『たそがれ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
また、夕暮れのこと。
僕の友達がこう、いってきた。
「ねえ、夕暮れのことはたそがれっていうんだよ!」
すごいでしょ?と言わんばかりに僕の目をのぞきこんでくる。
「知ってるよ。」
僕が友達に言うと、悲しそうにしょぼくれた。
「知らないはずないじゃないか」
何回も繰り返してる会話なんだから
たそがれ
ゆったりと
空を見上げて
たそがれ
明日も
暑いかな
早く秋になあれ
なな🐶
2024年10月2日2256
私はラジオ体操の出席頻度が他メンバーにくらべ少なく夏休み中『リスナーの皆さんに楽しんで頂く回数がメンバーの中で1番少なかった』ことに反省している所存です。
こちらは言い訳にはなりますが朝のラジオ体操の時間が早かったことが原因になっているのではないかと考えております。
遅刻または欠席するこになった原因は
『朝、決められている時間に目覚めることができなかった。』
『そもそも起きる気がなかった。』
この2点が主な欠席理由になるかと思います。
『朝、決められた時間に目覚めることができなかった。』 このことにつきましては『目覚ましをその日の夜にセットして寝る』こちらが解決方法かなとこの1週間で思いました。
『そもそも起きる気がなかった。』こちらにつきましては『起きる気を持つ』こちらが解決方法になるかと思います。
『起きる気がない』とか言ってたら『ライブとかどうすんねんっ!』って話しになってくると思ったのでメリハリを付けること習慣にしたいと思いました
今後はその様なことがないように
これまでの生活、歌い手活動を振り返り規則正しい生活を志す。
生活リズムを安定させる。
見てくれているリスナーさんに感謝する。
自分の配信は必ず出席する。
活動者であることに自覚と誇りを持ってこれからの活動人生を歩み続けて行きたいと思います。
すべてのラジオ体操に出席することが出来ず
誠に申し訳ごさいませんでした。
今日もその店へ寄る為に自宅の最寄り駅よりひとつ手前で電車を降り、真樹夫は黄昏に染まり始めた美しい街の景色を楽しみながらゆっくりと歩いて行く
その店の名は『たそがれ』
昭和の時代に流行した昔ながらの喫茶店で、外観も店に通う客層も、名前の由来はそこからだと思わせるように皆まさにたそがれている
もちろん、真樹夫自身もその一人だ
元々の店の名の由来は、その店から眺める黄昏時の美しさに感動したオーナーが名付けたらしいのだが、その名に吸い寄せられるかの様に黄昏世代の客は足が向いてしまうようだ
入り口のドアを開けるとカランカランと客が来たことを知らせるドアベルが鳴り、「いらっしゃいませ」というマスターの渋い声が迎えてくれる
すでに先客は数人チラホラと来ているが、誰一人として視線を向ける人はいない
それが暗黙のルールなのか、興味が無いのかは分からなが、それくらいそれぞれが自分の時間を楽しんでいるのだろう
真樹夫が『たそがれ』に通うようになって5年ほどが経つ
おそらくそのずっと前から通っているのだろうと思われる常連さんや、比較的新顔の客と様々だが、その誰もが顔は知っているという感じだ
ただ、その誰のとも言葉を交わしたことはない
誰かと連れ立って来るという雰囲気の店でもないし、それぞれがのんびりとコーヒーを楽しんでいる
それぞれに背負う人生の荷を、そこでは一瞬下ろして、一息ついている…そんな形容が似合う空間なのだ
