『だから、一人でいたい。』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
『緊急ぼっち宣言』
夜中の蝉の鳴き声は サービス残業みたいで好きになれない 私といえば 押入れ近く ひとりぼっちで布になる 誰も話しかけないでということだ 布になり
私はほわほわ現在進行系 緊急事態だから仕方ない
顔や胸や髪が緊急事態だ 私なりのクールダウンだ
「だから、一人で『居たい』、『痛い』、『遺体』。まぁ普通に考えりゃ『居たい』だろうな」
ひらがな表記は「漢字変換」で色々アレンジできるから便利よな。某所在住物書きはスマホで「いたい」の変換候補を見ながら、「居たい」が良いか「痛い」が物語を組みやすいか、思考していた。
「一人で居たいのは、ぼっち万歳ストーリーよな。痛いハナシは痛覚的にタンスに指ぶつけたとか、痛車痛スマホとか?一人して痛い思い、痛いこと……」
一人して痛いことをしているハナシとか?物書きは言いかけ、身に覚えがあり、一人で勝手に悶絶する。
「昔、ガキの頃、どちゃくそにメアリー・スーな二次創作ばっか書いてた、な……」
よって、物書きは一人で、痛い古傷にうめいている。
――――――
職場の先輩が、ちょっと体調悪そうな顔で出勤して、いつもは飲まないのに、眠気解消系ドリンク1本デスクに置いて。それで仕事してた。
「最近、どうにも眠れなくてな」
先輩は言った。
「まったく困ったものだ。夜は無理矢理寝て時々目が覚めて、朝は無理矢理起きて睡眠時間が足りない」
大丈夫。捌くべき仕事はしっかり捌くさ。
あくびを噛み殺しながら言う先輩の目は、言われてみればなんとなく、うっすら、本当にうっすら、クマができてるように見えなくもなかった。
「時々起きるって、心配事か何か?」
「どうだろうな。心配事といえば、心配事か。それのせいで夢見が酷く悪い」
「いつ頃から?もしかして、先々週から?」
「さぁ?先々週といえば先々週かもしれないし、それより後といえば後かもしれない」
「例の初恋さん?」
「お前は気にしなくてもいい。私自身の問題だ」
「つらいの?夢に出てきて怖いの?」
「黙秘。本当に、気にするな」
パチパチパチ。眠気打破ドリンクに口をつけて、ノートのキーボードに指を滑らせる先輩を見て、私はなんとなく理由が分かった。
先々週、ちょっとメタいハナシをすると、18日か19日あたりのハナシだ。
先輩には、昔々先輩の心をズッタズタのボロッボロに壊した、初恋さん兼失恋さんがいて、先輩はそのひとから8年くらいずっと逃げ続けてて、
先々週、道でそのひととバッタリ会った。
私もそこに居たから分かる。先輩はすごく怯えてて、怖がってて、ともかくその場からすぐ離れようと、必死に走って逃げてた。加元さんとか言った筈だ。
私は直感で察した。そのひとだ。きっとそのひとが、先輩の夢に出てくるんだ。
「先輩、私、何かできることある?」
「気にするなと言っただろう。いちいち私のことなど気にかけていては、体がもたないぞ」
パチパチパチ、カタタタタ、パチパチパチ。
先輩は自称人間嫌いの捻くれ者だけど、ぶっちゃけ、根っこは誠実で優しくて、寂しがり屋で、人に頼るのがバチクソ不得意だ。
他人の困り事には何度も手を差し出すのに、そのくせ自分の困り事は自分の中にしまい込む。
先輩は、だから、一人でいたいのを耐えてる。一人ぼっちで痛いのに対処してる。
「……ケチ」
「なんだって?」
「なんでもないでーす」
長いこと一所に仕事してきたんだから、長いこと私の痛いのを助け続けてくれたんだから、
こういう時くらい、私にも、先輩の痛いところ触らせてくれたって良いじゃん。ケチ。
とゴネたところで、どうせ先輩はケチだ。
