『ススキ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
『ススキ』
着の身着のままで逃げおおせてきた私は遠く燃え盛る城を振り返る。誰に攻め込まれてきたのか、何のための戦なのかわからないまま逃げろと言われてここまで来た。至る所に生えるススキの葉はカミソリのような鋭さで寝間着から出た素肌に細かな傷をいくつも作り、ヒリヒリとした痛みが私を苛ませた。
それでもなんとか逃げようと動かせていた私の足は橋の向こうが落とされてごっそりと消えてなくなっていることに気づいて歩みが止まる。城はもうすでに焼け落ちて崩れ去った。振り返る先にあるのは一面のススキ野原だけ。ススキの穂には綿のような花が咲き、それが月の光に照らされて銀色に光っている。夜風になびくススキがさざなみのように揺れて、丘一面のススキ野原は大海原のようだった。
人のひとりもいない野原で私はその美しさに目を奪われていた。そして漠然と、ここが私の死に場所になることを思っていた。いずれ追手がやってくる。それまでに覚悟を決めなければならなかったが、まだひとときはこの光景を目に焼き付けることは許されるだろう。誰に言うでもない言い訳をしながら、私はずっとそこに立ち尽くしていた。
夕暮れ。
頬を撫でる冷たい風。
名残惜しく解散して帰路につく。
目の前はススキ畑に囲まれて、遠くの景色には山しかないのに、何故かみんな家に帰る方向は間違えない。
自分の家へ向かって早歩き。
日が沈む前に帰らないとお母さんに怒られる。
「にぃちゃん、まって」
「ほら、早くしないと」
「ねぇ、まって」
「お母さんに怒られる」
「まっ」
ドサッと音がした。
慌てて振り返れば妹が地面にべちゃっと倒れていた。
俺は驚きすぎて固まった。
妹は顔を上げると、目から大粒の涙を流していた。
「うぇ、うぇ」
言葉にならない声を上げる妹に、嫌な予感がする。
こんなところで大声あげて泣かれたら、俺じゃあ泣き止ませられない。
慌てて妹に駆け寄った。
「大丈夫か?」
「うぇ、うぇ」
「痛いか?」
「い、いたくな、ないもん」
妹は滝のように涙を流している。
鼻水も出ていてぐちゃぐちゃな顔だ。
起き上がる気配がないから埒があかなくて、俺は妹を抱き起こした。
手や膝、服についた汚れを叩いてやった。
「痛くないなら泣くなよ」
「だって」
「プリキュアは泣かないぞ」
「プリキュアも、なくもん!!」
自信満々に答えながらも顔がぐちゃぐちゃで台無しだ。
俺はポケットからしわくちゃになったハンカチを取り出して、無理矢理妹の顔へ押し付けた。
妹はイヤイヤと言いながら顔を振る。
それでも俺は黙って顔を拭いた。
いつの間にか、涙も鼻水も止まっていた。
「ほら、帰るぞ」
手を差し出しても、妹は俯いたままだ。
何か言いたいことがあるらしい。
俺はしゃがんで妹の顔を覗き込んだ。
妹は口をへの字に結んで拗ねていた。
「ちゃんと言わなきゃ、俺分からない」
話を促したら、妹は口を開いた。
「にぃちゃん、つめたい」
「は?」
「にぃちゃん、こわい」
「怒ってないけど」
「にぃちゃん、ひーのこと、きらい?」
妹の目にはまた涙が溜まっていた。
今にでもこぼれ落ちそうだ。
なんで妹がそんなこと考えたのか、全く分からないけど。
急ぐあまり冷たい態度をとっていたのかもしれない。
俺は、しゃがんだまま妹を抱きしめた。
「馬鹿だな、大好きだよ」
「バカじゃないもん」
