ススキ』の作文集

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ススキ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど

11/11/2024, 10:38:33 PM

穏やかな午後の、淡い陽の下を駆けていく。
胸に抱えた芒の穂が揺れる。すれ違う人々に挨拶を交わしながらも、屋敷へと向かう足はさらに急く。
視線の先。話し合う二人の姿を認めて、思わず笑みが浮かんだ。

「当主様!守り神様!」
「おかえり、篝里《かがり》。いつも言っているだろう。私は当主である前に、お前の兄なのだから兄と呼んでくれないか」
「では、兄上。ただいま戻りました」

柔らかな声に窘められて、呼び名を戻す。
当主となられたのだから気軽に話す事など烏滸がましいとは思うが、兄は変わらずにある事を望まれている。兄が望むのならば、とは思うものの、気恥ずかしさにどうしても態度がぎこちなくなってしまう。そんな己の様子に兄が笑うのはいつもの事だ。

「それは、なんだ」
「芒です。使いから戻る途中、あまりにも見事でしたので持ち帰ってしまいました」

彼に声をかけられる。
芒がよほど珍しいのか。指先で穂先に触れるその仕草は、どこか幼くも見える。
ふふ、と思わず声が漏れる。それを誤魔化すようにして、抱えた芒の一束を彼に差し出した。

「こちらをお持ち下さい。差し出がましいとは思いますが、芒は魔除けになりますから。災厄を祓うよう、祈りを込めました」
「私の分はないのかい?」

どこか拗ねたような物言いの兄に、さらに笑みが溢れる。
残りの一束を兄に手渡すと、優しい手に頭を撫でられた。

「ありがとう。ご苦労だったね。ゆっくりと休んでくれ」
「分かりました。何かあればお呼び下さいね、兄上」

失礼致します。と兄達に一礼をして。

「篝里」

部屋へと戻りかけた足を、彼に呼び止められた。
尾花色の瞳に見つめられ、居住まいを正す。

「篝里は好きか。これが」

小さく首を傾げ、けれども直ぐに頷いた。

「はい。とても綺麗で、好きです」

この家を守れるものだから。
口には出さずに、胸中で付け足した。



この家の守り神である彼と出会ったのは、兄が当主となったその祝いの席での事だった。
当主となった者に憑く妖。
遠い祖先との契約なのだと父は言った。
当主に従い、この家を守るモノ。
父は忌み嫌っていたようであった。周りも顔を顰める者が多かった。
それでも、初めて彼を見た時。
とても綺麗だと、その美しさに魅了され怖ろしくも思ったのを覚えている。


「篝里」

声に誘われ、彼の庭へと足を踏み入れる。
屋敷の庭ではない。彼の神域とも言えるその空間。
目を引くのは、季節を問わず咲き誇る種々の花々だった。
その中でも一等美しいのは、藤の花。
彼に名を与えて、その在り方を定めたのだという祖先と同じ名を持つ花。
濡れ縁に座り、彼を待つ。
先代の父と異なり、兄は彼を怖れる事もなく屋敷で好きにさせていた。
他の者を気にしてか、離れの奥に一人佇む彼が気になり、足繁く彼の元を訪れ言葉を交わす。そして彼を知る度に、この庭を見る度に分かった事がある。
彼はその体躯に見合わず、随分と幼いモノだった。
必要なかったのかも知れない。彼にとっては名付けた祖先がすべてであり、それ故に祖先がいなくなった後もその契約を守り続けてきた。祖先の言葉こそが絶対であり、それ以外は関心が薄いようであった。
だから。

「篝里」

庭の奥から現れた彼に差し出されたのは、淡紫色の美しい木通の実。

「以前、篝里が好きだと言っていた」
「ありがとうございます。守り神様のお庭に植えられたのですか?」
「篝里が好きなものだ。嬉しい、か」
「そうですね。嬉しいですよ。守り神様のその私を思って下さるその気持ちが嬉しい、です」

微笑めば、彼は僅かに眉を寄せる。
その感情の機微がまだ分からないのだ。
好き、だと嬉しい。嫌い、だと悲しい。
彼が知るのはその単純な心の動きだ。そこに付随する要素は、彼にはまだ理解しきれない。
彼は感情を知らなかった。喜怒哀楽を感じた事もなかった。
祖先とはどんな関係であったのか。それは分からない。だが、それ以降の彼を継いだ当主達は皆、彼とこうして言葉を交わす事はなかったのだという。有事でもないのに、この庭から出る許可をもらったのは、兄が初めてなのだと言っていた。

