『もしも未来を見れるなら』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
遥か遠くの宇宙の外、空間が捻じ曲がってあらゆるものがひしめき合ってまさしく混沌とした空間、そこに彼は立っていた。時空を管理する彼はビックバンよりも遥か前からこの場所にいた。彼こそが所謂神である。神は退屈であった。ビックバンによりできた幾つ物並行世界を観測するのが。
神はある日思いついた。それはそれはとても面白いお遊戯である。神は早速その遊戯を実行した。
まず神が下界におりて囁くのだ。
未来を見たく無いか?と。一つ目の世界は愚かな欲に溺れて自滅した。二つ目の世界はやがて訪れる死の未来に恐慌した。三つ目の世界は生きる気力を失った。
世界を息をするように破局に導いた神がみると最後の世界になってしまった。
そしていつも通りの手段を使って問うた。
しかし彼らはそのすべてを断った。神は遊戯の通りには行かなかったが愉快だった。新しい玩具が手に入ったと喜んだ。この世界なら好き勝手しても耐えてくれるという期待があった。さあ遊戯を始めよう。
『もしも未来が見れるなら』
少し先の未来が見えたなら。
そう思っている人は多いだろう。俺もその1人だ。
もしもその能力を手に入れられたら何に使うだろう? お金を稼ぐ為に株や宝くじを買う? 事故などを回避する? 他にも色々あるだろう。
俺は、多分、恋愛に使うだろう。今、片思いしている小夜さんとの恋愛の未来をみたい。そんなに先の未来は見れないかもだが。
小夜さんは綺麗で、素敵で、可愛くて、素敵で、可愛い(語彙力? 捨ててきたわ)。だからお近づきになりたいのだ。
未来が見れたら色々細工が出来る。廊下で『偶然』会う事だって出来るし、休日でもそうだ。上手くやれば色々出来る。
なんて夢が膨らむ能力なんだ。最高過ぎる。まあ、無いんだけどな、俺にそんな能力。
使えたらこの恋も成就してたのかなぁ。まあまだフラれた訳じゃ無いんだけどさ。望み薄と言うか……。
辛い物だよ、人生というのは。これからも頑張って生きていこう。
「もしも未来が見れるなら」
今日は雨。おまけにやることもない。
暇だと思ってネットサーフィンをしていると、「昔のひとびとが想像した〇〇〇〇年」の画像を偶然見つけた。
その画像を紹介するサイトでは、今からちょうど100年くらい前に「100年後にはこうなっているだろう」と専門家同士で意見を出し合って作られたと説明があった。
なるほど。科学技術があっという間に進歩したおかげでできるようになったこともあるが、それでもまだ実現していないこともある。
まあ「したいができない」と「する必要がなくなった」との間を区別はしなければならない。また、知れば知るほど、人間や社会に対して悪影響を及す可能性があるとわかることもあるだろう。
……そういや、自称マッドサイエンティストさんは未来を見ることが出来るのだろうか?
「勿論だとも!!!過去改変に未来予測、どんなことだって思うがままだよ!!!スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーーシャスなこのボクにできないことがあるとでも?!!」
……さすがだ。
もしも未来が見れるなら───。
「ん??」
「未来が見たいのかい???」
「楽しみはあとで取っておいた方がいいんじゃないかな」
「んまあキミがそこまでいうんだったら!!!見せるよ!!!」
「ただし!!!そこそこ細かく条件を加えてもらわないと演算処理が青天井になっちゃうからね!!!」
「とりあえずボクが思う『キミに最適化された未来』でも見てみるかい???それとも『最悪な未来』がいいかい……??」
「そうだなあ……こういうのもあるよ!!!『〇〇年後のキミが宇宙戦士コスモファイターとして爆発する未来』とか『何かと契約して魔法少女になって宇宙を終わらせる未来』とか」
は??なんて???
「アッコレネタバレになっちゃうかな……??」
今更何を心配してるんだよ。
「とにかく!!!『全ての可能性を排除できない』からこそこういう結果も出てくるんだよ!!!」
そういうもんなのか……。
「ボクから言えることがあるとすれば、キミはもうちょっと運動した方がいい、ってことくらいかな!!!」
「さて!!!おやつの時間だよ!!!何食べる??桜餅???」
それはあんたが食べたいものだろ?
