─たくさんの想い出─
えー、今日は少し身の上話でもしましょうかねぇ。
実は私、死ぬ前は嫁さん…まぁ、伴侶が居たんですよ。
あはは、こんな私でも伴侶が出来るなんて、世も末ってものですよねぇ。
…おっと、話がずれてましたね。
で…えーと?あぁ、そうです。私の嫁さんの話でしたね。
私の嫁さんですね、これはまぁ立派な顔立ちでして。
私には勿体無いくらいの美人さんだったんですよ。
二人で山の麓に住んでましてね、そこにはたくさんの想い出が詰まってるんですよ。
一番はまぁ、山の桜でしょうかね。
春になれば二人で歩いてね、
上も下も桃色に染まった世界で…嫁さんがより美人に見えましたよ。
死んでしまった今じゃあもう見れないですけどね、それが私の幸せだったんです。
…ん?心残り、ですか?いやぁ、特に思い付くものはないですがねぇ…。
…唯一あるとしたら、嫁さん残してこっちに来てしまったことが、一番の心残りですかね。
あんな美人さんもらっておいて、
置いて先に逝ってしまうなんて…最低と罵られても、言い返せませんね。
私のことを忘れて、他の人と幸せになってと言ったものの…そこだけは頑固でね。
別れ際、ずっと忘れないから、なんて…私よりも格好いいことを言ってましたよ。
そんな嫁さんが…今でも、忘れられない程愛しいのです。
11/18/2024, 11:33:49 AM