「戻ってから兄と頂きます」
「そうか…篝里」

彼の指が木通を持つ手に触れ。
腕に、肩に、首に。そして頬に触れた。
輪郭を確かめるように、ここにいる事を確かめるように。
言葉を交わし、こうして庭に招き入れられてから、彼はこうして体に触れ、名を呼ぶ事が多くなった。
彼の表情からは何も読みとれない。故に何を思っているのかは分からない。

「守り神様。三味線を弾きましょうか?」
「そうだな。頼む」

彼の言葉に頷いて木通を脇に置いて立ち上がる。
濡れ縁から室内に入り、床の間に飾る三味線を手に取った。
彼が珍しく興味を持ち、好きだと言ったもの。
濡れ縁に座り、べん、と撥で軽く弦を鳴らす。

「篝里」

名を呼び、目を細める。
口元が微かに笑みに形取られていくのを視界の端で見ながら、彼の望むままに音色を奏でていく。



父は言っていた。彼に心を許すな、と。
彼の唯一である祖先が、この何処かで眠っているのだからという。記録によれば、祖先は呪いに蝕まれて亡くなったらしい。彼の望む最期ではなかったようだ。
だからいつか取り戻すために、彼はこの庭を造った。そして祖先に適応する者を待っているのだと。
父の言葉は正しいのだろう。彼の尾花色が昏く揺らぐを、何度か目にした事がある。

「守り神様」

だがそれでも。
彼がこの先もこの家を、兄を守ってくれるならば。
兄がこの先も笑っていてくれるのであるならば。

「守り神様。どうか兄をお守り下さい。兄と、兄の血を継ぐ子等が健やかであるよう、お助け下さい」

彼に願う。何度でも。
兄のためになるならば、力のないこの矮小な身でも兄の助けとなるならば。

その為ならばこの命。惜しくなどはないのだから。



20241111 『ススキ』

11/11/2024, 6:20:28 PM

今日
16時起きた
絢音と電話
上田と通話
雄也くんとご飯
上田中上ちゃんと通話

昨日
2〜3時に起きた
作業
雪華と遊んだ
19時頃にクトゥルフ
朝8時まで中上ちゃんと通話

11/11/2024, 10:35:41 AM

私がこの世から居なくなった時
あなたが涙をこらえている顔を見て

「下唇出てる。子供の時の泣き顔と一緒。」と思うのかしら。

 泣き疲れて眠った顔を見て

「唇が少し開いている。子供の時の寝顔と一緒。」と思うのかしら。

 私が眠っている祭壇の前で正座して座っている姿をみて

「アンパンのテレビを見ている姿と一緒。」と思うのかしら。

 どんなに大人になってもあの頃の
あなたを見つけてしまう。

11/11/2024, 10:15:37 AM

白茶色が波打つ度、金の水面を幻視する。
広く、一斉に風をざわめかせる中、
不自然に揺れ止まる影へ、
強く光らせた画面を掲げる。
背の高い海を掻き分けて振られた手に、
招き返しながら明かりを消した。
「完全に迷ってたわ助かった」
「んな奥まで行かなきゃ良かったろ」
「手前はおチビ達に取っとかないとな」
ざわりと揺れる。刈り取られた波が揺蕩う。
少しばかり滲む赤に消毒液を探す、と。
ふわり頭を飾る触覚。
「……器用だこと」
「穂だけだしな」
溢れ落ちた毛が僅かに首を刺す。
そうと穂冠を正しながら、吐息に視線を辿る。
いつも通り読めない瞳と、いつも通り目が合う。
「これも意味があんの」
「さてね」
似合ってはいると叩かれる軽口も、
見つめ続ければ明確に唇を吊り上げて。
「良いよ。好きな意味選んで受け取れば」

‹ススキ›

11/11/2024, 10:05:00 AM

流れるようにそよぐススキが
君の風になびく髪を思い出して
懐かしい気持ちになった
あの頃 僕らは知らないことだらけで
何もかもが新しくてドキドキして
動き続ける景色の中で
手を取り合って笑い合った
そんな幸せな日々を思い出して
一人ほくそ笑む
重なる今日の景色はいつかの僕へ送ろう
あの日々を生きていた僕に

11/11/2024, 10:00:28 AM

ススキ

最近あんまり秋って感じしないよね。
紅葉してないし、あったかいし。
ススキも見ないし。
もっと秋らしいことしてぇよ…

11/11/2024, 9:59:19 AM

《ススキ》

保全させていただきます。
 いつも読んでいいねを下さっている皆様にはいつも本当に感謝しております。
 この場をお借りして、御礼を申し上げます。ありがとうございます。

