ススキ』の作文集

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ススキ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど

11/11/2024, 6:16:11 AM

それをよく箒代わりにして皆で空を飛んでいたっけ。
三角座りしていたB子は、川辺で揺れるススキを見つめながらぼんやりと過去に思いを馳せていた。
あの頃は良かった。その時を目一杯生きればそれで人生の課題をクリアすることができていたから。
「母ちゃん!」
おもむろに息子が背中に突撃してきた。鈍い痛み、でも嫌いじゃない。
「B子ちゃん、そろそろ帰る?」
後からやって来た夫が手をゆっくり差し出してくる。
そう、今はもう自分のことだけを考えていたら良い訳では決して無い。
子どものこれからのこと、お金、夫やその家族。考えなければならないことは、空を飛んでいた頃よりも遥かに多い。
それでも、B子は夫の手を握る。
もう空は飛べなくなったけれど、また人生の新たなステージに私はいるのだきっと。
「見て、ススキって空を飛べるんだよ?」
揺れる一つを手折り、息子に見せると途端に輝き出す瞳。
「母ちゃんすごい!まるで魔法使いだ!」
そんな様子を微笑ましく見守る夫。
心の中に柔らかな香りが立ちのぼる。

11/11/2024, 5:53:48 AM

どんな一輪の花よりも
無数に咲くそれは
人を惹きつけ
周りに色を添える。

目で音で季節を感じる。
自然と私を魅了し
あなたといたあの丘を想い出させる。



       『ススキ』  RISU

11/11/2024, 5:47:41 AM

『ススキ』 ☆ぼく ♡彼 〇じっちゃん
☆ じっちゃん!団子ふたつ!
〇 あいよ!

今日はお月見をする日
家に帰って緑茶を入れる
部屋を暗くして、カーテンを開けて、窓を開けて
団子と緑茶を準備する
あとは、、、

♡ ただいま〜
☆ おかえり!!

彼が帰ってきた

☆待ってました!
♡ おっ。なんか雰囲気いいね
☆でしょ!ススキ取ってきてくれてありがとう!
♡ いえいえ!お団子とセッティングありがとう!
☆ えへへ

彼とくっついてお月見開始!