今うちにはないから我m「さて!!!買いに行こうか!!!」
……はぁ。仕方ないな……。
桜餅を求めて、自分たちは雨の中和菓子屋まで出掛けた。
01110011 01100001 01101011 01110101 01110010 01100001 01101101 01101111 01100011 01101000 01101001
……まさか未来について聞かれるとは思ってもみなかったよ!!
地球規模の予測ならある程度できるが、個人単位での予測は難しいからね!!!
とはいえ!!!ボクがキミに出会った以上!!!見捨てることなどできない!!!
だからボクは、キミが幸せになれるように、できることはする所存だよ!!!
……だからキミも、ちゃんと自分を大事にしてね!
カリカリカリ。
私は一人、無駄に広い部屋で勉強をしていた。
『勉強ではなく、他の用途に使った方がいいのでは? たとえばスポーツとか?』と思わせるほど広い。
ていうか、広すぎて落ち着かない。
この部屋で勉強は無理でしょ……
もちろんこんな大きい部屋、自分の部屋ではない。
お金持ちの友人の沙都子の家にある、たくさんある部屋の一つだ。
勉強嫌いの私が、沙都子のウチで勉強しているのには理由がある。
これは私が、沙都子の物を壊してしまった罰である。
つい先ほど、私が沙都子の部屋にあった皿を割り、『許してほしければ、この部屋で勉強しろ』と閉じ込められたのだ。
なぜ物を物を壊したことの償いが勉強になるなのか……
さっぱり分からないものの、全面的に私が悪い事だけは分かるので、沙都子の言うことに従うだけである。
だって私が割ったあの皿、1000万って言うんだよ。
口答えせず、勉強するのが吉である。
それにしても、こうして机に向かって勉強するのは何年ぶりだろうか?
私は勉強することが、大嫌いなのだ。
罰として、的確に私の嫌な部分を攻めてくる沙都子……
さすが我が親友だぜ。
とはいえ、とはいえだ……
なんとか勉強しないで済む方法は無いもんか?
もし学校の成績が良ければ、沙都子もこんな事を言わなかっただろう。
だって『必要ない』の一言で突っぱねられるもん……
「あーあ、もしも未来が見れるなら、テスト問題を予知していい点とるのに……」
「随分と余裕ね、百合子。 宿題終わった?」
沙都子がいい香りのする紅茶を持って、部屋に入って来た
「休憩にしなさい。根を詰めても効率は悪いからね」
「それ、勉強を強制させる本人が言う事?」
「あなたが勉強しないのが悪いのよ」
「別に私が勉強しなくても関係ないじゃん」
たしかに私は勉強が出来ない。
けれど、私が勉強できないというのは、百合子には全く関係のない事である。
だって私が怒られるだけだもの……
しかし、沙都子は私の言葉を肯定しなかった。
「関係あるのよ……
あなたが宿題忘れたり、テストで悪い点を取ると、先生が私に言いに来るのよ……
百合子が先生の言うことを聞かないから、いつも一緒にいる私に言うのよ」
「ああ、それでか……
先生が小言を言わなくなったぐらいに、沙都子が宿題宿題言いはいじめたのは……」
「先生から申し訳なさそうに百合子の成績の話をされて、代わりに謝る私の気持ちが分かる?
少しでも悪いと思うなら頑張って頂戴」
「やだ。
……いやゴメン、沙都子。
分かったから、勉強頑張るから、そんな怖い顔しないで」
ひええ。
冗談で言ったのに、今までに見たことないくらい怖い顔してた。
とりあえず、当分この件に触れないでおこう。
◆
沙都子が持ってきた紅茶を飲みながら、ガールズトークを楽しむ。
いい感じに盛り上がってきた辺りで、私はあることを切り出す。
「あのさ、さっきから気になったこと聞いていい?」
「どうぞ」
「この部屋の間取り、おかしくない?」
「おかしくないわ」
即座に否定が入る。
え、誤魔化すの!?
「いやいやいやいや。おかしいでしょ。
なにあの部屋の隅っこにある壁で区切られた謎の空間。
あんなの無視する方が無理でしょ」
沙都子は、私が指さした場所を見て、『ああ、そんなものもあったわね』と言いながら紅茶を飲む。
勉強の間、気にしないようにするのが大変だったのに、そんな反応なの!?