真樹夫はそんな客たちに密かにあだ名をつけている
1番の古株のような常連のその紳士は、歳の頃は70手前といったところか…
週に2度ほど真樹夫は訪れるが、その紳士は必ずカウンターの1番端に座り、おそらくマイカップと思われる大きめのマグカップでゆっくりとコーヒーを楽しんでいる
言葉を発することは殆ど無いが、時折話しかけるマスターの声に穏やかな微笑みを返している「まったりさん」
営業の途中の時間調整にこの店を利用していると思われる「せかせかくん」
常にパソコンで忙しなく何かを打ち込み、時計をチラチラ気にしながらコーヒーになかなか口をつけない
せっかくのマスターの美味しいコーヒーが勿体ないと真樹夫は気になって仕方がない
そんなに派手に広げなくても良いだろうと思うほど、新聞を両手いっぱいに広げてパサパサと捲りながらコーヒーをズズッと啜る「新聞さん」
静かな店内にはオーナーのセンスの良さを感じさせる素敵なジャズが心地良い音量でリズムを刻んでいるというのに、その「新聞さん」の立てるパサパサという音と、大袈裟な咳払いに残念な思いをしているのは真樹夫だけではないだろう
それから、「和歌子さん」
もちろん本当の名前を知っているわけではない
真樹夫が昔好きたった女優さんに、その女性がどことなく雰囲気が似ていることから勝手に呼んでいる
彼女には毎回会う訳ではないけれど、いつもスーパーで買い物してきた重そうな荷物を持って入って来る
着ているものも雰囲気も、会社帰りではなく家庭の主婦なのだろう
目が回るような忙し時間の中でほっとひと息ついて飲むコーヒーが、彼女にこれから夕飯の支度に向かうパワーを与えている、そんな感じだ
彼女からどことなく漂う雰囲気に何故がシンパシーを感じて、真樹夫はこの店に来ると彼女の姿を探すようになった
それでも、話しかけたことも無いし、話しかけようと思ったことも無い
ここに来れば彼女も来ているかも知れない、それで十分だし、その距離感が良いのだ
もしかしたら、皆それぞれに複雑なものや重いもの、人には言えないものを抱えて生きているのかも知れない
一度言葉を交わせばその一端を覗き見してしまうこともある
そんなものはここでは必要無いし、むしろそういうのもから逃れてここに来ているのだ
妻からのLINEが届いた
「今夜は貴方の好きなエビフライ揚げるわ 会社から寄り道せず帰ってきて」
そろそろタイムオーバーだ
ここへ度々寄っていることを妻は知らない
ここは仕事で戦う戦士から家庭で務める夫役に交代するための楽屋的存在だ
妻に打ち明けることはおそらくしないだろう
「あいつの好きな駅前の店のシュークリームでも買って帰るか」
人生のたそがれ時を迎えた男の隠れ家『たそがれ』を真樹夫はあとにした
『たそがれ』
たそがれることで楽になることもあるし辛くなることもあるよなー。
なんてふざけたこと言ってみたり。
黄昏時、いつもの帰り道。彼はいつも手を差し出してくれるから、私は何も疑うことなくその手を握る。そして、何も変わらぬ一日が過ぎてゆく……はずだった。
雨が降り、風が吹き付ける。あるはずの暑さはどこかに過ぎ去り、上着を羽織るだけでは肌寒かった。異様に眠かったのを覚えている。帰ったら休もう、そう思いながら彼と歩いていた。
「xxxx」
私を呼ぶ声が聞こえて、顔を上げてみる。しかし、辺りには誰もいない。そう、一緒に歩いていた彼すらも。それを理解した瞬間、風邪とは違う寒気に襲われた。
「xxxx」
声が近くなった?
