『カーテン』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
最近片方の靴下が見当たらない。いいや靴下だけではない。
友達に貰った、ちょっと自分じゃ買わないお高いハンカチまで行方不明なのだ。
ベッドの下クッションの裏ソファーの脇。隙間という隙間を執念深く探す。遂に服のポケットまで探すも見当たらない。
「……ねぇ、どこいったと思う」
見つからなすぎて愛猫に話しかける始末。
お姫様は知りませんことよと言うように一言鳴くのみ。それもそうか。
もう探せる場所は全部見た。
一度頭を冷静にさせるため換気をしよう。いつもは猫の定位置の為たまにしか開けない窓がある。今日くらいいいだろう。そうカーテンを開ける。
するとそのカーテンの裏には探し物が詰まっていた。
私は犯人を尋問すべく部屋に戻った。
カーテン
何時も通る道沿いに、一寸古い一軒家がある…2階建てで、広い庭があり、山茶花の生け垣で囲われている…何時もひっそりしているけれど、時々車が停まっているのを見掛ける…そして、2階の窓は、何時もカーテンが閉まっていて、だけど、少しだけ隙間がある…ある昼下がり、何時ものように、近くに差し掛かると、ピアノの音が洩れてきていた…思わず、目を向けると、何時も閉まっているカーテンが大きく開放されていて、ピアノと演奏している女性の後ろ姿が見えた…
カーテン
「もーういいかーい?」
そう問いかければ、元気な声が遠くから聞こえてくる。
「もーいいよー!!」
閉じていた目を開けて、声の主を探しに行く。どこかなー、と言いながら、寝室やキッチンを軽く見つつ、本命のリビングへ。
「どこかなー? 机の下かなー?」
もちろん、机の下には誰もいない。というより、リビングに入ってきてすぐわかってしまったのだ。
カーテンがぐるぐる巻きになって、中に人がいることが。可愛らしいな、なんて思いながら、イスの下かなー、とまだ探している振りを続ける。
カーテンの中からはくすくすとした笑い声が聞こえてきた。
「んー? なんか笑い声が聞こえたぞ。ここかな?」
カーテンごと抱きしめるように覆い被されば、あはははは、と楽しそうな声が上がる。
「みーつけた」
その言葉が、かくれんぼの終わりの合図。ぐるぐるのカーテンから救いだし、ふぅ、と一息つけば、キラキラとした瞳でこっちを見つめてきた。
「もういっかい! つぎは、わたしがさがす!」
君は夜、カーテンを閉めたがる。
「高層マンションじゃん。気にすんなよ」
「やーなの。だって夜は…」
「夜は?」
「…おれらだけが良いから」
夜さえも邪魔者だって? お前ホントに…
「俺のこと好きすぎるな」
うるさいなー!!
君は照れまくって顔を真っ赤にして、そんな君を俺はケラケラ笑いながら抱きしめて。
わかったよ、朝までこうしていよう?
そして朝になったらさ、カーテンを音を立てて思いっきり開けて、そしてベランダでコーヒーを飲もう。君が俺のためだけに淹れてくれたコーヒーを。
それまで幕開けはお預け。
▼カーテン
自分におはよう
カーテン開ける
それだけでしあわせやん
ふわりと揺れるカーテン
優しい風が入ってくる秋の昼下がり
ほんの少し冬の気配を感じる
春の風と秋の風
どちらが好み?
