寿ん

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10/1/2025, 10:25:32 AM

秋の訪れ


(読み)アキ-ノ-オトズレ
(意味)ほら、そこの街灯が灯ること。
   
類語……金木犀の香り
対語……ひと筋の汗

9/27/2025, 1:11:25 PM

『涙の理由』


そんなの、あなたが笑うから。
ただそれだけよ。

9/17/2025, 7:20:02 AM

「答えは、まだ」



銀行アプリから通知がきた。
なんだと思って開いてみると、こないだのクレジットカード利用額が引き落とされましたうんぬんと言っている。

3万8000円か口座から引かれ、残りは16万。
次の給料日が来たら、いよいよだ。

この金みんな握りしめて銀座の宝石店へ行こう。

君がくれたプロポーズの返事を買いに。

地位も権力もお金もない、地味なフリーターの俺だけど、せめてこれだけは確かな形にしたいんだ。
だから待っていてくれと頼んだら、君は不思議そうに首を傾けてる、それから耳を赤くして「うん」ってうなずいてくれた。

それだけで俺はなんだってできる気がしたよ。

君がくれたプロポーズの答えは、まだ、口の中にある。
でももうすぐ伝えに行くよ。

きらりきらめく想いを宝石に、
この永遠の誓いを輪っかにして、
君の薬指にはめよう。

8/8/2025, 2:27:26 PM

「夢じゃない」


あなたがいた。
夢じゃなかった、夢ならよかった。

わたしはただ見つめるだけ。あなたに気づかれないように見つめるだけ。

幸せ?……ええ、そうかもしれません。
だけど不幸せかと訊かれたら、はいと答えてしまうでしょう。

あなたがいた、それだけなのに。それだけで……。

わたしは夢見心地になって、今にも空へ舞い上がりそうで、夢のなかではあなたはきっと、笑ってわたしのそばにいるの。

あなたがいた、夢じゃない、夢であってほしい。

夢のなかでなら思いを伝えられるから。

7/16/2025, 11:47:03 AM

『真昼の夢』


夢を見ていた。
わたしは彼女の横を歩いていた。

桜が咲いた川辺を、ゆっくりと、何も言わずに。

いつのまにかわたしは、彼女の手を握っていた。彼女は何の反応も示さない。ただじっと、前の一点のみを見つめている。
わたしのことさえも見えていないように。

夢だとわかっていた。
彼女が、こんな近くにいるはずがないのだから。

だから腕をつかんで、引き寄せた。

されるがままに、彼女はわたしにもたれかかった。マネキンのように、手応えはまるでなかった。

プラスチックの頬に唇をつけた。
誰のものでもない耳にひと言、ささやいた。

この瞬間だけ、彼女はわたしのものになった。

わたしは自身がケモノと化す前に、彼女から手を離した。スーツのポケットのなかで、スマホが着信音に震えていた。


目を開けると、そこはいつもの道の上だった。
ランドセルを背負った子どもたちが、午前授業の開放感を全身で表しながら追い越していく。

こんな真っ昼間に、道の真ん中で、わたしは幻覚でも見ていたのか。

わたしは歩きだす。夢の中の彼女と同じように、ただ前一点のみを見つめて。
わたしより頭ひとつぶん背の低い彼女を、探してしまわないように。

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