♡☆ うまぁ

団子をほおばる

☆ ぼく、来年も一緒にお月見したい
♡ おれも。約束しようぜ!
☆ いいね!絶対だよ?
♡ おれはお前がいなきゃヤダ
☆ 照れるなぁ

11/11/2024, 5:41:11 AM

秋を彩るススキ

月見だんごとよく合う

ゲームのアイテムに

ススキの垣根が増えた

どこに飾ろうかな…




✴️207✴️ススキ

11/11/2024, 5:40:29 AM

眞夏の碧天
搖るる麻布

身嗜みにせちなる
徒然なる友


其の襟首に
滲みいづる幸福

夢を嘯く
僞りの大人ら


謀りあひつつ
欺き合ひつつ

小鳥の如き
黄色の囀り


天使なりつつ
黒き翼の山羊の瞳


隱しつつも
嘲笑ひつつ

つと待てり
つとまもれりか



天使よいつか
挽き肉になれ

11/11/2024, 5:28:58 AM

「ススキ」

六畳一間の窓から見える裏山。
そこには誰も手入れしてないであろう、
無数のススキがある。
僕はそれをボーっと眺めるのが好きだ。

窓を開けてのんびり眺めていると、
風に押されたススキが「さー」という音を奏でる。
どんな流行の音楽よりも、
僕の心を癒してくれる。

夕方になると夕陽をバックにしたススキが、
黄金に光輝く美しい景色を作り出してくれる。
どんな有名な絵画よりも、
僕の目を釘づけにしてくれる。

たったそれだけではあるが、
僕はそれだけで満足している。

六畳一間から見えるススキ。
それは僕だけの秘密の閲覧席。

11/11/2024, 5:21:36 AM

秋風に揺らされたススキが頬を撫でていく。

友だちと別れた帰り道。夕陽に照らされたススキが金色の海のようで、つい足を踏み入れてしまった。
冷たくなった風とともに、日に温められたススキが柔らかく頬を撫でてくるのに、クスクスと笑い声がこぼれる。
夕暮れの空が夜に変わるわずかな間、一番星が輝きはじめるのを見て、家路につこうと歩きはじめる。
クンっと手を引かれた気がして後ろを振り返る。いや、振り返ろうとしてバランスを崩してしまう。
咄嗟に手を地面につこうとするが、手の先に想像していた土の感触はなく、ふわりとした何かに沈み込む。
ゾワリと手の先から鳥肌がたつ。
倒れ込んでしまった柔らかいナニかから体を起こそうと手足を動かすが、手の先にも足の先にも地面の固さはなく、立ち上がれない。
いつの間にか周囲は暗闇に覆われていた。風は強くなりザワザワとススキを揺らす。
震える口で紡いだ音は、ススキの波音に消えていく。

頬撫で

11/11/2024, 5:13:19 AM

テーマ「ススキ」



満月の夜にそよそよと揺れているススキ



つづらな景色を眺めて



味噌汁を飲んだ時の温かさが



安らぎに変わる

11/11/2024, 4:26:06 AM

ススキ


この時期になると、家の裏の土手にススキが起き上がる。秋風になびいて波のように揺れるのを見るのが好きだった。
あのススキの海を眺めながら心に決めた。オレは人を助ける仕事に就こうと。だから警察を目指した。
親友だった鈴木も一緒に、伊達メガネをかけて勉強した。白い布にマーカーで日の丸を描いて頭に巻いたら、鈴木はふんと鼻を鳴らした。
「それじゃあまるで浪人生じゃないか」
それでもオレに付き合ってくれるあいつは、やっぱりいい奴だった。

いい奴だったんだ。

今年もこの季節がやって来て、実家の裏の土手にはススキがそよめいてるんだろう。
思い出すのは、あいつと道を別れたあの日。
地元に帰るとススキを2本刈って、縁側からぼうっと月を見上げる。それから1本をへし折って庭へ投げ捨てる。

スズキ、お前を思いながら。

11/11/2024, 4:23:53 AM

『ススキ』

随分と遅くなってしまった帰り道。
明日は休みだから焦って帰る必要も無い。

空は晴れていて時折流れる雲が夜空と星を隠す。
のんびり歩いているとススキを見つけた。
いつも歩く帰り道なのに気が付かなかった。
ススキといえば十五夜のお月見に
添えられているイメージだった。
案外どこにも生えているのかもしれない。
十五夜の満月が目立ちすぎているから
影が薄くなっているだけだろうか。

1本引き抜こうとしたが小さい頃に手を
ズタズタにされたことを思い出して手が止まる。
いや影が薄い上に引き抜かれるのは可哀想だ。
なんて頭で言い訳しながら帰り道を歩き始めた。

ススキの擦れる音が静かな夜に添えられる。
前言撤回。ススキは充分秋の主人公じゃないか。

語り部シルヴァ

11/11/2024, 4:10:46 AM

ススキ

少し思い出話をしよう。

---

あの日ススキを見に出かけていた。
風は強く天候も降雨こそないが雲は厚く暗雲も見えていた。
昼過ぎくらいに最寄りのバスから降り、傾斜のあるそこにたくさんのススキがあった。
風に吹かれ激しく舞うように揺れながら、時より光差すススキ。
全てではないが時折見せる綺麗な景色を携帯に収める。
休憩含めて1時間かもう少しそこにいた。もっといい景色を探していた。
残念ながら夕方からは更に天候が崩れるらしい。夕日に映えるススキを見る事は叶わない。