「馬鹿だよ」
「バカっていったほうが、バカかなんだよ」
「じゃあ俺も馬鹿だ」
くふふと妹の笑い声が聞こえた。
ようやく機嫌が治って安心した。
帰ろうと体を離すと、俺の膝に血が付いていた。
妹を見れば、妹の膝から血がダラダラと流れている。
「マジで痛くないの!?」
「いたくないもん。ひーはプリキュアになるんだもん!」
「プリキュアもその怪我は流石に泣くって!」
俺は妹をおんぶして帰り道をダッシュで走った。
必死な俺の背中で妹は終始楽しそうに笑っていた。
『ススキ』
「ススキって、ススキ茶とかいうの、あるのな」
マジかよ。お茶……? 某所在住物書きは「ススキ 食べ方」で検索した結果を見て、ぽつり。
よもや食えるとは思わなかったのだ。
なんなら効用・効能が存在するとも、オマケ情報として秋の七草であったことも。
「まさか食えないだろう」、「よもや◯◯だろう」の先入観でも、調べてみる価値はあるらしい。
「だいたい見頃が9月下旬〜11月上旬らしくて、今頃は見頃の最盛期からは外れてるかもしれない、ってのは、事前情報として持ってた」
それでも「お題」には、向き合わなければならぬ。
「そもそもススキ、最近見たっけ……?」
都会には少々少ないかもしれない。
――――――
今年の3月から一緒の支店で仕事してる付烏月さん、ツウキさんってひとが、
去年か今年のあたりからお菓子作りがマイトレンドになってるらしく、たまに自作のスイーツ持ってきて、小さな支店内でシェアしてくれる。
プチシュー、プチカップケーキ、最近はスイートポテトにバター塩など振ってオシャレ。
支店の常連さんにも好評で、わざわざ私達の昼休憩に、「お菓子と一緒にお茶いかが」って、高価なおティーなど、あるいはおコーヒーなど。
今日の付烏月さんがシェアしてくれたのは、上に白ごまが3つのラインを描いて飾られた、全3種類とおぼしき、ひとくちサイズのおまんじゅう。
菓子折りみたいな箱に並べて、お昼休憩に、
こんなこと言いながら、それをテーブルに置いた。
「すすき〜コウ。すすき〜コウ!」
ススキーコウ is なに……?(素っ頓狂)
「ススキ講っていうの」
俺の父方の、ばーちゃんの集落にあった会合だよ。
付烏月さんは菓子折りモドキから、ぽんぽん、おまんじゅうを取り出して小皿にのせて、言った。
「無礼講とか恵比寿講みたいなやつ。11月のススキが終わる頃、丁度寒くなる時期だから集落の皆で集まって、ススキまんじゅう食べたんだって」
「ススキまんじゅう?」
「ススキまんじゅう」
「コレがススキまんじゅう?」
「きなこ砂糖と、ごまあずきと、栗」
「ススキ味無いの」
「ススキ味は無いよ……」
「ススキまんじゅう」を貰って、見てみる。
言われてみれば、まんじゅうの上に飾られた白ごまのラインの3本線は、微妙にカーブを描いて、
なんとなく、ススキの穂に見えなくもない。
ひとくちで食べられそうだから、食べてみた。
「ススキじゃない」
「ごまあん。こしあんだよ」
すられたゴマの風味が、こしあんを押しのけて香ってきて、バチクソに素朴。シンプル。
できたてホヤホヤだったのか、じんわりした温かさが、口の中に広がった。
「ばーちゃんの、ダムに沈む前の集落では、」
きなこをまとったススキまんじゅうを食べながら、付烏月さんが言った。
「ススキが枯れる時期が近づくと疑心が湧き、心魂の病がはやる、って俗信があったらしくてね。
