寿ん

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ススキ


この時期になると、家の裏の土手にススキが起き上がる。秋風になびいて波のように揺れるのを見るのが好きだった。
あのススキの海を眺めながら心に決めた。オレは人を助ける仕事に就こうと。だから警察を目指した。
親友だった鈴木も一緒に、伊達メガネをかけて勉強した。白い布にマーカーで日の丸を描いて頭に巻いたら、鈴木はふんと鼻を鳴らした。
「それじゃあまるで浪人生じゃないか」
それでもオレに付き合ってくれるあいつは、やっぱりいい奴だった。

いい奴だったんだ。

今年もこの季節がやって来て、実家の裏の土手にはススキがそよめいてるんだろう。
思い出すのは、あいつと道を別れたあの日。
地元に帰るとススキを2本刈って、縁側からぼうっと月を見上げる。それから1本をへし折って庭へ投げ捨てる。

スズキ、お前を思いながら。

11/11/2024, 4:26:06 AM