『やわらかな光』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
光にやわらかさを憶える
光は刺激 こちらに反応を仕向けるような鋭利なもの
しかしそれにやわらかさを憶える
鋭利なものの例として針があるがそれを取って考えてみる
針の刺激は通常不快でありイメージするだけで怖さがある
しかし針を使うものの中には鍼灸というものがある
身体に極細の針を刺して身体の調子を改善するもの
それには痛気持ちいいのような不快と快感の混ざりがある
やわらかな光もそのようなものかもしれない
光は眩しさという針を刺す
しかしその後の和らぎに微弱な快楽がある
非常に微弱な一種のマゾヒズム
人にはそんなところがあるのかもしれない
やわらかな光が差し込むこの樹の下は
この世界で唯一、僕の安らげる場所
風の声を聞いて
鳥の、虫の、歌を聞いて
すり減った心が癒やされていく
何のために、生きることをしなけりゃいけないんだろう
そっと問いかけてみても、返ってくるのは葉擦れの音だけ
それが、この時間の、この場所の、心地よさなのかもしれない
(やわらかな光)
『やわらかな光』
スニオン岬の牢に投獄されて十日が過ぎた。
海に面した岸壁にある牢は事あるごとに海水が入り込み、満潮時には息ができない程の水で満たされて、オレは何度も生死の境を彷徨った。
オレは度々死の淵に立ちながらも、オレを投獄した兄サガへの復讐と、アテナを殺して地上の実権を握る野望を目的として生き延びてきた。
そしてもう一つ、オレが生き延びられた理由がある。今度こそ駄目かと思うたび、牢の中にやわらかく暖かい光が差し込み、穏やかな小宇宙で満たされてオレの命を繋ぎ止めていた。オレにはそれが誰の小宇宙か分からなかった。聖域の中でもオレの存在を知っているのは兄サガと教皇など、極々限られた者だけだったからだ。オレのことを知っている者はなく、オレは隠された存在だった。
小宇宙の主は皆目検討がつかなかったので、オレは考えることを止め、きっと復讐の女神ネメシスが何処かから覗き込んでいるのだと思うことにした。その考えも、オレの復讐心を煽ることとなった。
ある時、オレは牢の奥の岩壁が薄く光っているのを発見した。訝しながら確かめたオレは、その壁が破壊できそうなことに気付いた。上手く行けばここから脱出できるかもしれん。オレはほくそ笑んだ。これこそ復讐の女神の導きのように思えた。
見ていろサガ。必ずここを脱出し、アテナを殺して地上をオレのものにしてやる。
オレは持てる力のすべてを叩き付け、岩壁を破壊した。
それが、オレにとって償い切れない大きな罪の始まりであることにも気付かず――
10/16「やわらかな光」
やっと見つけた。
6年間追い求めた「やすらぎの宝珠」は、地下迷宮の奥深くに鎮座していた。
温かく、やわらかな光は、触れた者すべてを癒やすという。謎の病に苦しみ続ける娘を、これで救うことができる。
手を伸ばし、宝珠に触れた瞬間、温かなものが流れ込んできた。安らぎに満たされる。まぶたが、体が、重い。意志、感情、何もかもが溶けていく。
男はその場に崩れ落ちた。足元に累々と積まれていた白骨の意味に、果たして彼が気づいたかどうか。
やすらぎの宝珠は、ただやわらかな光を放っている。
(所要時間:8分)
やわらかな光が降り注ぐ。
澄んだ水の中に沈んで、
外界を見つめれば。
とてもすてきなところのように見えるけれど。
そうではないことを、もう、知っている。
つい先日まで焼けるように激しかった陽光は、気付けばただぽかぽかと体を温めるまで穏やかになっていた。朝起きて一番に日差しの強さを見てげんなりする季節が終わると、ほっとするような、冬の訪れの近さに焦るような、そんな感じがする。