確かめようにも、身体は思うように動いてくれない。しかし、繋いだ手は驚くほど簡単に動いて、解けてしまいそうだ。
「……今更惜しくなったのか?」
彼の声が聞こえた直後、強く握り直される感触がした。
「お前は負けた。あのような不義理を、俺が許すとでも?」
がっ、と肩を掴まれる。
「どのような形であれ、二度と彼女に関わるな」
私を呼ぶ声は断末魔の叫びに変わった。恐怖に目を瞑っていたが、首元の感覚に目を開けた。
「よく耐えたな。何か温かいものでも買って帰るか?」
目線の先にはコンビニがあった。何か口にすれば安心できるかもしれない。その提案に乗ると、彼はいつも通りの、柔和な笑みで歩き出した。
『過去の隙間』
たそがれ
たそがれ
夕方のことだよなと思いつつも確信を持てないので調べた。やっぱり夕方のことだった。
日本語にはほとんど同じ意味だけど違う言葉ってのがよくある印象。具体的にどんな言葉があるかといわれるとパッと出てこないけど。
とにかく夕方とたそがれもそんなほとんど同じ意味で違う言葉の一つなわけだ。このほとんどの部分が重要ってのもまたよくあることだ。
それで夕方とたそがれが具体的にどう違うのか。それは調べてもわかりませんでしたぁ。
いや、もっとちゃんと調べれば違いがわかるとは思うんだけどね?ただそこまでがっつり調べるほどのことじゃないなぁって。まぁめんどくさいわけだ。
イメージとしてはなんだろ。夕方はまぁ夜のちょっと前全般でたそがれはもう少し時間をしぼって狭い範囲を指してる印象がある。
夕方が全体を指す言葉ならたそがれは一瞬、ピンポイントな瞬間を指してるんじゃないかな。個人的な印象だけど。
カラン、と涼しげな音をたてて氷が溶けていく。暦の上ならもう秋のはずなのにまだアイスティーが飲みたくなる気温が続いている。
レトロモダンとでもいうのだろうか、ステンドグラスの窓やランプシェードが可愛らしい。窓辺に飾られている砂時計や小さな花瓶もすべてが私好みだ。
机を挟んだ正面でニコニコと笑いながら日常のくだらないことを嬉しそうに話している、私の恋人。
初めて他人に好きだと言われていい気になってしまった。好きとも嫌いとも思っていないのに恋人になった。
失礼だと、はやく別れたほうがいいと、ずっと思っている。だけど別れる理由がなくてズルズルと続いていた。
私の好みに合わせてくれる。上手く話せなくても笑わずに聞いてくれる。無愛想な私を心底愛おしそうに見つめてくる。些細なことだけど、それが嬉しくてたまらない。
――恋してみたい、恋してみたいの
氷はもう溶けきって、アイスティーも温くなった。店内が少し薄暗くなってきて照明がキラキラと輝きだす。すっかり短くなった日に秋の訪れを感じる。
居心地のいいこの時間が好きだ。燃えるような夏よりもずっと好きなんだ。
【題:たそがれ】
たそがれ
たそがれ時を二人で過ごす。
たそがれ時を君と手をつないで歩いた。
一め人に広がる茜空に綺麗だねって微笑む君の横顔が愛しい。このまま時が止まれば良いのにって、そんな事を思ったりする。
今日も一日君と過ごせて幸せだったよ!ありがとう
たそがれ
空に朱色と藍色が混ざり淡いグラデーションが掛かる頃 私は、学校からの帰り道を
ひたすら歩いていた。
不気味な程 黒く 暗くは無く
かと言って心から安心出来る程明るくも
無いそんな淡い黄昏時なら 私達の中に
私達じゃ無い者が私達の振りをして
混ざっていても不思議じゃ無い
そんな幻想的な妖しい者を呼び寄せる様な
そんな空を見上げながら 私は一つの
好奇心と不安 恐怖と期待を胸の中に
抱えながらいつも通っている通学路を
ドキドキしながら歩いて行く
何かが起こって欲しい様な 起こって欲しくは無い様な相反する気持ちがせめぎ合い
ながら 一歩 一歩 足を踏みしめて行く
家に着くまで 私の心は前のめりになり
落ち着かなかった。.....
