『一年後』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「きっと来年もこの桜を一緒に見ようよ、約束。」
一年前の今日、確かに交した約束は──────
「.........全く、あっさり破られちゃったな。」
────────守られることは無かった。
桜の木の前にぽつんと立つ墓の前にしゃがむ。
「...分かってたよ、君がこの約束を果たせない事なんて。」
その約束を交わした時点で君には既に僅かな時間しか残されていなかった。
余命宣告。日に日に衰弱していく身体。それでも必死に生を紡いでいこうと毎日笑顔で振る舞う姿。
「......分かってた、けど」
生きてて欲しかった。もしかしたら来年もまだ君は隣に居てくれるかも、なんて密かに願った僕の淡い期待まで砕いちゃってさ。
何も言わずに居なくなるなんて。この薄情者め。
小さく風が吹いた。桜ははらはらと静かに散ってゆく。まるで誰かさんのように。
少し滲んだ視界を上に向けて空を仰ぐ。
「あーあ、こんなに綺麗な桜を見られないなんて勿体無い!」
どれだけ願っても君はもう居ない。
どれだけ願っても時は戻らない。
仕方ないな、僕がそちらへ行くまでに目一杯堪能しといてあげよう。
「それじゃ一年後、また一緒に見よう。約束。」
#一年後
一年後
一年後どのように生活しているのかなんて分からないけど、きっと変わらない
仕事はそのままだろうし、プライベートもそのまま...
推してるアーティストがもしかしたら変わってるかも?くらいで、
今よりもコロナ禍前みたいに、休日に動き回れる自分になっていたらいいなとは思う
タイトル「私の4年後」
私は、4年後何してますか❓️
仕事ちゃんとしてますか❓️
彼氏いますか❓️
好きな仕事してますか❓️
お母さん毎日会ってますか❓️
一年後
カレンダーが示す一年後…
今の私は並走するいくつかの現実ラインを「疾走」している、と言って間違いない。「それはそれ、これはこれ」と、それぞれのラインが独立性高くあるのなら「力押し」で後腐れなく片付くが、先頃は面倒なことこの上ない相互レギュレーションがある。
つつがなく過ごすを最上と考えるこの現実
ほぼ闘うばかりで気を張る隣の現実
磨き、鍛え、洗練を目指すあの現実
あの現実は良い。むしろ基準にしたい。この現実のなかへ引き込むことは目標のひとつだ。気の鬱ぐ課題は隣の現実だ。各者に働きかけ、集約点ができるのを促し、ようやくおおまかな全体像を掴んだけれど、この後は質の異なる間口をひらく必要が出るだろう…
時間経過感覚も当てにならない側面の多い日々、「いま」曇りなき炎でいつづける必要に疾走していると、「一年後は知らぬよ…」と思う。
覇気の失せぬように。
くたばらぬように。
「お前、自殺したいか?」
低く、どうにも不安になる声にあわせ変な質問。
驚いて少し固まってしまった。
「…どちら様でしょう」
やっと発した一言だった。
だが、目の前の男はそんな質問を無視して言った。
「先に俺が聞いた。自殺したいか?」
目深に被った黒いフードから冷めた視線を感じる。
「したくありません」
「そうか、なら俺に殺されるか自殺するか」
は?と聞き返したくなった。
私は死にたくない。
が、男の質問には死ぬ以外の選択は無いのだ。
まぁ、どうせただの戯言。
耳を貸す必要は無い。
「そうですね…どうせなら殺して欲しいです」
冗談だった。
私の経験では、この手の冗談が通じる為には相手も冗談で無くてはいけない。
「分かった。一年後に殺しに来る、準備しておけ」
それが冗談だったのかはあと一年経たないと分からない。
しかしどうにも不安になっている私がいた。
まるで医者に余命宣告を受けたような。
そんな感じ。
大きな不安が私に襲いかかる。
それから数日。
「先生、私って何処か悪くなっていませんか?」
もう、藁にも縋りたかった。
あの男が私を病気にする事は出来ないと思っていた。
なら何らかの方法で私になにかの病気がある事を知った。
その病気のせいで私が自殺するか死ぬかを見抜いた。
男が私を殺しに来ると言ったのは嘘だろう。
病気で死ぬ事に対して自分が殺したのだと思いたかった、思わせたかったのかもしれない。
死神のように。
「いえ、至って正常ですよ。むしろ良くなっています。このままいけば一年後くらいには退院できますよ」
発病するのはもう少し先なのかもしれない。
そんなこんなで、残り一ヶ月をきった。
「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ」
死ぬ?