「教えるのを忘れてたわ」
「本当に? 忘れてたって相当だよ。 わざと言わなかったんだよね?」
だって工事現場で見る赤いコーンとか、立ち入り禁止って書いてあるんだよ。
気にしない方がおかしい。
「あそこはね、『沙都子ぶっ殺しゾーン』よ」
「なんじゃそりゃ!」
思わず突っ込む。
なにその頭の悪そうな名前の部屋は!
「なんでそんな部屋作った!」
「百合子が勉強をサボったら、『百合子ぶっ殺しゾーン』に連れて行ってぶっ殺すの」
「笑顔で怖いこと言わないで!」
これ本格的に勉強しないとヤバい奴だ。
私がガタガタ震えていると、沙都子は優しい笑みを浮かべた。
「安心して頂戴。 『百合子ぶっ殺しゾーン』は未完成なの」
「そうなの?」
「工事に難航してね。
あれも欲しい、これもやりたいってなったら、思いのほかやることが多くなったのよ。完成率は30パーセントと言ったところかしら」
どんだけ、私をぶっ殺したいのか……
話せば話すほど、事態の深刻さを理解する。
これ冗談抜きで、真面目にやらないといけない……
「沙都子は優しいね。私のためにそこまで考えてくれるなんて」
顔が引きつりながらも、沙都子を持ち上げる発言をする。
沙都子をいい気分にして、なんとか『ぶっ殺すのはやめよう』と思わせないと……
「あら、ありがとう。 私の百合子に対する思い、分かってくれたのかしら?」
「もう十分すぎるほどに……」
「せっかくだから『百合子ぶっ殺しゾーン』を見ていかない?
私が一生懸命考えた、百合子をぶっ殺すためのアイディアが詰まってるの。
疲れたでしょ?」
「大丈夫だよ。それより勉強しないとね」
そんなん見た日には、眠れなくなること請け合いである。
それにしても、勉強嫌いの私が勉強を言い訳に使わせるとは……
沙都子、恐ろしい子……
◆
休憩時間が終わってから、私は勉強に勤しんだ。
おそらく人生で一番勉強を頑張っただろう。
ちらちら視界に入る『百合子ぶっ殺しゾーン』が、恐ろしくてたまらないのだ。
あの部屋に入ったら、私はどうなるのか……
『もしも未来が見えたら』?
そんな仮定は不要である。
なぜなら、どう考えても碌な未来にならない……
私の未来は、私が決める。
あの部屋を使わせることだけは絶対に阻止する。
私は堅く決意したのだった。
『もしも未来が見えるなら』
もしも話が大好きだった。
小さい頃から、50歳になった今も好きで、よく友人たちともしも話をする。
昔は友人たちとの連絡もなかなかだったが、今は便利な世の中というもので、スマートフォンのアプリでほぼ毎日のように友人たちと会話するのだ。
声を交わさずとも、高校時代の頃のような、あの楽しかった日々を会話するだけで思い出せる。
そんな日々にただ浸りつっける。
良かったことも、悪かったことも、言い合って、何気ない会話を交えながら、今度会おうと約束を交わそうとする。
「なぁ、よしき、来週にでも会いに行ってもいいかい?」
「おまえさん、本当に高校の時から変わらないんだから。」
そういえば、高校の仲良いグループを作ったのは俺だったし、みんなの進路がバラバラになっても会う約束を作るのは俺だった。なんなら、仕事が始まってからの毎年の忘年会も俺が誘って、みんなが仕方ないなあと集まってくれていた。
そんなことにも懐かしみを感じた。
なぜだろうか、なぜみんな集まってくれるのか、俺はふと疑問に思えた。
これがもし夢だとしたら?
もしかして、これは俺の幻で、本当はもうみんなも縁が切れていたりして?
いけないいけない、俺の大好きなもしも話が始まっとしまった。
「なおみとみさき、たくやも呼ぼう。人は多ければ多いほど楽しいんだから。」
「なおみちゃんは最近忙しいみたいだぞ?それにみさきちゃんも関東から出たと言っていたじゃないか、たくやはまぁ、呼んだら来てくれるだろうがわしとおまえさんだけだったらあいつは楽しめないだろう。なんてったって、あいつは生粋の女好きなんだからな!」
はっはっはと笑い飛ばすよしきになんだか不信感を覚えるが、そのまま話を続けた。
「なおみとみさきは来れないのかあ。じゃあ、またみんなでグループで話そうじゃないか。声が聞こえなくとも、昔のようなやりとりをしたらまた楽しめるかもしれないじゃないか。」
「はぁ。」
よしきは大きなため息をつき、小さく息を吸った。
そして、ボソリというのだ。
「現実を見た方がいいんじゃないか?」と。
「現実ってなんだよ、俺はいつだって現実主義さ。」
「もし未来が見えたら、いいのにな。」
「なにがたよ、よしき。」
5分が経ち、10分が経つ。だか何もこない。
なぜだろうか、なんだか鳥肌がたった。
どんどんどん!!!
