だから、一人でいたい。
「ごめん!私達、今日も用事があって掃除行けない!」
机が前に送られて後ろ半分が広くなった教室で、男女数人が私の前に並ぶ。
手を合わせて謝った子は表情がよく見えないけど、後ろの人たちは下品な笑いを噛み殺しているのが丸分かり。
嘘、下手だなぁ。
なんて思いつつも、いつもの優等生スマイルを返す。
「そう。みんな忙しいのね。掃除は私に任せて、いってらっしゃい」
「やったー!ありがとね!」
雑な感謝を捨て置いて、彼らは行ってしまった。
廊下から、あいつ馬鹿だな、とか言ってる声が聞こえるけど、嘘が気づかれていないとでも思っているのかしら。
別に、見え見えの嘘を信じたいというわけではない。
ただ、あんな人たちと一緒にいるのが、不愉快なだけ。彼らが騒いでいるのを間近で聞くくらいなら、一人で掃除でもなんでもする。一人でいたいの。
そう思ってたんだけど。
「委員長、また掃除押し付けられたの?」
不機嫌そうな声とともに、貴女が教室に来てくれた。
文句を言いつつも私を案じて、用具入れからほうきを取って手伝ってくれる。
終わったら駅まで一緒に歩いて、たまにクレープを買い食いして。また明日ね、と言ってくれる。
そんな貴女に、救われていたと気づいたのは、いつだっただろう。
※数日前の「誰かのためになるならば」の続きです
7/31/2023, 2:05:15 PM