多分その頃ってゆーと、丁度寒さと寒暖差が顔出してくる頃合いだから、自律神経だのホルモンバランスだのが不安定、ってハナシだろね。
だから集落の皆で集まって、『甘いススキ』を食べて、心の栄養を補充したんだってさ」
面白い風習だよね。 付烏月さんが笑った。
「寒暖差大きくなると落ち込むの、わかる」
「女性は特に、ホルモンバランスに左右されやすいし、統計としてツラい人が多いもんねー」
「ススキ食べると元気になる?」
「ススキ食べても元気になんない……」
「ススキの効能の講義が必要かな?」
ニヨリ。通称「教授支店長」の支店長が、バチクソに良い笑顔して、受講案内のアナウンス。
民俗学系統の、特に民話や俗信のハナシになると、支店長は「教授」に変貌して、
バチクソ長いけど分かりやすいけど、なんなら少し面白いけど、「本ッ当にバチクソ長い」講義を、
ガラガラガラ、支店の物置からホワイトボードを引っ張り出してきて、始めることがある。
「ススキは解毒に効果があるとされているほか、魔除けとして用いられているハナシがあってだな」
起立(昼休憩が短くなります)
礼(教授支店長のハナシをやめさせましょう)
着席(ススキまんじゅう渡して座らせましょう)
「ほら教授。教授支店長。お茶冷めるよ」
「むっ、」
「私、ススキまんじゅう、全部食べちゃうよ」
「むむ……」
はいはい、休憩、休憩。
私と付烏月さんとで、ウチの支店長の長話にシズマリタマエーして、はい講義終了。
お弁当囲んで、新人ちゃんにもススキまんじゅう配って、お茶飲んで。その日はすごく久しぶりに、「ススキ」の概念をたっぷり摂取したと思う。
立派なススキの……木?草?
いつもどこに潜んでいるのかわからない、ススキの木
この季節になるとふと雑踏から顔を出してくる
君たちはどこから来てどこへいくのだろう
冬が迫るこの季節に、思いを馳せる
今年も気がつけば秋がやってきていた。八月のカレンダーは破られ、九月が顔を覗かせた。
「ねぇ!またお菓子ばっかりじゃん!」
「いいでしょ別に。私の勝手じゃん。」
「だからってなあ、」
「まあまあ。珀音ちゃんも、航くんも落ち着いて。」
そう言って今日も僕たちの喧嘩の仲裁に入る看護士さんの姿。大部屋なだけあって、この光景は同室の患者さんに見られていて、もう僕はこの病院の常連だったし、言い争う光景も、看護士さんが僕たちを宥める姿も、もう見慣れたものになっていた。
幼馴染の榊 珀音(さかき はな)は、去年の十一月に急性骨髄性白血病と診断され、医者から余命宣告を受けた。"早くて三ヶ月、もって一年"と言われたと彼女は言っていた。その時の彼女の何とも言えない表情が、脳裏から離れた日は無かった。それを聞いた日から、僕は毎日珀音の病室に通うようになった。お見舞い、というのが目的ではあったが、本当は彼女の傍にずっといたかったのが理由だ。彼女は僕の幼馴染だが、密かに僕が想いを寄せていた相手でもあった。だからこそ、彼女が心配だし、彼女の傍に居たかった。でも結局本音を話せないまま時は過ぎてしまい、素直になれなくなった僕は、彼女と喧嘩することでしかコミュニケーションを図れなくなってまできている。
「てか、航がお見舞いで沢山お菓子持ってくるのがいけないでしょ!」
「はぁ?じゃあいいよ、絶対今度からお菓子なんて持ってきてやらねえからな!」
「そういう話じゃないじゃん!航の馬鹿!」
今日も今日とて珀音は頬に空気をこれでもかと詰め、僕から顔が見えないようにそっぽを向く。ガラス越しにうっすらと見える珀音の顔は、いつでも愛おしかった。