と強く扉が叩かれた。
田舎ならではの鍵開けっぱなし文化で、俺はこの瞬間、死ぬことが決まったのだ。
「おまえさん、昔話は覚えてるか?」
よしきは出刃包丁を握っていた。
ここから俺の命のタイムリミットが1秒、また1秒と縮まっていったのだ。
「そんなの、しすぎてどのことかわからない」
「あーそうか、お前はそう奴だったもんな?」
よしきは俺の腹をいきなり刺し、にっこりと笑った。
「お前たちはいつも俺をネタで人殺しって言ってたよな?いじられキャラだから?俺のことを人殺しって言ってたんだよな?」
恨みを超えたような表情でよしきはまた俺の喉元を刺してきた。
「最初はな?殺しやすい女から殺したんだよ。なおみちゃんも、みさきちゃんも、妙に変が遅いと思わなかったか?なんなら、同じタイミングで携帯電話を変えたと言ってたなあとか、思わなかったのか?」
痛みで頭の痛みで思考が停止するが、確実にわかったことが一つある。
殺人鬼に仕立て上げたのは俺たちだったんだ。と。
「おい、答えろよ、最後に脳天をブッ刺してやるからさあ。あの頃に俺に振りかざした言葉、全部言ってみろよ、目つきが悪いから将来殺人鬼だな。とか、豚や牛を捌く仕事がお前にはちょうどいいんじゃん?とか、、」
「うっ、、」
血溜まりができるほどに時が経つ。
ああ、俺の青春って、よしきをいじめることだったのか、、。よしきの青春を、殺人鬼に育てる時間に使っていたのか、、。
苦しい。苦しい。声も出ない。
もし未来が見えるのなら、、と後悔したが、遅かった。
「よ、しき。。。」
「もしも未来が見えたならな。」
国民的キャラクターのドラえもん。いまでこそだいぶマイルドに改変されているけど、昔はなかなかのトラウマ製造機だった。
ビームを浴びた相手を石にしてしまう「ゴルゴンの首」、お金の代わりに1㎜ずつ身長が縮む「デビルカード」、面倒ごとを押し付けていた影に自分が乗っ取られそうになる「かげがり」、いつまでも家に帰れない「だんだん家が遠くなる」……
なかでも強烈なインパクトだったのが、気に食わない人を消せる「どくさいスイッチ」(なんちゅう名前だ)。
小うるさいお母さんも学校の先生もジャイアンたちもみーんな消して王様のように自由気ままに振る舞うのび太。つまみ食いしても宿題そっちのけにしても怒られないという誰しも一度は憧れる展開。でも時間が経つにつれて人っ子ひとりいない街が不気味になり、しまいには泣き出してしまうのだった。
これがとにかく怖かった。「だんだん家が遠くなる」もだけど、日が暮れたら家族の待つ家に帰る、という当たり前が否定されるのって、子どもにとってはこれ以上ない恐怖なのだ。
心の奥底に深く刷り込まれたみたいで、いまだに見返すことができないエピソード。
結局は使う人間次第、なんて言うけど、やっぱり未来の便利グッズなんてろくなもんじゃない。
(もしも未来が見れるなら)
もしも未来をみれるなら
私は未来を見ようかどうしようかと、
ソワソワ落ち着かない日々を送ってしまう
結局誘惑に負けて後悔するだろうな
だって、人生つまらなくなるもの
〝もしも未来を見れるなら〟
もしも未来を見れるなら。
そう考える事はあるけれど、意外と思い付かない。
宝くじとか、競馬とかそのくらい。
しょうもないって思いながら、今日も日々を消化する。
もし未来をみれるのなら
みてしまったら
人生が今以上につまらなくなりそうだから
みてしまっても、無かったことにしたいかな
