屋さんで売っているバッグはとっても素敵よね!
でもね、ママの作ったこのバッグは、ママが世界一大好きな智ちゃんのためだけに一生懸命作った世界にひとつだけのバッグなのよ 世界中のお店を探したってどこにも売ってないんだから!誰も持っていないのよ!」
「ボクだけ…?どこにも売ってないの?ボクしか持って無いの?」
「そうよ、智ちゃんだけ特別よ」
「ボクだけ特別?スゴいね!」
「そうよ、ひとつしか無いのだから大切に使ってね 」
「分かった!大切に使う!」
そんな昔の智哉とのやり取りを、尚美は断捨離をしながら懐かしく思い出した
智哉が大学入学と共に自宅を出てからすでに10年が経つ
智哉の部屋は当時彼が出てからほとんど手つかずにそのままにしてある
「勝手に処分してくれていいよ」と言われてはいるが、どこかでこのままにしておきたい気持ちも未だ捨てきれずにいた
ようやく重い腰を上げ少しずつ処分していこうとクローゼットを開けると、「宝物」と張り紙のついたプラスティックケースが出て来た
中からは当時智哉が夢中で集めていたカードゲームやフィギュアが次々に現れた
そのどれもが懐かしく、智哉の幼い頃の顔が目に浮かんだ
その箱の1番下には、丁寧に畳まれたあのトートバッグが入っていた
その他にも尚美がその後も作り続けたアイテムがすべて納められていた
物の価値の分かる子に、物を大切にする子に育って欲しいという思いは、どうやらしっかりと智哉に伝わっていたようで、尚美は温かな涙が次から次へと溢れ出た
「捨てられるわけないじゃない…」
大切なものには大切な思い出が沢山詰まっているのだ
「この箱の中には世界でひとつだけのものだらけだもの…」
尚美はその蓋を丁寧に閉め、元のケースがあった場所にふたたび納めた
智哉がまたその子供たちに、この思いを伝えていってくれることを願いながら…
『世界にひとつだけ』
カチッ。少しの風にさえ掻き消されてしまいそうな金属音がすると同時に、私はステンレス製の灰皿をスっと押す。
朝焼けの淡い光に彼の整った輪郭がぼんやり受かんでいるのをぼおっと眺めるけれど、彼と私の視線が交差することは決して無い。
__ねえ。もう終わりにしましょ。
朝霧の様な煙たい部屋で、いつも私は彼に言う。
空になり散乱しているセブンスターの箱、会う度に異なる他の女の甘ったるい香水の香り、乱暴な癖に時折魅せるほんの少しの優しさ、蜂蜜みたいなドロドロの甘ったるい声。
私の言葉に彼は決まって蕾が震えるように柔らかく微笑んで私を抱き締める。
嗚呼、また駄目。私はまだ彼の思い通りの傀儡のままにしかなれない。
世界にたった一人、君だけだよなんて、私の琴線に触れるような事言わないで。
『世界に一つだけ』
「世界に一つだけの花」がオリコンの細かい色んな集計方法で1位であるというニュースを見たときには笑った。
ちなみに曲を提供した本人は自身で「No.1」という曲でもオリコン初登場週1位を記録している。
なんやねん。
花ですな。
まず、これが直ぐにピンと来た。
ても。あとは、これってもんが浮かばない。
日頃の生活に余裕がないのかなぁ〜。
「お題の後ろに言葉を補えば、世界に一つだけ『地軸があります』とか『間違いがあります』とか。
前の方なら『商業の』世界に一つだけ、『表の』世界に一つだけ、なんてハナシも書けそうだが、
商業の世界に一つだけ存在するタブーとか……?」
去年は「初めてのお得意様から貰った、世界で一つだけの500円玉」みたいな物語を書いた。
某所在住物書きはネットで「世界に一つだけ」をうたう記事をスワイプスワイプ。
ジュエリー、街づくり、スイーツに花に伝統工芸品。世界の一部界隈は「一つだけ」に溢れている。
たしかにハンドメイド業界は作家の手と目と感性と、それから心魂によって作られる一点物が多い。
それは物書きの世界も同様であろう。
「……俺の他にもこのアプリの中で、投稿を前半と後半に区切ってる仲間って居るんかな」
居なければ「これ」もいわゆる「一つ」である
――ただ希少性や意外性はどうだろう?