ある日いつものようにお見舞いに行くと、病室の扉の前で珀音のお母さんと医師と見られる白衣を着た男性、その隣に看護師が立っているのが見えた。距離が一歩近づく度に聞こえてくる彼らの声は、何だか深刻そうに聞こえた。あともう少しで内容が聞こえそうだというところで、珀音のお母さんが僕に声をかけた。
「あら、航くん。ごめんなさいね、気づかなくて。」
「いや、大丈夫ですよ。珀音に何かあったんですか?」
一呼吸の間があったあと、珀音のお母さんは静かに大丈夫よ、と言った。この一言が嘘なことなんてすぐに分かった。
病室に入り、ベッドに寝転ぶ珀音にいつも通り声をかける。
「今日も差し入れ。」
「うん、そこ置いといて。」
いつもと違う素っ気ない態度に違和感を感じた。
「おい、来てやったのになんだよその態度。」
「別に私、毎日来て欲しいなんて言ってない。」
「は?お前何言って、」
「もう関わんないでよ!……ずっと嫌いだったから。航のこと。」
「……え?」
「毎日毎日嫌いな奴の顔見なきゃいけないこっちの身も考えてよ。……最悪。」
何も言葉が出なくて。
気付いたら病室を抜け出して、涙と鼻水を道端に散らして走っていた。
気付かなかった。
気付けなかった。
気付きたくなかった。
あれから一ヶ月半が経ち、彼女の命日と言われる日が刻一刻と迫ってきていた。けれど、僕はあの日以来一度も病室に足を運んでいない。あの日言われた言葉と、こちらを一度も見ない彼女が、頭から離れなかった。何度か病院の前を通ったけれど、中に入る勇気はなく、かれこれこんなに日が経過していた。あの日を引きずり続けている自分の情けなさに、頭を抱えていた時、ふと病院に行かなければいけないと思った。天から降ってきたように。神様からのお告げのように。その思いつきは突然のものだった。
気付けば病院へと向かう足は、普通の速度から早歩きに変化し、気付けば無我夢中で走っていた。何でかは分からない。けど、僕の直感は今すぐ病院へ向かわなければと、逸る足を止めることは無かった。
久しぶりの病院に懐かしむ暇もなく、僕は病室へと駆けた。なんだか嫌な予感がした。その嫌な直感は、その後すぐに的中した。
彼女の病室の表札はなくなっていた。
急いで病室の扉を開けると、彼女がいるはずのベッドに彼女の姿は見えず、ベッドの前に立つ彼女の両親と、医師たちの姿が見えた。僕に気付いた彼女の両親は、さっと目元を拭い、僕に声をかけた。その声はやけにやつれていた。
「あら、航くん。久しぶりね。」
「あ、はい。お久しぶりです。」
「……これね、あの子が貴方に渡してって。」
そう言って彼女の母親が鞄から手探りで取り出したのは、一枚の封筒だった。表紙には僕の名前が刻まれていた。
・
・
・
私の幼き頃からの相棒 航へ
この手紙を書いた理由はもう死ぬって分かったから。お医者さんがお母さんに話してるの、聞いちゃったんだよね。てか聞こえちゃった。予定より早くなりそうです、だって。
こわい。こわいよ、航。
なんでこんな時にかぎって傍にいてくれないの、
いつもみたいにおかしたくさんもってきてよ
いつもみたいにけんかしようよ
いつもみたいにわらわせてよ
わたしがここに生きてるって、おしえてよ
初めて会ったときから大好きだったよ。
航が来てくれるから生きててよかったって、もっと生きたいってはじめておもえたの
わたし、いきてていいの、かな、?