私はゴネるかわりに口を尖らせて、アゴを上げて、どちゃくそにスネてみせた。
だから、一人でいたい。
森の奥深くに苔だらけの古い大きな館がポツンと建っていた。
そこに一人の少女が住んでいる。腰まで伸びた長い白銀の髪は美しく、宝石のようにキラキラとした紅い瞳は、ただ天井を見つめていた。
「……あと何年かしら」
ベッドの上に横になりながらそう呟く。
静かな部屋。聞こえてくるの音は、外にいる鳥たちの声のみ。
起き上がり、ベッドから降りると窓へ向かった。
窓を開けて風を入れる。そよそよと気持ちのいい風が入ってきた。
少女は目を瞑り、外の音を聞く。
「おはよー」
森の中からやってきた少年。右手には茶色の紙袋を持っていた。
少女は目を開いて、少年を見つけると嫌そうな表情をする。
「……また今日も来た、しつこい……」
「ねぇー、美味しいりんご買ってきたんだ、一緒に食べよう」
「食べない、帰って」
そう言うとパタリと窓を閉めた少女。そして、窓から離れて、ベッドへ。
「えぇー、せっかく買ってきたのに、食べようー、ねぇーねぇー」
窓の外から聞こえてくる少年の馬鹿でかい声。
ずっと、「ねぇーねぇー」と言い続けていた。
少女は枕を頭から被って聞こえないフリ。しかし、まだ聞こえてくる。
「ベアトリスさーん、たーべーよー」
カッと目を見開いて、ベッドから飛び降り、窓へ向かって走る。
そして、バンっと音を立てて、窓を開く少女。
「うるさいっ、名前を呼ばないで」
「あ、出てきた。ベアトリスさん、たべよー」
少女――ベアトリスの顔が再び見れると嬉しそうな表情をする少年。
紙袋からりんごを取り出すと、ベアトリスのいる2階の窓へ放り投げた。
ヒョイっとりんごを避けるベアトリス。
「えっ、ひどっ、受け取ってよ」
「いらないって言ったはずよ」
「えぇー、美味しいのに」
紙袋からもう一つりんごを取り出すと、食べ始めた少年。
しゃりしゃりと音を立てて、美味しそうに食べる。
すると、森の中からうさぎやリス、鹿にキツネたちが寄ってきた。
少年の周りに集まると物欲しそうにりんごを見つめる。
「わぁーい、モテモテだぁー、見て見て、ベアトリスさーん」
太陽のような眩しい笑顔で、ベアトリスに手を振る。
ベアトリスはその光景が羨ましかった。ギリっと奥歯を噛み、舌打ちをする。
「……私にはできないこと」
ボソっと呟き、さっき避けたりんごを拾った。
蜜の甘い匂いが香る、真っ赤なりんご。次の瞬間、見る見るうちに萎れていく。
最終的に水分が無くなり、干からびた形に。
寂しそうに笑うと干からびたりんごを握りしめた。
「ベアトリスさーん、外に出てきてお散歩しようよー」
窓からまた顔を出したベアトリスは、首を横に振った。
「何度も言うけど、外には出ない、絶対に」
「んじゃぁ、俺がそっちに行く」
「来ないで」
「えぇー、いつもそう言うー。俺は、ベアトリスさんと近くで話したいのにー」
頬を片方膨らませ、不服そうにそう言う少年。
ベアトリスは、拳を作ると窓の枠を強く殴った。
「本気でそれを言っている?」
「えっ、言っているよ?なんで?」
「あなた、私のこと知らないの?」
「知っているよ、ベアトリスさんでしょ?」
にこっと笑う少年に干からびたりんごを投げつけた。
飛んできたモノに驚いて逃げていく動物たちに対し、少年は動じなかった。
ヒョイっと干からびたりんごを拾うとじーっと見つめる。
「あれ、りんご、嫌いだった?」
「……あなた、頭おかしいの?」
「よーし、明日も違うモノを持ってくるよ」
ベアトリスの言葉は無視して、森の中へ戻ろうとした少年だが――
「ベアトリスさん、ちなみに俺、あなたって名前じゃないから。ロットって名前だから、名前忘れないでね」