私は秋の風が落ち着く
四季を感じる事ができるのは幸せだとふと思える
心地よい
靡くカーテン
茜色の夕焼け
其処に一つの影
一つの涙
涙が下に落ちた時
世界は真っ暗になった
# 149
カーテン
ゆるやかに、風を含んだ布端が、つまらなそうな私を誘うよう、肩を寄せて見せてくれました。頬杖をしながら今日の空について、贅沢な時間でした。
【カーテン】
子供達にお化け屋敷と呼ばれている家があった
その家は汚れてくすんでおり、木々が生い茂っていた
カーテンはいつも閉められていて誰が住んでいるのか
知る者はいなかった
茉莉はいつもその家を通って出勤していた
ある日、茉莉はあることに気付いた
カーテンの隙間から誰かが茉莉を覗いているのだ
茉莉は恐怖で固まり、動けなくなった
すると窓が開き、中から青白い男の顔が出てきた
「いつもここを通ってますよね。この場所でずっと見ていたんです。気づいてくれて嬉しいなぁ。」
男は照れたよう笑いながら、窓を潜って出てきた。
男は悪びれる様子もなく、茉莉を家に招こうとした
だが、危険を感じた茉莉は逃げ出そうとした
すると男は豹変した
男は細く弱々しい体から出るものとは思えない力で
茉莉の腕を掴み、家に引きずり込んだのだ
茉莉は暴れるように抵抗し、逃げようとした
しかし、努力も虚しく彼女は部屋に閉じ込められ、
その生涯を終えるまで部屋から出ることは無かった
男は茉莉を愛し続けた
茉莉はいつしか男に依存するようになっていた
結局茉莉は最初から最期まで男の思い通りだった
最も男は、茉莉がカーテンの隙間から
密かに助けを求めていたことは知らなかったが…
#110 【カーテン】
寝室のカーテンは遮光がいい!と
わがままを言ったのは確かに私だ。
だって知らなかったんだもん。
あんなにしっかり遮光だなんて。
朝になっても暗いやないか。
びっくり。
全然起きられない。
幼い頃は、なんだかペロリンとした
カーテンしか知らなかったから
分厚いカーテンに憧れがあったのよ。
でもいいよね、遮光カーテン。
燦々な昼間も
楽々お昼寝出来るもんね♪
1枚、それが日を遮ると部屋の雰囲気が変わる。
ぐっと暗くなる。
でも隙間から入る光だけで十分。
心に1枚、欲しい。
君が、あの人が、近づくと自分が乱れる。苦しい。辛い。
1枚、薄くてもいい。半開きでもいい。
自分保ったまま、外をみたい。
冷静な自分でいたい。
#カーテン
「カーテン」
放課後の教室
淡い光の中
カーテン越しに
ふたりのシルエット
秘密の戯れ
悪戯に風がそよぎ
カーテン舞う
僕の恋は散った
カーテン開けば青空
カーテン開けば雨模様
カーテン開けば雪景色
カーテン開けば庭に野良猫
カーテン開けば干した洗濯物が飛んで行った
本番まで、あと5分ちょっと。
カーテンの向こう側から、ザワザワと観客の声がさざ波のように聞こえてくる。
アクション、演技、台詞回しは全部覚えた。衣装に解れやシワがないのも確認済み。小道具だってばっちりだ。
それでも僕の不安な気持ちを物語るように心臓はバクバクと大音量で鳴っている。
「あぁ〜緊張する…!」
「大丈夫か?顔色真っ青だけど」
「だって開口一番は僕なんだよ!セリフいきなり噛んだり、とちったりしたらどうしようと思うと…」
「それなら大丈夫だろ、お前なら。リハ以外にも他の奴より練習してたんだからよ」
「うぅ〜…でも…心配なんだよぅ…」
我ながらどんどん情けない声になっていく。始まる前なのにもう泣きそうだ。
「…よし、ちょっと手ぇ貸せシンタ。片手でいいから」
「ぇ…う、うん」
タイチに言われるまま、右手を出す。すると、握手する形で掴まれた。そして
「お・りゃ・あぁ〜!」
「うわわぁあっ‼︎」
力いっぱい縦に振られた。2、3回だけの往復で止まったが体全体が揺れてくらくらする。
「って、何すんだよタイチ!肩もげるかと思ったじゃん!」
掴まれていた手を払うと、タイチがニカっと歯を見せて笑った。
「はっはは!ようやくいつものシンタになった!」
「…もしかして緊張ほぐそうとしてやったの?」
「おぅ!体ガチガチだったからな。いい感じに柔らかくなったろ」
よかったな!と明るく言うタイチの顔を見て、少し呆れたため息が出た。でも、緊張して強張っていた体は少しだけリラックスして動きやすくなった。
「やり方はめちゃくちゃだけど…でもリラックスできた、サンキュ」
「どーいたしまして」
開演を知らせるうるさいブザーが体育館内に響く。その少し後に、放送部のアナウンスが続いた。
『これより、3年3組の演劇が始まります。演目は--』
お題「カーテン」
蝉の声がうるさくて、目を開ける。
窓を開けながら寝ていたから、風でカーテンがゆらゆらと揺れているのが見えた。