わたるにひどいこといって、つきはなしちゃった、
ほんとはすごくだいすきなのに、すなおになれなくて。
わたるといっしょにいろんなところ行きたかったなあ
手つないで、ふたりでいろんなけしきみて、たまにけんかもして、でもすぐになかなおりして。
ハグも、キスも、まだできてないなあ
しにたくないな
しにたくないよ
向こうで待ってるから、また迎えに来て。
そのときは差し入れって、いつもみたいにお菓子持ってきてね。
お医者さんから話聞いて、凄く悲しかった時に外で揺れてるススキを見て、手紙を書こうって、急に思いついたの。
色んな人と沢山恋して、最後には私の元に帰ってきてよね。
あれから五年がたち、僕も高校生になっていて。味気ない日常に飽きながらも、毎日をそれなりに楽しく過ごしていた。その日は夏休みの課題のために本を借りようと、近所の図書館に足を運んだ。受付で貸出の手続きを終わらせ、帰ろうと来た道を戻ると、出入口付近に座っていた三人組の女子小学生が、花言葉辞典を広げ、一生懸命眺めているのが目に入った。三人の前を通った時、彼女たちの誰かが放った言葉が耳に入った。
「ねぇねぇこれ見て。
ススキの花言葉って"心が通じる"なんだって。」
「ススキ」
あと二日でピルを飲み終わる今日
精神的な病み期がきたようだ
原因はたぶん夫
飲み会で帰宅時間が2時3時になる
比較的、早めに帰ってきても隣でスマホ触って夫婦の時間みたいなのがなくて積極的にコミュニケーションを取ろうとしないし、眠くなるまでスマホだけ
今日は時間あるのかなと思えば溜まりに溜まった仕事を夜中あたしが寝てる横でひたすら作業する
あたしといる意味とか結婚してる意味とかあるのか?
女がいる店で気晴らししたり酔っ払ってLINEしたり嫌いなことばっかりして最悪だ
お題ススキじゃなくてスマホにしてくれ
ススキ。
秋っぽい木が紅葉や銀杏で、秋っぽい花が金木犀なら、こいつは多分秋っぽい草の代表格だろう。
日の光を受けて金色に輝く穂のノスタルジーな美しさが、いかにも秋らしい侘しさを感じさせてくる。ほのぼのというよりは、少し切なさのような物を含んでいるのだと思う。それは秋を感じれば、一年の終わりが脳裏を掠めるからかもしれない。
とにかく、ススキは秋っぽい植物だ。
でも最近気づいたけど、私が今まで道中で見かけて「おぉ、秋だ……」と思っていた植物はススキではなかったかもしれない。
どうも『オギ』という名前のススキによく似た植物があるらしいのだ。そしてこれもススキより遅れはするが、同じく秋ごろに穂を付けるらしい。
ススキと違ってふわふわしているらしいけど、遠目からではそんなの分からない。専門家でもないからなおのこと。
難しい。植物って難しい。
そういえばクローバー(シロツメクサ)と思ったら、カタバミだったこともあった。
絵で見るクローバーの葉はハートの形をしている。そしてカタバミの葉はなんと絵で描かれるクローバーそのままの形なのである。緑のちまくて可愛いハートが放射状に広がりながらくっついている。シロツメクサより余程クローバーをしている形だ。
なので幼少期の私はせっせとカタバミの中から、ありもしない四つ葉のクローバーを探していた。あんまりだ。可哀想すぎる。クローバーなんてお洒落な名前で呼ぶからそうなるのだ。四つ葉のシロツメクサに改名しろ。
幼少期の私が可哀想で健気で泣けてくるが、このいわば植物に騙された思い出というのは、思い返してみればちょっと滑稽で面白くて悪くないかもしれない。「ええ!? 違ったの!?」という衝撃も、そう何度も体験出来るものじゃないし、本物を見た時は何だか感動すら覚えられる。
これは似た物が無ければ体感できない記憶だ。そう考えると、なんか悪くないな……と思えてくる。なんか、パチモンなんて呼んで悪かったな。
ススキとそして秋の持つノスタルジーな雰囲気のせいか、つい過去に浸ってしまった。
たまには、そんな事があっても良いのかもしれない。もう年末も目前だから。
残りわずかの一年を、私はどのようにして使いきろうかな。
『ススキ』
「ススキ」
ふさふさで、気持ちいけどさ、
ずっと触ってるとたまに刺さって痛いよね。
まるで、貴方みたいだわ。
11月11日【#111】1パラダイス
言葉を選んで送信したのに
返事くるのが、すごく怖い
ならない電話
つかない既読
嫌われたのかな
飽きられたのかな
ウザイのかな
あなたからの言葉を
待っても待っても
何も無いから
私から聞いてみて
今は激しく後悔してる
自然消滅なのかな
しつこかったかな
もういらないの?