そう言って、森の中へ帰って行った。
静かになったその場。ベアトリスは深いため息を吐くと窓を閉めた。
そして、ずるずると床に座り込む。
「……なんなのアイツ」
――――
ベアトリスの館に毎日に通うロット。
日々、違うモノを持ってくる。食べ物、お花、本、そして――
「……なにこれ」
窓の外から飛んできたモノは茶色の小さな箱。
中を開けると音楽が流れ出す。綺麗な音が部屋に広がる。
冷えていた心が少し、温かくなったような気がしたベアトリス。
「あっ、気に入ってくれた、オルゴール?」
外から聞こえるロットの声に、ハッとした表情をして、蓋を閉めた。
「……別に」
「気に入ったんだ、よかったぁー‼︎んじゃぁ、館の中に入れてください」
「それはない」
スッパリそう言い切る。肩を落としたロットはトボトボと森の中へ帰って行った。
その姿を見て、表情が緩んだベアトリス。今まで、緩むことがなかった。
毎日、ロットが来るのが楽しみになっていった。雨の日も風の日も、雪の日も絶対にやってきて、何かをプレゼントしてくれる。
そして、森の向こうにある街の話もしてくれた。窓越しで、その話にいつの間にか耳を傾けるようになったベアトリス。
ベアトリスの白黒だった世界が、色づき始めたと思った矢先――
「……来ない」
ある日、ロットが来なかった。何時間待っても、何日待っても。
雨が降っても、風が吹いても、来なかった。
ベアトリスは茶色の小さな箱を開けて、オルゴールを流す。
音が心の不安を癒してくれると思ったが、癒えなかった。
すると、森から騒がしい音が聞こえてくる。ベアトリスは窓から顔を出すと、そこには大勢の人間が手に武器を持って立っていた。
そして、一人ボロボロになった少年が前へ突き飛ばされ、地面へ倒れる。
「……ロット⁈」
窓から身を乗り出すベアトリス。ここからでは、ロットが生きているかどうか確認できない。しかし、外に出られないベアトリス。窓枠をぎゅっと握りしめる。
「生命を吸う怪物、そこから出てこい。お前の討伐命令が出たんだ。……出てこないなら、コイツがどうなってもいいのか?」
大柄の男がロッドの頭を踏む。微かにぴくりと動いたロット。
だが、起き上がる気配がない。
ベアトリスは桜色の唇を噛み締める。怒りを露わにした。
そして、2階から飛び降る。久しぶりに外に出た、ベアトリス。
「討伐って、私のことわかっているの?」
ベアトリスの周りの地面に生えていた草が見る見る萎れ、枯れていく。
「勝てると思っているの、この怪物に?」
一歩、また一歩進むと生命を吸い取っていく。
周りの空気が冷えていった。
一人の青年が、ベアトリスに発砲した。胸に弾を受け、血が出たベアトリスだが、倒れることなく歩き続ける。撃たれた場所はもう傷が癒えていた。
「そう簡単に死なないわよ?死ぬことなんてない、命を吸い続ける限り」
ごくりと何人か唾を飲み込んだ。ベアトリスの紅い瞳に睨まれ、人間たちは足が震え出した。
「誰に頼まれたか知らないけど、やめておいた方がいいわ。去りなさい、人間なんかに勝ち目ないわ」
風が強く吹くと同時に大勢の人間たちは、逃げるように去って行った。
ぽつりと横たわったままのロット。普通ならすぐに駆け寄り、抱きしめたいが、これ以上は近づくことができないベアトリス。
近づけば、ロットの生命を完全に吸い取ってしまうから。
何もできず、その場に突っ立ったままのベアトリス。
「……ごめん、ね。しば、らく、一人に、して」
途切れ途切れの言葉。ベアトリスは静かに聞く。
「……わるい、やつら、に、つかまってさ、このザマ、だよ」
へへっと笑うロット。命の灯火が少しずつ小さくなっていく。
「おねがい、が、あるんだ、ベアトリスさん」
