マトリカリア

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 国民的キャラクターのドラえもん。いまでこそだいぶマイルドに改変されているけど、昔はなかなかのトラウマ製造機だった。

 ビームを浴びた相手を石にしてしまう「ゴルゴンの首」、お金の代わりに1㎜ずつ身長が縮む「デビルカード」、面倒ごとを押し付けていた影に自分が乗っ取られそうになる「かげがり」、いつまでも家に帰れない「だんだん家が遠くなる」……

 なかでも強烈なインパクトだったのが、気に食わない人を消せる「どくさいスイッチ」(なんちゅう名前だ)。
 小うるさいお母さんも学校の先生もジャイアンたちもみーんな消して王様のように自由気ままに振る舞うのび太。つまみ食いしても宿題そっちのけにしても怒られないという誰しも一度は憧れる展開。でも時間が経つにつれて人っ子ひとりいない街が不気味になり、しまいには泣き出してしまうのだった。
 これがとにかく怖かった。「だんだん家が遠くなる」もだけど、日が暮れたら家族の待つ家に帰る、という当たり前が否定されるのって、子どもにとってはこれ以上ない恐怖なのだ。
 心の奥底に深く刷り込まれたみたいで、いまだに見返すことができないエピソード。

 結局は使う人間次第、なんて言うけど、やっぱり未来の便利グッズなんてろくなもんじゃない。



(もしも未来が見れるなら)

4/20/2024, 11:08:17 AM