いろ

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【やわらかな光】

 血に塗れた人生だった。人の命を奪い、幾度となく両手を汚してきた。この罪の報いは受けねばならない。自分の死はきっと惨たらしいものとなる。そう覚悟していたというのに。
「お疲れ様」
 あなたの声が降り注ぐ。ああ、やめてくれ。俺なんかに触れれば、あなたの手が汚れてしまう。そんな俺の願いを見透かしたようにあなたは薄く微笑んだ。
「おまえのそれが罪だと言うなら、その罪に支えられ命を救われてきた私も同罪だ」
 高潔にして寛大なる俺の王。あなたの腕の中で死ねるなんて、俺のような者にとっては身に余るほどの光栄だ。
「おまえのような臣を得て、私は幸福だったよ」
 やわらかな光が俺を包み込む。あなたの温もりが、優しく意識を溶かしていく。
(おれも、あなたにおつかえできて、しあわせでした)
 最期に囁いた感謝は、もはや声にはならなかったけれど。

10/16/2023, 10:09:53 PM