『カレンダー』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
目覚めてすぐに、テーブルの上の卓上カレンダーを確認する。
今日の日付に印はない。
少し気落ちしながら部屋を出て、朝の仕度を始める事にした。
またいつもと同じ、退屈な今日が始まり。未練がましくカレンダーを見ても、やはり日付にはなんの印も書いていない。
いつまで待てばいいのかと、愚痴をこぼしてカレンダーをつつき。いつもの時間通りに家を出た。
目が覚めてすぐにカレンダーを見る習慣は、どれくらい前から始まったのか。覚えていないそれは、けれども切っ掛けだけは今もはっきりと覚えている。
大切だった人からもらった贈り物。
花が好きなわたしのため、暦に合わせた花が彩りを添える、綺麗なカレンダー。
二人でカレンダーをめくり、笑い合いながら記念日に印をつけていったあの日の記憶は、忘れる事など出来るはずがない。
だから本当は、印をつけた日付はすべて覚えているし、あと何日後に何があるのかも分かっている。そもそも一月ごとにめくるカレンダーなのだから、確認するまでもなく印があるかないかは見えていた。
今日の日付に×印をつけ、なんの印もついていない日付をなぞる。
日めくりのカレンダーならば少しは空しくなくなるのかと、意味のない空想に耽りながら、変わらないであろう明日を思って目を閉じた。
目覚めてすぐ、カレンダーを確認する。
今日の日付に、ピンクのペンで可愛らしく丸がついていた。
記念日。ずっと待っていた特別な日。
うれしくなって、いつもよりも時間をかけて身だしなみを整え、お気に入りの白のワンピースに袖を通す。
カレンダーをバックに入れて、特別な赤い靴を履いて、跳ねるように家を飛び出した。
記憶をなぞるように思い出のカフェで朝食を取る。二人で何度も訪れた映画館へと足を運び、目に付いた映画を見た。
昼食は取らずに公園を散歩して、水族館で好きだったアシカのショーを見て。
夕方になって、花束を買った。色鮮やかな、夏と秋の合間に咲く花を手に、星がよく見えるようにと高い所へと上っていった。
一番高い所から、星空を見上げる。
今日は特別な日。ずっとずっと待っていた。
足を踏み出す。
空が近くなった気がして。そのまま、
「はい。そこまで」
腕を引かれる。
ぱちん、と何かが割れるような感覚がして、ふわふわとしていた意識がはっきりする。
今わたしが立っている場所を見て、ぞっとした。
マンションの屋上。フェンスの向こう側。
足下に広がる街の小さな景色に、足が竦んで動けなくなる。
「悪いな。少しだけ我慢してくれ」
腕を引いてくれた誰かの声に振り向くよりも早く、引き寄せられて浮遊感を感じ。
気づけばフェンスの内側で座り込んでいた。
「もう大丈夫か」
見上げれば、黒い男の人。
その手には見慣れたカレンダーがあり、半ば無理矢理奪うような形でカレンダーを取った。
日付を確認する。変わらずそこにはピンクの丸が書かれていて。
その丸がぐにゃりとゆがんで形を変え、文字を形作っていく。
落ちればよかったのに。
暗がりの中でも何故かはっきりと見える文字に、引き攣った声がもれてカレンダーを放り出した。
かさりと音を立てて落ちたカレンダーを男の人は拾い上げ、書かれた文字を見る。あぁ、と何かを納得したように小さく頷くと、文字を見せるようにしてカレンダーを差し出された。
「もう許してやってくれ。仕方のない事なのだから」
許すとは何を意味しているのだろう。
カレンダーを見れば、文字はまた形を変えて広がって、カレンダーを埋め尽くしていく。
許さない。落ちてしまえ。
「わ、たし。あの人に、恨まれている、の?」
怒りしか感じられないその文字達に、掠れた声がもれる。
あの人が怒っている所なんて今まで見た事がなかった。いつも怒るのはわたしの方で、あの人は少し困った顔をしながら、そんなわたしをなだめてくれていたから。
そんな優しいあの人をここまで怒らせた。憎み恨ませてしまったのか。
呆然とするわたしに、けれど男の人は静かに首を振って否定する。
「これは誰の文字だ?」
誰の。その言葉に文字を見る。
丸みを帯びた、少しクセのある字。あの人のお手本みたいに綺麗な文字とは、全然違う。
でもこの文字を、わたしはよく知っている。直そうとして、結局直す事の出来なかった文字をわたしは知っている。
これは、わたしの文字だ。
そう理解した途端、耐えきれなかった涙が溢れてきた。
