ススキ
近くにススキ野原があって、いま真っ盛りだと言うので二人で来てみた。
近くとは言っても、家から車で30分以上来て、駐車場からかなり歩いた。
ふいに視界が開けて、一面のススキだった。
1本1本は地味な草だが、こんなにもまとまっていると、風に吹かれて右へ左へと波のように揺れ、大きな生き物のように見えて不気味だった。私は思わず健二の腕にしがみついた。
「健二、帰ろう」
「もう帰るの?来たばっかりだよ」
「だって怖くなったの、なんか怖いの」
思わず涙ぐんだのを見て、健二は私の肩を抱いて、分かった、帰ろう、と言った。
「だいじょうぶだからね」と何度も囁く。その声に勇気を得て、帰りの小道に入ったとき、私は大きく振り返り、もう一度ススキ野原を見た。
・・・ただのススキたちだった。
怖く感じたのは何だったんだろう?でも、やはり、ここにとどまって眺めているのは嫌だった。鬱が進みそうな気がした。3ヶ月も苦しんで、やっと抜け出したのだ。もう、あの気持ちはたくさんだ。
駐車場までの道は、意外なほど心が弾んだ。スキップしたい気分だった。
11/11/2024, 9:16:29 AM