ベアトリスは耳を塞ぎたかった。その言葉を聞きたくないから。
「俺の、いのち、あげる。そしたら、いつまでも、いっしょ、にいられる」
最後の力を振り絞り、ベアトリスに手を伸ばすロット。
その顔は太陽のように眩しい笑顔だった。
ベアトリスは駆け出し、その手をしっかりと握った。
「ありがとう」
幸せそうな顔。すぅーっと綺麗な光がベアトリスに吸収されていく。
ベアトリスはボロボロと大粒の涙をこぼした。
「ばかっ、また寿命、増えたじゃない……」
枯れた手を握りしめて、自分の額にあてる。
「だから、一人でいたかったのに……一人がよかったのに。あなたのせいで……また生きないといけなくなったじゃない」
森中にその声が響き渡る。動物たちが、その様子を遠くから見つめていた。
2階のベアトリスの部屋からオルゴールの音が聞こえてきた――
お題『だから、一人でいたい。』
主様を怒らせてしまった。
昨日までお風呂のお手伝いをしていて、そのつもりで今夜も……と思っていたのが大間違いだったのだ。
「フェネスの馬鹿! 私だってそろそろひとりで入れるもん!!」
俺にはデリカシーというか配慮というか、女性の心の機微を察知する能力が欠如しているのかもしれない。
反省点は日記に書いて二度としないようにしないと。
『もしかしたらこれを機に担当を代えられるかもしれない。そしてもう二度と担当に戻してもらえないかもしれない……』
そう記していたら眼鏡の視界が歪んできた。
「はぁ……俺ってなんてダメな奴なんだ……」
ペンを置き、頭を抱えていると書庫に誰かがやって来た気配がした。
「フェネスさん」
衣装係のフルーレだった。
「あの、相談というか……主様のお召し物のことなんですけど」
フルーレが俺に服の話をしてくるなんて珍しい。しかし頼られている気がして、少しだけ気持ちが上向いた。
「主様のお召し物がどうしたの? フルーレ」
「最近胸周りがキツそうなので新しい服を作るために採寸を……と思ってさっきお部屋に伺ったら、馬鹿と言われて締め出されて……俺、何か間違ってたんでしょうか?」
なんだ、フルーレもだったのか。
「俺もだったんだ」
「えっ、フェネスさんも?」
ふたりで頭を悩ませていたけれど、ふとある言葉を思い出した。
「思春期……かもしれない」
「あぁ……なるほど、そうかもしれませんね……」
主様に思春期が訪れたのであれば納得がいく。しかし、そうとなればどう接したものか?
「分からないので主様に直接窺いましょう」
「え! フルーレ!?」
鼻息も荒く意気揚々と主様の部屋に向かおうとするフルーレの後を慌てて追いかけた。
そして。
「だから、ひとりでいたいって言ってるでしょ!? フルーレとフェネスの馬鹿ぁ!!」
分かってはいたけれど、ショックもそれなりだ。
主様の思春期……これは、手こずりそうだなぁ……。
だから、一人でいたい。
「ごめん!私達、今日も用事があって掃除行けない!」
机が前に送られて後ろ半分が広くなった教室で、男女数人が私の前に並ぶ。
手を合わせて謝った子は表情がよく見えないけど、後ろの人たちは下品な笑いを噛み殺しているのが丸分かり。
嘘、下手だなぁ。
なんて思いつつも、いつもの優等生スマイルを返す。
「そう。みんな忙しいのね。掃除は私に任せて、いってらっしゃい」
「やったー!ありがとね!」
雑な感謝を捨て置いて、彼らは行ってしまった。
廊下から、あいつ馬鹿だな、とか言ってる声が聞こえるけど、嘘が気づかれていないとでも思っているのかしら。
別に、見え見えの嘘を信じたいというわけではない。
ただ、あんな人たちと一緒にいるのが、不愉快なだけ。彼らが騒いでいるのを間近で聞くくらいなら、一人で掃除でもなんでもする。一人でいたいの。