また来るかどうかも決められないまま、冷たい風を背にバスに乗り込んだ。

---

拙い文章ではありますが。

11/11/2024, 3:54:40 AM

本日のテーマ『ススキ』
ススキ……俺の思っているとおりなら、そこらの野原の辺り一面に群生しているフワフワした白い花穂をつけた秋の植物である。
最近、目にしていない。
最後にススキを目にしたのはいつだろう。
今住んでるとこじゃ見たことない。だとすれば田舎で見たのだろうか。
思い出す。
今でこそ立派なシティボーイだが、実家はとんでもない山奥にある田舎なので、そこで生まれ育った俺の本質はただのポテトボーイである。
小さな頃は俺と兄貴、幼馴染の6つくらい歳の離れたお兄さんとお姉さん、それからまだ5歳くらいだった弟や6歳くらいの近所の子と一緒に田舎の野山を駆け回って遊んだものだ。
田舎の遊びがどんなものかというと……
納屋からかっぱらってきた父さんの海釣り用の釣り竿で土から掘り出したミミズをエサに川で釣りをし、釣った川魚をクッキーの空き缶と蝋燭を用いた簡易フライパンで調理して食べたり(内臓の処理もなにもしてないので危険。しかも生焼け)、イッタンドリを収穫して塩をふって食べたり(すっぱ苦い)、山ブドウもどきを磨り潰したモノを手にぬりつけて紫鬼(山ぶどうまみれの紫の手形をつけられたらしぬ)という遊びをしたり、戦士ごっことかいってヒガンバナを棒きれでなぎ倒したり(暴力的コンテンツ)、山に迷い込んでわざと迷子になってスリルを楽しむ遊びをしたり(本当に危険)していた。
他にもリーダー格の年上のお兄ちゃんが持っていたスケボーに三人で跨り、恐ろしいほど急な下り坂から猛スピードで下り落ちるデス・コースターなるいつしんでもおかしくない物騒な遊びや、かけっこしながら段差や2メートルぐらいある川辺の堤防を乗り越え、神社の狛犬の足元にある宝玉に最初に触った人が勝ちという、現代でいうところのパルクールの原型のような遊びをしていた。
……どうにも話がおかしな方向に逸れてきている気がするので軌道修正。
とにかく、そういった遊びの中で、俺はススキに触れていたはずである。なのにススキに関する事柄を何も思い出せない。
ススキがフワフワした白いヤツと知っているので、見たことはあると思うが……
ススキ……ススキについて書かねば……そう思うが何も思い浮かばない。
(困ったな……ススキで思い出すものなんてなにも……)
心の中でポツリとそう呟いたとたん、はたと気がついた。
(そうだ、そうだよ! ススキと言えばお月見の代表的な飾り物だ! 昔話なんかじゃなくてお月見の話を書けばいいんだ!)
しかし、俺は産まれてこのかたお月見なんてしたことがなかった。
春の花見や、夏の縁側での花火や、お正月のお餅つきや、鯉のぼりもあげてくれたし、乳歯が抜けたら丈夫な永久歯が生えるようにと屋根に向かって投げる教えだったし、このように主だった重要イベントは体験させてくれたのに、なぜうちの両親はススキを飾ってお団子を作ってお月見をしてくれなかったんだ。なにかしてはいけない制約でもあったのか……

「はあ……」
思わず溜息が出た。
だめだ、完敗だ。今回ばかりはススキの勝ちだ。手も足もでなかった。
今回はススキに勝ちを譲ろう。
だが、いつかとびっきりのススキに関するエピソードを入手したら、その時は俺が勝つ。