なんで?
何の病気も出ていない。
私じゃ無くて他の誰かが。
何で私なんだ。
あの男のせいだ。
あいつのせいで私は死ぬんだ。
殺す殺す殺す。
死ね。
あいつが居なくなれば私は死なない。
毎日呪った。
それが効果を発揮したのかは分からない。
まだ寒い季節だった。
吐く息は白く、雪が積もっている。
早く春が訪れてほしい。
春が来れば私は死なない。
何故一ヶ月とはこんなにも長いのだ。
嫌いな冬が一層嫌いになった。
残り5日。
その日は夢にあの男が出てきた。
「あと5日」
その日を堺に毎夜必ず男が夢に現れる。
眠らないようにしても何故か必ず眠ってしまう。
「あと1日」
「死神ごっこの何が楽しい」
意味もない質問を投げかけた。
「死神‘ごっこ’じゃ無い。死神だ」
「馬鹿げたことを」
「明日がお前の命日だ。12時にお前を迎えに行く」
死にたくない死にたくない。
それだけが胸に残った。
「先生、何故皐月(さつき)さんは亡くなってしまったんでしょうか…」
「それが、分からないんです。順調に回復していたし昨日は退院日だったのに」
「そう言えば、昨日が退院予定日でしたっけ」
「…」
「偶然ですかね?」
「何がですか?」
「あの病室のことです。前にもあそこの病室で退院予定日に亡くなった方がおられました」
「…偶然ですよ」
「…その声辞めてくれませんか?すみません、勝手だとは思うんですがその声を聞いてるとどうにも不安になるんです」
ー一年後ー
これは「1年」で何かが変わると思った愚かな私の話だ
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・
「ふわぁ〜」そうだらしのない声を出しながら私は起きた
「あーあまた起きちゃった、」そんな当たり前な事を私は呟く
いじめがある訳でも学校が楽しくない訳でもない
ただ辛い助けてと言うほどでは無いが辛い
そこでいつもの私を呼ぶ声がする
「雪〜起きなさい〜!」
私は返事をした
「今行くー!」
着替えてから私は母の居るリビングへと早足で向かった
キッチンで朝ごはんを作っている母が居た
「雪、時間遅刻じゃない?」
え?そんなはずは無い
だって私の部屋の時計はまだ6時だった
ほらと母が時計を見せてきた
終わった遅刻だ
早く学校に行こう
家を飛び出した私の家が学校と近くて良かった
ギリセーフで間に合った
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・
・
・
「はぁ」とため息をつく
1年前の私なんてくだらない事を書いているのだ
これは夢小説だ私の本当の名前は雪では無い
いっときの感情とは怖いものだ
1年前の私を殺したいくらい痛々しい
もう二度と書かない
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・
1年前の私はなんてくだらない事を
1年前の様に書いているのだろう
寒すぎる
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1年前の私は…
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1年前のわた……
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1年………
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・
1年後、、、???
一年後、私はどうなっているのだろう
考えても未来は変わらないのに
この幸せがいつまで続くかを考えてしまう
もし失ったらって、考えるだけでも苦しいのに
それが事実になったら...
ほらまた、考え始めてる
なるようにしかならないのに、ね
僕の、僕の彼女が死んだ
突然の事だった、トウから電話がかかってきて、
トウ「ホムラ!今やってるニュース、主人公さんじゃないか!?」
ホムラ「なんだい急に、ニュース?彼女がまた人を救ったんだろう?もう慣れたよ…」
トウ「違うっ!この、『女性深空ハンターが突然のワンダラー襲撃に会い、市民を逃がし、死亡…』年齢も、名前が、上の苗字だけ、出たんだが、主人公さんのと、同じなんだ…」
ホムラ「…は、な、なんだいその趣味の悪い冗談は、この前の個展に出席しなかった仕返しかい?
あまりにも、趣味が悪すぎる、言っていいことと悪いことが…」
トウ「そんなわけないだろう!こんなこと、冗談なら、良かったよ…」
ホムラ「…本当に、?」
トウ「…恐らく、今確認を取ってる、そっちからも頼んだ」
ホムラ「あぁ、わかったよ」
結果的に言えば、トウの言った通り、亡くなったのは彼女だった、昨日まで、僕のソファに座って、アイスを食べながらぐだぐだしていて、僕のキャンバスにこっそり小さな子豚を描いていた、彼女が亡くなった。
トウは気を使ってか、1度今入っている依頼を全てキャンセルしたらしい…トウらしくも無い、
葬儀はどうやら親戚だけしか出席できないらしかった、どれだけ頼んで、懇願しても、顔すら見せて貰えなかったよ、はは、神様は意地悪だね。
遺書なんかを用意していたらしい、まるで分かっていたのかな?どうやら僕宛のもあったらしい。
『ホムラへ
これを呼んでいるって事は、私はもう死んだのかな?それとも、隠し場所がバレたとか!?