言えない言葉が
空回り
空に沢山
浮いている
→短編・酒の肴
ランチタイム、弁当を食べていたら夫からSNS メッセージが来た。
「斎藤からススキもらった。
イイ感じのさかな。酒にぴったり。
今日は家飲みしよう。」
へぇ〜、そりゃいいや。今日は晴れてるし月も出そう。少し寒いけど、一杯くらいならベランダでススキと共に月見酒、なかなか風流じゃないか。
「了解。楽しみにしてる」
仕事帰りにちょっといい日本酒と惣菜を買おう。
ススキ、夫はどうやって持って帰るのかな? たぶん穂先を何かで包むとは思うけど……。穂先をゆらゆら揺らすススキを相棒に電車に揺られる彼を想像する。なんだか可愛い。結婚して半年。ことあるごとに彼が愛おしい。
あ~、早く帰りたいなぁ。
「ただいま〜」
「おかえり〜!」
私は花瓶を片手に夫を出迎えた。「あれ? ススキは?」
夫は大きな横広の紙袋を笑顔で差し出している。「ハイ、これ。マジで美味そう」
へ!? ス、ススキを食べる??
「あっ、え……、うん」
混乱した頭で袋を受け取る。中には大きなタッパーケース。
「魚の煮付け?」
「うん、ススキの煮付け。斎藤のヤツ、週末釣りに行ったら爆釣だってってさ。アイツ、本当にマメだよなぁ。釣った魚は全部自分で調理するんだもん。
――ところで、なんで花瓶持ってんの?」
彼はネクタイを解きながら、私と花瓶をキョトンと見つめた。メッセージを思い出す。確かに「いい感じのさかな」って書いてたな……。
夫の地元では、スズキをススキというらしい。知らんかったよ。てっきり植物だと思ったよ。
まだまだお互いに知らんことがいっぱいあるんだろうねぇ、とススキの煮付けを肴に杯を傾けて笑い合った。こうして夫婦になってくんだろうな。
来週末はススキの草原を観に行くことになった。
テーマ; ススキ
ススキ。もう少し後に。
……………研修長かったよ、ママン………
11月11日の11時11分だったから、とりあえず投下したときはスケジュールの目算が甘かったようだ。そう、私はミーハー。(←これ今は死語なの?)
12日の今朝は冷え込み、霜で白いそこかしこな朝だった。
もちろん、近くのススキの原も霜で覆われた。
月に青く、霜に白い。例年のことだが雪が降っても暫く、ススキの様子は変わらないのだろう。
ススキは強く、しぶとい。引いて千切れず雨風霜雪に見舞われてもしれっとしている。肖るのも良さそうだ。
「ススキ」一見ただの枯葉のように思えるが、秋を漂わせ、「もう、この季節がやってきたのか!」
思わせてくれる植物である。
テーマススキ
ススキと猫じゃらし
君はどっちが好き?