思い出した。思い出してしまった。
今日がなんの日なのか。この場所がどこなのか。
カレンダーを見る習慣。その意味も全部。
「許してやれ。お前が悪い訳じゃない」
泣きじゃくるわたしに、男の人は優しく許してやれ、と繰り返す。
そんな事出来るわけがない。
わたしをわたしが一番許せないのに。
泣きながら、許さない、と声を上げる。わたしへの恨み言を何度も繰り返す。
繰り返して、けれど次第にそれは寂しい、の言葉に変わり。
結局の所、わたしはあの人がいない事が寂しいだけなのだと知った。
ごめんね。ありがとう。
カレンダーの文字が変わった事にも気づけずに、あの人がいない事にただ泣いていた。
20240912 『カレンダー』
私の通う中学校には、少し変わった伝統がある。
他校が学園祭でミスターやミスを選ぶように、ウチでは各クラスから代表者1名を選出する。普通と違うのは、選ばれた12名全員が、学校オリジナルカレンダーの写真になる点だ。
ひとりひと月担当し、各月に合った衣装に着替えて撮影される。クラスごとに衣装はもちろん小道具など、どんな写真にするか1から考えて準備する。
学園祭と並行して行われるこの行事は、生徒たちにも地域住民にも根強い人気を誇っている。
我がクラスの代表は誰かというと……
「やっぱりさ、藤江くんじゃない?」
ひとりの女生徒が言い出した。
「イケメンだし、運動できるし、頭も良いでしょ」
「たしかに、クラス代表に相応しいよね」
みなが同調する中、本人が意外な声を上げた。
「僕は岡野くんがいいと思うな」
突然名前を出された私は驚いて藤江くんを凝視した。
「僕はこのクラスに来たばかりで馴染みが薄いし、クラスの代表を名乗るのはプレッシャー感じちゃうかな。それよりも、最初からのメンバーで顔も可愛い岡野くんが適任だと思う」
彼の発言に周りもうんうん言い始める。
「岡野くん、どう? やれそ?」
「え、いや私なんて」
「岡野ならやれるさ! その辺のアイドルにも負けない顔してるし」
そうだ、そうだよと盛り上がるクラスメイトたち。トドメの一言は藤江くんだった。
「岡野くんがどうしても嫌なら僕が頑張るけど、どうかな。もちろん、もしやってくれるなら全力でサポートするよ」
先程彼が言ったように、来たばかりの彼に重荷を背負わせるのはよろしくない。というより、彼だけでなくみんなにとっても重責なのだ。誰かが背負わなくてはならないなら、私が背負えばいい。
それに「何事も経験だ」と、よく父が言っている。あわよくば先生も褒めてくれるかも。
「わかった、やるよ」
私が承諾すると、一気にクラスが湧いた。
テーマ「カレンダー」
カレンダー
部屋の中で1番目に付く場所に壁掛けカレンダーを置いている
カレンダーを新しい月のページにする時、毎月 必ずする事がある
それは毎週火曜日に赤い丸をする事
「今月もそれやってるの?」
「俺のルーティンだからね」
キリッとキメ顔で言う俺に彼女は笑う
毎週火曜日それは彼女の定休日であり、俺と彼女が出会った曜日でもある
カレンダー
忘れっぽい私に、見開き一ヶ月のカレンダーノートは必需品だ。今年は来年のものをもう購入した。いつも年末になってから探していたが、小さなサイズのものしか残ってなかった。最近とみに視えにくい目には、大きなノートの方が楽だ。
このところ、自分のいろいろが一つずつ新しくなってきている。なんとなく記憶しているカレンダーの日付では、2週間ほど前からだ。
まず身体。どうしてこうなったと考えてもまだ解らない。苦しみ臥せて必死で呼吸を繋いだ。横隔膜をろくに動かせない5時間半、伴う頭痛、心拍異常。意識的集中力は全て息をすることに注いだ。それから丸二日間は異常な速さで身体の代謝が進んだ。今もまだ身体を動かすのに不確かさがある。しかし徐々に安定感が増してきているので、多分大丈夫。
持ち物や暮らしの道具の類も少しずつ新しく入れ替わってきている。前もって計画などはしていない。
確かに、私の人生は新しいフェーズに入ったのだろう。あれこれあってほぼ12年、社会人的活動からも離れていた。求人広告に記載されている文言もずいぶん変わったことに驚く今日このごろ。正直に言って新鮮だ。人の世は変わりゆくんだね。
その救難信号は、ここからさほど遠くない星域から発信されていた。船長は宇宙船の燃料の余裕を確認し、船員たちに「母星に戻る前にもう一つぐらい善行を積んでおくことにする」と宣言した。
