『三日月』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「三日月」
雲間に隠れる三日月を見ると、
遥か昔の文しかないような時代を想う。
なんでかはわからないけど、
空を見上げて何かを想うのは心地よい。
金閣寺は絢爛豪華に彩り満たされた美を表している
一方、銀閣寺は「わび・さび」を体現するかのように、欠けたものの美を表している
満月と三日月の関係はこれと同じだろう
どちらも異なる美を表している
K
「あれって下弦? 上弦? どっちだっけ?」
隣で歩く友人が暗い空を指さす。
「上弦だね。欠けてる部分が上向いてるから」
ふうん、と空を見上げる友人の息は白い。この頃すっかり寒くなり、陽が落ちる時間も早くなった。今日は、ことの他冷え込んでいる。
「前見て歩かないと危ないよ」
まだ月を見つめている友人は、私のその言葉を聞くと私のコートの袖口を、そっと掴んだ。
「これなら危なくない」
私を見て、にっこり笑う。
「ねえ、私の目、月が入ってると思う。いっぱい見たからね」
ずいっと顔を近づけてくる。夜闇の中、友人の目が光った。
「何それ。早く行くよ」
私が足を速めると、友人も小走りでついてきた。袖は掴んだままだ。
友人の瞳には、月ではなくキラキラの星があり、同時に近さに狼狽する私の顔もうつっていたことを、友人に気づかれていないことを願った。
三日月はどうしてあんなにも洗礼されて見えるんだろうか、鋭くて、魅力的で。
《三日月》
『三日月には魔女が住んでいる』
この地にはそんな伝説が永く在った。
いつ、どこで誰が言い出したのか、何一つわからない。それでも伝わっている話なのだ。
今では少し、忘れ去られようとしている伝説だ。
少年は今日も今日とて、森の中を駆けていく。
息を切らして辿り着いた先には、小さな家と、その周囲を囲うように咲く野花の園があった。
「おーい!……いないのか?」
扉を叩くと、いつもなら声か物音が返事をしてくれるのだが、今日は何も返ってこない。
ならばいつもの場所か、と来た道を少し戻って脇に逸れる。
草木を掻き分けて進むと、見慣れた背中があった。
少し驚かしてやろうと、無言で背後に近付く。
「わっ!」
「……ッ……そ、れで驚かしたつもり?」
「いや絶対びっくりして声出なかっただけじゃん」
「そんなことないから!」
「嘘が下手だよね、ビアンカは」
顔を赤くして怒る彼女をおいて、驚いた拍子に落としたのだろう、薬草の入った籠を拾い上げる。
「はい、これ。早く家に帰ってやるよ」
「わかってるわよ! ……時間忘れたのはごめんなさい、あと、籠拾ってくれてありがとう」
後半は小声だったが、怒りながらも律儀な彼女に笑ってしまった。
足早に家に戻る彼女の背中が、ふと、出会った頃の姿の重なって見えた。
月のない、満天の星空と木々の支配する世界。
光を受けてか輝く花園の中、彼女は蹲っていた。
慌てて駆け寄り何があったのかと問うた。
——おばあちゃんが、死んじゃった。
その言葉を聞いて少年は何も返せなかった。
ただ、傍に座って花を見つめていた。
それはきっと、ビアンカと仲を深めるきっかけになったのだから、正解だったのだろう。
いつの間にか足を止めていた。
「ねぇ手伝ってくれるんでしょ? 早く行くわよ、キース!」
「……あぁ、うん。ごめん、今行く」
急かす彼女に追い付き、家に入る。
中はいつも通り、数々の薬草や薬の入った瓶、机の上に広げられた本などで溢れかえっている。
「さ、やるわよ」
「今日はどれ? ビアンカ、無理は禁物だからね」
「わかってる! 口煩いわね、キース。年下なんだからもっと間抜けでいていいのよ?」
「二歳しか変わらないよね? ね?」
「圧かけてこないでよ! 口が滑っただけでしょ」
言い合いながらも手は止めない。
採ってきた薬草を次々に薬に変えていく。
そう、ビアンカは薬師なのだ。
キースはその手伝いと言って、遊びにきていた。
彼女の作る薬は特別なのだ。なんせ家の周りにしか自生しているところを見たことがない、特殊な花を使用している。