――――――
先日、私の部屋の冷蔵庫(として使ってたポータブル保冷庫)が壊れた。
安いし一人暮らしだから丁度良いやって買ったものだけど、ネットの一部さんによれば、
このポータブル保冷庫、「ポータブル」であることが前提で、冷蔵庫みたいに常時ずーっと通電し続けるようには、あんまり想定されてないらしい。
ホントかどうかは分かんない。
ただ私の「保冷庫壊れた」ってポスに返信してきた人は、「ポータブルをノンポータブルで冷蔵庫にしてるのはお前だけだ」って言ってた。
つまりこの人の返信が本当に事実なら、
私の壊れた保冷庫は、世界に一つだけの保冷庫だ。
世界に一つだけの、冷蔵庫に使われた保冷庫だ。
なお私の職場の先輩が以前ポータブルを冷蔵庫にしてたから、この返信は普通に間違いだったりする。
なお即座に小型冷蔵庫をネットでポチったけど
発送は今週末だそうです。
「で、後輩ちゃん、本日の愛妻弁当は?」
「いや先輩、私のお嫁さんじゃないし。そもそも先輩と私、食材のシェアとか生活費節約術とか普通にしょっちゅうやってるし」
「お嫁さんじゃなきゃ、おかん?」
「おかん。先輩がオカン……ちょっと分かる」
で、職場の先輩に私の保冷庫の中身を大量レスキューしてもらって、2日目のお昼。
昭和レトロな学生カバンのリメイク品、ショルダーバッグから、先輩が詰めてくれたお弁当を出す。
私は小学校も中学校も、ランドセルとかスクールバッグとかだったから全然世代じゃないけど、
なんとなく、それでも、学生に戻った気分。
支店長は私のショルダー見て、すぐ「本物の学生カバンにショルダーの金具を付けたもの」だって気付いた。ギリっギリそれを使ってた世代らしい。
「それこそ、保冷庫以上の『一つ』ではないのか」
って、支店長が言った。
本物かつ十分キレイなままの学生カバンにショルダーの金具を付けるなんて、あまり、誰も考え付かないのではないかね、って。
これが考えつくんだなぁ
(理由:私が好きなゲーム→そのコミカライズ版→
推しキャラの所属組織のビジネスバッグ
→まさに「これ」がモチーフだとゲームの原作者)
「先輩が言うには、今日の晩ごはんで、私の保冷庫の食材全部使い切れるって言ってた」
先輩が作ってくれたお弁当、スープジャーのフタを開けると、中は野菜とお肉たっぷりなオートミール雑炊。先輩お得意の低塩分低糖質ランチだ。
「保冷庫、冷蔵庫、ポータブル。食材に関わる電化製品って、安さだけで買っちゃダメだね……」
スプーンですくって、ふーふーして、はふはふ。
オカン先輩が諸事情で作ってくれた「おふくろの味」を食べる――とり塩雑炊だ。
「ところで後輩ちゃん、冷蔵庫来るの、たしか今週末か来週なんでしょ?」
「うん」
「藤森は、今日の晩ごはんまで、とりあずメシ作ってくれるんでしょ?」
「うん」
「明日以降どうすんの?」
「……うん」
オートミールうまい。お弁当をひとすくい、ふたすくい。ふーふーして食べる。
「大丈夫だよ。多分」
自分に言い聞かせた。
「コンビニ行けばお弁当変えるし。スーパーに惣菜もあるし。別に1週間くらい、冷蔵庫無くたって」
大丈夫、だいじょうぶ。
繰り返しながら食べた、一部私が食材提供して先輩が料理してくれた特製の「一つだけ弁当」は、
すぐ食べちゃって、お弁当づつみで結ばれて、学生カバンなショルダーにしまわれた。
世界に一つだけの、たったひとつの大切ないのち
私の腕に抱えられ、すやすやと安息の寝息を立てている
無垢なその子に、無償の愛を捧ぐ
→『彼らの時間』4 〜恒久的〜
今まで何人かの女の子と付き合った。好きだったし、それが当たり前だと思っていた。
高校を卒業して就職したり大学行ったり、18歳の進む道はそんなものだと思っていた。