『黄昏』
黄昏と聞くと、すきなバンドの曲を思い出してしまう
厳密には『黄昏』ではなく『黄昏〇〇〇〇〇〇』というタイトルなのだが
(初めて行った)ライブでこの曲を聴いた時、なぜか泣いてしまった
歌詞と自分の心情がリンクしたのか、音圧がすごくて思わずだったのかは分からないが泣いてしまった
(個人的には前者だと嬉しい)
それと同時に音楽という物の力の素晴らしさに改めて気づいた
それ以降、この曲の歌詞に救われ続けている
別の話に話になってしまうが、黄昏という時間帯にノスタルジーを頻繁に感じる
黄昏=夕方らしいので、大体17時と思っておく
17時というと、学校帰りや会社帰りなど、帰路についている時だといえる
自分は、帰り道の時は、ついつい、昔のこと(友達のこと、楽しかったこと)などを考えてしまいがちになる
そういった部分からノスタルジーを感じてしまうという結論に辿り着いた
廃れた村の山深く、真っ赤な朱の鳥居の柱の間に立っている少年は誰そ彼。
あの狐面で隠れた顔でどうして少年と理解出来たのか、村に背を向けた臆病な私には永遠に分からないまま。
『たそがれ』
📍
子供の頃、夕方遅くに帰ってきて
うちの団地の棟の前に
大人が何人かいると不安になった。
黄昏時で顔が皆よく見えない。
うちの棟の人じゃないかもしれないと
すれ違うのが怖い気がした。
(たそがれ)
夕暮れ時。空と地がオレンジに染まって、地平線が曖昧になってゆく様をぼんやりと眺める。昼でも夜でもない、刹那の時間。儚くも美しいこの光景を見るのが、私は好きだった。
黄昏、あるいは、逢魔が時。どちらもあまり良い意味で使われる言葉ではないけれど。太古から人々はこの時間に何某かの意味を見出したかったらしい。
そうしてたそがれていると、ぼやけた地平線からポツリと人影がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。明らかにそれは、私を目的とした足運びで。けれど白金とオレンジの逆光に包まれて影は黒に染まり、容姿の判別がつかない。形からして、多分、男。……彼は誰だろう? なんだか少し怖くなって身構えていると、影は口を開いたらしい。何をそんなに怖い顔をしているんだ、と馴染みのある声が耳に届く。
「……お兄ちゃん?」
「他に誰が……ああ、西日で見えなかったのか」
距離が近付いて、顔も判別する。間違いなく兄で、強張った肩から力が抜けるのを感じた。
「こんな人気のない場所でこんな時間に一人でいたら危ないだろ。人拐いにあっても知らないぞ」
呆れたような、けれど少し心配の色も含んだ兄の声。過保護だな、と今度はこちらが呆れた。
「心配しすぎだよ。まだ暗くないし。だいたい、私を拐う人なんかいないって」
「バカ。さっきオレの顔も見えてなかったくせに。オレが不審者だったらどうするんだ。……『誰そ彼』って言うしな。危ない時間帯なんだ。用心しろ。ああちなみに、誰そ彼って言うのは――」
突然始まる兄の講義に、笑ってしまった。兄妹二人、他愛の無い話をしながらゆったりと家へと足を進める。
彼は誰ぞ――魔が闊歩する、そんな時間。あまり良い意味ではないそれだけど。私にとっては、お節介お兄ちゃんが迎えに来てくれる、そんな時間。
テーマ「たそがれ」
たそがれになると この辺りを境に家に明かりが灯り始め 反対に外は少しずつ暗くなっていく カラスの鳴き声も大きくなり だんだんと街の景色も寂しく感じ 人は家路を急ぐ… 灯りはあたたかく 1日疲れた人を優しく灯す…