キースはその効力を、彼女の口から知っていた。
曰く、霊薬に近しいそれ、らしい。
霊薬は、ざっくり言うとなんでも治せる薬のことで、それに近い効力ともなれば治せぬ怪我も病気もないのだろう。
「……キース、離れて」
最後の仕上げもまた、特別だった。
ビアンカは完成した薬に、唄うのだ。
とある伝承を。
それは少年の知る言葉ではないため、意味はわからない。わからないが、どこか懐かしさを感じさせる唄なのだ。
「……終わったわ。あ、ねえ。お願い、花が足りないから採ってきてくれる?」
「はーい」
家の裏に回ると、その花園に圧倒される。
そんなに広い範囲に花が拡がっている訳でもなく、一輪一輪小さな花だ。
それでも、日光を受けて美しかった。
「……なんでこの色なんだろ」
あの夜見た花は、白かった。
が、今目の前にあるのは青い花なのだ。
植え替えたという訳でもないだろうに、記憶と違う色の花園なのである。
「まぁいいか……って、帰らないと」
気が付けば茜色の空が広がっている。
夜になる前に森を出ないと、暗くて帰り道がわからなくなる。
「ビアンカ! これ、採ってきたから置いとくね」
「帰る時間よね、お疲れ様。またいらっしゃいな」
「もちろん。またね!」
「ええ、またね、キース」
手を振り返してくれた彼女の表情は、笑顔だった。
一人残されたビアンカは、家を出て花園に立つ。
この家を中心に半円を描くようにして広がる花を見つめて、それが段々と白く輝く様を眺める。
ビアンカはこの景色が好きだった。
夜になると白く輝く、この花が形見だからだ。
やがて数年の時が経ち、二人は大人になった。
『三日月には魔法使い達が住んでいる』
そんな伝説は、また、いつから続いていたのだろうか、誰も知らない。
三日月
笑って見えるお月さまは触ると赤い血が出そうなくらいに鋭い笑顔の端
何事も距離感は大切なんだな
ソファでうたた寝をしている君の頬に睫毛が一本。
クルンと綺麗にカールして、照明の淡い光にキラキラ輝く毛先。
起こさないように、そっと指を伸ばしながら。
ずっと君が笑顔でいられますように、と心の中で願って。
しっとりスベスベの君のほっぺたから睫毛を抓みとった。
テーマ「三日月」
「月が綺麗ですね」という君の顔はとても美しかった
「あなたと見るからよ」という返事に、あなたは気づきましたか。
「三日月」
「月が綺麗ですね」なんて言うには
随分と早かったみたい
その弓のような姿に矢をさして
私とあの人のキューピッドになってよ
「おじいちゃん、主に第3世代とか第4世代とか第7世代、旧版が人から結晶とか鏡とか取り出す系、店の名前にホテルの名前。他は?」
どれに反応するかで、だいたいの年代層は、別に分かりゃしないだろうけど、三日月も色々あるわな。
某所在住物書きは今日も今日とて物語のネタに苦戦しながら、スルメイカを炙った。
くるり高温で縮まり丸くなる様子は、三日月に見えなくもない、かもしれない。賞味後は部屋の臭い消しが必要であろう。
「……そういや三日月って『どこ』までが三日月?」
ふと、スルメを炙る手が止まる。
今夜はギリギリ三日月であろう。明日がたしか、新月だから。 では半月近くまで膨れた月は?
――――――
2024年になって、早くも10日。1月が約3分の1くらい過ぎた。
2023年度に関しては残り2ヶ月とちょっと。年度のノルマが終わってない面々は、ベテラン勢に泣きついたり、いわゆる「自爆」したりで、それぞれヒーヒーしてる最中。
『トップが前のやつから今の緒天戸に変わって、少しは楽になった方らしい』って、私より数年長くこの職場に居る先輩は言う。
『嘘か本当か知らないが、昔は今以上に酷い派閥争いがあって、ノルマやら出世やらのために互いが互いを蹴落としてたこともあった』って。
……今とあんまり変わんない気がする。
「病んだやつ、消えたやつ、『辞めた』やつも、今の倍以上だったらしい」
午前の仕事が終わって、昼休憩。
いつもの休憩室、いつものテーブルで、誰が電源入れたとも知らないテレビの情報番組をBGMに、今日もいつもどおり、先輩とふたりで昼ごはん。