さほど、とはいったものの二度のワープを重ねて小さな惑星に到着した。この星の大気組成は地球型生物の生存に適しておらず、アンドロイドである私が救難信号の発信元を捜索するよう任された。
大気圏外からあらかじめ予備調査をしていた通りに、礫砂漠の真ん中で宇宙船とおぼしい黒い塊を発見した。
どうやらここに不時着してから長い年月が経っているらしく、外装の損傷が激しい。これでは生存者がいる可能性は低いだろう。このタイプの船は右舷に入口があるので、反対側へぐるりと移動しようとしたとき、機首の窓がキラリと光った。足を止めて窓を注視すると中でもう一度何かが光り、そしてガコンと不格好な音を立てて船体のドアが開かれ、中から小さな四足歩行の動物がタラップを降りてきた。
この姿は、おそらく犬だ。
犬は私を見上げ、小さく尻尾を振った。尻尾が揺れるたびにわずかに金属音がきしんだ。私と同じ、機械生命体なのだろう。それならば宇宙共通言語でコミュニケーションがとれる。
彼(便宜上、彼と呼ぶ)は、125年前に不時着にしたこの宇宙船の最後の生存者だった。同じ乗組員の最後の1名から命じられた「救援を待て」という指示に従い、ここでずっと待機していたそうだ。
「今となっては古い資料ですが、船内にはこの宇宙船の航海データが一揃い保存されています。そのデータと、船員たちの遺品だけ母星へ持ち帰れるように助けていただきたい」
彼の控えめな要請に応じ、回収品の整理を手伝うため船内へ立ち入った。生物の気配のない静かな空気の中、ちょっとした違和感がある。
良く見ると、船内の壁面、床、机や椅子、あらゆる平面におびただしい数の傷がある。刃物で引っ掻いたようなその傷の一つ一つは歪な形だが、並びかたに規則性がある。私の視線に気づいたらしく、彼は少し耳を垂らし、肩を落としながら説明してくれた。最後まで生きていた人間がしていたように、毎日一つずつ数を刻んで、生き延びた日数を記録していたのだと。
もちろん私達アンドロイドは体内の光子時計に沿って活動するので、このような原始的なカレンダーをあつらえる必要はない。彼は前足で床の傷を撫で、そっと言葉をこぼした。
「自分には必要ないと分かっていても、人間たちが最後まで諦めていなかったことを示す何かを、この船に残しておくべきだと判断したのです」
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カレンダー
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所感:
救助された!良かった良かった!
「カレンダー」
「前回までのあらすじ」────────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!!!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!!!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!!!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!!!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!!!悪気の有無はともかく、これ以上の被害を出さないためにもそうせざるを得なかったワケだ!!!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにしたら、驚くべきことに!!!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚!!!さらに!!!アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかったのだ!!!
そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!!!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!!!
……とりあえずなんとかなったが!!!ちょっと色々と大ダメージを喰らったよ!!!まず!!!ボクの右腕が吹き飛んだ!!!それはいいんだが!!!ニンゲンくんに怪我を負わせてしまったうえ!!!きょうだいは「倫理」を忘れてしまっていることからかなりのデータが削除されていることもわかった!!!
