『たそがれ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
たそがれ
バイバイ、と手を振った。
黄昏時が君の表情を隠す。君がどんな顔をしているか、わからないから、僕もどんな顔をすればいいかわからなかった。
またね、とは言えなかった。さようなら、では二度と会えない気がした。
だから、バイバイ、と小さな子どものようにつたなく手を振って、振り返るのをやめる。
まだ君は、そこにいるんだろう。だけど、もう振り返ることはしなかった。
ただ、君を思い出にしたかった。
煙草に火をつける。煙が夜風に吹かれて遠くへ行くのをぼうっと見ていた。あのとき。もしもあのとき、ああしなければ。ああしてれば。もう考えても無駄なのにいつまでも考えてしまう。
「考え事か?」
お前にしては難しそうな顔をしてる、と俺の顔を覗き込んだ兄弟が言う。そう言われて我に返った。
ふざけんなと鼻で笑って、短くなった煙草を足で消した。
「仕事行くぞ、兄弟」
後ろで、おうと声がした。
『たそがれ』
黄昏時、タソガレドキ、タソカレ、誰そ彼時
秋の夕暮れ、1人であの森に近付いてはいけないよ
深い深い、紅に飲み込まれてしまうから
その森はね、夕暮れ時が1番危ないんだ
誰そ彼時、それはヒトと怪異の境界が曖昧になる時間
嗚呼、今日もまたひとり、ヒトならざるモノに魅入られてしまったね
いつだって彼奴らは、君たちのことを狙っているんだ
だから、あの森に近付いてはいけないよ
でも、少し気にならないかい
決して触れてはいけないと言われるものほど触れてみたくなるのがヒトってやつさ
ふたりなら、きっと大丈夫だよ
ひとりではダメと言われているけれど、ふたりならきっと大丈夫さ
だから、だから、1度だけ、一緒にあの森に行ってみないかい
嗚呼、今日もまたひとり、魅入られたみたいだね
好奇心はヒトを隠す、なんてね
[黄昏]
大分日が沈んで当たりが薄暗くなるのをぼんやりと何をするでもなく本丸の縁側からただ眺めていた。
本丸の季節は景趣によっていくらでも変えられるのでずっと桜が咲き誇る春だったり、しんしんと雪が降り積もる雪景色が続いたりと四季の感覚が無い本丸も稀にあるそうだが自分の小さなこだわりとして折角なら季節の移り変わりを楽しみたいので今は鮮やかな赤や黄色に色付いた葉が時折舞い落ちる秋の景趣にしている。
徐々に行燈の灯りが目立ち始める中でひらり、とたまに舞い落ちる紅葉たちはとても綺麗で現代に居たら中々見ることは出来ない景色だなとしみじみ思ってしまう。
「主、執務が終わってからずっとここに居たのか?」
沢山の刀剣男士が居る本丸の中でも人気が無さそうな縁側に居た自分に突然降ってきた言葉。それに対して短く肯定の言葉を返すとそうか、とだけ彼も応えて静かに自分の隣に座ったのは自分が審神者になってから長く近侍を勤めてくれている鶴丸国永だ。
そんな彼に対して自分もぽつぽつと言葉を交わす。審神者になって長いけれどただ自分の本丸の刀剣男士達を戦場へと送り出し見届ける事しか出来ないもどかしさに未だ慣れないこと、本丸で皆と四季折々の楽しさを共有したことなど取り留めのない話を鶴丸は時折相槌をしながら静かに聞いてくれた。
今日は何時もなら話さないのだけれど、何処と無く縁側から見える綺麗でどこか切ないような景色に気持ちが引きずられてしまったのか少しだけ気持ちが弱ってしまったらしい。自分が審神者としてあとどのくらい貴方達と一緒に居れるのだろうとぽつりと漏らしてしまった。
言ってしまった後に言うべきでは無かったという後悔が襲ってきたが聞いていたのが鶴丸だけだったのが幸いかもしれない。今の言葉は忘れて欲しい、と言おうとした時だった。
「この先はどうなるか分からないが、この本丸にはまだまだ主に居てもらいたいと俺は思っているさ」