ワタヌキコウセイに再会するまでは。
好きだと思う気持ちに性別の枠は必要なく、自活の道に起業するという選択肢があることを知った。
視点の広がりが、価値観を多様化させる。人生は瞬間の集合体で、一時的の連なりが恒久的ともなる。
それなら……――。
「コウセイ」
変化を楽しんたほうが得だと思う。
「ワタヌキって呼んでってば」と、彼はさっそく嫌そうな顔をする。
「俺のことはヒロトって呼ぶのに。それにさ、苗字って恋人感薄くない?」と、コウセイの肩に顔を埋める。途端に両手を突っ張って体を離された。
「名前で呼ばれるの苦手だって説明したじゃん」
コウセイの細く長い指が俺の肩に食い込んでいる。彼の彫刻みたいなきれいな手から伝わる、離したい、離したくない……そんなジレンマ。学生起業をする大胆さは何処へやら。変化を怖れて右往左往。
まるで迷子だ。感情の迷子。
「もしかして! コウセイにとって、名前呼びって倒錯的プレイに近い感じ?」
彼の気分を変えようと話を振ってみる。
「は? な、何言ってんの? どうしてそうなるの?」
おっ、食いついた。
「俺のことを優しいってやたらと褒めるのも、そういう願望の裏返しとか?」
「もー! いい加減にしないと怒るよ!」
慌てふためくコウセイ。たまらなく可愛い。あ、でも俺にSとかそんな趣味はない。圧倒的にコウセイが可愛いだけ。
立ち去ろうとするコウセイの手を引く。
態勢を崩した彼は、ソファ背もたれを掴んで俺と向かい合った。俺を見下ろす彼の顔に緊張が走る。
「コウセイは怒っても可愛いよ」
彼の大きな目に、なんとも言えない色が浮かんだ。不安とか警戒とか、ほんの少しの信頼とか。
そう、怖くないよ、怖くないから。「コウセイ?」
「……ごめん」
あー、これ以上はイジメだよな。
「ムリは駄目だし、今日はここまで! これからもずっと二人の時間は続くんだから」
そう言ってコウセイの頬にキスをした。小さな声でごめんとさらに謝るものだから、脇をくすぐってやった。そしてコウセイの仕返し。二人で笑い転げて、土曜日の午後。
世界に一つだけの、俺たちの午後。
テーマ; 世界に一つだけ
わたしも
あなたも
世界に
一人だけ。
世界には
まだ
見たこともない
景色が
いっぱいあるし
出会ったことのない
人だって
いっぱいいるし
色んな
生き方がある。
その中で
わたしと
夫婦になる
道を
選んでくれて
ありがとう。
#世界に一つだけ
好きなバンドのライブの日が、自分の誕生日と重なった。嬉しくて応募してみたら見事チケットが取れたので行ってきた。どの曲も素晴らしかったけど、その中でも1曲、特別に思っている曲が披露され涙が出そうになった。あの時にしかない歌声、あの瞬間にしかないサウンド。ずっととどまっていたかった。いつか眠りにつく間際、最期に聴きたい曲。いつか此処でもこの曲のことを話せたらなと思う。
ここにある空気。
人が邂逅し、それぞれ違う動きをする、その場の空気は二度とない。
世界に一つだけ
「死にたい」
うっかり、口から滑りでた言葉
この後返ってくる言葉は想像つくのに、話し合うだけ時間の無駄なのに。
私は自分の口の軽さを後悔した。
案の定、近くにいた母はこう云った。
「世界に一つだけの、貴方の命なのだから大切にしなさい。」
きしょくがわるい
無理だ、どうしても身体がうけつけない。
虫酸が走る
理解しようとしても出来ない。気持ち悪い。
思わず自分の部屋に駆け込んだ。
うずくまって、私は呟いた
「無責任」
この文章を読んで不快に思った方がいらっしゃれば謝ります
すみませんでした
世界に一つだけ
(本稿を下書きとして保管)
2024.9.9 藍
世界に一つだけ