今、こちらを始めるきっかけになった創作に力を入れております。
こちらで色々とイメージを膨らませられたおかげで、内容が固まってまいりました。
本筋として力を込めておりますので、応援してくださると嬉しいです。

11/11/2024, 9:56:35 AM

小さい頃の思い出。
自分の思いつきか、絵本かなにかからの受け売りか忘れてしまったんだけど。

ススキをホウキに見立てるのはよくある話しだと思うけど、自分はそれに加えて、ススキが上を向いて生えているものだから、星や月を掃いて集められないかという想像をしていた。

例えばビーズやおもちゃのガラスのようなキラキラしたものを、紐に通して線にしてそれで形を作るのもきれいだけど。
集めてボンドでとめるみたいに、平面でぎゅっと固まってくれたら、それはそれできれいなのでは?と思っていた

11/11/2024, 9:56:15 AM

ススキ箒というものがあったなあ、と思いました。
小学二年だか三年だか。校庭の落ち葉を掃いてこいというミッション。

細かいところは忘れました。
多分、班ごとで組んでおり、教室、廊下、階段などと掃除場所が1週間ごとにローテーションされていた気がします。
で、秋の、落ち葉がてんてこ舞いとなってくると、期間限定みたいな感じで、「校庭」が出てきます。

校庭を囲むように、落ち葉がみっちりと降り積もっていましたから、担当がそこになると腕が鳴るというものです。
なかばボランティアみたいな感じで、班ごとに行動する数人が、わー、と秋の校庭に駆け出していました。
箒やちりとりなどは、校庭の隅にある、多分普段は学校の清掃員の人が使っているんだか、そうでないんだか分からないようなオンボロの掃除入れを使っていました。

その中に入っているのが、室内用のほうきと二本の大きなススキ箒でした。
基本的に、子どもの身体では小さいので、教室の室内用の箒のほうが使いやすいわけです。
室内用なので、箒の形をしてません。
モップみたいなT字の形をしたもので、掃くところの厚さは5センチもない。つまり軽め。
柄の長さが首の高さより下となるので、しゅんしゅんぶんぶんと振りながら、教室の綿埃と格闘できるわけです。

しかし、如何せん校庭での掃除となると、わけが違ってきます。校庭にはじゃりや砂が敷かれているため、お外の場合、ススキ箒のほうが良いような気分になってくるようです。

ススキ箒は、基本的に大人用のために作られた格好なので、小学生の身分ではちと難があります。
柄の長さが頭より上の2メートル以上(測ってないので不明)となっていますから、掃こうとしてもダイコンのような大筆ですから、よいしょ、よいしょと身体を揺らしてやらねばならないという……。

そんな使いづらいことで有名なススキ箒ですが、落ち葉掃きのときだけは大人気となります。
じゃり、じゃり、という特有の地面を削る音が鳴ってなんか楽しいわけです。

本数も二本と、五〜六人で構成された班では「選ばれし者」よ感が溢れます。
ススキのボリュームも贅沢な感じなので、早速じゃんけんとなってきます。
僕は負けたのでちりとり係です。

ほうぼうに散った班の人たち。
ちりとり係の僕は、校庭のどこかを行ったり来たり。
落ち葉の山が降り積もっていますから、えんやこら、どっこいしょ、がさあ……とゴミ袋に入れ、スペースを空けるために足を入れて押し込む感じが懐かしいです。

11/11/2024, 9:51:14 AM

お題:ススキ


空き地で立派に育ったススキ

ふわふわしている向こうに日が落ちゆく


私の地元はそんな景色があちこちで見られた

ところが、今はそんな世界を見られるところが少なくなってしまった


空き地がなくなり、建物が立つ

それ自体は悪くないけど、ススキの世界がまたひとつなくなることは寂しい

11/11/2024, 9:46:25 AM

ススキ

白い穂が揺れる。いちめんの白が波打つように。「いちめんのススキの穂ってきれいだね」と言ったら、即否定された。「あれはオギだ」って。うんそうなんだよあなたはそういう人だよ。お月見の季節は過ぎた初冬の野原で、私たちは白い穂を摘んだ。これでクリスマスリースを作るのだ。ふわふわほかほかのひよこみたいな可愛いリースができあがる予定。「おれはススキで作る」とあなたは主張する。散歩しながらススキを探そう。ススキのリースは可愛い茶色いひよこみたいなできあがりになるだろう。


※※※

風邪を引いてしまいしばらく死んでました。多少復活したのでこっちもがんばります。ところでススキまたはオギでクリスマスリースを作るのは簡単可愛いのでみんなやってみよう。

