─カーテン─
下校のチャイムが鳴る。
玄関に行き、靴を履き替え、歩く。
自転車に乗り、家までゆっくりと走る。
どうでもいいことを考えていると、あっという間に着いた。
玄関を開け、誰かに聞こえるよう声を出す。
「ただいまー。母さん、今日テスト返されてさ、」
…何か違う。静かすぎる。出掛けてるのか?
「母さん?リビングに居るの?」
リビングにはいつも通り電気がついていた。
「居るなら返事してよ、母さん。」
その言葉と、ドアの開くタイミングは同時だった。
そこにはゆらゆらと揺れる、母さんだったものがあった。
「…は?母、さん?え…?」
窓は開いていて、カーテンを揺らしていた。
同時に、ぶら下がった“それ”も。
意味が分からない。ぐるぐるする頭で考える。
どうして?何で?僕のせい?誰のせい?
考えても息が荒くなるだけ。
涙が溢れるだけ。
その日のリビングには、
僕の嗚咽と、風の吹き抜ける音が木霊していた。
10/11/2023, 1:27:16 PM