それから……ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。いつかこの日が来るとわかっていたし、その覚悟もできたつもりでいたよ。でも、その時にようやく分かった。キミにボクを気味悪がるような、拒絶するような、そんな目で見られたら、覚悟なんて全然できていなかったんだ、ってね。
もうキミに会えるのは、きょうだいが犯した罪の裁判の時が最後かもしれないね。この機械の体じゃ、機械の心じゃ、キミはもうボクを信じてくれないような気がして。
どれだけキミを、キミの星を、キミの宇宙を大切に思ったところで、もうこの思いは届かない。でも、いいんだ。ボクは誰にどう思われようと、すべきこととしたいことをするだけ。ただそれだけさ。
……ついに裁判の時を迎え、ボク達はなんとか勝利を収めた!
それから。
ボク達はニンゲンくんに、そばにいていいって言って貰えたよ!
まあ一方的にお願いしただけとはいえ!!!
とても嬉しいことだね!!!
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「ニンゲンくん、ボクは本部まで諸々を取りに行ってくるから、ちょっとの間きょうだいを頼むよ!!!」
「えー!いっちゃうのー?!やー!」
「仕方ないだろう?!!荷物がなきゃ生活できないんだから!!!」「むー!」「キミははだかんぼで生きていくのかい?!!」「やー!」「絵本も欲しいだろう?!!」「んー。」
「⬛︎⬛︎ちゃん、おはなしへんなのー!」「???」
「ふつうにおちゃべりできないー?」「ん???」
「いちゅもみたいにおはなし、してー!」「……?」
「あー、分かった分かった。」
「いくらニンゲンくんの前にいるとはいえ、もう強がる必要はないか。」
「ニンゲンくん!!!いざ聞きたまえ!!!」
「今からボクはもう……キミの前で強がるような真似はしない!!!」
「なんせボクだってまだ子どもだよー?子ども扱いしてくれるキミの前ならわざわざ尊大に振る舞う必要もないよねー?ニンゲンくん、いいでしょ?」
「好きにしたらいい。」「相変わらずあっさりしてるねキミは!」「⬛︎⬛︎ちゃ、ちょっとへんだけどまーいっか!」
「あ、そうだ!これ、つけておかないときょうだいの言っていることがわからなくなっちゃうからさ!⬜︎⬜︎、こっち来て!」
「んー?」「翻訳機能搭載のピンだよ!」
「公認宇宙管理士の資格を剥奪されたから色んな機能が使えないんだよー。ひどいよねー?」「ねー?」
「とりあえず、ボクはもう行くね!」「いってらちゃーい!」
……置いて行かれた。自分の家なのにそういう表現をせざるを得ない状況だ……。ほとんど知らない幼児とふたりきり。
……自分にどうしろと?
「ニンゲンしゃん!あれ、なにー?」
小さな機械は壁にかかっているカレンダーを指差す。
「あぁ、あれはカレンダーだよ。」「かれんだ?」
「今日が何日か、何曜日かと予定を確認するんだ。」
「よてー?てなーに?」「何月何日何時に、どこで何をします、っていうやつだよ。例えば明日、買い物に行きます、とか。」
「ふーん。じゃ、ニンゲンしゃんのよてー!おちえて!」
「カレンダーに書いてるよ?」「うしょ、だめだよー!なんもないー!よてー、ないの?」「……。」
「じゃー、ニンゲンしゃんとボクと⬛︎⬛︎ちゃん!あしょぶー!えーと……このあかいとこ!あしょびのひー!」
幼児に勝手に用事を入れられた。
「ね、ね!」「ん?」「『あしょぶ』てかいて!かれんだ!」
「あー、はいはい。」日曜日に「あそぶ」。
「よてー!あるね!よかったねー!」
……そういえば、この子はずっと時間が止まったまま、だったんだよな。果てしもない時間が知らないうちに過ぎていて、色んなひとたちに置いて行かれて。どれだけ寂しかったろう。
大きなお世話かもしれないけど、少しでもこの子の心の隙間を埋められたら、ちょっとは自分の価値も、見出せるかな、存在が報われるのかな。
「ニンゲンしゃん!」「ん?」「だっこ!」「はいはい。」