11/11/2024, 3:50:50 AM

『ススキ』

ススキを見ると

秋が近づいてきたのだと感じる。


秋は、一番好きな季節で

子供の時を良く思い出す。


徐々に、寒くなって来て

学校からの帰り道も

急ぎ足になる。


その帰り道が、いつもワクワクしていた。


今朝には無かった炬燵を

今日は出してくれているのかなと

期待した帰り道が好きだった。


大人になっても

ススキを見ると同じ気持ちになる。


家に帰って、今朝には無かった

炬燵を母が出して、うたた寝をしている。

日常であった景色は

いつの間にか、深い思い出となった。

秋は、帰る家の温かさを

思い出させてくれる。

辛かったけれど、今はそんな季節が好きだ。

11/11/2024, 3:43:40 AM

「自分、オギなんで。ススキに用があるなら他当たってな」
月見用のススキを採りに河川敷にやってきたが、どうやらコイツはススキではないらしい。
「あ、露骨にガッカリした顔しよって。こちとらススキと間違えられまくって迷惑しとるんじゃ」
風に揺られた穂が苛立たしげだ。ときおり強く吹き付けられるせいもあって地団駄を踏んでいるようにも見える。
「だいたい何でススキばっか選ばれるんじゃ。自分らオギのほうがずっとフサフサしとるし色だって負けとらん! アンタもそう思わんか? 今年の月見はススキじゃなくてオギでどうや?」
オギに売り込みをかけられる日がくるとは。折角の話だが、ススキでないとまずい事情がある。
「え? 学校行事で使う? 理科の先生もいるから誤魔化せない? なんや融通のきかんヤツやな……」
垂れた穂がうなだれているように見えて心が痛む。家ではオギを使うよと言えば元気を取り戻したのか穂が少し持ち上がった。
「ススキも必要なんやっけ? ここいら一帯はオギやし、ススキは見たことないな。なあそこのアンタ!ススキ見たことないよな?」
「あ、自分ススキです……」
気まずい沈黙が流れた。遠目やったから間違えたかな、というオギの言葉が余計に居心地悪い気持ちにさせた。

11/11/2024, 3:41:19 AM

ススキ 「秋の七草」

萩(ハギ)薄(ススキ)桔梗(キキョウ)
撫子(ナデシコ)葛(クズ)藤袴(フジバカマ)女郎花(オミナエシ)これや秋の七草

秋も深まって来ました、日本人ならご存知ですよね秋の七草(笑)謙遜とは日本人の美徳ですが、謙遜は自信がないことや、過小評価とは違います。自信があるから出来る「負けて勝つ」
もう少し柔らかく「負けるが勝ち」まあ、勝ちって強くなるのではなく負けて強くなる能ある鷹は爪を隠すのですよね(笑)また逆に謙遜も謙虚も無い人間は、自分に自信が無いものだから、否定したり批判したりすることに一所懸命になり、みっともなく自分を下げていることにも気づけない。「言うが易く行うが難し」も分からず人の仕事を否定し批判し自分の正義のために人を呪う独善的な単なる我儘な鬼畜になりて己を神や士や先生などと呼び徳を下げるものなり。

先生と呼ばれる程の馬鹿で無し、人の振り見て我が振りなおせ気をつけたいですね。


話は、日本人ならご存知の「秋の七草」秋の七草は万葉集にも詠われた秋に美しい花をつける野花で、お粥の具の「春の七草」より先輩でした。春の七草は、その頃万葉集で詠われたのは芹だけでした。実はこの芹、若葉が競り合っているように見えるため「競り勝つ」と言う意味が込められた縁起物ら・し・く、それを食するとは「負けて勝つ」「負けるが勝ち」と言いながらな訳で(笑)漲る闘志は内に秘め勝ちを譲ったふりして勝つ謙虚な日本人らしかったり致しますと皮肉(笑)


秋も深まった休日の午後、秋の七草の薄(ススキ)が風に揺れ雁でも連なって飛んて行く姿でも眺めたいものだとは清少納言さんの言葉だが
夏は終わらないのかと心配した2024年の夏もやっと終わり駆け足で秋が過ぎて薄(ススキ)が風に揺れるを情趣を持って眺めていますと、千年前の貴女を想います…。