そう思ってたんだけど。
「委員長、また掃除押し付けられたの?」
不機嫌そうな声とともに、貴女が教室に来てくれた。
文句を言いつつも私を案じて、用具入れからほうきを取って手伝ってくれる。
終わったら駅まで一緒に歩いて、たまにクレープを買い食いして。また明日ね、と言ってくれる。
そんな貴女に、救われていたと気づいたのは、いつだっただろう。
※数日前の「誰かのためになるならば」の続きです
「だから、一人でいたい。」
ふと、君の方を見ると勉強をしている。そんな君を見るとどうしようもない焦燥感に駆られる。人と自分を比べるのは無駄だと分かってはいるのに、頑張り屋な君も好きなのに。そんな君を見ると自分が情けなく、惨めな存在に感じる。そんな時は何処か遠くにいってしまいたくなる。誰も私を知らない処へ
『感情』
誰かを勝手に信じて、勝手に裏切られた気分になる。信じたかったから。
でも、傷付くのは嫌。
傷付くくらいなら、最初から一人でいい。
一人なら気楽だ。
一人だったら、誰にも裏切られない。
裏切るのは、じぶんだけだ。
お題:《だから、一人でいたい。》
知っていた。識っていた。理解っていた。私が本当は、彼らと相容れる存在ではないことを。
私と彼らと、いったいなにが違ったのだろう。髪だろうか。瞳だろうか。声だろうか。身長だろうか。それとも、なにか、私の知らないなにかが──彼らと私との間に、埋められない溝を生み出したのだろうか。私だって、薄皮一枚向けば血が出て、肉があって、更にその奥に内臓があることに変わりないはずなのに。心の臓器に動かされている肉の塊に過ぎないのに。
どれだけ訴えようと/願おうと/望もうと/祈ろうと、彼らは私を受け入れるつもりがないようだった。それどころか、異物として排斥することさえあった。許せなかった。彼らを憎んだ。傷つけられた分だけ傷つけ返した。終わりのない復讐劇だった。
だから私はひとりになった。それ以外に方法はなかった。──それだけが、わたしという生き物が、この世界で生きていく術だったのだから。
俺は一人、夜道を歩く。ただ一人歩く。
そして朝に家に帰る。
そんな毎日を過ごす。
帰る家があるのに。一人暮らしじゃないのに。
どれほど、彼女と話してないのだろう。
今日まで数日、数ヶ月。
どれほど、彼女に触れてないのだろう。
知っていた。彼女とすれ違っていることくらい。
同棲する前から。なんなら付き合う前から。
それほど彼女はしっかりし過ぎた。
俺にはもったいないくらいちゃんとした人だった。
だから……だから、余計に、自分が最低に思えた。
仕事は勝手に辞めるわ、平気で約束破るわ……数え切れないほどに、最低で最悪だ。
俺となんか、きっと一緒にならない方がいい。
ずっとそう思い続けて……でも、別れの踏ん切りがつけなくて……。
だって、俺から“別れよう”って言うのはあまりに我儘で自分勝手だ。
だから、彼女から別れを切り出した方がいいんだ。
それが一番いい。
そう思って、俺は夜道を歩いて、朝に帰る。
彼女がいながら夜遊びをする“最低な男”を演じるために。
彼女が好きだ。
好きだからこそ、彼女の幸せを願ってしまう。
だから、一人でいたい。一人であった方が迷惑をかけなくていいから。
「──!」
俺の名前を呼ぶ声がした。
後ろを振り返ると彼女がいた。
「……え、なんで」
咄嗟に出てきた言葉だった。あまりにも急だったから。
もしかして、ずっと後ろからついてきたのか?
「出てってからずっと後をついてきたの」
……やっぱり。
「数ヶ月間、私も忙しかったし、全然ちゃんと話せてなかったのも悪かったし……。でも最近、朝帰りばっかで、寂しかったんだよ?」
……寂しかった?