まぁ、前者の前提で話を進めます。
ホムラ、今までありがとう、愛してたよ』
そこからはずっと愛の言葉ばかりだった、いつも照れてなかなか言ってくれないのに、こんな時だけ、こんなもので…ききたくなかったよ、きみのくちから、ききたかった、っ、!
最後にひと文、裏に書いてあった、
『ねぇホムラ、私の骨はね、あなたの故郷、リモリアの海に撒いて欲しいの、これはほかの人宛の手紙にも書いてあるから、きっとこの手紙と一緒に私の骨が渡されると思う、だからお願い、これが最後のおねだりだよ!』
あぁもちろん、君のお願いならいくらでも、って、いつもなら平然と言えたはずの言葉も、今はただの嗚咽としてしか出てこないよ、
うん分かった、彼女が無くなってから約2週間、ようやく覚悟が着いたよ。
そうと決まれば、!ということで、海にやってきた
5日もかかってしまったよ、途中で君が好きそうなお菓子とか、納豆味のチョコなんて物もあったんだ
思わず買ってしまったね、本来ならこんなもの海に入れるなんてだめだし海の神にも怒られてしまいそうだけど、最期なんだ、餞別として向こうで食べておくれよ。
ホムラ「今までありがとう、僕の、ボディーガード、いや、僕の愛おしい最初で最後の恋人さん」
あれから1ヶ月、今は大して前と変わりなく日常が続いているよ、レッドも元気にしているし、昨日は水換えもした、聞いておくれよ!ようやくレッドの恋人を連れてきてあげたんだ、名前はまだ決めてないけど、何がいいかな、今はお見合い中だよ、君がいたら、レッドに声援を送るんだろうなぁって、
君の代わりに僕が声援を送ってあげてるよ。
ねぇ、レッドも居るし、レッドの恋人もいる、
もちろん僕もいるよ?だからさ、早く生まれ変わって、僕の所へ来ておくれよ、猫でも僕は頑張って君のお世話にしてあげる!だから、会いたいよ…
𝑒𝑛𝑑
彼女だけが居ない、ごく普通の世界
夜の帷の向こう側
蛙の合唱
鹿の鳴く声
夜鳥の悲鳴
夜の黒絽の向こう側から
呼んでいる 行かなくちゃ
蛙の声も寝静まる頃
あの闇の向こう側へ
此処ではない何処かへ
行ける気がした
朝焼けに烏が呼んでいる
耳を澄ますと(5/4お題)
#01『世界を征服するまでは』
雪解けが始まった春の朝、日が昇りきる前に相変わらずのボロ家の中で朝飯を食べる。ぱさついて味のしない上に小さいパンと極限まで薄めた粉ミルク。あとはこの前配給所で貰ってきたチーズ。これでも朝食としてはご馳走の部類なのが嫌な所だ。腹いっぱい食べれてた3年前に戻りたい。切実に。
目の前に座るジンは今日も元気らしくニコニコと笑いながらパンを齧っている。栄養もクソをないような飯食って働いて、どこからその元気が出てくるのか疑問でしかない。
目があった。そりゃ、対面に座ってんだから目も合うけど、今、こちらを見てくるその明るい瞳はいつもと違う気がした。
「1年後、なにしてると思う?」
コイツは何を言っているんだろうか。明日の命すら危ういこの時代に1年後を考える余裕があるとは思えない。このクソみたいな生活が始まってはや3年。何度も死にかけてきたのにコイツはまだ未来を見ていられるらしい。
「死んでる」
「つまんね」
実際、死ぬ確率の方が1年後生きている確率よりよっぽど高い。明日と言わず今この瞬間死んでもおかしくないのだから。
「俺、1年後に山田Jrを締めて焼き鳥食うんだ」
ジンは真面目腐った顔で言った。どうやらコイツの中で先日卵から孵ったばかりの山田Jrの未来は決まっているらしい。確かに食用として育ててはいるが、ヒヨコのJrが焼き鳥になることまでは決めなくてもいい気がした。
「なあ、イチは1年後“生きてるとしたら”何してると思う?」
ジンがこっちを見てニヤリと笑う。どうやら俺の回答がお気に召さなかったらしい。逃がすつもりはないと言わんばかりの意地の悪い笑みだ。
「世界救って英雄になる」
「マジで?」
「嘘だよ」