君は どんなに 形を 変えても
私は どんなに 醜く なっても
世界に 一つだけ
あなたの 私の
心に ひだまりを 与えてくれる
いつからか 暗くて 悲しい 世界は
苦手と なって
私は 凍りつく マイナス193度の 太陽よりも
人びとの 生活を 照らしている
それでいて 人びとが 正気を 宿す
陽の光を ずっと 待ち焦がれた
これは 何千年も 前からの 宿命が
いや 世界が 凍りつく 前に 残した
鍵の 掛かった 人類が 何度も
知ることの なかった 世界の 扉を 開ける
プロセスの ような ものだったに 違いない
やがて この世から 朽ちて 魂だけと なったとき
日差しが どこから 指していて
夜の 凍える 世界では 息の根を 絶やさずに
明るい 日差しの 指してる 時間に
この魂が 消えていく ことを 祈って やまない
世界に 一つだけ かがやく
あなたが 太陽に 見える 世界は 私は 決して
斜陽に なりかけても 陽の光を 忘れないで いよう
世界に一つだけ
世界一つだけのもの。
たくさんあり、それぞれが持っているもの。
物だけではなく、人でも一緒。
世界に一つだけ #6
みんな世界にたった1人しかいないんだから、もっと自分を大切に生きれたらいいよね。すぐ病んじゃっても大丈夫、絶対に支えてくれる人がこの世にはいるはずだから。
世界にひとつだけ
土曜日、仕事が入った。すまん。
……今度こそ空いてるって言ったのに。
だから、悪かったって。来週は絶対に大丈夫だから。
この前もそう言ってた。
そっちだって……。
こんな些細な喧嘩が増えてきた。一緒に住み始めるとこういうものなのかな。
その日は、お互いふくれっ面で別々の部屋で就寝した。
朝。
よく眠れなかった。ぼんやりと昨日の口喧嘩を思い出す。
まだ怒ってるかな。どんな顔して会えばいいか……。
憂鬱だけど、朝食の支度をしないと。私はゆっくりと起き上がった。
香ばしい匂いがした。キッチンには彼が立っていた。
おはよう。
おはよう。どうしたの?
卵焼き、作った。
私は彼に促されるまま座り、出来立ての卵焼きを口にした。
どう?焼けてる?
うん。焼けてる。
そっか。よかった。
そこから沈黙が流れた。
俯いてじっと皿を見た。卵焼き。いびつな形の卵焼き。多分、初めて作ったのだろう。仲直りの為に……。
……ごめんね。昨日は言いすぎて。仕事だからしょうがないよね。
いや、俺の方こそ。
もう食べた?
なに?
自分で作った卵焼き。
いや、まだ。
食べてみて。 箸で一口切って彼に食べさせた。
味、無いな。
うん。出汁、入れてないでしょ。塩も。
?入れるの?
入れるの。
そうか。知らなかった……。ソースでもかけるか。
ううん、今日はいい。これ食べたい。
彼が初めて作ってくれた卵焼き。味は無いけど、他には絶対に無い、世界でひとつだけの卵焼き。
この世界に
全く同じものは何一つとして存在しない
人は勿論
双子だったとしてもクローンだったとしても
全く同じ行動 思考 生体は有り得ない
物も同じ
成分は同じでも形は全く違う
それぞれが個を主張している
人に造られた製品も
当たりハズレがあるし
細かなキズなどどこかしら違う
だからだろうか
他と違うという不安を
出来うる限り似せて
仲間として安心を得ようとするのは
違うものを排除し
コミュニティを作り
イデオロギーに固執し
アイデンティティを軽視する
今の世の中はもっと自由に
個を表現出来るはずなのに
それが出来ない矛盾だらけの世界
忘れてはならない
人は唯一感情と思考を表せる存在
そして誰一人として同じでは無い
もっと自由にもっと大きな声で
自分を表現することが出来るんだと言うことを
「世界にひとつだけ」