どっちも君と
遊びたがってるよ
秋の風にゆれて
君を誘ってる
ススキ
なんか草ということくらいしか知らないな。ススキって。名前は有名だから知ってはいるけど具体的なことはさっぱり。
まぁお題として出してるのだから秋の草なんだろう。とりあえず調べてみたら外見は思ってた通りのもの。
ただススキって草じゃなくて花なんだな。あのふさふさは花だったのか。色も形も花っぽくないから草だと思ってた。
さて、今日もまたホームセンターにいっていろいろ買ってこないとな。どうもこれで十分と思って買ってきてもいろいろと足りずに買いにいくというのをここ最近繰り返してる。
ただそれも今日で最後だろう。断熱もじょじょに完成してきたしな。今日中には冬の断熱が完成するはずだ。
そういえば風呂場とかキッチンの窓をぷちぷちでふさぐ予定だったけど結局断熱ボードでふさいじゃうことにした。断熱ボードだと光を取り込めなくなるけどぷちぷちより断熱効果高そうだからな。
一番の理由はホームセンターに売ってた断熱ボードのサイズが風呂場とキッチンの窓とサイズがぴったりだったことだけどね。こういうのは臨機応変が大事だ。
「ススキって、こんなにキレイだったんですね」
私はカフェのマスターに向かってつぶやいた。
「ああ、秋にならないとわからないもんだよね」
タクシーで駅まで向かう途中、ススキの草原の横を通った。日が暮れかけて赤らんだ空に、輝くススキは黄金の絨毯のようだった。
「秋にならないと…ですか」
「特にこの夏は暑かったでしょう。背の高い緑色のススキは暑苦しいからね」
いまは白い穂先が枝垂れかかっているススキが直立して並んでいる姿を想像してみると、たしかに暑苦しい。そういえば前に来た時は前を通っても何も感じなかったな。
営業先に近いこの駅を利用するようになって、このカフェの存在を知った。木製の調度品とマスターの落ち着いた雰囲気が気に入り、商談の後にたびたび立ち寄るようになった。今日、店の前を通りかかったとき、店先にススキが飾られていた。
「お月見の季節だからね、うちではお団子出してないけど」
月見に団子。伝統的な日本の風景の中に、たしかにススキはある。
テーブルの上に小ぶりなバウムクーヘンが置かれた。え、頼んでない。
「ススキを見て入ってくれたお客さんにはサービスだよ」
「あ、ありがとうございます」
木の年輪になぞらえられるバウムクーヘンだが、今日はまんまるお月さんに見えた。フォークを入れると欠けていく。口に運ぶとバター風味の柔らかい味が広がる。
「今日の商談、あまり手応えがなくて」
粋なスイーツの甘い味わいに心が緩んでしまったのか、私はマスターにお悩み相談を始めてしまった。
「なんというか、相槌は打ってくれるんですが、聞いてるのか聞いてないのかわからなくて」
「お相手も忙しかったんじゃないかな」
マスターの声に顔を上げる。
「忙しい人にはコーヒーを飲んでもらうのも難しい。相手の様子を見ながら、引くときは引かないと」
「でも、せっかくアポイントを取って、こんな…」
言いかけて詰まる。こんなはダメだ。
「せっかくこんな田舎町まで出向いたのに、でしょ?」
そこまで思ってないが、…その通りだ。
「…すみません」
マスターはくすくす笑った。
「ここもね、若いうちは全然お客さん来なかったんだ」
マスターは目を落として、洗い終えたカップを拭き始めた。
「自分ではちゃんと研究して、いい豆も選んで出してたんだけど、なかなか信用してもらえなくてね」
私は黙って聞いていた。
「若造の出すコーヒーなんて、見向きもされないわけ」
そんなこと…。
「きっと気付かれないんだよ。夏のススキみたいにね」
それじゃあやってる意味がない。
「でもね、きっと見てる。必ず目の端には入ってるんだよ。そこに居続ければ」
「邪魔をしないように黙っている日もあっていい。それでも存在感を示し続けること。そうすればいつか、ススキみたいにたくさんの人に見てもらえると日が来るよ」
「そういうもんですかね」
なんだか言いくるめられている気がするが、マスターのコーヒーを飲んでいるとそんな気がしてくる。
「それに、相手にされなかったときは、この店に来ればいいじゃない。いつでも相手になるよ」
見事に言いくるめられた。私は思わず笑ってしまった。
「マスター、それ都合良すぎ」
そうしよう。ダメだったときはここに来よう。ススキのように項垂れながら。
母が亡くなったのは、9月のことだった。
母は10年くらい前から病気で、ずっと、病室にいた。
その日は、家族全員で、お月見をしていた。
『綺麗だね』
母のその言葉はとても優しい声だった。
今も時々、月を見るが、あの日のように輝いては見えない。
あの日だけはとても綺麗だった。
それが何故か、今ならわかる気がする。
お母さん。
僕は頑張ってるよね?