11/11/2024, 9:40:45 AM

満月の夜、虫の鳴き声だけが聞こえる。ススキが涼しい風に揺れる。

11/11/2024, 9:37:02 AM

一見ただの雑草に見えるススキは時に輝く稲穂に見えたり、静かに戦ぎ佇んでいる。よく見なきゃ、長くそばにいなきゃ良さに気づけないそんな人が私は好ましく思う。

11/11/2024, 9:23:29 AM

No.1『ススキ』

母方のおばあちゃん家に
来るのは10年ぶりだった。
最後にここに来たのは私が3歳の時。

おばあちゃん家は、車片道3時間ですっごく遠い
くせに、何も無いド田舎だ。
何も無い田舎にわざわざ行きたくなかった。
だけど、おじいちゃんが怪我したから
おばあちゃんの生活を手伝うために仕方なく来た。

車の中では寝ていたため、ここまでの
道はあまり見ていないが、パッと見た感じ高い建物
もなく、田んぼや畑だらけ。帰りたくなってきた。

私はおばあちゃんの家についてから起こされ、
リュックを持って家に入った。

「お邪魔します」

私の声が家に響く。
ホコリっぽいこの匂いが懐かしい気がした。
リュックを邪魔にならないところに置くと、
お母さんが言った。

「夕飯の支度や、荷物の整理があるし、外で散歩でもしてきたら?」
「そうするよ。」

短い会話を済ませたあと、家から出ようとした。
そしたらおばあちゃんに止められ、

「一緒に行こう」

と言われ、一緒に家を出た。
おばあちゃんと会話をしながら歩いた。
まだ4時くらいなのに日が落ち始めてる。
秋の空は、夕焼けで綺麗なオレンジ色に染まってる。

しばらく歩くと私は、この土地に来てよかったと思った。
そこにはあたり一面を
覆うたくさんのススキがあった。
黄金色でキラキラ輝いて見える。

「懐かしいね。あなたが小さい頃は、よく一緒にここを見るためだけに散歩をしていたよ。覚えているかい?」
「今…思い出したよ。ここは何もない場所じゃなかった…。」
「そうだね。新しい思い出ができたねぇ。」

短い会話も大切な思い出へと化した。
私は、来年も来ようと決意した。

11/11/2024, 9:16:46 AM

#81 ススキ

   [幽霊の正体見たり枯れ尾花]

   幽霊だと思っていたものが、
   実は枯れたススキだったというお話。
   恐れていたものが、実はつまらないもの
   だったという例え。

   
   よく苦情を入れる人々が、
   とても恐ろしかった時。

   苦情をいれた者が勝つだけの世界に
   視えた。
   
   でも、時を経て、気づいた。
   苦情を入れてばかりでは、
   長続きしないことに。
   
   不満に注目する者は、
   不満にしか目がいかない。
   だから、今ある幸せに気づくこともない。
   非常に気の毒な人だった。

   それに気づいたら、
   いつのまにか不満を言われなくなっていった。

11/11/2024, 9:16:29 AM

ススキ

 近くにススキ野原があって、いま真っ盛りだと言うので二人で来てみた。
近くとは言っても、家から車で30分以上来て、駐車場からかなり歩いた。

 ふいに視界が開けて、一面のススキだった。
1本1本は地味な草だが、こんなにもまとまっていると、風に吹かれて右へ左へと波のように揺れ、大きな生き物のように見えて不気味だった。私は思わず健二の腕にしがみついた。
「健二、帰ろう」
「もう帰るの?来たばっかりだよ」
「だって怖くなったの、なんか怖いの」
思わず涙ぐんだのを見て、健二は私の肩を抱いて、分かった、帰ろう、と言った。
「だいじょうぶだからね」と何度も囁く。その声に勇気を得て、帰りの小道に入ったとき、私は大きく振り返り、もう一度ススキ野原を見た。
・・・ただのススキたちだった。

 怖く感じたのは何だったんだろう?でも、やはり、ここにとどまって眺めているのは嫌だった。鬱が進みそうな気がした。3ヶ月も苦しんで、やっと抜け出したのだ。もう、あの気持ちはたくさんだ。
 駐車場までの道は、意外なほど心が弾んだ。スキップしたい気分だった。