毎朝のランニングも随分と楽になった。走り出してしまえば気温すら忘れて走り続けられる私だけれど、走り終わったあとにやわらかな涼風に肌を撫でられたほうが心地いいのは当然のことだった。
そんな風に、涼しくなった朝の日差しの中で今日もランニングを中断する。たったったっ、と淡々と続く足音が耳に入るようになった頃がやめ時だ。
いつも休憩に寄る、ベンチと砂場と鉄棒しかない小さな公園には、いつも通りたくさんの鳩が集まっている。その隙間を縫ってベンチに座り、水筒を口に含んだ。その度に私は、氷をいくら入れてもあっという間にお湯になってしまう季節は終わったのだと、まだ驚いてしまう。強烈な夏は、なかなか私を解放してくれなかった。
ふぅ、とひとつ息を吐く。
餌欲しさに足元に群がる鳩を無視して空を見た。
激しさを収めた陽光は木々に遮られて、やわらかな光だけが私に届く。それは少し寂しい色をしていて、秋がやってきたのだと一番わかりやすく私に教えていた。
この走りやすい季節は一瞬で終わる。毎年そうだ。あっという間に秋は過ぎ去って冬になる。冬になれば、寒さに肌を切られながら走ることになる。秋はそんな私を憐れんで、冬より寂しく映った。
目を閉じる。優しい光をまぶたの向こうに感じる。
寂しく映るのに、秋は私を引き止めてはくれない。名残惜しさの欠片もなく、休んだら早く帰りなさいとばかりに風が木々を揺らした。
仕方なく私は立ち上がり、鳩たちを追い立てながら公園を出る。出口で一度振り返って、紅葉といちょうの入り混じった景色を見た。
やわらかな光に照らされた黄金色の景色は、私を受け入れる隙間もなさそうだった。
邪魔者はさっさと帰ろうか。私は帰路を走り出す。ちらりと時計を見れば、少し予定より遅い時間を差していた。
このままじゃ学校に遅刻してしまう。私は慌ててスピードを上げて、そのうち秋への寂しさも置いていった。
「やわらかな光り」
春は暖かな
夏は厳しく
秋は爽やかな
冬はさえざえと
僕の体が光りを受け止め四季を過ごしてる
やわらかな光りも感じてる
大丈夫、情緒不安定だけど
絶対に入っては行けない森がここにはあった。
もし入ってしまったら
木々が侵入した人を襲って二度と戻れないとか
得体の知れない怪物が森に入った者を食べてしまうとか
噂は沢山あった。
けど所詮子供騙し。
そう思い僕たちは4人で森に向かうことにした。
やっぱり森は静かで平和だった。
僕たち4人は安心して油断した。
やわらかな光に誘われて
僕たちは森の奥へと進んで行った。
気づいた時にはもう日が落ちてきていて
引き返そうとした。
でももう遅かった。
僕たち4人は帰り方なんて覚えていなかった。
あぁ、これからどうなってしまうのだろうか
─────『やわらかな光』
やわらかな光を授かったような、そんなあたたかな気持ちにさせてくれた君と、君の腕に抱かれている小さな命に、僕は精一杯の感謝を捧ぐ。
【やわらかな光】
昼下がり。廊下であいつと出会した。
小さな風呂敷包みを手にしている。遣いでもあるのかと聞くと外の空気を吸いに、と言う。想定通り。
『時間が空いているから付き合おう。』
何でもない風を装ったが、目の前のやつは妙な顔をした。理由が怪しかった自覚はある。しかし誰かが必ず付き添う理由など、はっきり言って隠す必要は無い、と開き直る。
出会した、というのは嘘だ。昼前に上司から声が掛かり、半日の間、私が目付を任されていた。
『目を離さないで、でも邪魔もしないで。』
何をと問うと、すぐにわかるよと言われてしまい、それ以上聞く事はできなかった。だが、否やはない。
困ったように首を傾げながら、やつは退屈するが良いか、と言った。構わないと答える。