「とはいえ、まぁ、所詮人から聞いた話だ。尾びれ尻びれくらいは付いているだろう。いつの世も『販売目標』の悪評は後を絶たないな」
今日の先輩は、青コンビニの低糖質ブランド、2個入りで糖質たったの約14g、クイニーアマン。新発売の最近見かけて、今朝たまたま買えたらしい。
かく言う私はクロワッサン。気になってたパン屋さんの、早朝販売分の奇跡的なラスト1個だ。
「随分、ユニークな形だな?」
「実験商品だってさ。『三日月型クロワッサンの新しいカタチの模索』って。」
「Croissant」の名前どおり、くるっと巻いたカンジの三日月パン。
ぽっかり真ん丸に空いたスペースを、半熟卵の目玉焼きが埋めて、白身がベーコンとかデミグラスソースとかを巻き込んでる。
アレだ。月見バーガーみたいな具のチョイスだ。
「どちらが『月』か分からないな」
先輩が言って、
「月見な卵と三日月クロワッサン?」
私が返す。
「そりゃ、クロワッサンだよ。三日月だもん」
で、この「三日月」、どうやって食べよう。
紙包装の上に置いたクロワッサンを、手で持とうにも半熟目玉焼きを潰しそうで怖い。
さわさわ手を動かして、触って、仕方ないからちょっとクロワッサンの方をちぎってみたりしてたら、
「……使うか?」
先輩が、どこからともなく、未使用の個包装なコンビニお箸を取り出して、私に差し出した。
「先輩四次元ポッケ持ち?」
「たまたま持っていただけだ。箸より、フォークの方が良いか?」
「たまたま持ってるフォーク、とは。」
「金属の方じゃない。コンビニのプラのやつだ」
「それ聞いてるワケじゃない……」
三日月
その時は朝の3時程で、私が寝室に行くと、 ベランダの窓に何かが反射している。
白でもない。黄色でもない。唯、綺麗で明るいオレンジ色の三日月だった。
私は気になって、ベランダに行く。
写真を撮りたくなる程の綺麗さだった。
こんなに綺麗な三日月を見た事がなかったから、 涙が出てきそうになった。
生きていれば、こんなにも美しいものが見れる。
そう考えさせてくれた三日月の形や色は、一生忘れないだろう。
───────実話───────
1/10
全然更新出来てなくてすみません。
最近アニメに推しが出来てしまったもので、其方に夢中でした…笑笑
気が向いたら更新するという形になると思いますが、これからもどうぞ宜しくお願いします。
三日月
なんかなかったっけ
狼男?
それは満月か
なんか知ってる気がするんだけど、思い出せないや
え、ない?
そうか、ないんじゃ思い出せもしないな
まったく、馬鹿だな、僕は
「アオハルのベンチ」
唇に指をつけて笑う仕草とか
目蓋を閉じたときに見える長いまつ毛とか
その全部が愛おしくて
不意に問いかける、ねぇ…から始まる
二人だけの恋の話をしよう
まだ”あどけない青いボクらの話を
小さなベンチに座って
内緒で抜け出した誰も居ない夜の公園で
丸い目をして流れ星を指さしてたね
燃え尽きた光の後のしょぼくれた顔とか
その全部が大好きで
左肩に寄り掛かり、静かな時の中で
ただいつものように笑って
くだらない話の始まりはいつも
ねぇねぇって”決まってキミからで
世界の片隅の小さな二人だけど
きっと何よりも幸せな時の中にいる
下手くそでわざとらしくて
そんなキミの甘え方がいい
キミのふくれっ面が見たくて
気づかないふりしてみたり
やっぱり笑ってほしくて頭を撫でてみたり
この小さなベンチの何気ない時間…
でも本当はどんなキミでもいい
ただ側に居られることがなによりも大切で
二人ずっと一緒なら”それだけでいいんだ
だからほら、ねぇ…から始まる
二人だけが分かる話をしよう
まだ”あどけない青い春のベンチに座って
世界の片隅で二人だけの恋の話を”LaLaLaLa…ねぇ…
ねぇ、君はおぼえてる?
私と付き合った日。初めてキスをした日。
全部、三日月が綺麗だったよね。そう。君と別れた日も綺麗な三日月だった。私たちの事、ずっと三日月は見ていたんだね。私が旅立った日も三日月だったんだよ?