口調は普段通りだが、いつものような飄々とした声色よりも真剣味を帯びた声色で返答が返ってきた。本丸の総意という訳では無いけれども、少なくとも自分がまだここに居ていい理由を彼が与えてくれたような気がして少しだけ気持ちが軽くなった心地がした。小さくありがとう、と感謝の言葉を伝えると鶴丸は笑顔で自分の頭に手を置いた。
「大分冷えてきたから体に障るぜ。光坊に温かい飲み物を作ってもらって、厨の前を通り掛かった連中も呼び込んで話でもしながら身体を温めよう」
そういう彼の提案に自分も釣られて笑みが零れる。そうだね、と同意して縁側から離れた。少し歩いてから振り返って見た本丸の庭はもう宵闇に沈んでいたけれど、行燈の灯りに照らされた紅葉たちの鮮やかさのせいか、鶴丸の励ましの言葉のせいか不思議と先程の寂しさはもう感じなかった。
何も無い一日
ただ外を眺めていた
特に意味もなく眺めていたはずなのに
頬には暖かい何かが落ちていた
「たそがれ」
たそがれ
「…………」「…か…な…」「おーいかな」
誰かが私の名前を呼んでる
「おい、かな?聞いてた?」
「うっ…うん聞いてたよ」
「なに黄昏てんの?俺ずーと呼んでたのに」
「あー ごめんごめん💦」
私は今 友達の恋愛相談に乗っている
彼の名前はアツシ
クラスでも1番の人気者
「えーとアツシはマドンナのあやが好きなの?」
「おぅ…でもどうやって振り向かせばいいの分かんねぇ…」
って事らしい…
私も恋愛よく分からんのに💦
「とりあえず 王道のラブレターとかいいんじゃない?」
「ラブレター… それじゃダセーじゃん」
「私はラブレターでも嬉しいけどな〜」
「俺さ出来ればカッケェ告白したい!!!」
「かっこいい告白ねぇ〜 アツシにかっこいいは似合わん(笑)」
「はぁ?じゃあお前だったらどう告白するんだよ」
………そう言われた瞬間私はドキドキした
(ん?今なんでドキドキしたんだろう?)
「おーいかな〜聞いてた?」
「聞いてたよ!私だったら…」
アツシの顔をまっすぐ見つめて
少し恥ずかしがりながら
「好きです❣️」
少しの沈黙が流れアツシが
「バーカ なに俺に告白してるんだよ…」
(そうだよ 私は相談に乗っていたのに告白してしまった)
ある日の黄昏時私は……
もうたそがれ
終わりの色が広がる
笑っているあなたの顔がよく見えない
不安に駆られている間に
あたりは闇に包まれる
自分の音だけが聞こえる
どうせ見えないなら
目を閉じて
過去に帰る
ああ、その笑顔だ
20231001【たそがれ】
きみがワンワンと泣いている。
ぼくはヨシヨシと言いながらユラユラ揺れる。
世界一かわいいきみは世界一ぼくを困らせる。
ふたり揃って黄昏泣き。
小さな手を握り一瞬の永遠に思いを馳せた。
▷たそがれ
まず黄昏ってなんだ
まずそこからである
単語一つ一つの意味を把握していなければその単語を正しく使用することは不可能である
てわけで黄昏ってなんですか
たそがれるわー
好きな人がもうすぐ遠くに帰っちゃう
たそがれ
薄暗くなった夕方。
坂道をのんびり歩いていると遠くの方から聞こえてくる鈴虫の声。
風が吹くと、その風は少し肌寒く感じる。もう秋か――
薄暗いから人の表情はあまりわからない、この黄昏時が好き。
何も考えずのんびり、のんびりと歩く。気を使わなくていい。
今にでも、自分がこの闇に溶けていきそうな。そう思う――
『たそがれ』
数年と同じ業務を繰り返し、上司には怒られ部下の尻拭いにあちらこちらに頭を下げそんな日々を繰り返していた。
気がついたら中堅と呼ばれるくらいまで働いていた。
しかし、自分がそんなスキルを持っているとは思えない。
私は溜息1つ吐き今日の業務を終わらせると、気がついたら屋上に来ていた。
命を絶つ為ではない。ただこの場所から観る黄昏空が好きなんだ。ビルの隙間から黄昏色の夕日が差し一日の疲れが浄化される様な感覚になる。