夜と朝の隙間で目が覚め、隣の柔らかい白い肌を確認する。規則正しい寝息が聞こえる彼女の頬に唇を寄せれば小さく身じろぎをする。そんなことさえ愛おしくて、口の端が緩む「全部おれのせいにしてええよ」数時間前の彼女との会話を反芻しながら呟く。泣いた跡の残る目尻に指を添わせば長いまつ毛が指をくすぐる「…孝二、?」「起こしてもうた、ごめん」薄く開いた瞳はまだ焦点が定まらないようで虚ろだ「も、朝…?」「いや、もう少し寝とき?」「孝二はなんで、起きてるの」「なんでやろうなぁ」いつもの癖で笑おうとした口角はうまく上がってくれなくて、代わりに視界が歪む「泣いてるの?」「あかんな、おセンチや」今度はうまく笑えたけれど、一緒に同じくらいの涙が溢れる「やっぱり私が行けばよかった」「その話はなし。おれが悲しいんは、明日から君に会えへんこと」遠征選抜結果に彼女の名前が並んだ時から、こうすることを決めていた「私だって…」その先は言葉にならなくて、胸の中で肩を震わせる彼女の体を包み込む「絶対、帰ってきてね」「当たり前やん」不確定な未来でも、今だけは。
もしも未来をみれるなら
お題:もしも未来が見えるなら
自分の臨終に立ち会いたいな〜。
死ぬ時に自分の一生の感想聞いてみたいけど、私のことだから
「ボチボチやったで」か「クソみたいな人生だった」くらいしか言わなさそう。
もしも未来を見れるなら
もしも未来を見れるなら、か。見たくないな。
《もしも未来を見れるなら》
窓枠に体を預け、少女は溜息を吐いた。
この国はどうなって往くのだろうか。
唯一無二の存在を喪ってしまえば、この国は崩壊してしまうのだろうか。
知りたいようで、知りたくない。
魔法使いという存在が世界を牛耳るようになって幾星霜、人々は彼らを畏れ敬ってきた。彼らを至上の者として扱ってきたのだ。
而して、時が経つにつれ畏れは変化を遂げた。
何故魔法使いよりも圧倒的に数の多い“ヒト”らが、彼らに媚びへつらうばかりなのか、と疑念に変わったのだ。
かつての魔法使い達は、その力を国やヒトの支配へと及ぼした。けれど、最近はどうだ、魔法を使ったところさえ見たことがないではないか、となったのだ。
それをきっかけにヒトらの疑念は畏怖の影で募り、やがて、一人の魔法使いが命を落とすまでに表面化されるようになった。
これ以降の歴史は、語る程のものでもない。
魔法使い達による、血祭りが始まったのだ。
国の何処を見ても血が流れており、断末魔が聞こえる。
後に魔法使い達の暴走として扱われるこの時代は、ヒトがヒトとして生きてはいけない時代であった。
だが、ヒトの歴史にとって地獄の時代は、ある男の存在によって終焉を迎える。
「ヒトは弱く脆い。だが、数多の同種を伴って何度も立ち上がる生き物だ。今こそ、我らの力を世界に示すときではないか」
そう唱えた男が一人、国の守護者となってヒトらの指導者となったのだ。
魔法使い達は彼を主軸としたヒトの群れを侮っていたが、気が付けば彼らによって魔法使いの数は減少していた。
一人二人と数は減って往く。
既に手を打つ時間もなく、魔法使い達は、狩られる側へと堕ちていたのだ。
これらの全てが、ヒトが覇者となる時代の黎明期となった。
けれど、魔法使いが全滅した訳ではない。
今度は国の守護者として、あるいは戦力としてヒトは彼らを囲うようになったのだ。
協力を拒む者には恐れを与え、死を与え、共に手を携える者には奇跡を与えろと。
それはヒトでも魔法使いでも同じだった。
時に同族を殺しながら、魔法使い達は各国で名を轟かせるに至った。
そんな存在の彼らがいなくなった世界とは、どのようなものか。
少女はそれを考えて、知ろうとしているのだ。
「もしも未来を見れるなら——」
ヒトも魔法使いも、幸せに過ごせる世界でありますように。
そう願って未来を見るだろう、と少女は思う。
もう二度と、仲間である筈の同族を殺したくはないのだから。
だが残念なことに、そんな魔法はない。
だから今日も、少女は一人で王城の塔の最上階に囚われているのだ。
もしも未来見れるなら
週刊ストーリーランドというテレビ番組があって
謎の老婆から未来の新聞を見れる道具を購入したら
自分が事故に巻き込まれて亡くなったという記事をみて、回避するためにその道を通らないようにしたものの
結局運命を変えることはできないという
そしてその人は道具で悪事を働いたわけではない好青年だったが
うーむという現実
「蒼葉さん!」
「……ん」