嘘だ。こんなの冗談だ。厨二病の妄想だ。このクソをたいな世界救って英雄なんて。家なし親なし金なしの子供にできるわけない。ちょっと口に出してみただけ。それだけなのに。
「え、嘘なの?俺とイチだったらなれるくね?」
なんで、コイツはこんなに目をキラキラさせてんのかなぁ。
「なんなら世界平和超えて世界征服までいけるね」
そう言うとこっちに手を伸ばして端が欠けた俺のコップに残っていた一口分のミルクを飲み干した。
「おい、それ俺のなんだが」
人差し指にコップの取っ手を引っ掛けて笑う。コイツ、煽ってやがる。
「じゃ、やるか。世界征服」
やり返しに皿に残った最後のチーズの欠片を口に入り込んだ。配給で貰ってから少しずつ食べていたが、これが正真正銘最後のチーズだった。
「あ!俺のチ、ちょ、今、やるって言った!?」
「やるぞ」
「マジで!?」
「マジで」
たまにはこんなバカやったっていいだろう。なんせ3年間も抑圧された生活を送って来たんだから。
「世界征服で決定な!男に二言はねぇよな!」
世界征服なんて戯言、できるわけがない。コイツのことだから本当に計画立てて実行に移すんだろうけど、そもそも明日生きてるかどうかすら怪しい。
「世界征服と書いて、ゲームクリアと読む!」
「意味わかんねぇよ」
でも、とにかく今日一日は、楽しい日になりそうだ。
「ああ、こんなところにあったのね。」
日記帳も兼ねた少し厚めで重みのある手帳。
今のいままで存在すら忘れてしまっていた。
いけないこととわかりつつお掃除の手を止めて
ぱらぱらとページをめくる。
スケジュールのページも日記のページも
一日一日を大切にしようと必死に書きこんでいたことを思い出す。懐かしいやら恥ずかしいやらで苦い砂糖を舐めたようだった。
「去年の今ごろは何をしていたっけ。」
わざわざ書くほどのものではないスケジュールだらけ。
日記も変に前向きなことばかりで笑ってしまう。
「がんばっていたのね。私も。」
びりびり、びりびりと役目を終えた手帳に別れを告げる。
「今の私にはね、生きがいがあるの。太陽の化身。
アポロンのような人。あたたかくて力強くて。
優しくて不器用で…可愛い。」
ぱらぱらとゴミ袋の中に落ちた私と目が合った。
去年の日付。去年の私。
一年後に人生が変わってしまうことをこの私は知らないのだ。
「だからね、焦らなくても大丈夫よ。」
一年後
たぶん
七日後くらいの感覚で
すっ飛んでくる
『一年後』
いっぱい
ちくわ天食べたいなぁ
ねぇねぇ
「ん?」
ごちそうするから丸亀行こ
※『一年後』で言葉遊びしました
いいよねぇちくわの天ぷら♡
1年後、どうしてるのかな。
愚かな質問だな。と自分で思いながら。
書き綴る。
幸せそうに暮らして、生きている。
家族にも囲まれて、楽しそうな。
そんな家庭像を見せつけられてしまうと、一人が好きと言っても。やはり寂しさや劣等感を感じざるをえない。
既婚者の友人からみたら、仕事と趣味に生きる私を羨ましく思うだろう。でも私は社会的にみたら。
今もなお、学生時代と同じく劣等生という評価だ。
賞味期限の切れそうな売れ残りというレッテルが閉鎖的な田舎では貼り付けられる。
多様性、自由を重んじる世の中であっても、日本はそれを受け入れたとは言い難いことを身を持って知っている。
明日のことさえ、わからないのに。
1年後の未来がわかったら、どれだけの後悔をしなくて済むのだろう。
わからないから面白い。余裕のある人間ならそうとも言えるけれど。
間違えた時は道を戻れるくらいの、猶予はほしい。
そのくらい切実な思いもある。
型にはまった人生の方が楽に生きれるわけもなく、型から出た途端に変わり者扱い。
皆同じ人間じゃないのに、同じ脳持ってないのに。
こんなに必死に生きなくても、スキップで坂道昇っていくみたいな。
余裕のある人でいたいなと思う。
人生経験値豊富の方が、人間のレベル上がって。
世界レベル上がっても対応出来ると思うから。
