人さがし

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6/3/2024, 6:40:39 AM

─正直─

…ふふ、貴方ってほんとに正直者ね。

普通は言い訳でもして、自分の女を手元に置いておくものなの。


…え?知らないって?

まぁ、そうよね。貴方ってそう言う人だものね。


…えぇ、勿論。知ってるに決まってるでしょ?

だって貴方を好きになった女よ?好きな人を知ってるのは当たり前。

…なんて言っても、どーせわからないでしょうけど。

あーあ、もっとマシな男に惚れとけばよかった。


…何?私の中で貴方がどんな人だったか?

んー…正直者で、ちょっと馬鹿で、でも可愛い所もあって、やっぱり馬鹿で…。


え?馬鹿って二回言った?実際そーだったしいいでしょ。

まぁとにかく、私が今まで一緒に居た中で一番楽しかった人、かしら。

貴方との日常は楽しかったわよ。思い出の物も沢山できたし。

まぁ…きっと貴方はこの後捨てるでしょうけど。


…捨てない?はぁ、口ではなんとでも言えるのよ。

とにかく、浮気した貴方とはもう付き合っていけないわ。


…そう、お別れ。もう一生会えないわ。

じゃあ最後に…私を楽しませてくれてありがと、バカ正直さん。

4/14/2024, 6:04:17 AM

─快晴─

えー、実はわたくし、先日死んでしまいまして。

とても他人事のように言ってるって?いやいや、自分でも驚いてますよ勿論!

でもねぇ、その死に様がこれまた綺麗なモンで。

今日はそれを話したくて来たんですよ。

わたしが死んだ日はね、真っ青な空が広がる快晴だったんですよ。

その日は、特別大事な用があった訳でも無かったのでね、散歩に行こうと思いまして。

実はわたしの家の裏には、大きな山がありまして。

これまた見事な桜が咲いているんですよ!

しかもあまり知られていない、穴場だったんです!

だからわたしはその山をとても気に入っておりました。

勿論今年も、見事としか言えないような桜が咲いておりましたよ。

5枚の花弁が風に揺られ、その下には散った花弁の絨毯がありまして。

どうやらわたし、その桜に魅了されましてね。地面なんて見てなかったんですよ。

その先に階段があることを忘れて…。えぇ、皆さん御察しの通り、落ちてしまったのです。

薄ピンクの絨毯に、赤黒い血はとても目立ちました。

そのあとは眠るように…という感じですね。

人も居ない田舎町だったもんで、私が見つかったのかも分かりませんね。

これこそ桜の木の下には死体が埋まってる、ってモノですね。

なんと浪漫ある死に様でしょう…わたくしはとても感嘆したのです!

只でさえ綺麗な桜の下で…おっと、長く話し過ぎましたね。

長くなると止まらないので、これでわたしの最終章は終わりと言っておきましょうか。

是非貴方の死に際も、此方に来た際にお聞かせください。では、また何時か。

4/1/2024, 10:10:42 AM

─エイプリルフール─

「ねぇ、実は君に話したいことあってさ」

電話中に、彼は言った。

丁度、零時を回る数分前だったと思う。

「僕さ、実はさ、あと少ししか生きられないんだ」

『え、どーゆうこと?』

「手術とかしないといけない病気なんだよね」

その時、リビングから零時を回る音楽が聞こえた。

「ま、嘘なんだけどさ。」

『あ、今日ってエイプリルフールか。』

「騙された?」

スマホから小さな笑い声が聞こえた。

『も~ビックリしたじゃん!』

あはは、なんて笑う声が聞こえてきた。

「じゃ、もう遅いからおやすみ!」

『うん、おやすみ。』

後で思い返したが、笑い声の後ろから、

小さな泣き声が聞こえたのは気のせいだったのかな。

3/24/2024, 10:28:01 PM

─ところにより雨─

朝、激しく鳴り響くアラームで起きた。

今日は曇。空は曖昧な色をしている。

いつも飲んでいるインスタントコーヒーが無いことに気づき、

なんとなくイライラしながら、テレビをつける。

最初に目についたのは大きな文字で書かれた『ところにより雨』の文字。

嗚呼、だから少し湿っぽかったのか。寝癖が直らないのもそのせいか。

自分の中で正解を見つけた気でいると、窓からポツポツと音が聞こえた。

「…あーあ、今日は最悪だ。」

3/24/2024, 4:42:42 AM

─特別な存在─

中学校の入学式。

初めて入る教室で、隣になった君。

おどおどしながら聞いてきた、小さな疑問。

「…えっと、こんにちは!好きな曲とかある?」

はじめましてにしては思いきったなぁ、なんて思いながら、

『特にないかな』なんて答えちゃって。

それから少し話して、一年間仲良くしてくれた。

まさか二年生連続で同じクラスになるなんて。

「また同じだ、よろしくね!」

その頃には、君は特別な存在になってた。

一年前には想像してなかったろうな、なんて他人事に思ってた。

そして二年生が終わる頃、また一緒になりたいなんて思ったことも、

私にとって驚きだった。

あぁ、また一緒に、笑いたいな。

卒業式まで好きだったら、告白とかしてみたいな。

私の青春は、ずっと続いていた。

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