城を出て三刻程歩き、木々の間のぽっかりとした野原へ辿り着く。春には一面小花が咲いて見栄えもするが、今は枯れかけてくすんだ草が秋風に揺れているだけだ。
上司がこいつを一人にさせないのは、夏の初め頃から頻繁に体調を崩し、食欲が失せぐっと痩せてしまっているからだ。なのに、どうして体を引きずってでもこの寂しい場所へ来たがったのかわからない。
手荷物が開かれる。出てきたのは幾つかの、とても小さな握り飯。摘み上げ、のろのろと口へ運ぶ。その一口は鳥が啄むような量だった。溜息をつきながら長い時間を掛けて、やつはそれを食べ切った。日が傾いていた。
『風にあたると吐き気が和らぐらしい。』
あの時間が何なのか、何を報告したものかと思いながら上司を訪れると、そんな事を告げられた。食べようとしているのなら大丈夫、とも。上司の目は、先程別れたやつのものとよく似ていた。つい先程、ありがとう、と言って笑った瞳には、秋の午後の光が揺らめいていた。
【やわらかな光】
カチ、とスイッチを押す無機質な音が鳴る。うっすらと目を開けると、背後から暖色を帯びた光が枕元に差しているのが見えた。
時刻はおそらく日付を越したあたりだろう。隣でごそごそと布団をめくる彼女は最近帰りが遅く、帰ってくるのは私が寝た後が多い。時々その音や明かりに起こされることもあるが、不思議と怒りは湧いてこない。
ペラ、ペリリ。
買ったばかりの本、それもハードカバーと呼ばれる文庫より大きめの本特有の押しつぶされたページが剥がれ、捲られる音が静かな寝室に広がる。
読書家の彼女は疲れていてもこの時間を設けたいらしく、ベッドサイドに置いた間接照明をこっそり付けて私の横で本を開く。そして私は横に並びながら彼女の息遣いが聞こえる偶然のタイミングがたまらなく好きだった。
こちらを気遣いつつも止められない光は、今日もやわらかに彼女の没入する物語を照らしている。
何も掴めなかった
この手を
見上げる空に伸ばしても
誰も
何も
引き上げても
握り返してもくれない
ただ
やわらかな光が
髪に
肌に
微笑みかけるような
暖かさで
包み込んでくれる
無償の愛の
温もりに
心がゆるむ
けれど
祈れない
何も
祈れない
誰にも
今はまだ
「やわらかな光」
森の中に入ると、樹々の間から、太陽のやわらかな光が差し込んでくる。足元はぬかるんでいるが、心地よい温もりを肌に感じながら、私は歩いた。
湖畔は、一周すると20kmにもなるそうだ。ひとまず目的の岬を目指して、歩みを早めた。お昼までには、対岸に渡るつもりだ。
【やわらかな光】
「やわらかな光」
取り込んだタオルをふんわりとたたむ午後。
洗剤のいい匂いが部屋を包む。
窓から差し込む淡い陽の光に微睡んで、ハッとした。
まだまだ、夜まで眠れない。
【やわらかな光】
やわらかな光が斜めに差し込み、ソファで本を読む君の足元を三角に照らしている。
なんでもない休日の午後。
おれは2人分のコーヒーを淹れ、黙って君の前に差し出す。
君は優しく笑って、また本の世界へ。
おれはコーヒーを飲みながら、楽器の手入れ。
2人に今は言葉はいらない。
やわらかな光に包まれて、今はそれだけでいい。
やわらかな光
窓から室内に広がる光を全身で浴びる。
まるで母に抱かれているかのような温かさだ。
パジャマ姿の僕は、胸ポケットに入っているお守りを握り締めた。
明日もこのやわらかな光を全身に浴びることができるはずだ。太陽の光を浴びることが、こんなに心を落ち着かせるものだとは思わなかった。日常の当たり前が愛おしい。
「それでは、そろそろ行きましょうか?」
女性の優しい声が耳に響く。いよいよだ。
白い服を着た女性が3人と男性が1人。部屋に入ってくる。車椅子を移動させると僕を包んでいた光はなくなり、急に寒く、恐怖で身体が震え始めた。