目の前の壁から敵から、次々と現れる障害物を
なぎ払って、凛としていたい。
そういう大人でいたいと思う。
1年後、その頃にはこの不平等な世界は変わってるのかな。
『一年後』
また来年
君と約束
繰り返す
ずーっと一緒に
いたいから。
一年後
「セラ夫、今日は早めに事務所に戻ってきてくださいね。」
昨日の大雨強風はどこへやら。今日は眩い青が煌めき、雲もひとつとない。最早恨めしい程の快晴である。
今日も今日とて迷い猫を探しに、さぁ街へ繰り出そうと扉を開けたところで、なぎちゃんが不意に呼び止めた。
「事務所じゃなくてゼフィロ直帰でもいいです。」
そこは任せるので連絡だけください、いつも通り。そう言いながら、猫の書類をまとめている。
「…なんかあったっけ?今日。」
「え?…まぁ、はい。」
「ふーん?、…?」
「別に忘れてるならそれで大丈夫ですよ。」
むしろ面白くなる。そう顔で語りながら、なぎちゃんがさぞ面白いというように微笑んだ。
「まぁいいや。行ってきます。」
「行ってらっしゃい。」
事務所のちょっと重めの扉を押して、ちょっともやもやを抱えながら。迷子の子猫に想いを馳せた。
「…ちょっと遅くなっちゃったな。」
あれから、目的の猫はすぐに見つかった。…見つかりはしたのだか。なぜか異様に逃げられるわ、逃げた先が交通量がとても多い大通りで肝を冷やすわ、あーだ、こーだ。
そんなんでいつもより少し心をすり減らし、無事猫を依頼先に届け、今に至る。
既に日は傾いて、橙色の先に濃紺が顔を覗かせていた。
これは、ちょっとだけ怒られそう。
怒るというか、心配をかけるというか。3人して心配だ、という顔を惜しげも無く体現して、こちらが顔を覗かせた瞬間にぱぁっと安心した!!と顔に出るのだ。少しだけ、なけなしの良心が痛んだり、痛まなかったり。
そんなこんなで、とても遠い道のりに感じた帰路を抜け、見慣れたゼフィロの扉の前に立った。明かりもついているし、何やら騒がしい気配もする。…帰ってきたなぁ、なんて。
「…たーだいまぁ〜」
声と共に、ぱぁぁん!!!と軽い、火薬の音。その音が余りに軽いから、特段身構えることもせずに音の発生源を目で探る。
…奏斗、ひば。それからなぎちゃんの手元。
それは拳銃でもなんでもなく、ごく普通の、市販のクラッカー。
「…なに?おめでたい日?」
その呟きに被せるように、3人の笑い声が響きわたる。
「ははは、何って!」
「ねぇ、アキラ!!」
「ふふ、ほんとに、、ねぇ」
「「「誕生日、おめでとう!」」」
『今日の主役』の襷と、謎のパーティサングラスと、テーブルいっぱいのご飯と。
「そういや、そうだなぁ。」
そういや今日は、5月の某日。久しく祝われることなんてなかった、それ故にほとんど意識していなかった、自身の誕生日。
「ほら!なにぼーっとしてんですか!」
「もうお腹すいてんのぉ!お前が帰ってこないから!!」
「はよ食べるかー!ほら、セラお!!」
「へへ、…うん。食べるかぁ!」
これからまた1年。vltでの、日々が始まる。
また来年もこんな時間が流れればいいなぁ、なんて思いながら、促されるままに席についた。
Happybirthday. 5.12.
もう覚えてない
一年前の悩み
来年も
そうなってるといいけど
初夏だというのに今夜は冷える。洗って仕舞い込んだはずのブランケットを引っ張り出し、包まれてソファでごろ寝する彼を見てそれを実感する。去年の今頃もこんな日があっただろうか。彼の横に腰を下ろし、ついでにその頭を膝の上に乗せてみる。何事かと訝しげに見上げたが、すぐに顔を戻してまた寝始める。ゆっくりと撫でながらつらつら考える。一年前の自分に言ってもおそらく信じないだろう。好いた相手とこんなふうに過ごしているだなんて。これからも一緒にいられますように、そう願いながらつむじをぐりぐりと押したらさすがに嫌がられた。
(題:一年後)
1年後
1年後のこと、1つ分かる。
2025年になってる。