右手に持っている缶コーヒーをゆっくり飲みながら見つめていた。この時期はもう寒くなり日が落ちるのも早くなる。黄昏空も見えなくなる季節が来てしまうのかと少し寂しい思いがあるが、またこの黄昏空を見る為に頑張ろうと心に思い、缶コーヒーを飲み干し、今日の日課を終え帰宅した。
休日のたそがれ時
もう日が沈むね
今日という日が終わっていく
なんか淋しい気持ちもあるけれど
それは今日が良い日だったからかな
たそがれ時は
今日を振り返るためにあるのかもしれないね
たそがれが迫っている。
何もかもを包容する夜を伴って。
夜に抱かれている間、誰もが穏やかに眠るが私だけは不安だった。
今の私と翌朝の私。
果たして同一なのだろうか。
髪の先からつま先。どこもかしこも。
夜に齧られすりつぶされ、気まぐれに吐き出されたのが翌朝の私ではなかろうか。
そして今の私も例外ではない。
今日もたそがれが迫っている。
夜を伴って。
黄昏時になる鐘の音
公園のブランコが寂しそうに揺れてる
さっきまで誰かが遊んでたのかな
君を待っててくれる人がいる
なんて幸せな事だろう
ひぐらしの鳴き声聞くと何となく黄昏てしまうなぁ。
ここしばらく聞けてないから来年は大事な人と一緒に聞けたらいいな( ¨̮ )
たそがれ
黄昏の頃合いになると、
空がオレンジ色に染まり、
淡いラベンダーや薄紫に染まり、
美しい色の絵が描かれ、宵闇に染まってゆく。
幾つもの美しく優しい色に染まった空は、
少しずつ溶けて、
人の心の中にそっと沁みこむ。
優しくて、
切なくて、
世界の中で、
自分だけが取り残されたような切なさと、
それは同時に、
この世界に、たった一人しかいない自分という存在へ向けて、空がそっと頬を撫でてくれるような、
そんな真綿のような優しさを運んでくれる。
黄昏に染まる時間は、
空から私達へのプレゼントなのだと、思う。
世界中の人が、
黄昏の頃合いに、
染まりゆく空を同時に眺めているとき、
きっとその瞬間だけは、
憎しみも、争いも、嫉妬も、偏見も、
人の心の中に巣食うあらゆる醜さも、傲慢も、
きっと溶けてなくなっている。
その優しさを胸に抱く瞬間、
私も、世界も、かけがえのない存在だと気付く。
ソンへ
空が黄昏れてきた。夕焼け色と黒みを帯びてきた
薄青空のグラデーションが綺麗だ。
夜空も青空もいいけれど、夕暮れ時の空にも目を
奪われたりする。
今日が終わっていく。
明日見えるのは、青空だろうが。それとも、灰色の空だろうか。夕暮れ時に空は黄昏れているだろうか。
「たそがれ」
#たそがれ
黄昏。夕方は人の姿が見分けにくく、“誰そ彼”と聞いていたことが由来という。
「ねえ、アツシ」
「……」
「ねぇってば、無視しないでよ」
「……」
あいつは、そもそも家が別方向だからさっき曲がり角で別れたばっかりなんだ。
「ねぇ、さっき僕に声かけたじゃん」
「……」
「ネェネェネェ、アツシ。イカナイデ。」
「……っ」
この人じゃないの、誰? なんであいつと同じ格好してるんだ。でも絶対あいつじゃないってすぐわかる。だって、あいつがいつも大事そうにしてるキーホルダーがバッグについてねえもん。たぶん幽霊とか、そういうのなんだこいつ。
もう居ても立っても居られなくて、走って逃げた。
足は遅かったから助かった。でもずっと、俺の名前を呼んできて、怖かった。
———とある記事。
男子小学生(7)が下校中、車に轢かれて亡くなりました。目撃者によると男児は横断歩道でずっと何かを探しており、それに気づかずに車に轢かれたとのことです。車は逃走中で、警察は……。
中学3年の春、KENWOODのコンポがほしくて新聞配達のバイトを始めた。丘の上の介護施設に向かっていると、遠くの稜線が明るくなり朝日が登ってきた。その素晴らしい光景にしばらく見惚れた。初めてのたそがれ。
コンポはバイト代を全額貯金して半年で買えた。