「……他の女のところにいるとか思わなかったのか?」
「思わないよ!だって、あなた、お金ないでしょ?」
図星だ。
彼女は俺に近づく。俺の手を彼女の小さな手が握る。
「だから、浮気とか疑ってなかったけど……でも、今日、少しだけ不安になっちゃった。だから、ついてきちゃったの、ごめん」
「ごめんって……君が謝ることじゃないだろ!むしろ俺がごめんって言いたい。自分勝手で……」
俺は彼女の手を握り返す。
彼女の柔らかな温もりを感じた。
「……仕事、勝手に辞めたりして、本当に悪かった。君があの時怒った気持ちは分かる。俺でも怒ると思う。それに、ここ数ヶ月全然仕事探さなくて家にほとんどこもってたし……俺は最低な男だよ。君にばっかり負担かけて……俺なんか、君と一緒にいない方がいいって思ってたから……」
「え、どういうこと!?」
彼女はびっくりしたように目を見開いて俺を見つめた。
「ま、まさか、それが出歩いてた理由!?」
「そうだよ。君に振ってもらおうと思って……」
「えぇ!?」
彼女はそう言って、複雑そうに眉間に皺を寄せた。
「ばかじゃん」
「えぇ、ばか!?」
「そうだよ!本当に!!もう、いつまでも自分勝手な人!!私がそんなんで振るわけないじゃん!」
彼女は俺を睨みつけるようにして見つめてくる。
「あのね、確かにあなたは自分勝手で経済力も乏しいしポンコツだけど、私にとってはとっっっても大切な人なんだよ!あなたは優しいし料理上手だし、私の我儘に永久に付き合ってくれるところとかすごく嬉しいんだから!何年の付き合いよ!もう!……勝手に決めないでよ!」
彼女は顔を赤く染めながら大声でそう叫ぶ。
……あぁ、俺は本当にポンコツだな。
「──」
俺は彼女の名前を呼ぶ。
「……何?」
「ポンコツでごめん。君がここに来てくれて良かった。俺、君を好きになって本当に良かった」
俺は微笑みながらそう言う。
彼女は少し恥ずかしそうにしながら、顔をムスッとして言う。
「……感謝してよね」
俺はクスッと笑う。
「……もちろん。一生をかけて」
「えっ」
彼女は少し驚いた表情を浮かべた。
「本当に?」
彼女の言葉に俺は頷く。
「あぁ、本当だ」
そう言うと、俺は彼女に口付けをした。
数秒後、互いの唇が離れると、互いを見つめる。
彼女は実に照れくさそうにしながら、心の底から嬉しそうに笑っていた。
月が本当に綺麗な夜だった。
■テーマ:だから、一人でいたい。
自分で言うのもなんだけど
そこそこ アタマもいいし
そこそこ 要領がいい。
手先も器用だし
人付き合いも悪くない。
仕事も プライベートも
「キミがいないと 困るんだ!」なんて
皆で言うのよ?
まぁ 当然。
ワタシは 「尽くす女」
誰かのために いつも 全力を尽くすの。
見返りが欲しい訳でも
感謝の言葉が欲しい訳でもない。
それが
ワタシの使命と感じているから。
ただ 最近になって ちょっとお疲れ気味。
「頼りにしてるよ」って 聞き飽きちゃった。
「ワタシがいれば大丈夫」
そんな言葉 もぅ吐き気がしちゃう。
そぅは言っても長年の積み重ね。
最善を尽くすために思考を働かせ
体は先回りして動く。
今更言えない
「頼りにしないで」を 無理やり飲み込む。
#だから、1人でいたい
──私のこと好き?
そう問い掛ければ恋人は微笑みながら言葉をくれる。嬉しい。私も好きよ。
──私のこと大好き?
そう問い掛ければ恋人は少し照れたように頷いてくれる。嬉しい嬉しい。私も大好き。
──私のこと愛してる?
そう問い掛ければ恋人は顔を赤く染めながら耳元で囁いてくれる。嬉しい嬉しい嬉しい。私も愛してる。
──好き。大好き。愛しているの。貴方だけ、貴方しか要らないの。私の愛も悲しみも喜びも怒りも憎しみも他の全ての情も貴方に捧げます。だから、貴方も同じものを返してね?