令和6年11月10日 

                心幸

11/11/2024, 3:37:25 AM

『ススキ』

着の身着のままで逃げおおせてきた私は遠く燃え盛る城を振り返る。誰に攻め込まれてきたのか、何のための戦なのかわからないまま逃げろと言われてここまで来た。至る所に生えるススキの葉はカミソリのような鋭さで寝間着から出た素肌に細かな傷をいくつも作り、ヒリヒリとした痛みが私を苛ませた。
それでもなんとか逃げようと動かせていた私の足は橋の向こうが落とされてごっそりと消えてなくなっていることに気づいて歩みが止まる。城はもうすでに焼け落ちて崩れ去った。振り返る先にあるのは一面のススキ野原だけ。ススキの穂には綿のような花が咲き、それが月の光に照らされて銀色に光っている。夜風になびくススキがさざなみのように揺れて、丘一面のススキ野原は大海原のようだった。
人のひとりもいない野原で私はその美しさに目を奪われていた。そして漠然と、ここが私の死に場所になることを思っていた。いずれ追手がやってくる。それまでに覚悟を決めなければならなかったが、まだひとときはこの光景を目に焼き付けることは許されるだろう。誰に言うでもない言い訳をしながら、私はずっとそこに立ち尽くしていた。

11/11/2024, 3:35:55 AM

夕暮れ。
 頬を撫でる冷たい風。
 名残惜しく解散して帰路につく。
 目の前はススキ畑に囲まれて、遠くの景色には山しかないのに、何故かみんな家に帰る方向は間違えない。

 自分の家へ向かって早歩き。
 日が沈む前に帰らないとお母さんに怒られる。

「にぃちゃん、まって」
「ほら、早くしないと」
「ねぇ、まって」
「お母さんに怒られる」
「まっ」

 ドサッと音がした。
 慌てて振り返れば妹が地面にべちゃっと倒れていた。
 俺は驚きすぎて固まった。
 妹は顔を上げると、目から大粒の涙を流していた。

「うぇ、うぇ」

 言葉にならない声を上げる妹に、嫌な予感がする。
 こんなところで大声あげて泣かれたら、俺じゃあ泣き止ませられない。
 慌てて妹に駆け寄った。

「大丈夫か?」
「うぇ、うぇ」
「痛いか?」
「い、いたくな、ないもん」

 妹は滝のように涙を流している。
 鼻水も出ていてぐちゃぐちゃな顔だ。
 起き上がる気配がないから埒があかなくて、俺は妹を抱き起こした。
 手や膝、服についた汚れを叩いてやった。

「痛くないなら泣くなよ」
「だって」
「プリキュアは泣かないぞ」
「プリキュアも、なくもん!!」

 自信満々に答えながらも顔がぐちゃぐちゃで台無しだ。
 俺はポケットからしわくちゃになったハンカチを取り出して、無理矢理妹の顔へ押し付けた。
 妹はイヤイヤと言いながら顔を振る。
 それでも俺は黙って顔を拭いた。
 いつの間にか、涙も鼻水も止まっていた。

「ほら、帰るぞ」

 手を差し出しても、妹は俯いたままだ。
 何か言いたいことがあるらしい。
 俺はしゃがんで妹の顔を覗き込んだ。
 妹は口をへの字に結んで拗ねていた。

「ちゃんと言わなきゃ、俺分からない」

 話を促したら、妹は口を開いた。

「にぃちゃん、つめたい」
「は?」
「にぃちゃん、こわい」
「怒ってないけど」
「にぃちゃん、ひーのこと、きらい?」

 妹の目にはまた涙が溜まっていた。
 今にでもこぼれ落ちそうだ。
 なんで妹がそんなこと考えたのか、全く分からないけど。
 急ぐあまり冷たい態度をとっていたのかもしれない。
 俺は、しゃがんだまま妹を抱きしめた。

「馬鹿だな、大好きだよ」
「バカじゃないもん」
「馬鹿だよ」
「バカっていったほうが、バカかなんだよ」
「じゃあ俺も馬鹿だ」

 くふふと妹の笑い声が聞こえた。
 ようやく機嫌が治って安心した。
 帰ろうと体を離すと、俺の膝に血が付いていた。
 妹を見れば、妹の膝から血がダラダラと流れている。

