─はじめまして─
『…えっと…?』
突然の出来事だった。目覚めたのは病室。
日の当たる窓際のベッドで、
いつも通り同じ感じで目覚めたつもりだった。
俺を見た看護師さんが慌てて出ていって、医者が来て説明された。
どうやら事故にあったらしい。
脳に強い衝撃を受けたせいで、記憶に障害があるのだと。
数日間眠り続けていたらしく、窓のそとに咲く桃色が、
いつのまにか春が訪れていたことを知った。
桜の咲く瞬間が見られなかったことが少し残念だ。
風で靡く桃色に、見惚れていたのかぼーっとしていると、
病室の扉が音を立てて開いた。そこには素敵な女性。
「っ…!!」
その美しい女性は俺を見て、悔しそうな、嬉しそうな顔をして涙を目に溜めていた。
『…はじめまして?』
その女性の大きく開いた瞳から、綺麗な雫が一粒溢れた。
息を吸い込んだその女性は、決心したように目を合わせて言った。
「…はじめまして!」
4/1/2025, 10:45:35 AM