そう問い掛ければ恋人は初めて首を横に振った。どうしてどうしてどうしてどうして。私はこんなにも貴方が好きで大好きで、貴方を愛して憎んで憐れんで、貴方に憤って貴方の貴方へ貴方と──。
だからだよ、と恋人は困ったように笑った。
だからか、と私は恋人の最後の優しさで理解した。
私の愛は私のものでしかなくて。私の愛は私を幸せにはしてくれても貴方を幸せにすることはできないのだ。
ならば、私はこの愛を抱えて去りましょう。貴方への愛と貴方との思い出を誰にも触れさせず貴方にも汚されないように。
これから貴方の記憶のひとつに成り下がるであろう私のことを、引き際だけは潔かったと、どうかそれだけは覚えていてね。
私の中の貴方が過去になることはないけれど。
/だから、一人でいたい。
題:だから、一人でいたい。
登場人物 ・私(咲希) ・美優
美優)あの!…もしよかったら友達になりませんか?
高校一年生の始業式の日前の席にいた子が話しかけてくれた。私は中学1年生の時、大事な親友と大好きな両親が死んだ。 それから私はずっと1人で誰とも話さず生きてきた。
おばあちゃん達ももう居ない。親戚のおばさんの所でお世話になっている。でも、何も話さないで暮らしている。
何を言われても無視をするようにしているんだ。
私)……
美優)あ、あの!また明日話しかけるんで!あ、えーっと私の名前!私の名前は美優って言うんです!忘れないでください!!
私)!?
美優)??どーしたんですか!
私)…ぁ、ぃゃ、…
美優)えっと、とりあえず!また明日です!!
忘れないでください…か。忘れないよ、忘れるわけないじゃん。。てか、忘れられないよ…
美優)おはよう!!…あー、昨日聞き忘れた!名前何!
私)……
美優)あ、勝手にタメ口にしちゃった(>_<)ごめんなさい!タメ口でもいい?
私)……
美優)あぁ名前!名前教えてよー!
しつこい子だな…でもやっぱ似てるな。
少しくらい話してもいっか。
私)咲希。
美優)咲希ちゃんって言うんだ!可愛い!!
私)…ありがとう。
美優)私の事は呼び捨てでいいよ!!
私)……わ、わかった。私も、呼び捨てでいい。
美優)うん!分かった!咲希よろしく!
私)よろしく。
美優)名前言ってよぉw
私)…美優よろしく。
美優)うん!!
あぁダメだ。涙が…
美優)…ねぇ咲希?どーした?
私)あぁ……いやなんでもなi
美優)なんでもいい訳ない!!
私)ほんと、なんでもないから。
美優)ちょっとこっち来て。
私)な、なに。
美優)ここなら誰も居ない!言ってごらん、大丈夫、ゆっくりでいい、何があったか教えて欲しい。私が嫌なこと言っちゃったならほんとにあやまる!
ぁぁもう、ほんとにダメだ。
似てるの。ほんとに似てる。
結構強引な所も、声も、しつこい所も、顔も、髪型も、全部似てる。
私)私の大事な親友が中学1時に死んだの。両親も死んだ。
親友の名前はね……
美優)うん。
私)美優。
美優)そーだったんだ。
私)うん。ねぇ美優
美優)なぁに。
私)似てるの。美優に。声も顔も仕草も、しつこい所も、強引な所も髪型も全部、全部似てる。話す時髪の毛を耳にかける癖も、爪の形が縦長で指が細くて綺麗な所も、全部……全部似てるの!!
私は泣きながら話した。
美優)そっか。。ねぇ、私の親友になってよ。
私)え?
美優)そんなに似てるならさ、親友になろ!でさ、美優ちゃんと行った所以外の所にもたくさん行こ!ね!
私)……やだよ。
美優)んー、どーして?