ポポヤ
さむい海を一人で歩く
ちゃぽんと鳴る投げた石ころ
息を細く吐きながら、涙目のあたしはまだ俯いて
なくせないから美しいと
景色には嘘はつけないと
さむがる悴んだ手を広げて
遠くの灯を見つめたあたし
貝殻にぜんぶ吐き出せば楽じゃないか
いっそ海にさえ藻掻いてしまえば生きれたのに
悲しくなって
愛を売って
死にたくないと呟いた
朝焼けの、海
振り返った彼女の輪郭はぼんやりとして見えづらい。
あっという間に落ちていく夕日に、
この時間に、彼女がスゥッと溶けていくようだった。
「ごめんね」
そう一言だけ呟き、彼女は電灯のない方へ歩き出した。
僕の瞳は簡単に彼女の姿を捉え損ね、
次の言葉を出す前に彼女は見えなくなった。
仲間だと思っていた。味方だと思っていた。
大切な人だと思っていた。
そうではなかったのだと知って、
クラクラと衝撃を受けている間に僕の前から消えてしまった。
前から彼女は儚い人だと思っていた。
でも、こんなにあっさり灯火が消えてしまうなんて。
静かに頬に伝う雫が襟元を濡らした。
【たそがれ】2024/10/02
お題:たそがれ
昨日のお題の傑作が
投稿前に時間切れ
黄昏時にたそがれました
逢魔時―おうまがどき。夕方の薄暗くなる、昼と夜の移り変わり時刻。黄昏どき。魔物に遭遇する、あるいは大きな災禍を蒙ると信じられたことから、このように表記される。
「百鬼夜行?」
男は、同僚の言葉を復唱する。百鬼夜行・・・、水木しげるの作品でしか出てこない単語だと思っていたが、まさか現実世界に起こる出来事として聞くことになるとは思わなんだ。しかしながら、同僚の考察を馬鹿馬鹿しいと一笑することは、今の男には出来なかった。今から約一週間程前のことだ。ちょうど御彼岸が終わる日頃に、不可解な連続殺人事件の始まりの一件が起こった。ガイシャのご遺体は、頭部が異常な程に膨れ上がっており、手足がなく、まるで達磨のようだったという。連続殺人だと発覚したのは次の事件が起きてからだ。ガイシャのご遺体は、腹が妊婦のように膨れ上がっていた。解剖は行ったが子供はおらず、そもそもガイシャは男性だった。関連性は明白だろう。人間が成し得るには到底不可能な殺害方法であるということだ。早急に対策本部を立ち上げたはいいものの、その間に二人殺されている。これは稀にも見ない異常事態だ、日本中を震撼させる恐れがあると考えたお上は、とにかく暇な警察を片っ端から集め、事件の収束を図った。それから一週間とちょっと。事件はまだ鳴りを潜めない。以前として、犠牲者は増え続けている。
この世のものではない集団、または集団の行進―――百鬼夜行。警察が血反吐を吐くように、或いは目を血眼にして追い掛けている犯人(若しくは犯人たち)が、もしその集団に紛れているとしたら。
「おい、その百鬼夜行ってぇのは、いったいいつ見れるんでぇ」
犯人(若しくは犯人たち)を捕まえる絶好のチャンスだ。そして、男が昇進するチャンスでもある。いつからだったか、有名な大学を卒業したキャリア組であった男は、現場にいるありふれた警察へと陥落していた。しかし、だ。巷を、否、日本を騒がせている例の犯人をとっ捕まえることが出来れば、これ以上ない昇進への足掛かりとなる。ひょっとして・・・、日本中のヒーローとして祀り上げられたりとかもしちゃったり!