「マジで痛くないの!?」
「いたくないもん。ひーはプリキュアになるんだもん!」
「プリキュアもその怪我は流石に泣くって!」

 俺は妹をおんぶして帰り道をダッシュで走った。
 必死な俺の背中で妹は終始楽しそうに笑っていた。



『ススキ』

11/11/2024, 3:27:17 AM

「ススキって、ススキ茶とかいうの、あるのな」
マジかよ。お茶……? 某所在住物書きは「ススキ 食べ方」で検索した結果を見て、ぽつり。
よもや食えるとは思わなかったのだ。
なんなら効用・効能が存在するとも、オマケ情報として秋の七草であったことも。
「まさか食えないだろう」、「よもや◯◯だろう」の先入観でも、調べてみる価値はあるらしい。

「だいたい見頃が9月下旬〜11月上旬らしくて、今頃は見頃の最盛期からは外れてるかもしれない、ってのは、事前情報として持ってた」
それでも「お題」には、向き合わなければならぬ。
「そもそもススキ、最近見たっけ……?」
都会には少々少ないかもしれない。

――――――

今年の3月から一緒の支店で仕事してる付烏月さん、ツウキさんってひとが、
去年か今年のあたりからお菓子作りがマイトレンドになってるらしく、たまに自作のスイーツ持ってきて、小さな支店内でシェアしてくれる。
プチシュー、プチカップケーキ、最近はスイートポテトにバター塩など振ってオシャレ。
支店の常連さんにも好評で、わざわざ私達の昼休憩に、「お菓子と一緒にお茶いかが」って、高価なおティーなど、あるいはおコーヒーなど。

今日の付烏月さんがシェアしてくれたのは、上に白ごまが3つのラインを描いて飾られた、全3種類とおぼしき、ひとくちサイズのおまんじゅう。
菓子折りみたいな箱に並べて、お昼休憩に、
こんなこと言いながら、それをテーブルに置いた。

「すすき〜コウ。すすき〜コウ!」

ススキーコウ is なに……?(素っ頓狂)

「ススキ講っていうの」
俺の父方の、ばーちゃんの集落にあった会合だよ。
付烏月さんは菓子折りモドキから、ぽんぽん、おまんじゅうを取り出して小皿にのせて、言った。
「無礼講とか恵比寿講みたいなやつ。11月のススキが終わる頃、丁度寒くなる時期だから集落の皆で集まって、ススキまんじゅう食べたんだって」

「ススキまんじゅう?」
「ススキまんじゅう」
「コレがススキまんじゅう?」
「きなこ砂糖と、ごまあずきと、栗」

「ススキ味無いの」
「ススキ味は無いよ……」

「ススキまんじゅう」を貰って、見てみる。
言われてみれば、まんじゅうの上に飾られた白ごまのラインの3本線は、微妙にカーブを描いて、
なんとなく、ススキの穂に見えなくもない。

ひとくちで食べられそうだから、食べてみた。
「ススキじゃない」
「ごまあん。こしあんだよ」
すられたゴマの風味が、こしあんを押しのけて香ってきて、バチクソに素朴。シンプル。
できたてホヤホヤだったのか、じんわりした温かさが、口の中に広がった。

「ばーちゃんの、ダムに沈む前の集落では、」
きなこをまとったススキまんじゅうを食べながら、付烏月さんが言った。
「ススキが枯れる時期が近づくと疑心が湧き、心魂の病がはやる、って俗信があったらしくてね。
多分その頃ってゆーと、丁度寒さと寒暖差が顔出してくる頃合いだから、自律神経だのホルモンバランスだのが不安定、ってハナシだろね。
だから集落の皆で集まって、『甘いススキ』を食べて、心の栄養を補充したんだってさ」
面白い風習だよね。 付烏月さんが笑った。

「寒暖差大きくなると落ち込むの、わかる」
「女性は特に、ホルモンバランスに左右されやすいし、統計としてツラい人が多いもんねー」
「ススキ食べると元気になる?」
「ススキ食べても元気になんない……」

「ススキの効能の講義が必要かな?」

ニヨリ。通称「教授支店長」の支店長が、バチクソに良い笑顔して、受講案内のアナウンス。
民俗学系統の、特に民話や俗信のハナシになると、支店長は「教授」に変貌して、
バチクソ長いけど分かりやすいけど、なんなら少し面白いけど、「本ッ当にバチクソ長い」講義を、
ガラガラガラ、支店の物置からホワイトボードを引っ張り出してきて、始めることがある。
「ススキは解毒に効果があるとされているほか、魔除けとして用いられているハナシがあってだな」