私)もう失いたくない。もう大切で大好きな人を失いたくない。。誰が死んでも悲しまなくていいようになりたい。だから人とは話さないできたんだよ。でも美優を見たら無視なんて出来なくて、しつこいなって思ったけど、そこも私の大好きな美優と一緒だったから。。だから、だから…
美優)うん。ねぇ約束するよ。私はどこにも行かないよ。
私)嘘だ。
美優)ほんとだよ。咲希、ずっと一緒だよ。
私は信じたかった。だから頑張って信じた。
ずっと一緒って言ってくれたのが嬉しかった。
私)うん。わかった。絶対だよ。
美優)うん(*´︶`)
高校三年生になった。
私と美優は親友でとても仲が良いんだ。
色んな所に2人で行った。
美優が大好きで大切だ。
どこにも行かないでね…
その願いは叶わなかった。
卒業式の日、帰り道に美優は通り魔に会った。私と一緒に帰ってた。美優は隣で死んだ。
あぁ。まただ、死に方も一緒だ。私の手をそんなに強く握って、泣いている。美優の目に写った私の目からも涙が溢れている。
ぁぁ。これだから私は一人でいたかった。
大切な人を作ると、その子が居なくなった時は私はどん底へ落ちていく。だから、だから、一人でいたかったんだよ。ねぇ美優。美優…もう、もう親友も何もつくらないよ。ずっと一人でいるよ。でも、もう一回、もう一回だけでいいからさ、言ってよ…ずっと一緒だよって。
大切な人が増える度私は胸が苦しくなります。
死んでしまった訳では無いです。
でも、離れていってしまったらどうしようって、
苦しくなります。1人だったら良かったのかなって思う時が沢山あります。。
「だから、一人でいたい。」
風邪ひいたときくらいしかそう思ったことないかも。
なんて強がりかもね
だから、一人でいたい。
近すぎると見えなくて、遠すぎるとわからなくなる。
誰かに、すぐそばにいてほしいのに、関わりたいわけじゃないんだ。
話を聞いてほしいわけでもない。ただ、誰かがそこで話をしてくれるなら、聞いていたいし、大丈夫だよ、なんて伝えたい。
そんな相反する想いを抱えるから。無理にわかってほしいわけじゃないから。
だから、一人でいたい。
一人でいたいんだけど、独りではいたくないんだ。
各々好きなことをやって、一人の時間を大事にして、でも、独りにはしないでほしい。
他人より不器用に生きて
下手くそに息をして
溺れかけている
繕わなければ『普通』を保てない
陸の魚
深夜二時過ぎの静寂がやさしく背中を撫でる
漸く呼吸が出来たと 深呼吸をして
月へ昇る泡を見つめた
まっとうだからじゃない。
Fallen. Fallen. Fall.
畜生、いかれてるからじゃねぇ。ただ恥ずかしいからだ。半端に堕落してるからだ。ださいからだ。
堕落なんてできやしねぇ。精々が不誠実な堕落。堕落と呼べない堕落。
畜生、畜生って、悔しがるふりをして、クールなふりをして、虚無的なふりをして。だから人前で堕落できない。傲慢。クズ。カス。
弱いのですらない、狡いのだ。卑屈なのだ。善人ぶっているのだ。なぜって。
F*ck. F*ck. **ck. F**k. *uck. Fu*k. F***.****.****.****!****.****.
ああ、こんな馬鹿、さっさと滅べばいいのに!
上手くは言えない。
ただ自分を騙してしまうから。
ありのままでいられないから。
「これ以上」の心が 体が
溢れてしまうから。
大丈夫じゃないから。
上手くお話しできないから。
不機嫌にさせちゃうから。
あまりにも最低な自分が
顔を出してしまうから。
無理ができるから。
だから、
–だから、一人でいたい–
だから、一人でいたい。
家族って、色々面倒くさい…近いだけに、余計に、色んな情や出来事が交差して、ややこしくなってしまう…そんな時には、いっそ何処かに、一人ひっそり暮して、そして…と思う…
#だから、1人でいたい
そばにいるのに
孤独を感じる
喜びは倍に
悲しみは半分に
なんて、ならない
いや、そんな時もあったけど
もう戻れない
だから、1人でいたい
人と比べて惨めになる。
自分への評価を気にしすぎてしまう。
皆からどう思われているのか考えるだけで怖い。
もうそんな思いはしたくない。
『だから、一人でいたい。』
お題【 だから、一人でいたい 】