「おい! 百鬼夜行ってぇのは、いったいいつ見られるんでぇ!」
男は、喰らいつくかの如く同僚へと詰め寄る。興奮が抑えきれないらしい。つくづく人間とは救えない―――が、そんな愚かしい生き物が、我らにとっては一等美味なのだから死にきれない。元々生きてさえいないのだが。
「―――・・・?」
男は、よくやく目の前に立つ同僚が、自分の知っている人物と合致しないことを悟ったらしい。手が震え、足が震え、口が震え、全身が震撼している。日本が震撼する前に、お前が震撼してどうするのかと思いながら、???はユラリと陽炎の如く近寄った。男は、震える声で問うた。
「誰だ、お前は」
「―――・・・」
カチリと、ピースが嵌まった。
―――・・・のニュースです。昨日未明、河川敷に変死した遺体が打ち捨てられているのを、ジョギング中の女性が発見しました。遺体は臀部が不自然に膨張しており、警察は、先日起きた事件らとの関連性から、連続殺人事件と考えて間違いないそうだと・・・―――
【たそがれ】
何度でも書いた
一心になって書いた
時間を削って書いた
そんな文字は一つのタップ一瞬で全て消えるもの
何だか勝手に、お前が熱意を込めてあくせく書いたものは所詮はこれほどの価値なんだと笑われてるような気持ちになる
きっと多分嫌な空気のせいだ
換気をしよう
ああだめだ…今日は本降りだな。
もうここまできたら沈むだけ沈むしか無い。
今日は何もしないようにしよう。
部屋に行こう
ベットに横になって寝よう
私の部屋が、遠い
無駄に広くて長い廊下には、隅々にシンプルながらも全てにしっとりとした高級感が漂っていて、重い。
気づけばすぐに子供の頃の自分と光景が出てきて、
私の目の前でうろちょろするんだ
見るな 話しかけるな だめだ
そいつの首根っこを引っ張り上げてただただ目の前の光景から目を離して
強く目を瞑る
戻れた
「まただ…薬を変えてもらおう」
ああここまで来てしまった
この廊下は通りたく無い
ピアノに何度も見た肖像画
煩い音が聞こえてくる
思い出のピアノなんて言うには相応しくない。ただの廃れたピアノが視界に映るたび、どうやったってどうにもできない心のわだかまりが呼び覚まされる気がして早足になる。
忘れ去られた豪邸には私ひとり。
こんなにも大きいのに誰にも知られず気に留められず
惨めなもんだよな。
こんな豪邸から出られず終いなところ、逃げられない無力さを強く感じる
私は何がしたいか
何が好きなのか
わからず有耶無耶にして生きてきた
私はだいぶな白黒人間だが、自分に対してはいつも目を逸らしてグレーにもせず見殺しにする。
そうだな、卑怯だよ。
もういい、このままベットへ辿り着けても眠れそうに無い。寝れたとしても悪夢にうなされるだけだろう。そんなのごめんだ。テラスで雨を傍観しながらカプチーノでも飲もうか…
〔ザーーーーー…〕
何だかこんな雨は俺の記憶と一緒に全部何もかも流してくれそうだな
でも、なんだか、確かに目の前にあるはずのこの雨が遠いものに感じる。一線が引かれていて、俺はその線から更に何歩も下がって傍観している気分だ。
やがて俺だけ此処に置いてけぼりにされそうだ。
俺だけ動くことはなく、時は当然のように過ぎ去るから。そして、時が過ぎ去っても、記憶は残り続けるものだから。
…
そういえば庭にくるのも久々だな。
反対の西庭の方にはデカい噴水があったっけかな…
あの噴水ではあいつとよく遊んだな
俺が周りから色々言われているのをいいことに下心満載で媚び売りしに同情してくる奴等がうじゃうじゃいた中、あいつだけはまるで自分がされたかのようにガチギレしてたっけな。
〔ボンボンだからって調子乗ってんだろ。よく知らないけど、あんなやつ性格悪いに決まってる。〕
〔どうせあの冷たい態度に目つき、私たちのこと見下してるのよ。〕
「君のこと知らないから奴等は好き勝手あんなこと言えるんだ!知らないくせにつべこべ言う権利無いでしょ!君も言い返さないの!?」
「俺は…いや私はいいんだ。」
「どうしてよ!いいわけないでしょうに」
「知らないくせにつべこべ言う権利は無いんだろう?それはこちらにも言えることだし、何か言い返したところで大事になれば、逆に私が損害を大きく被ることになるだろう。だから、好きに言わせておけばいいんだ。」
「でも…」
「やり返すなんてもの損以外何も生まないんだ。もうこの話はこれで終わりにさせてくれ」
「……」
ああ、思えばあいつとはあれが最後だったな。
唯一の楽しかった気がする思い出さえ、綺麗なものとして残ることができないなんて。
「ハハっ、我ながら全てが最悪だな…」
父さんと母さんの期待に応えるべく、血筋を重んじて、なんて思ってるうちにいつのまにかそこに俺はいなかったんだな。
惨めだ。
どうしても、惨めだ。
〔ポロッ ツー…
〔ザーーーーーーー————……