起立(昼休憩が短くなります)
礼(教授支店長のハナシをやめさせましょう)
着席(ススキまんじゅう渡して座らせましょう)

「ほら教授。教授支店長。お茶冷めるよ」
「むっ、」
「私、ススキまんじゅう、全部食べちゃうよ」
「むむ……」

はいはい、休憩、休憩。
私と付烏月さんとで、ウチの支店長の長話にシズマリタマエーして、はい講義終了。
お弁当囲んで、新人ちゃんにもススキまんじゅう配って、お茶飲んで。その日はすごく久しぶりに、「ススキ」の概念をたっぷり摂取したと思う。

11/11/2024, 3:23:50 AM

立派なススキの……木?草?
いつもどこに潜んでいるのかわからない、ススキの木
この季節になるとふと雑踏から顔を出してくる
君たちはどこから来てどこへいくのだろう
冬が迫るこの季節に、思いを馳せる

11/11/2024, 3:20:11 AM

今年も気がつけば秋がやってきていた。八月のカレンダーは破られ、九月が顔を覗かせた。

「ねぇ!またお菓子ばっかりじゃん!」
「いいでしょ別に。私の勝手じゃん。」
「だからってなあ、」
「まあまあ。珀音ちゃんも、航くんも落ち着いて。」
そう言って今日も僕たちの喧嘩の仲裁に入る看護士さんの姿。大部屋なだけあって、この光景は同室の患者さんに見られていて、もう僕はこの病院の常連だったし、言い争う光景も、看護士さんが僕たちを宥める姿も、もう見慣れたものになっていた。

幼馴染の榊 珀音(さかき はな)は、去年の十一月に急性骨髄性白血病と診断され、医者から余命宣告を受けた。"早くて三ヶ月、もって一年"と言われたと彼女は言っていた。その時の彼女の何とも言えない表情が、脳裏から離れた日は無かった。それを聞いた日から、僕は毎日珀音の病室に通うようになった。お見舞い、というのが目的ではあったが、本当は彼女の傍にずっといたかったのが理由だ。彼女は僕の幼馴染だが、密かに僕が想いを寄せていた相手でもあった。だからこそ、彼女が心配だし、彼女の傍に居たかった。でも結局本音を話せないまま時は過ぎてしまい、素直になれなくなった僕は、彼女と喧嘩することでしかコミュニケーションを図れなくなってまできている。

「てか、航がお見舞いで沢山お菓子持ってくるのがいけないでしょ!」
「はぁ?じゃあいいよ、絶対今度からお菓子なんて持ってきてやらねえからな!」
「そういう話じゃないじゃん!航の馬鹿!」
今日も今日とて珀音は頬に空気をこれでもかと詰め、僕から顔が見えないようにそっぽを向く。ガラス越しにうっすらと見える珀音の顔は、いつでも愛おしかった。

ある日いつものようにお見舞いに行くと、病室の扉の前で珀音のお母さんと医師と見られる白衣を着た男性、その隣に看護師が立っているのが見えた。距離が一歩近づく度に聞こえてくる彼らの声は、何だか深刻そうに聞こえた。あともう少しで内容が聞こえそうだというところで、珀音のお母さんが僕に声をかけた。
「あら、航くん。ごめんなさいね、気づかなくて。」
「いや、大丈夫ですよ。珀音に何かあったんですか?」
一呼吸の間があったあと、珀音のお母さんは静かに大丈夫よ、と言った。この一言が嘘なことなんてすぐに分かった。
病室に入り、ベッドに寝転ぶ珀音にいつも通り声をかける。
「今日も差し入れ。」
「うん、そこ置いといて。」
いつもと違う素っ気ない態度に違和感を感じた。
「おい、来てやったのになんだよその態度。」
「別に私、毎日来て欲しいなんて言ってない。」
「は?お前何言って、」
「もう関わんないでよ!……ずっと嫌いだったから。航のこと。」
「……え?」
「毎日毎日嫌いな奴の顔見なきゃいけないこっちの身も考えてよ。……最悪。」

