真愛つむり

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私の通う中学校には、少し変わった伝統がある。

他校が学園祭でミスターやミスを選ぶように、ウチでは各クラスから代表者1名を選出する。普通と違うのは、選ばれた12名全員が、学校オリジナルカレンダーの写真になる点だ。

ひとりひと月担当し、各月に合った衣装に着替えて撮影される。クラスごとに衣装はもちろん小道具など、どんな写真にするか1から考えて準備する。

学園祭と並行して行われるこの行事は、生徒たちにも地域住民にも根強い人気を誇っている。

我がクラスの代表は誰かというと……

「やっぱりさ、藤江くんじゃない?」

ひとりの女生徒が言い出した。

「イケメンだし、運動できるし、頭も良いでしょ」

「たしかに、クラス代表に相応しいよね」

みなが同調する中、本人が意外な声を上げた。

「僕は岡野くんがいいと思うな」

突然名前を出された私は驚いて藤江くんを凝視した。

「僕はこのクラスに来たばかりで馴染みが薄いし、クラスの代表を名乗るのはプレッシャー感じちゃうかな。それよりも、最初からのメンバーで顔も可愛い岡野くんが適任だと思う」

彼の発言に周りもうんうん言い始める。

「岡野くん、どう? やれそ?」

「え、いや私なんて」

「岡野ならやれるさ! その辺のアイドルにも負けない顔してるし」

そうだ、そうだよと盛り上がるクラスメイトたち。トドメの一言は藤江くんだった。

「岡野くんがどうしても嫌なら僕が頑張るけど、どうかな。もちろん、もしやってくれるなら全力でサポートするよ」

先程彼が言ったように、来たばかりの彼に重荷を背負わせるのはよろしくない。というより、彼だけでなくみんなにとっても重責なのだ。誰かが背負わなくてはならないなら、私が背負えばいい。

それに「何事も経験だ」と、よく父が言っている。あわよくば先生も褒めてくれるかも。

「わかった、やるよ」

私が承諾すると、一気にクラスが湧いた。


テーマ「カレンダー」

9/12/2024, 8:30:32 PM