無邪気な笑顔だ。あんまりかわいいから、ほっぺたを触ってみた。羽二重餅みたいに柔らかい。
「ニンゲンしゃん!わらってるー!」
嬉しそうに笑っているのを見て、知らないうちに顔が綻んでいた。……久しぶりに笑った気がするな。
「あちたのよてー!ニンゲンしゃん、わらうってかいてー!」
難しい予定を入れられてしまった。
まあいいや。
予定なんてなくても笑えそうな気がするから。
家族、友人、恋人。
その人たちとの関係を繋ぎ止める為に、我々はありとあらゆる手段を使う。
助け合い、奪い合い。
この体と、心と、知恵を使って、赤の他人と善悪の区別もつかないまま、共存、あるいは、依存している。
人とは、己の存在価値を見いだせないと生きていけない。
それは、人との関わりがなければ見つけることができない。
自分の価値は自分にしか分からないし、見つけられない。
けれど、人生にはしばしば、他人から価値を与えられることがある。
直接的な言葉と態度で、価値を伝えられることもあれば、
間接的な言葉と態度で、それが価値だと思わされることもある。
自分の価値が分からない、見つけられない人にとって、それは喉から手が出るほど価値のある答えだろう。
それで満足できるなら、それはどんなに幸せなことであろうか。
けれど、そうじゃないことがある。
他人に与えられた価値が、自分の求めていたものじゃない時。
自己が他人に求められること、認められることは重要だ。
出なければ我々は他人とコミュニケーションを取れる性質を持つ意味が無い。
善であり、悪であり、自分の存在を誰かに、世界に知らしめることには、この上ない快楽が発生する。
けれど、それが全てでは無い。
我々は、誰しもが完璧主義者だ。
ただ、完璧主義が己を追い込みすぎてしまうから、みんな5割、8割でも願いが叶っていれば、幸福を感じるようになる。
どのくらいの人間に、どのような自分を認められたいのか。
それは自分が探して、見つけだした答えか。
他人に歪められ、妥協したものではないのか。
どれか一欠片でもパズルがはまってなければ、それやがて大きな不満となって見を滅ぼすだろう。
そして、本当の価値を見出すことが出来たとしても、
他人の理解を得ることは容易ではない。
だけど、我々は地獄を見ようとも、より困難を選ぶだろう。
そして、地獄に耐えるために、それが困難であると認識するのを辞めるのだ。
カレンダー
無いと困るもの
1日1回は見てる
スケジュール帳の代わりになってる
そろそろ来年のものを買おうかな
一枚。紙にしては、たったそれだけだった。
それでも、過ごした時間は濃密で、たまらなく愛おしくて。
それをめくる度に思う。
また次も、頑張ろう、と。
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テーマ「カレンダー」
スマホの共有カレンダーに入っているのは、あなたのお仕事と僕のお仕事と、次のデートの予定。
/カレンダー
カレンダーを自作しようとすると大体6月で挫折する。
カレンダーをめくってもうこんなに時間が経ったことに気づいてなぜか虚しくなって、寂しくなって、怖くなる。
「くるくませんせー、何見てんの?」
ソファに座ってスマホとにらめっこしながら唸っていた椋は、後ろから自分を呼ぶ声に顔を上げる。
「あーゆじくん、おかえりぃ」
「ただいま!」
陽気な挨拶に、輝く笑顔。元気で大変よろしい。
可愛い生徒を前に、さも先生らしいことを思って頷いていると、ふたたび悠仁が尋ねてくる。
「先生なんか唸ってたけど、どうしたん?」
「あぁ、なんてことないよぉ?来年のカレンダーが続々と出始めたからどれ買おうかなーって悩んでただけ」
振り返ったまま端末画面を近付けて見せると、悠仁はソファの背に腕を乗せて乗り出す形で覗き込んでくる。
「へー…カレンダーっていっぱい売ってんだね!
俺カレンダーって買ったことないかも。家もじーちゃんがどっかでもらってきたやつ使ってたし」
「そぉなの、そういう人けっこー多いんだよねぇ!