そのカーテンの裏に、黒猫が凛と佇んでいた。
とても、綺麗だと思った。目の前にいる黒猫は、どこから来たのかは分からないけど。
ふわっ、と私が欠伸をした瞬間、風が強く吹いて、カーテンが大きく揺れた。
その瞬間、黒猫はどこかへ消えていった。
寝ぼけていたのだろうか。私は不思議に思いながらも、眠気には勝てずそのまままた眠ってしまった。
カーテン
娘の部屋(和室)の入口は襖ではなく
カーテンだ。
娘の言動に旦那が怒り、襖を殴って
半壊にした。
旦那の言動に私が怒り、襖を蹴って
全壊にした。
そんなこんなで、緑色のカーテンで
閉めている。
風に揺られカギも付いてはいないが
勝手に開けてはならないのである。
『カーテン』
白いレースカーテンの隙間から、まるで水彩画の様な淡い空がチラと顔を覗かせる。霞が掛かるのは、正しく春の空。薄い雲と風にはためくカーテンが重なる。
それを見て、気付けば私は心の中でカーテンを引いていた。
春は好き、秋は好き。夏と冬は嫌い。
カーテンを引く。そして『嫌い』は見えなくする。
散歩をした。睡眠はしていない。
カーテンを引く。そして『していない』を隠す。
これは出来る。あれは出来ない。
カーテンを引く。そして『出来ない』は排除する。
諦める。努力する。
カーテンを引く。そして『努力』から目を逸らす。
心の中にカーテンレールを敷き詰め、分別し、見なかったフリをした。事柄の分別は心を守る為のもの。どんな事でも隠せば見えなくなる。そしていつか忘れる。だからカーテンを引く。
「ね、空綺麗だよ?」
カーテンを引く。開け放たれた窓からは、白に近い水色が顔を出す。暖かなそよ風に頬を撫でられ、ふと笑みが溢れた。
桜の花弁がゆらり。紋黄蝶がふわり。花の甘い香りと共に漂うそれに、心のカーテンが開けられる。閉じたいのに閉じられない、問題児と名の付けたカーテン。
貴女との甘い恋。誰かからの避難の声。
カーテンを引く。そして『反対』をかき消す。
貴女は消えてしまった。いや、どこかに居る筈。
カーテンを引く。そして『奇跡』は無いと割り切る。
貴女の為に生きる。貴女の所へ行く為に死に急ぐ。
カーテンを引く。そして『死に逃げ』を塗り潰す。
私は生きなければならない。
何度も辿り着いた思考。
カーテンを引き、空と室内を遮る。少々暗くなった部屋、花瓶に挿されたチューリップを見つめた。現実ではこうも簡単に出来るのに。そう心の中でぼやく。
心にカーテンを引きたい。
もう前を向きたい。
遮ってしまいたい。
割り切りたい。
そんな心を遮光カーテンで隠す。
そんな思考を遮る。
ただ、貴女の笑顔だけは遮れないまま。
カーテンで私を隠して
誰にも見えないように
誰からも気づかれないように
そっと隠して
【カーテン】
1人になる空間が欲しかった
静かに勉強できる空間
誰にも邪魔されず
誰にも気づかれないように
でも無理で
私の心は限界に達した。
今も家で一番暗くて寒くて狭い場所にいる。
きっともうここから出なきゃだけど
助けて欲しかった、
よりぼくを1人にして。
私の心のカーテンは朝になっても、夜になっても開かない…
誰かを信じることが怖くて、誰かにさらけ出すことすらできなくて、
ずっと私の中は誰にもみられないの…
でも、ちょっとだけ見て欲しいっていう時もあったりするの、
めんどくさいって思う?思うよね、自分でも思うもの。
こんな自分が何になるんだろう?って、
周りの人はあんなに個性があって、いいなぁ…って思って、ずーっとそんなことを考えて、考えるだけで自分では行動しなくて…
笑っちゃうよね、なにかしたいなら変えなきゃ意味無い…
知ってるよ…
自分で閉めたカーテンを開けるのは自分しか出来ないことも
─カーテン─
下校のチャイムが鳴る。
玄関に行き、靴を履き替え、歩く。
自転車に乗り、家までゆっくりと走る。
どうでもいいことを考えていると、あっという間に着いた。
玄関を開け、誰かに聞こえるよう声を出す。
「ただいまー。母さん、今日テスト返されてさ、」
…何か違う。静かすぎる。出掛けてるのか?
「母さん?リビングに居るの?」
リビングにはいつも通り電気がついていた。
「居るなら返事してよ、母さん。」
その言葉と、ドアの開くタイミングは同時だった。
そこにはゆらゆらと揺れる、母さんだったものがあった。
「…は?母、さん?え…?」
窓は開いていて、カーテンを揺らしていた。
同時に、ぶら下がった“それ”も。
意味が分からない。ぐるぐるする頭で考える。
どうして?何で?僕のせい?誰のせい?
考えても息が荒くなるだけ。
涙が溢れるだけ。
その日のリビングには、
僕の嗚咽と、風の吹き抜ける音が木霊していた。