「大丈夫ですよ。必ず元気になります。私が約束します」
心強い言葉を男性に掛けられた。
ゆっくり立ち上がると身体は宙に浮き、ストレッチャーに乗せられる。窓から差し込む光を見つめながら、大きく深呼吸をし、僕は覚悟を決めた。
手術室に向かう。
やわらかな光
少女は、小鳥のような歌声で、楽しそうに歌う。
花々のほんのり甘い香りを纏っていた彼女は、
ふんわりと舞い踊る。
軽い声色で口ずさみ、風を切って踊る少女の長髪を
やわらかな木漏れ日が、朱色に染めた。
【やわらかな光】
血に塗れた人生だった。人の命を奪い、幾度となく両手を汚してきた。この罪の報いは受けねばならない。自分の死はきっと惨たらしいものとなる。そう覚悟していたというのに。
「お疲れ様」
あなたの声が降り注ぐ。ああ、やめてくれ。俺なんかに触れれば、あなたの手が汚れてしまう。そんな俺の願いを見透かしたようにあなたは薄く微笑んだ。
「おまえのそれが罪だと言うなら、その罪に支えられ命を救われてきた私も同罪だ」
高潔にして寛大なる俺の王。あなたの腕の中で死ねるなんて、俺のような者にとっては身に余るほどの光栄だ。
「おまえのような臣を得て、私は幸福だったよ」
やわらかな光が俺を包み込む。あなたの温もりが、優しく意識を溶かしていく。
(おれも、あなたにおつかえできて、しあわせでした)
最期に囁いた感謝は、もはや声にはならなかったけれど。
やわらかな光が私の部屋のカーテンの隙間から刺してくる。
もう、起きなさいと言わんばかりに。
「駿さん……もう起きる時間………」
「うーん。もう、も、少し……………くー」
「駄目です。早く起きて」
そういうと私はベットからスッと降りる。
恋人の制止の腕をかわしながら…
「……今日は駄目です」
「………………」
力なく恋人の腕はベットに落ちる。
その腕は一度落ちたまま、動かなくなった。
…………また寝たな……。
「駿さん、早く起きてっ!遅刻しちゃう」
そう言いながらベットへ戻り膝をベットに置くと、手を優しく引っ張られ、バランスを崩しベットに私は倒れてしまった。
「ちょっ!なんですもうっ!!」
「………たまに敬語になるの、いつになったら辞めてくれるの?……それに、名前もまださん付け……年だって一個しか違わないのに………。」
「忙しい朝にいじける題材じゃないですっ。早く起きて、準備してください!」
「起こしたいなら、一度でもいいから名前にさん付けやめて……そしたら起きる……」
「〜っあのねー。」
「早く……」
私だって本当は名前で呼びたい。
でも、まだ、何だか名前でさん付けをしない呼び方で呼ぶのは、何だかむず痒いのだ。
「…………っ、どう、しても?」
「どうしても」
「………………………………………ん」
「…、なに?聞こえないよ?」
「………くん」
「まだ聞こえない…………」
「駿くん、早く起きて!」
そういった後の沈黙……………
「なんでだまってるのよーーーー!!!!」
こっちは凄く恥ずかしかったのに、黙るなんて狡いっ!!!
「何か言って!!」
そう言うと、彼は静かに私と目があったもののすぐにそらし、こう言った…。
「ごめん……。自分で頼んだくせに、いざ言われたら、なんか凄く恥ずかしくて、むず痒くなった………………
でも、嬉しい。」
#やわらかな光
彼女が僕を見る時、いつもその瞳には仕方ないなぁ、とでもいうような光が宿っている。
暖かく、僕を導いてくれる光。
その光が僕は嫌いだった。
本当はありがたいはずなのに、何故か僕は君に見下されているような気になって、どうしても許せなかった。
ごめん、ごめんね。
僕はその言葉を飲み込んで、君の首に手を掛けた。
そんな時にも瞳にはやわらかな光を宿していた君は、どうして、僕を受け入れるのか、今でも分からないまま。