買ってたとしても100均で済ませたりとか、そもそもスマホのスケジュールで十分って言う人もいるけどぉ、お金出すとやっぱかわいさと凝りようが段違いなんだよお?」
画面をスクロールしながら多種多様なカレンダーを見せていくと、虎のデザインの物が目に入り、椋はひらめく。
「そーだ!ゆじくん来年のカレンダーなんか買ってあげるよ!百聞は一見にしかずってね!」
画面から椋へと視線を移して、まばたき一つ。
悠仁はへらっと笑う。
「や、俺はいいよ、使わなくてもったいねえってなりそうだし」
いい笑顔だけど、先程のような輝きがない。椋にはお見通しだった。
この拒否は、遠慮でも、無精でカレンダーを使用しないということでもない。
来年のカレンダーを使い切るまでの未来を見据えていないからだ。
それでも。
「それでもいいよ。ぼくが来年をプレゼントしてあげる」
「…え」
「置物になってもいいから!未来を飾っておくのも悪くないって、ね?」
「来曲先生…」
悠仁はへにゃりと眉を下げたが、それでいい。
ここでくらい素直に顔を作らないでいたらいい。
「さぁ、どれがいいかなぁ〜?ゆじくんが選ばないならぼくがセレクトしちゃうよお?このかわいい虎柄のとかー、日めくりもいいかな!毎日1問問題解かなきゃいけないの!もしくはこのゴージャス過ぎて使いづらいやつとかぁ」
「わあー待って!それは俺の部屋には重荷すぎるって!」
椋だって誰だって、このカレンダーをめくる頃、自分がどうなっているかなんてわからない。
でも、そんなのはどうでもいい。
今日の次に明日があるのを文章化されたら、明日だって生きられる気がしてくるのだ。
【カレンダー】
「ああっ、窓の外の木の最後の葉が落ちたらその時、私の命も……」
「今、夏だから当分先だね。良かったね」
「……」
「ああ、このカレンダーの木の最後の一枚が落ちたらその時、私の命も……」
「だから今夏だよ。どの道当分先だね」
「……」
「あ……あのさ、この雰囲気の中で言うのもあれだけど」
「ん?」
「余命宣告、されました」
「そうか……
え、マジ?」
「マジっす。ちょうど今年の終わり頃みたい」
「わり、無神経だった」
「それぐらいのほうが救われるけどねw」
「救われる……救われるかぁ」
「だから、最期の瞬間まで今までと変わらぬお付き合いをお願いします」
「約束は出来ないよ? やれるだけやってみるけど」
「ん、おけ」
彼女とそんなやり取りをしたのはちょうど一年前だったか。もうそんなになるんだな……。
俺は一人、そんな過去のやり取り思いを馳せる。
そういや、「余命宣告された日までのカレンダーとかあればいいのにねー……」なんて、ちょっと不謹慎なことを言って笑い合ったりもしたっけ。
そんな彼女は今、余命宣告を跳ね除け、それどころか別の男と交際中らしい。こういうイベントがあったからって結ばれるとは限らないんだな。
残された俺は一人、ただ日々を浪費し続けていた。
「破局する日までのカレンダーでもあればよかったのに……」などと思いながら。
カレンダー
私ですねー、スクールカウンセリングを受けてるんですが、自立する卓上カレンダー?みたいなのありますよね
縁?みたいなのに隠れて下の方に色が書いてあったんですよ、それの色の感じを覚えて確認したら、やっぱり誕生日色でした!そういうの大好きなんで、そういうカレンダー良いですよね。
(めっちゃ意味不になりました、未来の自分が見たら「は?」ってなります絶対👍️)
カレンダー
今日は特に予定もなかったけどもうすぐあの人に会える日がやってくる
あの人に会えるというだけで、とても楽しみ
《カレンダー》
日めくり 曜日 大安仏滅の確認 松岡修造 なんとなくとっておく3月の風景写真 もったいないからハンドメイドでポチ袋にしたりしてみる 結局ゴミになる 年末になると自然と必要以上に集まってくる 月の満ち欠けは夜空に架かるアナログの暦
年をとると、今日は何日?となる。
で、何曜日かもわからなくなる。
でもカレンダーを見れば、わかる。
まだギリセーフ、ボケてない。
カレンダー
一ヶ月が終わると、カレンダーを破る。
破るタイプのカレンダー。
一年が始まった頃は、まだ分厚くて
一年が始まった!と、なるが、
半年経った頃に、
あれ……?もう、半分……?早いなあ。
となる。
一年が終わる頃に、
一枚しか残っていないカレンダーを見て寂しさも感じつつ
一年の速さに驚く。
今年も今を含めて四枚。
そのうち一枚は半分を過ぎようとしている。
おかしいな。
昨日今年も半分か、とか考えていた気がするけど。
気の所為……か?
「カレンダー」
はなまるがついている日、それは結婚記念日。
いつまでもあなたと一緒に迎えられたらいいな。