今日も何事もなく迎えられた朝。愛おしい人の温もり が隣に、声がすぐそばにある。そんな幸せを噛み締めな がら、俺は気怠げに瞼を開いて上体を起こす。昨日のク リアのがっつきようと言ったら。昨日の出来事を表すよ うに、身体のあちこちにはたくさんの痕があった。
俺はグッと伸びをして、まだ寝ぼけ眼でクリアを捉え た。その横顔はとても悲しそうだった。寂しげに目が伏せ られて、今にも泣き出しそうに唇をかみ締めている。そんな表情を痛いほど見てきた俺は、瞬時 に目を開いてそっと背中をさする。
「クリア、お前またどこか具合が――」
「……雨が、大雨が降ってますよぉ、蒼葉さん〜……」
クリアは窓の方を指さし、めそめそと泣き出した。俺も窓の方に目をやると、確かに大雨が降っていた。空はどんよりと暗く曇っていた。
そうだ。昨日テレビで天気予報を確認した時、晴れになると言っていたから、散歩とかピクニックでもしに行くかって話をしていた。クリアは透き通った淡いピンク色の瞳を輝かせて、元気な子犬のような明るい笑みを浮かべていた。心から嬉しそうに。だが今日は突然の雨。嘘をつくんじゃない、なんて言いたかったけど、天候はコロコロ変わるものだ。仕方がない。とりあえず、クリア自体に何事もなくて安心した。俺は再びクリアの背中をさすりながら、諭すように話した。
「今日は出かけるの、やめるか。家でまったり過ごしていよう。天気のいい日に改めて行こう」
「うぅ……はい……」
俺はクリアの肩を抱き寄せて、布団の上に置かれていた手に、自分の手を重ねた。ほんのり温かい、クリアの体温。実際にここに存在しているんだと改めて実感する。そして、自分よりも少し大きい手の甲。俺はその骨格を撫でるように、指一本一本に絡める。
「蒼葉、さん?」
「ん……、あぁいや、何でもない。さてと、今日はバイトもないし、飯食ってからもう一眠りするか」
「……はい。蒼葉さんがそうするなら、僕もそうします」
クリアは手の甲を翻して、再び握りしめた。そして俺の方を見て、穏やかに微笑んできた。心をやんわりと包んでくれる、わたあめのように甘い笑み。さっきまでの表情はどこかへ消えていた。俺も釣られてはにかんで笑うと、ベッドを抜け出し、服に袖を通した。それから一緒に下の階へ降りる。少しでも長く一緒にいられることに、幸せを感じながら。
それから日中はゴロゴロ過ごして、何だかんだでお昼の時間になった。クリアと過ごす時間はあっという間だな、なんてベッドに腰掛けて切なく思っていた時。「蒼葉さん!」と、明るく呼びかける声が聞こえてきた。声のした方に顔を上げると、クリアは花が咲いたような笑顔で俺を見つめていた。
「雨、止みましたよ! 黒い雲は一つも見つかりません。晴れています!」
「ん……? あ、本当だな。一旦ベランダ出るか」
「はい!」
……なんだろう。見えないはずの子犬のしっぽが、なんだか今は見えるような気がする。それもブンブン勢いよく振りまくってるような。ソワソワしているクリアの様子に俺は少し笑ってから、一緒にベランダへ出た。雨が降った後特有の湿っぽい空気が肌を撫ぜる。だけど空には青が見えていた。もくもくと浮かんでいる雲の隙間からは、太陽の輝かしい光が差し込んでいた。この空模様を見て、ふと思った。いや、俺も午前中からずっと思っていたのかもしれない。同時に顔を見合せ、はにかみ、笑みを浮かべながら声を発していた。
「出かけるか、クリア」
「出かけましょう! 蒼葉さん」
昼食ついでに、と俺たちは家の外へ出た。所々には水たまりがあり、日光を受けてキラキラと煌めいていた。晴れて良かった、なんて思いながら空を見上げていた時。急に視界がビニール状のもので覆われた。傘だ。ポケットから出てくるビニール傘。突然の行動に驚き、チラリとクリアの方を見る。バッチリ視線が重なると、クリアはふっと口角を上げた。
「また雨が降ってきても、蒼葉さんの身体が濡れないようにするためです。雨に濡れて風邪をひかないようにするためにも」
