『三日月』
新月に執り行うべき魔術の儀式を諸事情(魔女トモとの夜通しの遠距離会話)により次の日の三日月の夜に執り行った。何食わぬ顔で村長に報告して家へと帰ってくると軒先に白い鳥が佇んでいる。師匠の使い魔だ、と認識した瞬間に冷や汗が吹き出しはじめた。鳴り響く心音を意識しながら近づき、鳥の足首に付けられた手紙を外そうとするが汗で冷たくなった指がうまく動かない。いつもの数倍の時間をかけてようやく手紙を外すと白い鳥は舌打ちするかのようにこちらを一瞥して空へ飛び立っていった。
手紙の内容はただひとこと。
「おまえを三日月の魔女と呼び広めてやろうか」
心臓がヒュッと縮み上がった。
1/10/2024, 4:17:04 AM