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「ああっ、窓の外の木の最後の葉が落ちたらその時、私の命も……」
「今、夏だから当分先だね。良かったね」
「……」

「ああ、このカレンダーの木の最後の一枚が落ちたらその時、私の命も……」
「だから今夏だよ。どの道当分先だね」
「……」

「あ……あのさ、この雰囲気の中で言うのもあれだけど」
「ん?」
「余命宣告、されました」

「そうか……

え、マジ?」
「マジっす。ちょうど今年の終わり頃みたい」
「わり、無神経だった」
「それぐらいのほうが救われるけどねw」
「救われる……救われるかぁ」
「だから、最期の瞬間まで今までと変わらぬお付き合いをお願いします」
「約束は出来ないよ? やれるだけやってみるけど」
「ん、おけ」

彼女とそんなやり取りをしたのはちょうど一年前だったか。もうそんなになるんだな……。
俺は一人、そんな過去のやり取り思いを馳せる。
そういや、「余命宣告された日までのカレンダーとかあればいいのにねー……」なんて、ちょっと不謹慎なことを言って笑い合ったりもしたっけ。

そんな彼女は今、余命宣告を跳ね除け、それどころか別の男と交際中らしい。こういうイベントがあったからって結ばれるとは限らないんだな。
残された俺は一人、ただ日々を浪費し続けていた。
「破局する日までのカレンダーでもあればよかったのに……」などと思いながら。

9/12/2024, 9:34:03 AM