「……そっか。ありがとな」
クリアの気遣いに心にじんわりと染み渡る。俺も軽く笑んで感謝の言葉を伝え、ゆっくりと歩みを進めた。右隣からはそっと歌が聞こえてくる。クラゲの歌。優しくて柔らかな歌声。俺を救ってくれた歌、再会の歌。心地の良い癒しのメロディに耳を傾けながら、行く先を見つめる。右耳の聴力と、右目の視力を失っても、俺が代わりになってそばで支えて寄り添っていく。人間だとか、機械だとか関係ない。お互いが愛し合っている気持ちがあれば十分。口内から自然と愛が溢れ出す。
「……クリア、大好きだよ」
「蒼葉さん……はい、僕も蒼葉さんのことが大好きです」
一度歩みを止めて、どちらともなく口付けを交わした。握られた手から、触れられた唇から、互いの熱が混じり合っていくのを感じる。いつの間にか空はカラリと晴れていた。午前中までの雨が嘘のように。そして正面には、俺たちを繋ぐように大きな虹がかかっていた。
共に想いを発して、紡いで、溶け込んで。何気なくても、幸福がいっぱいに詰まった今日を大切に過ごす。明日も明後日もその先も。本当にまた出逢えて良かった。これからもずっと、そばに。
――夢みる クラゲは 歌 かなで
キラキラ かがやく
声は ただ揺れ あなたへと……
〜(違うお題失礼します)〜
人の生を歩いていると、割とあらゆる選択肢にぶつかります。
たとえば今日のご飯は肉を食べるか、魚を食べるか。アパートの部屋を借りるか、家を買うか。大小さまざまではあれど、幾度も幾度も選択をして、今の自分に至ります。
選択をするということは、たいていは片方だけを選ぶということです。となると、選ばなかった方の選択肢の先も、覗いてみたくはありませんか?
もしも未来を見られるなら、別の世界線の未来を、見てみたいのです。
もしも未来を見れるなら
彼女と一緒に
明るい未来を
過ごしていきたい
子供はいなくても
犬猫と仲良くしたり
美味しい食事をしたり
過去の出来事を話し合ったり
そんな二人の未来を見つめていたい
「もしも未来を見れるなら」
もしも未来を見れるなら、
私は、特に何もしないかな。
未来を見れたって、未来は、
変わらないと思うから。
未来を見て、こうなるからこうしよって
したら、その先の未来が変わってしまう。
私は、必要な時以外未来は、
余り変えたくないから。
もしも未来を見れるならば必要な時以外
変えないというかな。
もしも未来を見れるなら
どうしようか
3年後くらいの自分を見てみようか
ちゃんと生きているだろうか
友達や恋人がいたりするんだろうか
家族とは上手くやれてるんだろうか
うまくこのクソみたいな世界の中で生きていけてるだろうか
どうしても不安が頭をよぎる
未来を作る今の私がこんなではだめだと思うけれど
不安の檻に自分を閉じ込めて何もできずにいる自分には
未来を憂うことしかできない
あぁ、自分はここから動く気がないんだ
自分で自分を縛っている
自分で作った設定が自分の首を絞めているんだ
3年後の自分は
この呪縛から逃れることができているんだろうか
そうであってほしいと思いながら
今日も檻の中で演技を続ける
壊そうと思えば簡単に壊せる檻の中で
もしも未来を見れるなら。
今のように無理なく生きてるか確かめたいな。
人と比べず、自分のペースで、日々の些細なことに幸せを感じられてるか確かめたい。
って、思ったけど。
確かめると未来への楽しみが減っちゃうし、余計な不安抱えそうだから見たくないや。
予期せぬことが起こってる確率もゼロじゃないし。
もっと平和なことを見にいけばいいのか。
あそこの公園どんなふうに変わったかなー、とか?
週1で行く総菜やさんメニュー増えたかな、とか?
でもそれらも、今知っちゃうとつまらないからやめとこかな。
“未来は自分で切り拓くものだ”なんてかっこつけたこと言えないけど、そんなすぐに知らなくていいことはこのままでいいと思うんだよね。
だから“見なくていい”が、私の答えかなあ。