「おじいちゃん、主に第3世代とか第4世代とか第7世代、旧版が人から結晶とか鏡とか取り出す系、店の名前にホテルの名前。他は?」
どれに反応するかで、だいたいの年代層は、別に分かりゃしないだろうけど、三日月も色々あるわな。
某所在住物書きは今日も今日とて物語のネタに苦戦しながら、スルメイカを炙った。
くるり高温で縮まり丸くなる様子は、三日月に見えなくもない、かもしれない。賞味後は部屋の臭い消しが必要であろう。
「……そういや三日月って『どこ』までが三日月?」
ふと、スルメを炙る手が止まる。
今夜はギリギリ三日月であろう。明日がたしか、新月だから。 では半月近くまで膨れた月は?
――――――
2024年になって、早くも10日。1月が約3分の1くらい過ぎた。
2023年度に関しては残り2ヶ月とちょっと。年度のノルマが終わってない面々は、ベテラン勢に泣きついたり、いわゆる「自爆」したりで、それぞれヒーヒーしてる最中。
『トップが前のやつから今の緒天戸に変わって、少しは楽になった方らしい』って、私より数年長くこの職場に居る先輩は言う。
『嘘か本当か知らないが、昔は今以上に酷い派閥争いがあって、ノルマやら出世やらのために互いが互いを蹴落としてたこともあった』って。
……今とあんまり変わんない気がする。
「病んだやつ、消えたやつ、『辞めた』やつも、今の倍以上だったらしい」
午前の仕事が終わって、昼休憩。
いつもの休憩室、いつものテーブルで、誰が電源入れたとも知らないテレビの情報番組をBGMに、今日もいつもどおり、先輩とふたりで昼ごはん。
「とはいえ、まぁ、所詮人から聞いた話だ。尾びれ尻びれくらいは付いているだろう。いつの世も『販売目標』の悪評は後を絶たないな」
今日の先輩は、青コンビニの低糖質ブランド、2個入りで糖質たったの約14g、クイニーアマン。新発売の最近見かけて、今朝たまたま買えたらしい。
かく言う私はクロワッサン。気になってたパン屋さんの、早朝販売分の奇跡的なラスト1個だ。
「随分、ユニークな形だな?」
「実験商品だってさ。『三日月型クロワッサンの新しいカタチの模索』って。」
「Croissant」の名前どおり、くるっと巻いたカンジの三日月パン。
ぽっかり真ん丸に空いたスペースを、半熟卵の目玉焼きが埋めて、白身がベーコンとかデミグラスソースとかを巻き込んでる。
アレだ。月見バーガーみたいな具のチョイスだ。
「どちらが『月』か分からないな」
先輩が言って、
「月見な卵と三日月クロワッサン?」
私が返す。
「そりゃ、クロワッサンだよ。三日月だもん」
で、この「三日月」、どうやって食べよう。
紙包装の上に置いたクロワッサンを、手で持とうにも半熟目玉焼きを潰しそうで怖い。
さわさわ手を動かして、触って、仕方ないからちょっとクロワッサンの方をちぎってみたりしてたら、
「……使うか?」
先輩が、どこからともなく、未使用の個包装なコンビニお箸を取り出して、私に差し出した。
「先輩四次元ポッケ持ち?」
「たまたま持っていただけだ。箸より、フォークの方が良いか?」
「たまたま持ってるフォーク、とは。」
「金属の方じゃない。コンビニのプラのやつだ」
「それ聞いてるワケじゃない……」
1/10/2024, 5:52:37 AM