たけたけ

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 カチ、とスイッチを押す無機質な音が鳴る。うっすらと目を開けると、背後から暖色を帯びた光が枕元に差しているのが見えた。

 時刻はおそらく日付を越したあたりだろう。隣でごそごそと布団をめくる彼女は最近帰りが遅く、帰ってくるのは私が寝た後が多い。時々その音や明かりに起こされることもあるが、不思議と怒りは湧いてこない。

 ペラ、ペリリ。
 買ったばかりの本、それもハードカバーと呼ばれる文庫より大きめの本特有の押しつぶされたページが剥がれ、捲られる音が静かな寝室に広がる。
 読書家の彼女は疲れていてもこの時間を設けたいらしく、ベッドサイドに置いた間接照明をこっそり付けて私の横で本を開く。そして私は横に並びながら彼女の息遣いが聞こえる偶然のタイミングがたまらなく好きだった。

 こちらを気遣いつつも止められない光は、今日もやわらかに彼女の没入する物語を照らしている。

10/16/2023, 11:06:06 PM