「ラリアは何処に?」
「ラリア?」
どうやら肉屋の店主らしき男は注文もせず質問してくる女に不思議そうな顔をした。
「英雄ラリアのことかい?」
「そうよ」
「どこだったっけな…多分王家の共同墓地に埋められてると思うで」
当たり前のようにそう返されてすとんと落ちた。
「そうよね、有難う」
やはりもう彼女はいないのだ、復讐したい、死んでたまるかという一心で生きてきたのにこれでは私は何故生きているのだろう。
英雄ラリアに屈したあの時。初めての敗北。
その瞬間はもう私の中だけのものなんだ。
私はまた最強に戻ってしまったと思うと可笑しい。あの英雄は何をしているんだ、巨大な悪が舞い戻って来たと云うのに。
永遠の平和を守るのでは無かったのか嘘吐きめ。
「じゃあ…今世界で1番強い魔法使いは誰かしら」
「またお前さんは不思議なことを訊くねえ…まあ魔王様じゃねえか、普通に考えて。あの人達はすげえよなあ」
「そうね…」
じゃあ行くわ、と結局何も買わずに去った私にただ気をつけるんだで、と見送ってくれた店主は多分優しかった。
そこから私は魔王の元へ発った。
でもきっと、そのときから私は分かっていた。
ラリアより、あの世界の正義を具現化したような圧倒的な強さを持つ魔法使いより強い人間など存在しないと。
彼女は死して1000年しても尚、私の唯一無二の存在だった。
9/10/2024, 1:43:38 AM