11/11/2024, 9:13:38 AM

ススキ

犬が道草食っている。
思わず二度見した。

正しくは道草を食ってる飼い主の横で犬が道草を食っている。
読んで字の如く。

尻尾はふさふさで顔がしおしおになっている、健気な芝犬だった。
飼い主と思しき老婦人は散歩紐を緩く持ったまま顔馴染みらしき人と道端で歓談されている様子。
余りにも暇なのか、それでも飼い主のリードをむやみやたらと引っ張らない可愛い犬は、仕方なく畦道に生えている草を齧って暇を潰しているようだった。
秋草、ススキの尾花が引っ張られ尻尾の代わりに揺れている。独り相撲だ。


通り過ぎるまで30歩ほど。
失礼にならないように気を払いつつ、最後あまりにも気になってもう一度振り返ってしまった。

犬は尻尾を一度振ってくれた。
ありがとう。

11/11/2024, 9:04:24 AM

「おまえってススキみたいだよな」

 からかうような軽い口調で言われてムカついた。ようやく退院した幼なじみを見舞いにきたというのにあんまりな言いようだ。
確かに女性らしさの欠片もない貧相な身体つきに適当に纏めただけのパサついた髪はススキに似ているかもしれない。が、だからって顔を合わせてすぐに出てくる言葉にしてはひどすぎる。

「今のあんたの方がよっぽどススキみたいだよ」

 1年前は制服のズボンに肉がのるくらいぷよぷよだったくせに、どこもかしこも骨張って細い。ノリで買ったダサい文字Tも全然似合ってない。
退院祝いに買ったこのTシャツも似合わないんだろう。何もかもムカつく。
 黙って退院祝いを押しつけて帰ろうとしたら、鼻で笑われた。

「花言葉わかるくらいの可愛げないのかよ」

 最後までムカつくやつだな。

                【題:ススキ】

11/11/2024, 9:04:14 AM

お題『ススキ』

 学校の近くのファミレスに来て約1時間半経過したところで委員長が小さな音を立てて一拍する。

委員長「ねぇ、そろそろお開きにしない?制服のまま居るのもあまり良くないし」

真珠星(すぴか)「うん。いいよ」

萌香「異議なぁし!……と言いたいけど、あたしまだ話足りない。そこで提案なんだけど、二人の都合が良ければ今夜あたしの家で夜パジャマパーティーしない?」

萌香の唐突の質問に真珠星は溜息をこぼし、委員長は目をパチパチさせ驚いている。

真珠星「どうした?急に」

萌香「あたしさ……もっと委員長と仲良くなりたいの。勿論真珠星ともねっ」

真珠星「私はついでか?」

少し嫌味っぽく言う時の真珠星は大体照れている。その事に気がつかない萌香は、小馬鹿にされたと勘違いして反発する。

萌香「ついでじゃないもん!」

しばらく黙っていた委員長が萌香の問いに答えた。

委員長「輪通(わづつ)さん、そんな事言って貰えて私は嬉しいわ。けど……急で何も準備出来ていないから今夜じゃなくて明日に変更はどうかしら?」

真珠星「そうだな、それが良い。明日だったら学校休みだし、何より萌香の家でパティーするんだろ?親の許可いるだろうし?」

二人の正論に納得した萌香は二つ返事した。

萌香「わかった、それもそうだね。あたし勢いに任せて家の事や二人の事考えてなかった。ごめんなさい」

真珠星「分かれば良し!(笑)」

委員長「そう言えば、私(わたくし)二人の連絡先知らないわ。教えてくれない?」

女子会はまだまだ続く、ススキの花言葉のように「悔いのない青春」をしたいと思う委員長だった。

End

11/11/2024, 8:52:58 AM

前回の脳裏と、今回のススキです。

脳裏

仕事で半年間、飛行機の距離の営業所に行くことになり、単身赴任することになった。
一人暮らしをしていたこともあるし、単身赴任なんて苦じゃない。と思っていたのに、慣れない職場環境、静まり返った暗い部屋。に耐えられず、赴任早々、家に帰りたくなった。
「淋しいなぁ」
脳裏に浮かぶのは、妻と子どもが笑顔を見せる温かい我が家。
「でも、淋しいのも大変なのも俺だけじゃない」
そう、自分を奮い立たせ、今日も仕事に励むのだった。


ススキ

仕事帰り、花屋の前で、ススキを買っている親子を見かけた。
「ああ、今日は十五夜か」
夜空を見上げると、丸い月が輝いている。
「ススキって、今じゃ売ってる物なんだな」
実家の方では、買わずとも、そこら辺に生えている。ススキが売られているとは思いもしなかった。
「ススキかぁ。猫のおもちゃだよな」
実家の猫が、揺れるススキにじゃれついているのを笑って見ていたのを思い出す。
「ススキを持って、実家に行って来るか」
愛猫がじゃれるのを想像し、近々実家に帰ろうと思うのだった。

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