──私のこと好き?
そう問い掛ければ恋人は微笑みながら言葉をくれる。嬉しい。私も好きよ。
──私のこと大好き?
そう問い掛ければ恋人は少し照れたように頷いてくれる。嬉しい嬉しい。私も大好き。
──私のこと愛してる?
そう問い掛ければ恋人は顔を赤く染めながら耳元で囁いてくれる。嬉しい嬉しい嬉しい。私も愛してる。
──好き。大好き。愛しているの。貴方だけ、貴方しか要らないの。私の愛も悲しみも喜びも怒りも憎しみも他の全ての情も貴方に捧げます。だから、貴方も同じものを返してね?
そう問い掛ければ恋人は初めて首を横に振った。どうしてどうしてどうしてどうして。私はこんなにも貴方が好きで大好きで、貴方を愛して憎んで憐れんで、貴方に憤って貴方の貴方へ貴方と──。
だからだよ、と恋人は困ったように笑った。
だからか、と私は恋人の最後の優しさで理解した。
私の愛は私のものでしかなくて。私の愛は私を幸せにはしてくれても貴方を幸せにすることはできないのだ。
ならば、私はこの愛を抱えて去りましょう。貴方への愛と貴方との思い出を誰にも触れさせず貴方にも汚されないように。
これから貴方の記憶のひとつに成り下がるであろう私のことを、引き際だけは潔かったと、どうかそれだけは覚えていてね。
私の中の貴方が過去になることはないけれど。
/だから、一人でいたい。
7/31/2023, 1:52:02 PM