人さがし

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11/18/2024, 11:33:49 AM

─たくさんの想い出─

えー、今日は少し身の上話でもしましょうかねぇ。

実は私、死ぬ前は嫁さん…まぁ、伴侶が居たんですよ。

あはは、こんな私でも伴侶が出来るなんて、世も末ってものですよねぇ。

…おっと、話がずれてましたね。

で…えーと?あぁ、そうです。私の嫁さんの話でしたね。

私の嫁さんですね、これはまぁ立派な顔立ちでして。

私には勿体無いくらいの美人さんだったんですよ。

二人で山の麓に住んでましてね、そこにはたくさんの想い出が詰まってるんですよ。

一番はまぁ、山の桜でしょうかね。

春になれば二人で歩いてね、

上も下も桃色に染まった世界で…嫁さんがより美人に見えましたよ。

死んでしまった今じゃあもう見れないですけどね、それが私の幸せだったんです。

…ん?心残り、ですか?いやぁ、特に思い付くものはないですがねぇ…。

…唯一あるとしたら、嫁さん残してこっちに来てしまったことが、一番の心残りですかね。

あんな美人さんもらっておいて、

置いて先に逝ってしまうなんて…最低と罵られても、言い返せませんね。

私のことを忘れて、他の人と幸せになってと言ったものの…そこだけは頑固でね。

別れ際、ずっと忘れないから、なんて…私よりも格好いいことを言ってましたよ。

そんな嫁さんが…今でも、忘れられない程愛しいのです。

9/13/2024, 12:55:08 PM

─夜明け前─

スマホの画面には君の名前とLINEアイコン。

…嗚呼、また夜を更かしてしまったのか。

もう何回目かわからない通話。

夜明け前の、淡い青空になるくらいまで通話することもしばしば。

なんでこんなに電話するようになったんだっけ。

…あ、そうそう。君が控えめな僕に何故か話しかけてくれて。

アニメの話とかで盛り上がって、LINEも交換して。

通話を通していくうちに、なんでも話せる仲になって。

君も、僕のことを心から信用できるやつだって言ってくれて。

でも…たまに。本当にたまに、君を殺してしまいたくなる。

いつか君が…僕のことを裏切って、嗤う日が来てしまうんじゃないかって。

今までの思い出が、すべて演技だと突きつけられるんじゃないかって。

そんな日がいつかくるのかと、話す度に怖くなって。

だからそんな日がくる前に、君を殺してしまいたい。

…きっと僕を信用してるのは本心なんだろう。

けど疑ってしまう。怖くなってしまう。

そんな僕を、君は友達と呼べるかい?

7/11/2024, 2:18:56 PM

─1件のLINE─

相棒と、喧嘩した。
その相棒ってのは一緒にシェアハウスしている、俺の中で一番仲の良い奴だった。

喧嘩のきっかけは些細なことだったと思う。

そこで謝ればいかったものの、ムカついてたせいか昔のミスを指摘したんだ。
そこから段々エスカレートしてって、今までで一番大きな喧嘩になった。

自分でも、過去の話を持ち出すなんてださいって分かってた。
でも、疲れが溜まってたんだと思う。俺も、あいつも。

それから3日間、相棒は帰ってこなかった。

流石に心配になって、ずっと無視していたLINEを見た。
そこには「3日前:世界一の相棒!からの1件の通知」と示されていた。
嗚呼…たしかふざけてこんな名前にしたんだっけ。
そんなことを考えながら、その1件のLINEを見る。

そこには「○○病院 305号室」とだけ残されていた。

俺は嫌な予感がして、急いでその病院へ向かった。
一瞬、なにかの悪戯なんかじゃないかと思った。
305号室。3月5日と捉えると、俺の誕生日だった。
だから、やり返すためのドッキリだと、何処かで信じていた。

しかし現実は残酷で、そんな理想は呆気なく壊された。

病室にはベッドに横たわって、管がたくさんついた相棒の姿。
見ているだけで痛々しい相棒の姿を見て、俺は後悔した。

なにも出来ずに突っ立っていると、医師らしき人が入ってきて、
一瞬驚いた様子をしながら、別室に案内された。

相棒は、3日前。つまり、喧嘩した日に、事故にあったと。
なんでも、手にはコンビニの袋を持っていたからコンビニ帰りらしい。
「その袋を一応」と渡されたが、その中には俺と相棒が好きなアイスが1本ずつ入っていた。

同じ袋には手紙も入っていて、「ごめんな 世界一の相棒へ」と書いてあった。

6/23/2024, 5:43:53 AM

─日常─

朝、雨音で目覚めた。

枕元の時計は6:00を示している。

嗚呼、そうだ。昨日は寝落ちしたんだっけ。

窓を開けっ放しにして、ベッドの上で本を読んでいたんだ。

回りを見渡すと床に落ちた数冊の本。

窓も開いているため、雨の音がしっかりと聞こえてくる。

そういえば、もうここも梅雨入りしたんだっけ。

窓の外から聞こえる、雨がトタン屋根に落ちる音、

蛙の鳴き声、木々のざわめき、車の過ぎてく音、跳ねる水溜まりの音。

早く窓を閉めないと、雨が入ってきちゃうな。

もっとこの音に耳を傾けていたいけど、これからこの音が日常になるのだから。

窓を閉めるくらい、惜しくないことだ。

さぁ、目を開けて、朝食を食べようか。

6/3/2024, 6:40:39 AM

─正直─

…ふふ、貴方ってほんとに正直者ね。

普通は言い訳でもして、自分の女を手元に置いておくものなの。


…え?知らないって?

まぁ、そうよね。貴方ってそう言う人だものね。


…えぇ、勿論。知ってるに決まってるでしょ?

だって貴方を好きになった女よ?好きな人を知ってるのは当たり前。

…なんて言っても、どーせわからないでしょうけど。

あーあ、もっとマシな男に惚れとけばよかった。


…何?私の中で貴方がどんな人だったか?

んー…正直者で、ちょっと馬鹿で、でも可愛い所もあって、やっぱり馬鹿で…。


え?馬鹿って二回言った?実際そーだったしいいでしょ。

まぁとにかく、私が今まで一緒に居た中で一番楽しかった人、かしら。

貴方との日常は楽しかったわよ。思い出の物も沢山できたし。

まぁ…きっと貴方はこの後捨てるでしょうけど。


…捨てない?はぁ、口ではなんとでも言えるのよ。

とにかく、浮気した貴方とはもう付き合っていけないわ。


…そう、お別れ。もう一生会えないわ。

じゃあ最後に…私を楽しませてくれてありがと、バカ正直さん。

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