だから今は星になって月と一緒に見守っているよ。
『三日月』
新月に執り行うべき魔術の儀式を諸事情(魔女トモとの夜通しの遠距離会話)により次の日の三日月の夜に執り行った。何食わぬ顔で村長に報告して家へと帰ってくると軒先に白い鳥が佇んでいる。師匠の使い魔だ、と認識した瞬間に冷や汗が吹き出しはじめた。鳴り響く心音を意識しながら近づき、鳥の足首に付けられた手紙を外そうとするが汗で冷たくなった指がうまく動かない。いつもの数倍の時間をかけてようやく手紙を外すと白い鳥は舌打ちするかのようにこちらを一瞥して空へ飛び立っていった。
手紙の内容はただひとこと。
「おまえを三日月の魔女と呼び広めてやろうか」
心臓がヒュッと縮み上がった。
「三日月よりはマウスっぽいけど、パソコンの」
クロワッサンは何語だろうと言うので、フランス語で三日月という意味だよと教えたらこんな風に返ってきた。
「ほら、握るといい感じじゃない?」
遠藤さんは持っていた袋からクロワッサンを取り出して、マウスのように握った。
「手、汚れるよ」
注意しながら、クロワッサンを一つ手に取る。言われてみれば、マウスのように見えなくもない。
「三日月と言えばさ、朝に出てる三日月についてくる星あるよね」
暗くなりかけている空をぼんやりと見ながら、遠藤さんはそう言った。足元の覚束無いのを、やんわりと袖を引っ張る。
遠藤さんの言う星は、きっと金星のことだろう。夕方にも見えることはあるけれど、朝方に見えるのは明けの明星と呼ばれる。見える時に必ず三日月かどうかは、正直知らない。
「ねぇ、話聞いてる?」
「ん、その星は金星だと思うよ」
「ほら、やっぱり聞いてない」
金星に思いを馳せる内に話題は移り変わっていたようだ。歩行者信号のボタンを小指で押す。
「何の話になったっけ」
「占いって信じてる? って話」
占い。あぁ、六占星術から派生したのか。金星人、水星人、エトセトラ。
「占いは、あんまり信じてないかなぁ」
小学生の集団とすれ違いながら、横断歩道を渡る。
「星座占いとかも?」
「星座占いとかも」
がさがさと袋を漁る。クロワッサンはあと一個だった。
「これラストだ」
「えー、私も食べたい」
どちらが食べるか、星座占いで決めることにした。
「私五位だった、かに座。あんたは、うわ、うお座一位じゃん」
「いぇーい」
出来るだけ均等になるよう、半分にして渡す。
「くれるのかよ」
「今日は運がいいらしいからね。お裾分け」
「鼻につくなぁ」
遠藤さんはそう言って笑った。
「あ、三日月。ラッキーだね」
遠藤さんは空に浮かぶ三日月を指さした。三日月というよりは半月に近い。何がラッキーなのかは分からなかったけれど、とりあえず頷いておく。
「遠藤さんは、占いとか信じてるの?」
「結構信じてる」
「そうなんだ」
「うん、都合の良いやつだけ信じるの。これ占いのポイント」
何て都合の良い考えだろう。上手い付き合い方だ。
「都合のいいって、例えば?」
遠藤さんは「聞きたい?」と何故か勿体ぶった。
「凄い聞きたいかと言われると分かんない」
「食いついてよ」
言いたいみたいなので、聞いてあげることにした。
「かに座とうお座はね、相性良いの。都合いいでしょ?」
確かに、それは都合の良い考えだ。
「なんか、星座占いを信じてみたくなったかも」
「なにそれ、意味分かんない」
どちらともなく笑って、暗くなってきた住宅街に忍び笑いが響く。隣にいる遠藤さんの表情を、三日月は照らしてくれなかった。
「あ、三日月だ」
「バカ、朝に三日月がある訳無いだろ」
「え、でもほら見てみなよ」
そう言ってそいつが指さした先には、確かに細い月があった。もう昇っている朝日に照らされて、薄く輪郭を浮かばせている。
「三日月は夕暮れに見えるものだ。だからあれは二十六日とかの月。月の満ち欠けって知ってるか?」
「あえ?」
わざとらしくとぼけた声をする奴に右肘を喰らわせる。お前はそれでも天文部か。
「いたた……君ってば酷いなあ!」
制服の上にコートを着込んでいるから別に痛くもないくせに。朝から通学路でこいつと漫才をやる気力なんてこっちには無いんだよ。
さっさと置いていくと小走りで追いついてきて、また隣に並んだ。
「お前は古典が好きだろ。『有明の月』って言えば分かるか?」
「ああ! 分かるよ、あれがそれなんだ」
そいつはそれきり黙った。横目でちらりと見ると、マフラーで口元が隠れていて表情はよく見えなかったが、目線は西の空へ向いていた。
「……今この時代にも、恋人を待って有明の月を見る人っていると思う?」
学校から1番近い交差点に差し掛かったところでそいつはまた口を開いた。突発的に話題が止まり、戻ることなんていつもの事。
「コミュニケーションを取るならメッセージを送るだろう。チャットアプリなんて今どき山ほどあるんだし」
「そのメッセージを待って夜更かしするんだよ」
「自分から送れば良いじゃないか。分からないな、悪いけど恋愛情緒には理解が無いんだ」
「君はロマンが無いね」
「お前が夢見がちなだけだ」
「あら、私の話かと思ったらいつもの喧嘩だったのね」
ほとんど同時に後ろを振り返ると、同じく天文部所属のクラスメイトがいた。ふだんの気品を感じさせない大きな欠伸をしてから「おはよう」と眠そうに挨拶をした。
「おはよう有明さん。有明さんの苗字にまつわる話だったよ」
「それは気になるわ。是非教えてちょうだい」
「大した話じゃないから別にいいよ……」
お題:三日月
今日は十五夜の日
外は寒そうだから出たくない💦
デッキから外に顔を向けると
三日月が綺麗になって見える😍✨
end
「三日月」
あなたとふたりで腰かけたい
美しいその三日月の先っちょに
最近、夜空をゆっくり見上げてないな。
三日月🌙は次はいつだろう?