僕は、ちゃんとできてるよね?
そう思って、僕は空を見上げる。
今日は、あの日よりも月が綺麗なような気がした。
なんだか親近感がある。
紅葉に秋の風物詩の座を完全に奪われているからだと気づいた。
永遠の2番手なのである。
かくいう私もなにかの団体で1番になった経験などなく、
1番の人の引き立て役にしかなったことがない。
手を組んでぎゃふんと言わせてやりましょうぜ。
(ススキ)
皆様
こんばんは先日、初参加しました川津です。
先日はありがとうございました。
久しぶりに学ぶことができてとても勉強になりました。今後も参加したいと思いますが今度の14日が予定ができてしまい、大変申し訳ありませんが12月から参加させていただけますでしょうか、宜しくお願い致します。
川津
ススキを花束にして渡したら、グーで殴られた。
「殴ることないじゃんかよぉ」
痛む頬を手で擦(さす)りながら、俺は文句を垂れる。
目の前には、俺よりもずっと小さい女の子。
「やかましい! 戯言(たわごと)を抜かす元気があるのなら、もっと可愛い花を持って来ぬか!」
この可愛らしい風貌で、なんて横暴なヤツなんだ。
俺も負けじと声を張り上げる。
「お前こそ、文句言う前に礼が先だろ?! 失礼なヤツめ!」
「失礼は汝(うぬ)じゃ! 稲穂ばかり寄越す人間らに飽き飽きした故、汝に別の花を持って来いと申したのじゃ!」
クラスでよく声がでかいと叱られる俺。
しかしその倍の声量で反撃されて、ちょっと泣きそう。
「ススキを舐めんじゃねえよぉ……花言葉いっぱい持っててさぁ……縁起もいいのにさぁ……」
後半は鼻声でぐしゃぐしゃだった。
俺の「男泣き」というより「マジの号泣」を見せられて流石に困惑したのか、女の子はバツが悪そうにたじろぐ。
「ふん……まぁ、こうして見ると悪くないのぅ」
散らばった束のうち一本を手に取り、女の子が呟いた。
未だべそをかく俺にそっと近付いて、顔を覗き込む。
「……はて、何やら甘い匂いがするが」
そう言われてやっと、俺は二つ目の目的を思い出した。
泥まみれのランドセルから、キャラメルを取り出す。
「これ……お前にやる」
恐る恐る、女の子は包み紙を剥がして口に含んだ。
不安げな顔が、瞬く間に輝かしい笑顔になる。
「…………悪くないのぅ」
自分の顔が緩んでいることに気が付いたのか、すぐに元の顰め面に戻ってしまった。素直じゃないなぁ。
「――なんだか今年は、やけに豊作だね」
「……もしかして、ススキが効いたのかなぁ」
「ススキ?」
「ううん、何でもねぇや」
2024/11/10【ススキ】
#ススキ
月夜のススキヶ原に、足を踏み入れてはいけない。
背丈ほどもある、ススキの間から手招きしているのは、昔好きだった人?
いいえ、酷く傷つけた人。
白い穂の飛沫をあげて、ススキの海を渡ってくるのは、昔夢見た自由の船?
いいえ、怖くて乗らなかった船。
サヤサヤ響くススキの歌は、守らなかった約束。
遠い亡霊が私を責めるから、目を伏せて耳を塞いで、息を詰めて駆け抜ける。