何も言葉が出なくて。
気付いたら病室を抜け出して、涙と鼻水を道端に散らして走っていた。

気付かなかった。

気付けなかった。

気付きたくなかった。


あれから一ヶ月半が経ち、彼女の命日と言われる日が刻一刻と迫ってきていた。けれど、僕はあの日以来一度も病室に足を運んでいない。あの日言われた言葉と、こちらを一度も見ない彼女が、頭から離れなかった。何度か病院の前を通ったけれど、中に入る勇気はなく、かれこれこんなに日が経過していた。あの日を引きずり続けている自分の情けなさに、頭を抱えていた時、ふと病院に行かなければいけないと思った。天から降ってきたように。神様からのお告げのように。その思いつきは突然のものだった。
気付けば病院へと向かう足は、普通の速度から早歩きに変化し、気付けば無我夢中で走っていた。何でかは分からない。けど、僕の直感は今すぐ病院へ向かわなければと、逸る足を止めることは無かった。
久しぶりの病院に懐かしむ暇もなく、僕は病室へと駆けた。なんだか嫌な予感がした。その嫌な直感は、その後すぐに的中した。





彼女の病室の表札はなくなっていた。


急いで病室の扉を開けると、彼女がいるはずのベッドに彼女の姿は見えず、ベッドの前に立つ彼女の両親と、医師たちの姿が見えた。僕に気付いた彼女の両親は、さっと目元を拭い、僕に声をかけた。その声はやけにやつれていた。
「あら、航くん。久しぶりね。」
「あ、はい。お久しぶりです。」
「……これね、あの子が貴方に渡してって。」
そう言って彼女の母親が鞄から手探りで取り出したのは、一枚の封筒だった。表紙には僕の名前が刻まれていた。



私の幼き頃からの相棒 航へ

この手紙を書いた理由はもう死ぬって分かったから。お医者さんがお母さんに話してるの、聞いちゃったんだよね。てか聞こえちゃった。予定より早くなりそうです、だって。
こわい。こわいよ、航。
なんでこんな時にかぎって傍にいてくれないの、
いつもみたいにおかしたくさんもってきてよ
いつもみたいにけんかしようよ
いつもみたいにわらわせてよ
わたしがここに生きてるって、おしえてよ

初めて会ったときから大好きだったよ。
航が来てくれるから生きててよかったって、もっと生きたいってはじめておもえたの
わたし、いきてていいの、かな、?
わたるにひどいこといって、つきはなしちゃった、
ほんとはすごくだいすきなのに、すなおになれなくて。
わたるといっしょにいろんなところ行きたかったなあ
手つないで、ふたりでいろんなけしきみて、たまにけんかもして、でもすぐになかなおりして。
ハグも、キスも、まだできてないなあ

しにたくないな

しにたくないよ

向こうで待ってるから、また迎えに来て。
そのときは差し入れって、いつもみたいにお菓子持ってきてね。

お医者さんから話聞いて、凄く悲しかった時に外で揺れてるススキを見て、手紙を書こうって、急に思いついたの。
色んな人と沢山恋して、最後には私の元に帰ってきてよね。




あれから五年がたち、僕も高校生になっていて。味気ない日常に飽きながらも、毎日をそれなりに楽しく過ごしていた。その日は夏休みの課題のために本を借りようと、近所の図書館に足を運んだ。受付で貸出の手続きを終わらせ、帰ろうと来た道を戻ると、出入口付近に座っていた三人組の女子小学生が、花言葉辞典を広げ、一生懸命眺めているのが目に入った。三人の前を通った時、彼女たちの誰かが放った言葉が耳に入った。

「ねぇねぇこれ見て。
ススキの花言葉って"心が通じる"なんだって。」

「ススキ」

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